ホビーアニメ✕ロボット。これでわかるね   作:イェスコマ

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75話

 片付けを終え、ラボを出たのは十七時を少し回った頃だった。

 夕方の空は、すでに群青と橙が入り混じる。

 藤堂室長たちに挨拶をして扉を閉めると、外の空気はどこかひんやりとしていた。

 

 振り返ると──紫乃先輩がいた。

 いつの間にか、ぴたりと僕の背中のすぐ後ろに立っていた。

 距離にして、ほんの三十センチ。息がかかるほど近い。

 

(……またこの距離感か)

 

 僕が歩き出すと、彼女も歩く。

 ピタ、ピタ、と靴音がほぼ同じタイミングで重なる。

 2人の影が長く伸び、夕陽がゆっくりと背後に沈んでいく。

 

 

「紫乃先輩、お疲れ様でした。今日、乗ってましたね。まさに魔法少女って感じで」

 そう話しかけると、紫乃先輩は視線を落としたまま、かすれた声を返す。

「……つ、つかれた……」

 

「でも紫乃先輩のバトル中、すごくキラキラしてて。可愛いというか、眩しいですよね」

 そう言った瞬間、彼女の肩がピクリと震えた。

 

「……か、かわ……いい、とか……」

 途切れ途切れの声。

 そのあと、聞き取れないほど小さな声でぶつぶつと何かを呟いている。

 

(……また始まった)

 いつものようにぶつぶつと僕に聞こえない声でつぶやいている。

「可愛いとかもうプロポーズじゃんか」

「うち、かわいいとか男子に言われたの初めてだよ」

「触ってもいいかな?」

「今日も部屋に行っても良いよね?」

 その小さな声には、かすかな震えと、甘い陶酔が混ざっていた。

 まるで独り言を繰り返しながら、現実と空想の境界を溶かしていくような。

 

 あー、また紫乃先輩自分の世界に入ちゃったよ。

 この状態になると、落ち着くまで聞こえてないみたいだからな

 僕はそう判断して、前を向いたまま歩を進める。

 

 10分ほどの帰り道。

 蝉の声が遠くで途切れ、かわりに街灯が点き始める。

 空気が湿り、夜の匂いが少しずつ漂い始めていた。

 

 やがて、僕らが同じマンションの前に辿り着く。

 ロビーの自動ドアが開き、冷房の風が足元を抜けた。

 

 エレベーターに乗ると、紫乃先輩も無言のままついてくる。

 

 エレベーターの中、ふたりきり。

 沈黙。

 電子音と階数表示だけが規則的に鳴る。

 狭い空間の中で、彼女の呼吸音がすぐ隣から聞こえる。

 

 僕はなんとなく、壁に視線を向けた。

 反射したステンレスの中に、ぼやけた二人の姿が映る。

 紫乃先輩は俯いたまま、動かない。

 ただ、笑っていた。

 口角だけがわずかに上がっている──感情の見えない笑み。

 

 “チン”と音が鳴る。

 僕のフロアに着いた。

 

「あ、紫乃先輩、お疲れ様でした」

「……うん。……“またね”」

「はい、また明日もよろしくお願いします」

 

 扉が閉まり、エレベーターが上の階へと昇っていく。

 

 

 

 *

 

 

 

 部屋に入ると、すぐに靴を脱ぎ、鞄を置く。

 静かだった。

 冷蔵庫のモーター音がやけに大きく聞こえる。

 

(……今日も頑張ったなー)

 

 簡単に晩御飯を作って食べる。

 料理もBPに余裕あるし今度から頼もうかな? 

 水を飲もうとコップを手に取り水をそそぐ。

 少しぬるい。

 そのままテーブルに置き、シャワーを浴びに行く。

 

 湯気の中で目を閉じる。

 今日のシミュレーションを振り返る。

 僕は近接の方が得意なのかもしれない。蝶のように舞い、蜂のように刺すみたいな。

 藤堂室長もそんな風に考えてる気もする。サブの遠距離装備とメインの近距離。そこに空戦型の機動力が加われば結構強いよな。まだ先輩たちには勝ててないけど、惜しいとこまでいくようになったし。

 

 シャワーを終え、髪を拭きながらリビングに戻る。

 その瞬間、ふと──視線を感じた。

 

 窓の外。

 カーテンの隙間から、夜風が揺れる。

 

 マンションの向こう、遠くのビルの灯り。

 そして──その間に、一瞬だけ、何かが動いたような気がした。

 

 虫? いや鳥かな? 

 

 少しの間、今日の授業の復習をしておこう。期末テストまで2週間を切ったしこっちも頑張らないとな。

 

 キリの良いところまで勉強し、水を軽く飲んでから

 電気を消してベッドに横たわる。

 

(……今日もぐっすり寝れそうだ)

 

 目を閉じる。

 静寂。

 風の音と、鼓動の音。

 

 ──けれど、眠りに落ちるその直前、

 耳の奥で、誰かの小さな声が囁いた気がした。

 

『……おやすみ、はくや……』

 

 

 

 *

 

 

 

「……おやすみ、はくや……」

 ほとんど声にならない声で、彼女が呟く。

 ゆっくりと唇がほころび、頬が紅潮する。

 

「うひ……じゃあ、今夜も……一緒、だね」

 

 ──夜、午前二時。

 

 白夜の部屋は、闇に沈んでいた。

 カーテンの隙間から差し込む街灯の光が、床にかすかな帯を作っている。

 冷房の風は止まり、部屋は湿った静けさに満たされていた。

 

 その静寂を──破る音がした。

 

 ぴと。

 ぴと。

 

 湿度の高い粘着質な裸足の音。

 廊下の床を、ゆっくりと、這うように。

 夜の闇が動く。

 

 玄関の鍵は、かすかな電子音を鳴らして開いていた。

 白夜には聞こえない。

 眠りの深みに沈んでいる彼の呼吸だけが、部屋の空気をわずかに揺らしている。

 

 ぴと、ぴと──。

 

 影がリビングを通り抜け、洗面所の方へと向かう。

 その足取りには、迷いも、音の抑制もない。

 “この部屋の主”であるかのような、確信に満ちた歩みだった。

 

 洗濯籠の前にしゃがみ込む。

 白夜が使ったタオルが、無造作に重ねられている。

 紫乃はその中から、ひとつをゆっくりと拾い上げた。

 まだ微かに、石鹸の匂いと体温の名残がある。

 

「……ぅ……ん……」

 喉の奥で、言葉にならない息が漏れる。

 彼女はそれを頬に押し当て、静かに目を閉じた。

 小さく、震えるように息を吸う。

 

「……あったかい……」

「……あぁぁ……はくやのにおい……」

 

 薄闇の中、その頬がわずかに紅く染まった。

 そして、そっとタオルを胸に抱きしめたまま立ち上がる。

 

「……ん……やっぱり……はくやの匂い……」

「……大丈夫、ちゃんと洗ってあげるから……」

 

 タオルを胸に抱いたまま、影のように動き出す。

 

 ──ぴと、ぴと。

 

 リビングへ戻り、寝室のベッドへ近づく。

 白夜の寝息が聞こえる。

 穏やかで、規則的な呼吸。

 

 ぴと、ぴと。

 

 足音が止まった。

 彼の枕元に立つ。

 

 月明かりがカーテンの隙間から漏れ、白夜の横顔を照らしていた。

 紫乃はゆっくりとしゃがみ込み、指先を伸ばす。

 

 そして──白夜の、無防備に放り出された手を、握った。  冷たくも温かい、生命の躍動を伝える感触。

 指先が触れた瞬間、紫乃の体が小さく震える。

 

「……ねぇ……夢の中でも、ちゃんとつながってるよね……」

「……はくやぁ……手つないじゃったよ……」

 

 彼女は眠る白夜の耳元に顔を近づけ、髪が触れるほどの距離で、湿った息遣いとともに囁いた。

 

「……もう、どこにも離さないから……誰にも渡さない……」

 

 白夜の指を獲物のようにぎゅっと握りしめる。

 そのまま、唇でそっと手の甲に残る血管の筋に触れた。

 熱が、紫乃の体から白夜へと、一方的に移っていく。

 紫乃の呼吸が、微かに喘ぐように震える。

 

 ──そして。

 

 白夜の力なく横たわる手を、自分の胸元へ導く。

 指先が、薄い布越しに激しく打つ柔らかい心臓の鼓動を感じた。

 

「……感じる……? はくや……」

「うち、いま……こんなに鼓動が速いの……全部、はくやのせいだよ……」

 

 その声は、まるで熱に浮かされた夢の中の囁きのようだった。

 息と共に零れる甘い熱が、白夜の体温と混じり合う。

 けれど、白夜は眠っている。

 何も知らずに、静かな呼吸を続けていた。

 

 紫乃は、その手を自分の胸元から離すと、白夜の薄い寝間着越しに、彼の肩、胸板、そして腹へと、指先を滑らせた。

「……うちの、もの……だよね……ぜんぶ……」

 

 紫乃は、うっとりとした目でその寝顔を見つめる。

 指で彼の頬をなぞり、髪の毛を一房すくい取る。

 光に透ける一本の銀。

 それを自分の頬に寄せて、微かに笑う。

 

「……うちの……だよね……」

 

 時間が止まったような静寂。

 秒針の音すら聞こえない。

 

 

 湿った足音が、再び部屋の中を滑っていく。

 ベランダの窓が、音もなく開く。

 外の風が流れ込み、カーテンがゆらりと揺れた。

 

 紫乃は振り返る。

 寝ている白夜の方を──名残惜しそうに、じっと。

 

「……おやすみ、はくや。

 うち、また“帰ってくる”からね……」

 

 月光がその頬を照らし、紫の瞳が一瞬だけ光る。

 

 ぴと。

 

 その足音が最後に一度だけ響き、

 次の瞬間、紫乃の姿は夜の空気の中へと溶けて消えた。

 

 残されたベッドの上──

 白夜の掌には、淡く温もりが残っていた。

 そして床には、小さな紫色の粒が、光を放ちながら揺れていた。

 

 

 

 *

 

 

 

 それからの一週間は、まるで同じ日を何度も繰り返しているようだった。

 昼食を終えるころにはもう、僕の意識はラボへ向かっている。

 授業中も頭の片隅では、昨日のデータをどう応用するか、紫乃先輩のルミナメイジや篠原先輩のミラージュリザードの動きをどう攻略するか、そんなことばかりを考えていた。

 

 礼人たちに「今日もラボか?」「たまには一緒に勉強しようぜ」と声をかけられても、笑ってごめんと返すしかない。

 僕は「ごめん、また今度」と言いながら、気づけば距離を取っていた。

 一緒に笑って過ごしていた昼休みの輪の外に、いつの間にか僕自身が立っている。

 その瞬間、少しだけ空気が沈んだ気がした。

 莉音も、この江も、何か言いかけてやめる。

 僕が以前より、彼らとの間に“距離”を感じているのは、気のせいじゃない。

 

(……でも、今は仕方ない。ラボで掴めるものの方が、ずっと大きい)

 そう言い聞かせながら、校門を抜けた。

 

 

 *

 

 

 

「失礼します」

 そう声をかけると、コンソールの前に藤堂室長、隣に立つアストレアさん、そして部屋の隅で黙って座っている紫乃先輩の姿があった。

 

「おっ、来たな白銀!」

 藤堂室長が手を振り、上機嫌に笑う。

「今日は収穫が多いぞ。お前のジェットパックの父親さんな、千成重工の開発部長だってな? いやぁ、まさかの大物だ!」

 

「えっ……父さんと話したんですか?」

 

「したした! まさかお前が、あの“空冷スラスター特許”を出した家の息子だったとはなぁ!」

 そう言って、室長は両手を広げ、アストレアさんの肩を抱き寄せる。

 

「これで夢が広がるなぁ、アストレア!」

「ええ。白銀君、あなたの存在が“翼”そのものです」

 アストレアさんが微笑む。その笑みは、どこか艶めいていた。

 今日の彼女の衣装は、深紅と黒のフリルが織り重なったドレス。腰のラインから伸びるリボンの揺れが、まるで炎のように見える。

 胸元に飾られた一輪の赤いバラと、耳元で光るガーネットのピアス。

 人工知能とは思えないほど人間的な艶やかさで、彼女は室長に軽やかに抱きつき──

「ふふっ。本当に持ってますね、創一」と囁くように笑った。

 そのまま、頬から額にかけてキスの雨を落とす。

「おい、アストレア! お、おいっ!」と室長が慌てる声が、研究室に響き渡った。

 

 ……よっぽど嬉しかったんだろうな。

 僕は苦笑しながら、その光景を少し引いた位置から見ていた。

 ただ、紫乃先輩だけは──相変わらず無言のまま、じっとこちらを見ていた。なんかタコの口まねをしていた。

 

 

 

 午後の訓練。

 紫乃先輩とのシミュレーション戦は、毎日続いていた。

 結果だけ見れば、僕は一度も勝てなかった。

 けれど、手応えは確かにあった。

 ハクロの出力安定率、レスポンス速度、同期時間。どれも少しずつ改善している。

 ソウルコアの成長率も順調で、内部値はレベル98に達していた。

 数値を見た藤堂室長が、目を丸くして唸る。

 

「やっぱりお前、只者じゃねぇな。機体の方向性もだいぶ見えてきた」

「本当ですか?」

「ああ。次は脚部を改良して、重心を軽くする。お前の親父さんの会社のスラスターの資料を見せてもらえば、世界最速レベルの専用機が作れる!」

 

 その言葉に胸が高鳴った。

 確かに、今のハクロはまだ未完成だ。

 けれど、目の前の先輩たちとこの環境があれば、僕はもっと上を目指せる。

 これも全部、御門先輩を──越えるために。

 

「……おつかれ、はくや」

 小さく、紫乃先輩が声をかけてくれた。

 振り返ると、相変わらず視線は落ちたまま。

 けれど、ほんの一瞬だけこちらを見たとき、その瞳の奥が微かに揺れた。

 何かを隠すように、言葉を飲み込んでいるようだった。

 

 僕は笑って返した。

「ありがとうございます。先輩とやると、毎回勉強になります」

「……そ、そう。うちも……たのしい」

「僕もです」

 

 その一言に、紫乃先輩の唇が微かに震えた。

 頬が赤くなり、彼女は視線を逸らす。

 その仕草が、いつもよりほんの少し長く残った。

 

 

 

 *

 

 

 

 金曜の夕方。

 期末テストまで、あと一週間。

 

「来週は勉強しとけよー!」

 藤堂室長の声がラボに響く。

「お前のハクロは順調だ。お前自身の脳味噌を鍛える番だな!」

 

「了解です!」

 そう返して笑う。今週も充実してた。

 

(……もう期末まで一週間か)

 

 ラボを出てからの帰り道、背後に気配がひとつ──。

 足音が、ほぼ同じタイミングで重なる。もう聞き慣れたリズムだ。

 

 振り返ると、案の定そこには紫乃先輩。

 白いシャツの袖をぎゅっと握り、俯きがちに歩いている。

 その距離、ちょうど三十センチ。

 僕の歩幅に合わせ、影みたいにぴたりとついてくる。

 

「……今日も、まっすぐ帰りますか?」

 声をかけると、ほんの少し間があって、

「……う、うん……」

 とか細い返事。

 

 それ以上の会話はない。

 けれど、背後で刻まれる足音が、僕の歩幅にぴたり重なることが──不思議と、安心を連れてくる。

 

 ──気づけば、今週はずっとこうだった。

 月曜から金曜まで、毎日ラボで訓練して、帰りは二人で同じ道を歩き、同じエレベーターに乗る。

 

 マンションのエントランスへ。ガラス越しの冷気が足元を撫でる。僕はリンカーをかざし、二人でエレベーターに乗り込んだ。閉まる扉に、淡い反射で僕らの輪郭が二重に重なる。

 

「7階と10階、押しときますね」

 僕がパネルに一瞬早く触れた、紫乃先輩の淡い指先が10のボタンの上でぴたり止まる。

 

「紫乃先輩、押しときましたよ」

「あ、ありがと……」

 

 するり、と空を切った指先は行き場をなくして、裾をぎゅっと握る。密閉空間に、微かなシャンプーの香りと、冷房の金属臭が混ざる。

 

 沈黙。

 階数表示の数字だけが、上へ上へと規則正しく跳ねていく。

 僕はなんとなく、鏡面ステンレスの壁を見た。

 ぼやけた反射の中で、俯く紫乃先輩の口角だけが、わずかに上がっている──

 

「紫乃先輩、今日もお疲れさまでした」

「……は、はくやも……おつかれ」

 顔を上げないまま、小さな声で返す。

 その声が、エレベーターの密閉された空間の中に静かに響く。

 

「またよろしくお願いします」

 そう言って軽く頭を下げると、紫乃先輩は少しだけ間を置いてから、

「……うん。……またね」

 と呟いた。

 

 ほんの一言なのに、妙に長く残る声だった。

 言葉の奥に、何かを含ませるような、熱を押し殺したような響き。

 僕はそのまま自分の階で降り、軽く手を振って別れた。

 

 エレベーターの扉が閉まる直前、紫乃先輩の視線がわずかにこちらを向いた。

 

 廊下を歩きながら、僕はため息をつく。

 今週は本当に充実していた。

 戦闘データの精度も上がり、機体の方向性も見えてきた。

 期末テストの準備もあるけれど、きっと乗り越えられる。

 

 そう思いながら部屋に入る。

 照明がつく。

 静かな部屋。

 作業机の上には昨日の資料。

 

 ──けれど、ふと違和感が走った。

 

 あれ? こんなペン、持ってたっけ? 

 キャップの色が微妙に違う。僕が使うシリーズはグレー寄りの黒なのに、これは黒にわずかに紫が混じるような、妙な艶がある。

 

 洗濯から戻したタオルは、積んだ高さで枚数がわかる。一枚……足りない? 

(いや、別に、どこかで使ったかも)

 

 玄関に置いた消臭スプレーをなんとなく手に取る。

 ノズルを軽く押すと、いつもより甘い香りが、わずかに鼻腔に残った。

(……気のせい、だよな)

 

 苦笑いして、制服をハンガーにかける。

 ベランダの外はもう夜の手前で、隣のビルの窓がパラパラ点いては消え、風が薄いカーテンを膝の高さで撫でていく。

 

(……明日からは、勉強に集中しよう)

 期末前一週間、朝からしっかり勉強する。優先度を切り替えるだけだ。

 

 コップに水を注ぎ、口をつける。

 少し、ぬるい。テーブルに置いたとき、ガラスが月光をかすかに拾って、白い筋が底に沈んだ。

 

 電気を落とす。

 薄闇に目が慣れるまでの数秒、ファンの回転が影になって天井を滑る。タオルケットを引き上げ、仰向けに息を整える。

 

(……そうだ。僕はちゃんと前に進んでる)

 

 まぶたを閉じる。

 

 僕は、そのまま眠りについた。

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