ホビーアニメ✕ロボット。これでわかるね   作:イェスコマ

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69話(挿絵有)

 昼過ぎ。

 カフェを出て、僕たちはショッピングモールの中へと足を踏み入れた。

 休日の人混みの中、桃香の手を握っているだけで、不思議と気持ちが軽くなる。

 

「ねえ、まず雑貨屋さん行こうよ!」

 桃香が指をさす。

 入口には色とりどりのカップや食器が並び、照明に反射して小さく光っていた。

 

「白夜くんの新しい部屋、マグカップとかまだでしょ?」

「まぁ、最低限しかないな」

「じゃあ、ペアで買おう!」

 

 唐突な提案に、思わず聞き返す。

「ペアで?」

「うん、ペアで! そのほうが可愛いし……嬉しいし?」

 桃香が照れ笑いを浮かべながらカップを手に取る。

「見て、この丸っこいの可愛い!」

 

 僕も隣で棚を眺めながら、無難なデザインの白いマグを手に取る。

「こっちは落ち着いてていいな」

「うーん、でも並べたときのバランスが大事なんだよ。こっちの色違いは?」

そういって陶器製の白地に灰色の大きい花柄の入ったものと赤色の花柄の入ったマグカップを手に取る。

 

「……それなら、落ち着いてる感じもして良いね」

「私が赤で白夜君が灰色ね」

 

 桃香は楽しそうに笑い、勝手に二つのマグをレジに持っていった。

 僕は苦笑いして、BPは出すよとレジに向かう。

 2人で選んだマグは、対になるように作られていて、

 なんだか――使うたびに桃香の笑顔が浮かびそうだった。

 

 

 

 雑貨屋を出ると、今度は服屋のウィンドウに足を止める桃香。

「次は服だね!」

「服?」

「白夜くん、ラボとか休みの日もいくんでしょ?ならちゃんとキメていかなきゃ! 服装で変わるんだから」

 

 その勢いに押され、僕は店に引きずり込まれた。

 桃香は真剣な顔で、ハンガーを片っ端から見ていく。

 ブラウンのスウェット、ネイビーのパーカー、Tシャツ。

「うーん……あっ、これ! 絶対似合う!」

 

 僕の肩に当てながら、彼女が笑う。

「ちょっと地味じゃない?」

「いいの。白夜くんは派手よりこういうのが落ち着く感じ」

 試着室の鏡に映る自分を見ながら、僕は苦笑した。

(……なんか、彼女に“選ばれる”って、悪くないな)

 

 支払いを終えたあと、桃香は何か小さな袋をレジの店員に預けるような仕草をしていた。

 気づかないふりをしたけど――今思えば、あれが“仕込み”だったのかもしれない。

 

 

 *

 

 

「いっぱい歩いたね」

「うん。楽しかったけど、足パンパン」

 

 モール内のカフェで、二人並んで座る。

 テーブルには、さっき買ったペアのマグの袋が置かれている。

 桃香はアイスティーを飲みながら、その袋を見つめた。

「今度さ、白夜くんの部屋でこれ使ってコーヒー飲もうよ」

「いいね。引っ越したばっかだし、誰か来たほうが部屋も喜ぶかも」

「じゃあ、決まり!」

 

 桃香は嬉しそうに笑い、残った氷をストローでくるくる回した。

 その仕草が、やけに可愛くて――僕は視線を逸らした。

 

 

 *

 

 

 オレンジ色の夕陽が、寮の影を長く伸ばしていた。

 

「今日はありがとね」

「こちらこそ。いろいろ選んでもらったし」

「……またすぐ会えるけど、なんか寂しいね」

 桃香が小さく笑って、手を振る。

 僕はその手を握り返した。

「またな。連絡する」

「うん。待ってる」

 

 その笑顔を背に、僕は新居へと歩き出した。

 

 

 

 帰宅して、部屋の灯りをつける。

 まだ新しい部屋の匂いが残っている。

 静かで広い――でも、どこか落ち着く。

 

 買ってきた袋をテーブルに並べ、順番に整理していく。

 マグカップを棚に、パーカーをクローゼットに。

 ――そして最後の袋を開けたとき、僕は固まった。

 

「……え?」

 

 そこに入っていたのは、淡いピンクの布。

 ふわふわした手触り。胸元に小さなリボン。

 どう見ても、桃香の趣味全開のパジャマだった。

 

「いつの間に?!ってあの時か。……完全にやられたな」

 

 思わず吹き出す。

 ラボの訓練でも、ここまで鮮やかにやられたことはない。

 笑いながら、リンカーを手に取る。

 

〈こんなかわいいパジャマが紛れ込んでいましたが、犯人は知りませんか?〉

 

 すぐに返信が届いた。

〈わぁ、それは私のです! 捕まえてくれますか?〉

 

〈現行犯じゃないけど、容疑は重いな〉

〈えーっ、じゃあお詫びに部屋に遊びに行くね♡〉

 

 可愛すぎて、反論する気も失せた。

「……適わないな」

 

 パジャマを丁寧に畳み、クローゼットの中へしまう。

 その布地に触れたとき、なぜか胸の奥がほんの少し温かくなった。

 

 部屋の静けさが戻る。

 窓の外では、街の灯りが瞬いている。

 天井のファンが低く回り、風の音が混じる。

 

(明日から、また忙しくなる)

 

 白夜はベッドに腰を下ろし、静かに息を吐いた。

 そして、桃香のことを思い浮かべながら――ゆっくりと目を閉じた。

 そしてまた怒涛の平日がやってくるのであった。

 

 

 

 *

 

 

 

 今週で6月も4週目、来週には7月に入る。

 7月の半ばには期末テストがあって、それが終われば1か月ほど夏季休暇に入る。

 

 期末テストが迫ってきている――とはいえ、僕の生活リズムはまったく変わらなかった。

 午前の授業を受けて、午後のリーグ戦をこなして、そのままラボへ。

 そんな毎日を、もう当然のように繰り返していく。

 

 今日も受付で名前を告げると、スタッフが顔を上げた。

「白銀さん、藤堂室長からの伝言です。シミュレーション室にお越しください」

「了解です」

 

 その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が少しだけ熱くなる。

(今週こそは――篠原先輩に一泡吹かせてやる)

 そう思いながら、僕は迷いなく廊下を進んだ。

 

 重い防音扉を抜け、室内に足を踏み入れる。

「失礼します!」

 

 視線の先――そこには、いつもの藤堂室長とアストレアさん。

 そして、もう一人。

 以前、顔合わせの時に一度だけ見かけた女性の先輩がいた。

 

 長い黒髪が顔の大半を覆い隠していて、どこか儚げな雰囲気をまとっている。

 制服の袖口から覗く指先は、まるで硝子でできているように細く白い。

 その体つきは驚くほどガリガリで触れたら折れてしまいそうで少し不気味って言ってもいいくらいだ。

 

「白銀くん、紹介しますね」

 アストレアさんが一歩前に出て言う。

「こちらは紫乃 雨音(しの あまね)くん。藤堂ラボ所属の二年生です」

 

 その名前を聞いた瞬間、彼女は小さくペコリと頭を下げた。

 動作は控えめなのに、妙に印象に残る。

(……篠原先輩より、コミュニケーション能力はありそう)

 そんな失礼なことを思ってしまう。

 

 

 そして――今日のアストレアさんは、またしても目を奪われる格好をしていた。

 

 短めのミニスカート丈の着物。

 裾には紅と金の刺繍が施され、布地は薄いシルクのように滑らか。

 腰の帯には黒いレザー調のベルトが重ねられ、そこから伸びる装飾コードが淡く光を放っている。

 袖は片方だけが長く、もう片方は肩まで露出していて、まるで左右で違う時代を纏っているかのようだった。

 

 そして足元――

 艶やかな脚に装着されたのは、金属製のヒールと和装ブーツの融合体。

 歩くたびに、かすかに鈴のような音を立てている。

 古代と未来の狭間を歩く存在。

 まさに“システマチック巫女”という言葉が似合う。

 

 今日も人間離れした美しさだ。

 

 

「白銀、お前の新しい対戦相手は紫乃だ」

 藤堂室長が顎をしゃくって指す。

 

「あれ?篠原先輩は?」

「篠原は先週動き過ぎたからパスだそうだ。代わりに今週は紫乃が相手をしてくれる」

 

 紫乃先輩はボソッと苦し気な表情で

「……イケメンは、私のメンタルが……持たない……」

 

 ぼそっと漏れた声はか細く、何を言っているのかほとんど聞き取れなかった。

 でも、なぜか“苦手意識”を持たれていることだけは分かる。

 

 僕は姿勢を正し、短く頷いた。

「よろしくお願いします。」

 

 

 その瞬間、アストレアさんがふとこちらを見て、微笑んだ。

「今日の白銀君は、とても良い表情をしていますね。良く眠られましたか?」

 

「アストレアさんのお陰様で」と軽く笑って応える。

 

 

 僕は軽く息を整え、視線を前に戻す。

 白い照明に包まれたシミュレーションルームが、まるで戦場のように感じられる。

 

(――油断はしない)

 

 そう心の中で呟き、コンソールの前に立った。

 

 

「シミュレーションルーム、オールクリア。通信同期完了」

 アストレアの声が響く。

「それでは――対戦開始」

 

 光が一瞬、視界を包み――世界が切り替わる。

 

 視界の先に広がるのは、淡い光のフィールド。

 円形のアリーナを取り囲むように、無数の光粒子が舞っている。

 

「ふぅ……」

 僕は深呼吸をしてデバイスを握った。

 今日の僕の機体は空戦遠距離タイプ。

 中距離からの精密射撃が得意な機体を試している。

 

 同時に、対面のゲートからもう一体――

 眩しい光の帯をまといながら現れた機体。

 

「ルミナメイジ、リリィコア、起動――なのですっ!」

 

 ……ん?

 

「……え、誰?」

 

 さっきまでの陰気な声とはまるで違う。

 スピーカーから響いたのは、甲高く張りのある声。

 アニメヒロインのような抑揚、可愛らしい語尾。

 

「ま、魔法少女……?」

 

 フィールド中央に立つルミナメイジは、まさにその言葉の具現だった。

 ピンクと白の装甲、ティアラ状のヘッドセンサー、背中から伸びる光のリボン。

 両手にはクリスタルの杖――いや、《ウィッシュワンド》。

 

「暗闇なんて、笑顔で吹き飛ばすんだからっ!」

 

 ……始まる前からキャラ全開だ。

 

(いやいや、さっきの暗い貞子みたいな人、どこいった!?)

 

 

 僕のツッコミを無視して、ルミナメイジが動いた。

 流れるようなステップ――

 脚部の《プリズムレッグ》が、残光のリズムを刻む。

 

「ラブリーステップ、発動っ!」

 

 軽やかに、舞うようにフィールドを駆け抜ける。

 追いすがる僕のロックオンを次々と外していく。

 

(……なにこれ、動き速っ!)

 

「ウィッシュワンド、ハートモード☆ 《シューティングスター》っ!」

 

 杖の先端が七色に輝き、次の瞬間――無数の光弾が星の雨のように降り注ぐ。

 光弾の軌跡が、ハートや星型の残光を描く。

 

「うっ! 範囲が広い!!」

 僕は慌てて回避スラスターを噴かす。

 間一髪。光弾が後方の床を穿ち、キラキラと光の破片が散った。

 

(あっぶな……。威力も速さもヤバい)

 

 彼女の戦い方は、篠原先輩のような冷静さとは正反対。

 勢いとノリで押してくる“感情型”。

 でも、それでいて無駄がない。

 一見派手に見えて、確実に攻撃ラインを通してくる。

 

「この光は、みんなの想いでできてるのッ!!」

 

 ルミナメイジの声が響き渡る。

 背部のリボンが大きく広がり、粒子の翼を形成した。

 

「《プリズム・ミラクルバースト》――発動っ!!」

 

 光が弾け、全方位に虹色のビームが放たれる。

 まるでフィールド全体がステンドグラスになったような錯覚。

 

「わっ、派手すぎるだろっ!!」

 

 僕は回避スラスターを全開にして上昇する。

 しかし、どこへ逃げても光が追ってくる。

 

「ハクロ、反撃するぞっ!」

 射撃モードを切り替え、対空散布ビームを放つ。

 だが、光が屈折し――まるで届かない。

 

(左手のシールドか……!)

 

 次の瞬間、ビームが反射し、逆に僕の方へ跳ね返ってきた。

「っぶな!!」

 咄嗟に急降下して回避。

 

 まるでホビーアニメの決戦だ。

 いや、実際そうなんだけど。

 

 通信が繋がり、紫乃先輩――いや、“魔法少女ルミナ”の声が響く。

 

「あなたの心、曇ってるよ……でも、大丈夫! 私が照らしてあげる!」

 

「いや、照らさなくていいです!!!」

 

(なんだこの人! さっきとテンション違いすぎる!!)

 

 僕は笑いながら、必死に防御を整える。

 だけど不思議と、嫌な気持ちはしなかった。

 

 この戦い――

 どこか“楽しい”って思ってる自分がいた。

 

 いつの間にか、紫乃先輩――いや、“魔法少女ルミナ”のペースに引き込まれていた。

 派手な光と、無駄にキラキラした演出。

 なのに、どの一撃も確実にこちらを追い詰めてくる。

 

「はぁっ! この光、届けっ☆《シューティングスター》!!」

 

 再び空を舞う流星弾。

 星形のビームが渦を巻いて迫ってくる。

 

(なら、こっちも全開だ!)

 

 僕はスティックを押し込み、機体の両翼を展開する。

「《スプレッドレイン》、フルバースト!」

 

 無数のビームが扇状に広がり、虹色の光を迎え撃つ。

 空中で光がぶつかり、爆発の閃光がフィールドを染めた。

 

 だが――次の瞬間、反射光が僕のセンサーに刺さる。

 

「なっ……!?」

 

 ルミナメイジが胸の前にハートシールドを突き出し、光を鏡のように跳ね返してきた。

 

「リフレクト・ハート! 愛の光は、まっすぐ帰ってくるのよっ♡!」

 

「そんなのあるかぁぁぁっ!!」

 

 ビームの奔流が逆流し、こちらの機体を直撃する。

 警告音が鳴り響き、装甲が焦げる。

 

(くっそ、ふざけた演出のクセに火力高いっ!!)

 

 慌てて姿勢を立て直しながら、距離を取る。

 しかし、彼女はすでに詠唱モードに入っていた。

 

「ハートチャージ、完了っ!」

 背中のリボンが翼のように広がり、光子粒子を吸い上げていく。

 

「想いのエネルギー、満タンっ!」

 

(フルチャージ!? マズい……!)

 

「ラストよ――《シューティングスター・フルスパーク》!!」

 

 ルミナメイジのワンドが天に掲げられる。

 そこから放たれた光は、一本ではなく無数の光線。

 星々が尾を引きながら、まるで流星雨のように降り注ぐ。

 

 僕は咄嗟に回避スラスターを噴かした。

 しかし、それを追いかけるようにビームが軌道を曲げてくる。

 

(誘導っ!? くそっ、避け切れ――)

 

 爆音。視界が一面の白に染まる。

 機体の制御が奪われ、回転しながら地面に叩きつけられた。

 

 視界に浮かぶ赤い警告ウィンドウ。

《システムダウン》

《出力オーバーフロー》

 

「っ……はぁ……やられた……」

 

 残骸のように立ち尽くすハクロの前に、リボンを輝かせてルミナメイジが駆けつける。

 

 彼女はワンドを掲げ、決め台詞を口にした。

 

「信じる気持ちは――誰にも壊せないっ☆!」

 

 その瞬間、ルミナメイジの周囲に淡いハートの残光が散った。

 まるで勝利の証のように、光の粒がフィールド全体に舞い降りる。

 

「……はは、完敗だ」

 

 僕は笑うしかなかった。

 派手で、無駄で、バカみたいに熱い――けど、全力だった。

 そしてなにより、彼女は本気で楽しんでいた。

 

 通信を入れる。

「すごかったです。先輩、こんなに楽しいって思ったの久しぶりでした」

 

 少し沈黙のあと、小さく聞こえた。

 魔法少女モードが抜けたのか、今度は妙に落ち着いた声だった。

「……あの、悪くなかったです」

 

 聞こえるような、聞こえないような小声。

 思わず笑ってしまう。

 

(この人……先輩だけど、面白いな)

 

 ルミナメイジの残した“ハート残光”が、ゆっくりと消えていく。

 

 

 試合が終わると、汗がびっしょりだった。

 シミュレーターとはいえ、あれだけ集中して動かしていれば当然だ。

 息を整えながら紫乃先輩のほうを振り向くと――

 

 ……そこには、さっきの“魔法少女”はもういなかった。

 

 さっきまでビームを撒き散らしながら「みんなのハート、ひとつにして☆」とか言ってた人が、今は俯いて髪で顔を隠し、じっと足元を見ている。

 完全に別人。

 いや、むしろ――“普段の紫乃先輩”に戻ったのだろう。

 

(ギャップ……すごすぎる)

 

「……あの、もう一戦お願いします」

 思わず声をかけると、紫乃先輩はびくりと肩を揺らした。

 ゆっくりとこちらを見るが、目線は合わない。

 

「……………」

(またそれ!?)

 

 藤堂室長が、そんな空気をまったく気にする様子もなくモニターを操作しながら笑った。

「いやー、いつ見ても紫乃は最高だな! 今日の“変身”は特にキレてたぞ!」

 

 アストレアさんも笑みを浮かべながら補足する。

「白銀くん、改めて紹介しますね。紫乃 雨音(しの あまね)2年生です。レベルは今の時点で190。彼女は実力だけなら2年生でもトップクラスですよ」

 

「す、凄い……強いと思いました」

 素直にそう答えると、紫乃先輩は少しだけモジモジして――

 ほんの一瞬だけ、こちらをちらっと見た。

 

 その仕草が、さっきの“魔法少女”モードとのギャップで、なんだか混乱する。

 

 アストレアさんが続ける。

「対外試合も出てくれればいいんですけどね。会場に行く途中で迷子になって……不戦敗が続いたんです」

 苦笑交じりに言うアストレアさん。

 

「ほ、方向音痴なんですか?」

「マップアプリの東西反転が理解できないらしくて……」

「地図アプリに人格否定されて泣いてたもんなー」

 藤堂室長が大笑いする。

 

 (……すごい人なのに、惜しい)

 

 室長が僕の方を向き、ニヤッと笑う。

「白銀、お前、紫乃のサポートしてやってくれよ!」

 

「そ、そんな凄い先輩に僕なんかが……」

 と口にすると、紫乃先輩がまた髪の隙間からこちらを見上げ――

 

 その視線が、なぜかやたら熱い。

 いや、まるで“ヒーローを見つめる少女”みたいな……?

 

(さっきまで無視してたのに!? え、なんで満更でもなさそうなの!?)

 

 反応に困っていると、アストレアさんがタイミングよく声を出した。

「それでは、もう一度やりますか?」

 

「あ、はい! お願いします!」

 勢いで即答してしまった。

 

 ――逃げた。完全に話題を逸らした。

 

 

 

 そこから3戦。

 全部負けた。

 

 どの試合も、ルミナメイジの圧倒的な火力と演出に押し切られた。

 けど不思議なことに、負けるたびに紫乃先輩が嬉しそうにしていた。

 最後の試合で、ようやく一撃を入れたときなんか――

 

 通信越しに、あの高い声で叫んだのだ。

「きゃっ!? うちに当てるなんて、かっこいいだけじゃないのねっ!」

 

 思わず操作をミスりそうになった。

 

 試合後、紫乃先輩はいつもの陰キャモードに戻って、

「……その、おつ…かれ…」と小声で言ってきた。

 

(いやー、ギャップに慣れない)

 

 負け続けたのに、なぜか心が晴れていた。

 なんだろうねこの感じ――

 この人たちの“熱”に、少しずつ染まっていく感覚。

 格上と繰り返す戦闘。強くなってるっていう実感。

 そんな高揚感が僕を包んでいた。

 

 

 




機体名 : ルミナメイジ

---

部位  :
頭(ティアライトヘッド:感情波同期センサー。パイロットの感情で出力が変動)
/右(ウィッシュワンド:魔力変換ロッド。属性切り替え可)
/左(ハートシールド:光子防壁を展開。防御と反射を兼ねる)
/脚(プリズムレッグ:跳躍力重視。地上/空中で“ステップ移動”が可能)
/背(ミラクルリボン:多色粒子放射ユニット。移動補助+ビーム拡散)

---

主要数値:
全高  :176 cm
重量  :185 kg
稼働  :52 分
COOL  :8.0 s
HEAT  :63 %

---

コアスキル :〈プリズム・ミラクルバースト〉
ウィッシュワンドを掲げ、背部ミラクルリボンを全展開。
パイロットの感情値(喜/怒/哀/楽)を属性の異なるビームを一斉放射する全方位攻撃。

サブスキル一覧:
《ハートチャージ》
 感情共鳴でエネルギー回復。

《レインボーサークル》
 床に魔法陣を展開し、範囲内の味方を一時強化。

《シューティングスター》
 流星型ビーム弾を高速連射。敵の包囲を切り裂く。

《リフレクト・ハート》
 ハートシールドを展開し、射撃エネルギーを反射。
 返す光線がハート型なのは演出。

《ラブリーステップ》
 敵の攻撃をリズムよく回避するモーション制御。

備考  :
《ルミナメイジ》は“感情を力に変える”をコンセプトとした魔法少女型エイドロン。
「コア」がパイロットの心拍・声・意志を解析し、
それをエネルギーへ変換するという異端技術の結晶。

可憐な見た目と裏腹に、
出力は上位エイドロンにも匹敵。



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