11:02 地方裁判所 ロビー
「お疲れ様、道比木検事。 そして、ありがとう。
君のおかげで、なんとか僕らの、鱒井医師が犯人だという考えを明日へ繋げられた。」
ロビーへ出ると、義門府刑事が笑顔でそう声をかけてくれた。
「もちろんだよ。 僕はずっと君の考えを信じていたから!
・・・まぁ、例の『ハテな?』が出たときはちょっと焦ったけど、それは刑事のお約束だもんね。」
「ん・・・あぁ・・・それは、まぁ、いいじゃないか!!」
どうやら刑事は、そのことにはあまり触れられたくないらしい。
「・・・そ、それより、捜査だよ!
とりあえず、裁判を明日に繋げられたけど、まだ鱒井医師が犯人だと決まったわけじゃない。
まだまだ、証拠も集めなきゃならない。 特に、必要なのは解剖記録・・・・・」
「あっ、道比木さん、義門府刑事・・・やっと見つけましたよ!」
その時、こちらへ呼びかける声がした。 あれは、レイちゃんだ!
「おぉ、君か・・・確か、七篠さんだったかな?」
「遅くなってすいません! 完成しました、解剖記録!
・・・あと、ついでに、鑑識の方々の捜査の結果も持ってきました。」
刑事が、レイちゃんの持ってきたものを受け取る。
「これは・・・すごい! これ、本当に君が調べたのか?
大学生が調べたものとは思えない。 こんなにしっかり結果を出せるとは!
いや・・・こりゃもう、プロになるのも遠い未来の話じゃないぞ!」
どうやら、レイちゃんの作り上げた解剖記録は、予想以上の出来栄えだったらしい。
刑事は目を輝かせている。
「あのさ、刑事・・・出来栄えに感動するのはいいんだけど、大事なのは中身だから・・・
早く、どういう結果が出たのか教えてくれない?」
「あぁ、そうか。 ごめんよ、道比木検事。 じゃあ、早速、結果を報告しよう。
まず、七篠レイさんが作り上げてくれた、この素晴らしき解剖記録から・・・
被害者:平院修吾(27) 死因:中毒死 死亡推定時刻:5月6日 13:00~14:00
死因の詳細:体内に混入した毒性物質が、アレルギー反応を引き起こし、心肺停止に至ったとみられる。
その他の被害者の状態に関して:腹部に長さ10㎝程の切り傷あり。(死因とは関係なし。)
その他、外傷はなし。 胃内部に腫瘍あり。(死因とは関係なし。)
体内より、麻酔薬『スーパースヤミン』の成分を検出。
死因となった毒物の詳細については、現在不明。 以上だそうだ。」
なるほど。 刑事が感動したのも分かる気がする。
確かに、レイちゃんがまとめた解剖記録は、しっかりとまとめられていた。
「次に、鑑識がまとめた、科学捜査の捜査結果だ。
事件現場の状況:手術台に、被害者が仰向けの状態。 手術台の下にメス(以下、メスAとする)が置いてあった。麻酔器具と血痕の付着したメス(以下、メスBとする)以外に手術器具には使われた痕跡なし。手術室内からはいくつかの指紋、化学物質及び血液反応を検出。
指紋について:メスA、刃崎英利の手術用手袋(右手)、手術室の扉より指紋を検出。
いずれも、真田勉のものと判明。
化学物質について:メスAより、『ソクイックα』を検出。 これは、致死性を持つ毒性物質で、遅行性。
血液反応に関して:被害者の腹部及びメスBより血液反応を検出。 それ以外は血液反応なし。
血液はどちらも、被害者:平院修吾のものと判明。
・・・ということらしい。」
「なるほど。 ・・・ということは、今日の審理で僕が証明したことはその通りだったわけだ!
他にも、色々新しい情報が得られたし、この資料すごく役に立つよ。 ありがとう、レイちゃん!」
「ほ、本当ですか!? 頑張って、時間をかけて作り上げた甲斐がありました!」
レイちゃんの顔が嬉しそうに輝いた。
「・・・じゃあ、義門府刑事、早速この資料をもとに捜査を進めようか!」
「あぁ、そうだね。 だけど、ここからは別々に捜査を進めよう。」
「えっ・・・どうして?」
「今日の裁判の最後で、裁判長は、『刃崎医師の手術着のポケットからメスが出てきた点が疑問だ』とおっしゃった。だから、この事件の真相を暴くためには、その疑問を解消すべきだとね。
だが、疑問はそれだけじゃない。
僕らは、昨日の捜査で分かったことをもとに鱒井医師を起訴した。
その理由は、物的証拠が鱒井医師の犯行を示していたからだ。
だけど、なぜ、鱒井医師は平院さんを殺害したのか? 何かトラブルがあったのか?
それとも、弱みでも握られていたのか? そもそも2人に接点はあったのか?
動機が全然分かっていないんだよ。
その辺も明らかにしていかないと、あの弁護士はそういうところまで突っ込んできて、鱒井医師の犯行を認めないと思う。」
確かに、刑事の言うことは最もだ。
「だから、ここからは、僕は刃崎医師のメスの謎も含め、物的証拠に関する捜査を進める。
道比木検事、君は、聞き込みなどを通して、鱒井医師と平院さんとの接点や今回の事件の動機となりそうなものがなかったか調べてくれ。」
「は、はぁ・・・わかったよ。」
刑事の迫力に押され気味になりながら、そう返事をすると、刑事はすぐにその場を去って行った。
なんだか、また刑事のペースだな・・・。
「まぁ、いいや。 僕も捜査を始めるか。
・・・あっ、レイちゃん、解剖記録ありがとね。 僕は捜査を続けなきゃだから、そろそろ行くね。」
そう言って、その場を去ろうとしたとき・・・
「私もついて行きますよ。」
「えっ?」
「私も道比木さんと一緒に捜査に参加します!」
「でも、もう解剖記録は出来上がったし、レイちゃんがすることはないんじゃあ・・・」
「そんなの関係ないですよ! ・・・ほら、この前助けてもらったお礼もあるし!
ここからは、義門府刑事に代わって、私が相棒です!
・・・ジャスティス君、さあ行くぞ! 正義の聞き込み調査、開始なのだっ!!!」
あの、それは、義門府刑事じゃなくて番刑事だと思うんだけど・・・
僕のことなどお構いなしで、レイちゃんは僕の腕をつかみ引っ張って行った。
13:19 追田クリニック 外科病棟 廊下
「・・・で、道比木さん、聞き込み調査ですけど、誰に聞き込みするんです?」
「うーん、それが問題なんだよな・・・。 鱒井医師と平院さんの関係性なんて、全然わかんないからな。」
「だったら、私に任せてください! こういう時は、一番偉い人に聞けば、大抵わかるものですよ!
ここで一番偉い人といえば・・・院長! あっ、ほら! あそこにいる人、院長じゃないですか?
私、ちょっと話聞いてきますね!」
レイちゃん、やけに張り切ってるな。
・・・って、待てよ! あそこにいるのは、院長じゃない! あれは・・・・・
僕は注意を促そうとしたが、時すでに遅し。
レイちゃんは、例のニセ院長のおじいさんに話しかけてしまっていた。
「すいません、院長さんですよね? ちょっとお話し伺いたいんですけど、いいですか?」
「!?・・・こ、これはまた、可愛いおなごじゃな!
お話し? そんなことより、わしがちと診察を・・・・・」
「えっ!?」
「まずは、スリーサイズを測らs・・・」
スパーンッ!!!
その時、強烈な炸裂音が響いた。
「貴様、何をしとるんじゃ! 昨日、もう二度とそんな下らんことはせんと誓ったんじゃなかったんか?
あれは嘘じゃったんか? 嘘つく患者は、わしらはもう面倒見んぞ!
何なら貴様をこの病院から追い出してもいいんじゃぞ! それでもいいんか? あぁ?」
頭を押さえるおじいさんの後ろには、スリッパを持った鬼の形相の医師がいた。
・・・って、あれは、副院長の五河医師!?
「ひ、ひぇぇぇ!!! すんませぇん!!!」
おじいさんは血相を変えて逃げていった。
それより、あんな呑気だった五河医師がこんな態度に出るとは、そっちのほうが驚きだ。
「五河先生、なんか、ありがとうございました。」
「!? け、検事殿!
こ、これは、見苦しいところをお見せしてしまったようじゃの・・・。
あの患者は、わしがこの病院に来たのと同じころからいる患者での。
担当したことはないから、病状については知らんが、いつもあんなことをしておっての・・・困ったもんじゃよ。」
「は、はぁ・・・そうですか。」
「ところで、院長にお話しが・・・とか言っておったの。 例の事件のことかの?」
「あっ、そっか! そのいかにもなしゃべり方! 真っ白い髪の毛とひげ!
あなたが院長ですね! 是非お話を・・・」
「いや、わしは“副”院長じゃ!」
副を強調する意味あるか?
「・・・じゃが、まぁ、一応院長とはつくし、今日の裁判で迷惑かけた償いもせねばならんからの・・・。
話くらい聞いてやるぞ。」
「本当ですか?
じゃあ、被告人の鱒井先生と被害者の平院さんの関係について知ってることを教えてください!」
レイちゃん、聞き方がストレートだな・・・。
「む・・・そのことか。 なるほど・・・いや、知っているならわしも話してやりたいんじゃが・・・
わしは副院長という役職柄、患者や他の医師と直接に関わる機会はほとんどないのじゃ。
同期ならまだしも、鱒井医師は若手医師じゃ。 わしも今回の手術で会ったのがほとんど初対面じゃった。
患者の平院さんに関しても、1回も診察したことはなかった。
すまんが、わしには2人の関係性どころか、それぞれがどのような人物なのかも把握できていないんじゃよ。」
「そ、そうですか。」
張り切っていた分だけ、何も得られなかった喪失感は大きいようだ。
レイちゃんはがっくりと肩を落とした。
「じゃあ、誰か他に、彼らの関係性を知っていそうな人とか知りませんか?」
レイちゃんはショックで打ちひしがれているようなので、今度は僕が質問した。
「そうじゃのう・・・。 いるには、いるんじゃが・・・」
「誰です?」
「さっき、院長の真似事をしていたあの老人じゃ。
さっきも言ったが、彼はここに長い間おる。 おまけに、人間観察が趣味らしくての。
この病院関係の人物のことについては、ほとんど知っておる。
おそらく、鱒井医師と平院さんの関係も知っているんじゃなかろうかな。」
よりによって、あの人かよ。
だが、情報を得るためなら、人を選んではいられない。
よし、早速あの老人に聞き込みに行こう!
「嫌です! あの人だけは嫌! あの人、私の胸に触ろうとしたんだから!」
・・・だそうです。
前言撤回。 あの老人にだけは、聞き込みしません。
じゃあ、とりあえず、あの人の所にでも行くか。
13:37 外科病棟 診察室①
「失礼します。 刃崎先生、いらっしゃいますか?」
「あぁ、君は、道比木検事さん! どうぞ、入ってください。」
「今日の裁判は、散々でしたね。 何も関係ないのに、犯人呼ばわりされちゃって・・・。」
「ははっ、確かに参りました。 でも、私が紛らわしい行動をとったのも疑われた原因ですからね。
とりあえず、道比木検事、君のおかげで無実を認められた。 感謝します。」
「いえいえ。 僕は、鱒井医師が犯人だということを立証するのに必死だっただけで・・・」
・・・って、こんなやり取り、レイちゃんの時もしたよな?
「・・・で、その鱒井医師に関してなのですが、被害者の平院さんとの関係について、先生は何かご存じないですか?
よかったら、そのことについてお話をお聞きしたいと思って伺ったのですが・・・」
「なるほど、そういうことですか。 関係というと、どういう関係のことでしょうか?」
「今回の事件に至る動機となるような、2人の個人的なつながりと言いますか・・・接点と言いますか・・・
そんなところを知りたいのですが。」
「うーん・・・私の知る限りでは、2人に個人的なつながりはなかったと思いますね。
あくまで、医師と患者の関係でしかなかったと思いますよ。」
「そうですか・・・。」
「ただ、医師と患者という2人の関係は結構長く続いている関係なんですよ。
前にも言った気がするが、今回の被害者、平院さんという人は、異常なまでに健康を気にする人でね。
ちょっとでも、体に不調を感じると毎日のように病院に通ってきていましたね。
まあ、大抵の場合は、内科とか耳鼻科とかが診察して帰って行ったんだが、ここ外科に送られてくることも結構あってね。 初めて、彼が外科を訪れたのは3年前だったと思うよ。
あの時は、何の症状だったかな・・・・・あっ、ちょっと待っててくださいね。」
そう言うと、刃崎医師はその場を離れ、向こうの書類棚の方で何かを探し始めた。
「・・・ああ、あった、あった! そう、盲腸だ!
あの時はまだ、平院さんの性格を知らなかったから、『盲腸なんて軽い病気のはずがない! もう一回、腹の中を調べてくれ!』って言われたときはどうしようかと思ったよ。」
「・・・ってことは、その時も執刀したのは刃崎先生だったんですか?」
刃崎医師との話に夢中になり、その存在を忘れていたので、レイちゃんが急に話に割り込んできて、僕は驚いた。
「あぁ、そうさ。 これは、平院さんのカルテだが、今までの手術とその担当医が全て書いてある。
・・・ほら、ここに私の名前が書いてあるだろう?」
レイちゃんが興味津々で覗き込む。
「あっ、本当だ! ・・・鱒井先生の名前もありますね。
・・・って、あれ? 今までの手術、執刀医はいろんな人が担当しているのに、麻酔医はいつも鱒井先生だったんですね!」
「うん、そのとおり。 鱒井クンは3年間ずっと平院さんの手術の麻酔を担当してきたんだ。
まぁ、そもそも、麻酔医は人数が少ないからね。
私がさっき、2人は医師と患者の関係が長いと言ったのはそういう意味だ。
・・・3年前といえば、鱒井クンはちょうど医師になりたての頃だから、彼は医師になってからずっと平院さんを担当してきたことになるな。」
「なるほど・・・3年間もずっと担当するなんて、まるで介護ですね!」
「か、介護ぉ!? レイちゃん、そりゃおかしいでしょ!
3年間って言ったって、365日つきっきりなわけじゃないしさ・・・。」
「いや、あながち間違ってはいないですよ。
平院さんは、2か月に1度ペースで手術を受けていたからね。
まぁ、ほとんどが必要のない手術なんだが、彼がどうしてもと言うもので仕方なく・・・。
手術後の経過観察なんかも、執刀医に比べて仕事の少ない鱒井クンが行うことも多かったし、介護みたいなものだったかもしれないな。」
2か月に1度って、ヘアカットじゃないんだから・・・。
でも、ということは・・・
「・・・ということは、2人の関係はあくまで医師と患者の関係であったとしても、その関係はかなり密接なものだったということですよね?」
「まぁ、そうでしょうね。」
「なら、平院さんがこの病院にいる時に、2人の間に何かがあったんじゃないですか?
2人の間に何か、問題は思い当たりませんか? 今回の事件の動機になるような・・・」
「・・・悪いが、私には、何も思い当たりませんね。
だが、確かにその可能性はあるかもしれません。
気になるなら、調べてみてください。 これはあなた方に差し上げますから。」
そう言って、手渡されたのは、平院さんのカルテだった。
「えっ? こんな大事なもの、いいんですか?」
「構わないよ。 もう、平院さんを診察することはできませんからね。
私はこれから回診をしなければいけないから、話に付き合う時間がもうないが、そこに書かれた別の担当医にも話を聞けば、何か情報を得られるかもしれない。
・・・じゃあ、私はこれで。」
そう言うと、刃崎医師は僕らに背を向け、診察室を出ていった。
その時、はためく白衣のポケットにキラリと光るものを見つけた。
あれは、もしや・・・・・
僕は、そこで、刃崎医師に聞くべきもっと重要なことを思い出した。
だが、再び声をかけようとした時にはもう、刃崎医師の姿はなかった。
14:01 手術室前
「あれ、手術室の中に誰かいますよ、道比木さん!
ここって事件現場の手術室ですよね? もしかして、事件関係者じゃないですか?
何か情報が得られるかもしれません! 行ってみましょうよ、道比木さん!」
「えっ、ちょ・・・待ってよ、レイちゃん!」
まずは、平院さんのカルテに書かれている他の執刀医の先生の話を聞きたかったのに・・・
レイちゃんがもう中に入って行ってしまったので、仕方なく僕も後に続いて、手術室の中に入った。
「失礼します!
私たちは、検事とその助手ですが、今回の事件について、お話聞かせてくれませんか?」
「!? うわっ、びっくりしたぁ!!!」
どうやら、彼は他のことに集中していたらしく、僕らの存在に気がついてなかったらしい。
レイちゃんに声をかけられ、大げさな驚きを見せた。
そこにいたのは、真田研修医だった。
「やぁ、真田さん。」
「あっ、あなたは、今日の裁判の検事さん! そこの彼女はえーっと・・・・・」
「初めまして。 私、七篠レイです。 今は道比木検事の助手で、一緒に捜査してます。」
「あぁ、なるほど。
あっ、検事さん、今日の裁判ではご迷惑おかけして、すいませんでした。
もしよかったら、弁護士さんや裁判長さんにも、真田が謝っていたと伝えておいてくれませんか?
なんか、あそこまでしちゃったら、合わせる顔がない気がして・・・・・」
「いや、気にしなくていいですよ。 あなたの証言のおかげで、刃崎医師の無実を証明できたんだから!
あなたは、尊敬する刃崎医師のことを信じて疑わなかった。 立派なことですよ!」
「そう・・・ですかね?」
「ところで、真田さんはここで何してたんですか?
僕らの存在にも気づかないくらい、何かに集中してたみたいですけど・・・」
「あぁ。 この病院にいられるのも、今日が最後ですからね。
刃崎先生と同じ場に立てたこの手術室の思い出を、目に焼き付けておこうと思いましてね。」
「最後って・・・どういうことですか?」
「彼は研修医なんだよ、レイちゃん。
昨日が研修の最終日だったらしいから、この病院からは去ることになるんだよ。
そうですよね、真田さん?」
「あぁ、その予定だったよ。 でも、残念ながらそうはならなかった。
今日の裁判、ここの院長が傍聴しに来ていたみたいでね。
僕の証言で、色々と自分の失態を暴露しちゃったから、院長から研修の修了を認めてもらえなかったんです。 まぁ、あんな失敗ばかりじゃ、医者になっても危ないだけですからね。
だから、もう一度、大学に戻ってやり直しです!」
そ、そういうことだったのか。
仕方がないけど、真田さんは真田さんなりに、一生懸命頑張っている気がするから、なんだかかわいそうだな。
「でも、後悔はしていませんよ!
この研修で、刃崎先生という素晴らしい医師に出会えた。
そして、その刃崎先生を僕の証言で救えたんだ! それなら、僕の医師への道がやり直しになったってなんてことはないですよ!
刃崎先生との思い出を思い出せば、何度失敗したって諦めずに医師を目指せる気がします!」
「そんな風に思えるなんて、刃崎先生はすごく立派なお医者さんだったんですね!
いいなぁ・・・私にも、そういう尊敬できる目標の検視官がいたらなぁ・・・」
「あっ、そういえば、レイさん・・・でしたっけ? 僕に聞きたいことがあるとか、ないとか?」
「あっ、そうそう! つい、今のお話に感動して、忘れるところでした。
えーっと、聞くことは・・・・・何でしたっけ、道比木さん?」
自分から勝手に手術室の中に入っておきながら、結局、僕に振るのかよ!
「鱒井医師と平院さんの関係性だよ、レイちゃん!」
「あぁ、そうそう! 2人の接点について、真田さんは何か知っていませんか?
真田さんも、今回の手術を担当したんですよね?」
「まぁ、したといえばしたけど、僕は手術器具を渡すだけの役割だったからね。
手術自体には関わったけど、平院さんの診察とか、事前の打ち合わせとかには一切参加していないんですよ。 だから、詳しいことは全然知りません。」
「・・・ってことは、2人とは手術以外では全く関わりがなかったということですか?」
「いや、そういうわけでもないよ。
まぁ、平院さんのほうは、カルテ等のデータで状況を把握しただけで、実際会ったのは手術のときが初めてだったけど、鱒井先生とは結構親しくさせてもらってました。」
「親しく?」
「えぇ。 鱒井先生と僕って年が近いし、鱒井先生も病院の中では若手で、まだまだ他の医師たちと対等な立場にはなってないみたいで、僕みたいな研修医といるほうが気楽なんですって。
だから、空き時間とかは結構、一緒に過ごすことが多かったですよ。」
「へぇ・・・友達みたいだったんですね。」
「友達っていうと、なんかおこがましい気がするけど・・・・・
あっ、ちょうど、部活の先輩と後輩の関係って言った方が近いかも!」
「まぁ、要するに、そんなに隔たりがなかったってことですよね。
それなら、結構、込み入った話とかもしたんじゃないですか?」
「込み入った話・・・ですか?
うーん、まぁ、病院内の出来事の愚痴みたいな話は何度か聞かされましたね。
院長の真似をする迷惑な患者がいるとか・・・副院長は話がとろくて何言ってるのかわかんないとか・・・
どうしても自分の非を認めない上司がいてムカつくとか・・・なんで、あんなに頑張ったのに俺の努力を認めてくれないんだとか・・・どうして、あいつは重症でもないのに毎日毎日通ってくるんだとか・・・・・
思い出してみると、結構いろいろ言ってましたね(笑)」
・・・ん? ちょっと待てよ。 もしかして・・・
「真田さん、今、話してくれた、鱒井医師の愚痴・・・最後は何て言いました?」
「え? えーっと、『どうして、あいつは重症でもないのに毎日毎日通ってくるんだ』・・・ですか?」
「そう、そこだ!」
「ど、どうしたんですか、道比木さん? 急に大声出して・・・」
「その言葉に出てくる“あいつ”って、平院さんのことじゃないですか?」
「!? ・・・言われてみれば、そうだったのかもしれません。」
「真田さん、思い出してみてください。
鱒井医師は、他にも平院さんと思われる人物について、何か言ってませんでしたか?」
「そうですねぇ・・・
あっ、『俺は、あんなやつの手術をするために医者になったんじゃない。もっと、本当に命を救ってほしいという思いが伝わってくる患者の手術をしたいんだ!』とか言ってましたね。
あとは・・・『そもそも、俺は麻酔医なんだ。 麻酔医ってのは、手術の際に麻酔を行う専門家だ。
なのに、なんでその俺が、あいつの経過観察までしなきゃいけないんだよ!』とかも言ってた気がします。」
「なんか、これを聞く限り、鱒井医師は平院さんを担当するのが相当嫌だったみたいですね。」
「レイちゃんもそう思う? 実は、僕も同じことを感じてる。
平院さんは、非常に健康を気にする性格だと聞いている。 このカルテを見てわかる通り、彼は2か月に1度ペースで手術を受けている。 本当に健康が気になってしょうがなかったんだろうね。
彼としては、身体に不調があるから、病院へ来た。 そして、手術を受けた。
ただ、それだけだったんだろうけど、鱒井医師にはそれが気に食わなかったんだろうね。
大した症状でもないのに、何度も通院して、手術を受ける平院さんが、鱒井医師や他の医師をおちょくっているように感じたのかもしれない。」
「・・・ということは、そう言った理由からの平院さんへの恨み・・・それが、今回の事件の動機ってことですね!」
「いや、そう言い切ってしまうのは早いよ、レイちゃん。
でも、動機につながる手がかりは、これで何となくわかった気がするね。
ありがとうございます、真田さん! あなたのおかげで新しい情報が得られました。」
「あっ、こんなのでよかったんですか?」
「えぇ、十分です。 じゃあ、僕らは他の方からもお話を聞きに行きますのでこれで。
真田さんも、医師になるために頑張ってくださいね!」
そう言って、立ち去ろうとしたとき・・・
「待ってください、検事さん!」
「・・・まだ、何かありますか?」
「その・・・今日のお礼、言ってなかったなと思って・・・」
「お礼?」
「今日の裁判で僕、あんなにふざけた態度を取ったのに、検事さんだけは、僕の証言を信じてフォローしてくれましたから。
検事さんは、刃崎先生と同じくらい素晴らしい人です。 本当に、ありがとうございました。」
な、なんか、そんなこと言われると照れるな。
「・・・そうだ! これ、役に立つかはわからないけど、検事さんたちに差し上げます。
他には何もできないですけど、一応、今日のお礼です。」
「・・・これは?」
渡されたのは、1枚の写真だった。
「昨日の朝、ナースステーションで撮った写真です。
平院さんの手術の担当医のメンバーで撮ったんですよ。
手術の成功と、僕の研修修了の前祝いを兼ねてね。 まぁ、どっちも叶わなかったんですけど・・・
この研修の大事な思い出の品ですけど、事件の解決に役立つなら検事さんにあげますよ!」
なんだ・・・重要な証拠かと思ったが、どうやら違うようだ。
確かに、今回の事件関係者が勢ぞろいだが、仲良さそうに肩を並べて笑顔で写っているだけの普通の写真だ。
真田さん、気持ちは嬉しいけど、この写真は役に立ちそうにはないよ。
だが、そんなことには気づいていない彼は、さらに続ける。
「親しくしてもらって、こんなこと言うのも罰当たりかもしれませんけど、僕も鱒井先生が犯人で間違いないと思います。 今、思い出したんですけど、先生、変なことも口にしてましたし・・・。」
「変なこと?」
「はい。 『君と俺が逆だったらよかったのに・・・。 君には医師になる熱い思いがあって、俺には医師としての技術がある。 それが逆だったらよかったのにな・・・。』 みたいなことです。」
どういう意味だろう?
「とにかく、あの状況で平院さんを殺せたのは、鱒井先生しかいませんよ。
・・・あっ、なんか引き留めて、捜査中断させちゃったみたいですいません。
僕が話すのはこれでおしまいです。 どうぞ、次の聞き込みとかに行ってください。
僕も、検事さんが明日の裁判で勝てるように応援していますから!」
「あぁ、うん。 ありがとうございます。 それじゃあ、今度こそ、これで・・・」
笑顔で見送る真田さんのもとを去りながら、僕は、鱒井医師が彼に言ったという意味深な発言が気になっていた。
14:26 外科病棟 診察室③
「さーて、次こそは寄り道せずに、お目当ての場所に行くよ!」
「・・・な、何ですか、その言い方は? まるで私が悪いみたいな言い方じゃないですか!」
「だって、そうだろレイちゃん。 僕らは真田さんに話を聞く必要はなかったんだから。」
「でも、真田さんに話を聞いたおかげで、色々な情報が得られましたよね?
無駄な時間じゃなかったと思いますけど?」
「ま、まぁ、それはぁ・・・」
「ほら! やっぱり、私の判断は正しかったってことでしょ?」
勝ち誇った顔をされ、下手に反論するんじゃなかったと後悔した。
「・・・それより、ここだよ。 お目当ての先生がいるのは・・・。」
「あっ、ごまかしたぁ! ・・・まぁ、いいですけど。
えーっと、出雲 成功(いづも なりたか)医師ですね。」
「うん、出雲医師は、1番多く平院さんの手術を担当している。 何か知っている可能性は大いにあるよ。」
「じゃあ、さっそく行ってみましょう! ・・・失礼しまーす。」
「おぉ、君たちか!」
・・・って、あれ???
「あれ、道比木さん、この人が出雲医師ですか?
私、この人にはさっきも会った気がするんですけど・・・・・」
「いや、違うよ。
・・・なんで、あなたがいるんですか? 五河先生っ!!!」
そこには、お馴染みの呑気な医師が腰かけていた。
「そんな怒鳴り声を上げんでもいいじゃろうが。 わしは、この診察室の担当だから、いるだけじゃ。」
「この診察室の担当って・・・おかしいでしょ? この札に『担当医:出雲成功』って書いてあるんだから!」
「ほれほれ、落ち着きなさい。
確かに、ここの担当は、普通は出雲医師じゃ。 じゃが、今日は、出雲医師は出張で別の病院に行っておる。 だから、わしが“副”担当医として、今日はここにいるわけじゃ。」
なるほど、そういうことだったのか。
(しかし、“副”執刀医だの、“副”担当医だの、この人やけに自由が効くよな。
本当に、副院長として仕事してるのか? 単なる暇人なんじゃあ・・・)
「要するに、今日は出雲医師から情報は聞き出せないってことですよね。
なら、もうここに用はないですよ。 行きましょう、道比木さん!」
「ほれほれ、そう急ぎなさるな。 全く、最近の若いもんはせっかちでいかんのぉ。」
「えっ、でも、出雲医師はいないんでしょう?」
「・・・君たち、その急いでいる様子だと、まだあの患者の話は聞きに行ってないようじゃのう。」
「え? あの患者って・・・・・・・・・・あっ! あの変なおじいさんっ!
嫌です! どんな情報を持っていようが、あの人の所にだけは行きませんからね!」
「やっぱり、行ってないんじゃな。 なら、わしが教えてあげるとしようかの。」
「えっ?」
「なんじゃ? 嫌か?」
「いえいえいえ! あのおじいさんの所へ行かずに情報が得られるなら、願ったり叶ったりですよ!
ですよね、道比木さん?」
「うん、そうだね。 五河先生、ぜひ聞かせてください!」
「よし、わかった。 それでは、教えるとしよう。
あの患者が言うにはじゃな、今回の事件の背景には、2人のそれぞれの家庭環境に原因があるというのじゃ。
・・・まず、被告人の鱒井医師のほうじゃが、彼は代々続く医師の家系に育ったそうじゃ。
確か、ひいじいさんが内科医、じいさんが整形外科医、そして、父親が外科医だったかの?
だから、鱒井医師も当然、医師になることを・・・願わくば、父親と同じ外科医になることを望まれていたそうじゃ。
しかし、鱒井医師には別の夢があった。 医師にはなりたくなかったそうじゃ。
じゃが、代々続く医師家系の道を途絶えさせることは、一家の名に泥を塗るに等しい行為・・・
そう父親に叱責され、医師以外の道を選ぶことはできなかったそうじゃ。
結局、彼は、麻酔医となったわけじゃが、麻酔医は、麻酔に特化した専門の医師ということで他の医師とは異なる。 その点で、医師は医師でも、代々続く医師の道とは少し違う道を選んだぞ!という、彼のせめてもの反抗だったんじゃろうな。
・・・対して、被害者の平院さん。 実は彼も、父親が医師らしいのじゃ。
といっても、鱒井家のように代々続く医師家系ではなかったらしいが、父親は自らの診療所をつくって運営していたらしいから、結構裕福だったらしいの。
そして、後々は、息子である平院さんに、その診療所を引き継いでもらうつもりだったらしい。
じゃが、鱒井医師とは異なり、平院さんは医師にはならなかった。
鱒井家とは異なり、医師家系という看板もなかったためか、父親は息子の決断をあっさり認め、診療所は、今、診療所に勤務している別の医師に引き継ぐことに決めたそうじゃ。
とはいっても、最初は息子を医師にしたいと思っていたわけじゃから、平院さんは父親から医学の知識を学んでいたそうじゃ。
そして、それが平院さんの例の性格の原因になるんじゃな。
医学の知識を得たからこそ、些細な身体の不調にも敏感になり、病気ではないかと疑ってしまう。
そして、医療現場では基本となっている“早期発見・早期対策”を実行するために、毎日のように通院したということじゃ。
・・・さてと、ここまでの背景を踏まえて、わしが考える今回の事件の真相じゃが・・・・・
鱒井医師も平院さんも、医師の息子という同じ境遇にあった。
しかし、一方で医師になることを強要される者がおり、また一方で、医師とは別の道を選ぶことを許された者がいる。
おそらくこの事件、平院さんが医師ではない道を選べたことに対する、鱒井医師の嫉妬心・・・これが動機だと、わしはにらんでおる!」
五河医師はやっと口を閉じた。
あいかわらず、話す速度が遅い上に、内容が長い!
以前、M検事と捜査を行った際に、長々とマシンガントークを繰り出す女性に出会ったことがあるけど、
あっちのほうが、話す速度が速いだけまだマシだったな。
「へぇ~、五河先生お詳しいんですね!
こんなにいろいろ知ってたなら、最初から教えてくれたらよかったのに!」
「じゃから、わしは最初かr・・・じゃなくて・・・んー、まぁ、わしも忙しいもんでな・・・・・」
そうは見えないんだけどな。
「でも、五河先生。 あのおじいさんから聞いただけにしては、なんか詳しすぎませんか?」
僕の言葉に、五河医師の眉がひくひくと動いた。
「ほ、ほら・・・言ったじゃろ? あの患者は、ずっとこの病院にいるんじゃ。
何回も同じ話を繰り返すもんだから、覚えようとせんでも、覚えてしまっての。」
・・・なんか、怪しいんだよなぁ。
・・・・・あっ! そういえば!
「五河先生、さっき、最後に、『ここまでの背景を踏まえて、わしが考える今回の事件の真相じゃが』とか言いましたよね?
この話は、患者さんから聞いた話じゃなかったんですか?」
「・・・・・う・・・うぅぅ・・・いや、そうなんじゃが・・・・・・」
ガチャリ・・・
その時、診察室の扉が開き、白衣の男性が中に入ってきた。
「・・・!?
あの、あなた方は、私の診察室で何をしているのですか?」
「えっ? 何って・・・事件に関する捜査ですけど。
出雲医師がいないということなので、代わりに五河医師のお話を聞いていたところで・・・・・」
「はい? 出雲は私ですが・・・」
「えっ?」
・・・ということはまさか!?
「あなた、五河先生じゃないですね! 院長の次は、副院長の真似ですか!」
「く、くっそー! ば、ばれてしもうたか!!!」
やっぱりだ。 どおりで、話が詳しいわけだ。 2人の事情を知っていた本人なんだもん。
「じゃが、ここまできたら、レイちゃんのスリーサイズを測るまで、わしゃ病室には戻らんぞぉ!!!」
「え? え!? えぇぇぇぇぇ!!!!!
み、みみみ・・・道比木さん! 逃げますよぉ!!!」
レイちゃんは、僕の腕を掴むと、全速力で診察室を飛び出した。
15:03 ナースステーション前
「待てぇ~・・・待つんじゃ、レイちゃん~!」
結構な距離を逃げてきたが、おじいさんはペースも落とさずに、僕らのスピードについてきている。
本当に、あの人、病人か?
「こうなったらもう、私の七つ道具を使うしかないですね!」
えっ? 七つ道具???
レイちゃんは、ショルダーバッグの中をあさり始めた。
「・・・まずは、これ! 七つ道具その1・・・ルミノール試薬!」
しゅっ、しゅっ!
レイちゃんは霧吹きをおじいさんに向かって振りかけた。
人に振りかけて大丈夫なのか?
「うおっ! なんじゃこれは???
!? もしや、レイちゃんの香水じゃな! うほほ、レイちゃんの香水、いい香りじゃ!」
どうやら、大丈夫のようだ。
というか、興奮してさっきより、走る速度が速くなっている。
「!? ・・・げっ、逆効果だったぁ?
・・・な、なら、七つ道具その2! アルミ粉でどうだ!!!」
レイちゃんは、今度は白い粉末を、おじいさんに向かって振りまいた。
あれって確か、指紋を検出するための道具だよな?
「ぬあっ! ま、前が見えんぞ!」
おじいさんは、その場でじたばたし始めた。
上手くいったか?
「・・・ん? この粉は、ふぁうんでーしょん、とかいうものかの?
これも、きっとレイちゃんのお化粧品じゃ! うしし、わしゃ、ツイてるのぉ!!!」
なんか、また元気になっちゃったよ・・・。
「あれ、これも逆効果ぁ?
・・・な、なら、その3! 検視ファイル!!!・・・は、使い道がないな。
じゃあ・・・その4! 検視用手袋!!!・・・じゃなくて・・・・・
あっ、これだ! 七つ道具その5! 珍生物のタエルくん!!! いってらっしゃい!」
そう言うと、レイちゃんは、カエルに似た、奇抜な色の生き物を投げつけた。
・・・てか何で、ショルダーバッグの中から生き物が出てくるんだよ?
「おや、こりゃ珍しい色のカエルじゃな!
・・・もしや、これは、レイちゃんからわしへのプレゼントかの?
嬉しいのぉ! なら、わしもレイちゃんにプレゼントを・・・・・」
「い、いらない、いらない! なんで、どんどん近寄ってくるのよぉ(涙)
タエルくんを気持ち悪がるかと思ったのに・・・」
レイちゃんの行動は、ことごとく裏目に出ていた。
もう、いっそのこと、おじいさんの好きなようにさせてあげた方が楽なんじゃないかな?
そう思ったとき、レイちゃんが思いもよらぬ最終手段に出た。
「こうなったら、最終兵器! 七つ道具、その7だ!!!」
「な、ななな・・・何をする気じゃ、レイちゃんよ!?」
今まで、能天気だったおじいさんも、この時ばかりは、動揺を見せた。
それもそのはず。
距離はあるものの、レイちゃんはバッグから取り出したメスを、おじいさんの方へ向けたのだ。
おそらく、検視用のメスだろうけど、さすがにそれはまずいんじゃあ・・・
「これ以上、私に近づかないでください! 危険ですからね!」
止めるように言った方がいいだろうけど、どうしよう。
そう悩んでいると・・・・・
「・・・お嬢さん、例え、メスといえども、人に向けたら銃刀法違反だよ。
そのメス、今すぐ離さなければ、僕の相棒、ニューナンブ式22口径のこの銃が火を噴くよ。」
後ろから、誰かの声が聞こえた。
その声に気圧されたのか、レイちゃんはメスをバッグにしまった。
おじいさんも、銃を見て驚いたのか、気が付くと、かなり遠くまで逃げていて、もう戻ってこなかった。
しかし、こんなセリフを吐くのは一体・・・・・
・・・えっ? 義門府刑事?
「やあ、道比木検事、久しぶり! 一度、こういうセリフ言ってみたかったんだよねぇ~笑
・・・あっ、ごめんね、七篠さん。 銃なんて突きつけちゃって・・・」
「あ・・・いや・・・私も、メスなんて取り出しちゃって、すいませんでした。」
「ありがとう、義門府刑事。
君が来てくれたおかげで、迷惑な患者を撒くことができたよ。
でも、いきなり銃を突きつけるなんて、それこそ銃刀法違反じゃないか?」
「まぁ、許してくれよ、道比木検事。
君らを探しに行こうと、そこのナースステーションから出てきたら、修羅場っぽくなってたから、つい・・・」
「えっ? 僕らを探しに? ・・・ってことは、例のメスの件、何かわかったの?」
「あぁ、わかったよ。 それと、他にも何点か・・・」
「おっ、さすがは、刑事さんですね! 早速、教えてください!」
「あぁ。 じゃあ、まずは、午前中の裁判で疑問が残った刃崎医師のメスに関してだ。
刃崎医師本人に迫ったところ、あれは自分が手術前から密かに隠し持っていたものだと、しぶしぶながら自供してくれた。」
「な、なんだって!?」
僕はおもわず、声を上げてしまった。
「・・・ということは、刃崎医師はもしかして、今回の事件が起こることを知っていたってこと?」
「それは、僕も気になったから聞いてみた。
すると、どうやら、今回の手術で殺人事件が発生すると特定はできていなかったらしい。
ただ、数週間前から、何者かが手術器具に細工をして、手術を失敗させようという気配を感じていたらしいんだ。 資料をもらってきたけど、事件日から数週間前にかけて、手術失敗に至るほどではないが、ミスが目立っていることがわかる。
刃崎医師はこれが意図的なものだと、考えたみたいだ。
だから、悪いとは思いつつ、患者の命を救うため、細工のされていないメスを自分で用意したということらしい。」
なるほど。 確かに、刃崎医師は、真田さんから渡されたメスに毒が塗られている危険を感知したから、自分の用意したメスを使ったんだもんな。
「ん? でも、ということは、鱒井医師も刃崎医師と同じだった可能性が出てくるってこと?」
「どういうことですか、道比木さん?」
「僕らは、麻酔薬に毒物が混入していたことが、被害者の死因だと考えている。
そして、その麻酔薬を被害者の体内に入れたのは、麻酔医の鱒井医師だから犯人は鱒井医師だという考えだ。
でも、その毒物が混入した麻酔薬も、鱒井医師ではない何者かが用意していたのだとしたら・・・」
「鱒井医師は犯人じゃないってことですか!
えっ! でも、そうしたら、道比木さんは今回の裁判、負けってことになっちゃいますよ!!!」
「七篠さん、落ち着いて! これはあくまで可能性だから。
それに、この可能性を認めたら、犯人の思う壺かもしれない。」
「えっ? どういうことですか?」
「刃崎医師に渡されたメスに、毒物が塗られていたのは、午前中の裁判で明らかになっただろ?
そして、刃崎医師はそのメスを使わなかったことから、毒を塗ったのは刃崎医師以外の何者か・・・
これを、鱒井医師の使用した麻酔薬について考えてみると、司法解剖の結果から言えば、確かに被害者は麻酔薬に混入した毒物の作用で死亡している。
でも、この麻酔薬を用意したのが鱒井医師ではない何者かであると認めてしまえば、刃崎医師のメスの件と同様に、鱒井医師は犯人ではないことになってしまう。」
「じゃあ、どうすれば・・・」
「あくまで、僕らはその何者かが、鱒井医師自身であったと立証しなければならないということだね、義門府刑事?」
「あぁ、そういうことさ。
これはまだ憶測だが、おそらく刃崎医師の毒付きメスも鱒井医師が用意したんだろう。
刃崎医師がそのメスを使ってしまえばラッキー、使わなくても、自分も刃崎医師同様にはめられたと主張する魂胆があったんだろう。
そして、おそらく、明日の裁判ではそう主張してくるだろうね。」
「く・・・刃崎医師の無実を証明したからと言って、即座に鱒井医師が犯人だとは断定できないのか。
あっ、ところで刑事・・・他にも分かったことがあるって言ってたけど?」
「ああ、そうそう。 他にも2点ほどね。
実は、いい情報と悪い情報とそれぞれ1つずつなんだけど、どっちから聞きたい?」
「じゃあ、悪い方から!」
僕が答える前に、レイちゃんが答えてしまった。
「わかったよ。
さっき、七篠さんが渡してくれた解剖記録から、被害者は体内に混入した毒物によって死亡したと判明しただろ?
そして、メスに付着した毒物は犯行には関係なかったと証明されたから、被害者を死に至らしめた毒物は麻酔薬に混入していたとしか考えられない。
だけど、その毒物が何かを特定できていなかったから、鑑識に再調査してもらっていたんだ。
それで、一応結果が出たんだけど・・・」
「どうだったの?」
「結局、何かはわからなかった。
・・・というか、毒性を有する物質が全く検出されなかったらしいんだ。」
「えっ、それは、一体どういうこと?」
「わからない。
今回の麻酔は、注射器のような器具を使用して行われたらしいんだけど、その器具に残っていた麻酔薬がもう微量しかなかったから、たまたまその中には毒物の成分が含まれていなかっただけかもしれない。
とにかく、再調査の結果、麻酔薬『スーパースヤミン』に含まれている成分しか検出できなかったということだ。
一応、鑑識にはもう少し調査を続けさせているけど・・・・・」
「わかった。 それで、いい方の情報というのは?」
「あぁ。 それは、このメスのことさ。」
「そのメスは・・・」
刑事が取り出したメスには見覚えがあった。
「午前中の裁判で、曽口弁護士が証拠品として提出したメスさ。
裁判後は裁判長が管理していたみたいだけど、再調査のために借りてきたんだ。
・・・実は、このメスから面白いことがわかった。
このメスの持ち手の部分に・・・・・・・」
「あら、刑事さん、まだいらっしゃったの?」
その時、突然、後ろから女性の声がした。
「あぁ、石野さん。 先ほどは、事件に関するお話しありがとうございました。
今、偶然ここで道比木検事と合流したもので、お互いの捜査結果を報告していたところです。」
そうか。 彼女は、今回の手術の担当者の1人・・・看護師の石野香織さんだ。
昨日の捜査時に会ったっきりだったから、その存在をすっかり忘れていた。
「あっ、そうなの。
・・・あれ? それ、うちのメスよね? どこかに落ちてたのかしら?
刑事さんが拾ってくれたのね。 ありがとう。 私が戻しておくわ。」
そう言うと、石野看護師は、刑事の手からメスを受け取り、去って行った。
「あっ・・・いや・・・それは・・・・・あーあ。 行っちゃったよ・・・。」
刑事はがっくり肩を落とした。
「ど、どうするんだよ! あれ、大事な裁判の証拠だろ?
早く、取り戻さなきゃ! ってか、他のメスと混じったら、見分けがつかなくなっちゃうよ!」
僕は、目の前で起きた出来事に焦りを感じた。
だが、そんな僕に反して、刑事は意外に冷静だった。
「大丈夫だよ。 裁判所からの持ち逃げを防止するために、借りる時にGPSセンサーを取り付けられたから。
メスがどこにあるかはすぐに分かるし、例え、他のメスと混じっても、センサーを目印にすれば区別できる。 後で、事情を話せば、すぐに取り戻せるさ。」
「なんだ。 それなら、安心!」
「いや、そうでもないんだ。 別の意味でまずい。
・・・写真を撮っておいたのが、せめてもの救いかな。」
「え? どういうこと?」
意味の分からない僕に対して、刑事は1枚の写真を見せた。
「さっきの話の続きだけど・・・
これは、さっきのメスの写真だ。 ここに、ピンク色の跡が残っているのがわかるかな?」
「あぁ、これだね。」
写真の中のメスには、持ち手部分にピンク色の跡が見えた。
「これ、調べたところ、口紅の跡だった。」
「口紅って・・・まさか?」
「あぁ、そうだよ。 今回の手術で、口紅をするような人物は1人しかいない。
看護師の石野香織さんだ。」
「えっ? でも、待って。 だから何なの?
確か、手術器具を用意するのが石野さんの担当だったはずだし、
口紅の跡くらい、不注意で付いたんじゃないの?」
「おかしいと思わないかい?
手術中は、口にはマスクをしているし、手には手袋をしている。
こんな風に、口紅の跡がつくはずがないんだよ。」
「もしかして、義門府刑事、君が言いたいのは・・・
メスも麻酔薬も、手術前に石野さんが細工していたと言いたいの?
つまり、石野さんが真犯人だったと・・・」
「いや、違うよ。 それだったら、いい情報だなんて言うわけないだろ。
僕は、あくまで今回の事件の犯人は、鱒井拓海だと考えている。
しかし、同時に、石野香織がその共犯者だったと考えているんだ。」
「い、石野さんが共犯者ぁ!?
・・・ま、待ってよ、刑事。 あの2人の関係は、君も知っているだろう?
昨日の捜査の時の様子からしても、まさに犬猿の仲じゃないか!
終始、『あんたが犯人だ!』『いや、俺じゃない!』って言い合いしてたじゃないか!
僕には、あの2人が協力するとは思えないんだけど・・・」
「まぁ、それは一理ある。
でも、今日の僕の捜査結果がその結論を導いたんだよ。
ここで道比木検事たちと会う前、僕はナースステーションで石野さんから話を聞いていたんだ。
石野さん、昨日と言っていることが違っていた。
昨日は、『絶対に鱒井が犯人だ!』と何度もきっぱりと主張していたのに、今日になって『今日の裁判を聞く限りだと、犯人は誰だか分からないわね。』なんて言うんだ。
試しに『昨日は、鱒井医師が犯人だと主張されていましたよね?』と僕が聞いても、『そんなこと言ったかしらね?気が動転してて、よく覚えてないわ。』と言った。
さらに、この口紅の跡。 手術前に付いたとしか思えないこの跡は、手術関係者が見ていない場所で細工をした可能性を示している。
そして、さっきの石野さんの行動で、それが確信に近づきつつある。
おそらく、彼女はさっき、このメスを見て、自分が口紅の跡という手がかりを残してしまっていたことに気づいたんだ。
だから、とぼけたふりをして、メスを持ち去った。
僕がさっき、まずいと言ったのは、おそらくあのメスの口紅の跡は、もう拭き取られてしまっている。
石野さんは、そのためにメスを持ち去ったんだ。」
そ、そんな・・・
今まで考えもしなかったことが、次々と刑事の口から語られていき、僕は呆気にとられていた。
しかし、手術器具の準備が担当だった石野さんならば、自由に手術器具に触れることが可能だった。
義門府刑事の推理が当たっている可能性がかなり高いだろう。
「くそー! なんで、もっとしっかり石野さんから話を聞いていなかったんだ!」
僕は、今更ながらに後悔した。
「・・・そういえば、聞いていないと言えば、私たち、被告人の鱒井医師のお話しも全然聞いてないですよね?」
「あっ、そういえばそうだ!」
被告人の話を聞くのは1番大事なのに、僕、何やってんだろう?
素人のレイちゃんに気付かされるとは、まだまだだな。
「刑事、面会時間は何時までだっけ?」
「えーと・・・確か、17時だったかな?」
現在時刻、15:48・・・。 急がなきゃ!
僕は、現場の捜査は刑事に任せ、レイちゃんを連れて留置所へ向かった。
16:27 留置所 面会室
ガラス越しに鱒井医師はいた。
ダークグレーのシャツで、ふてくされた感じで座っている。
「なんだ。 検事さんですか。
裁判後、さんざん取調べされて、やっと終わったと思ったら、見る顔が検事さんかよ。
なんですか? 俺が犯人だという新しい証拠でも見つかりましたか?」
こんな態度を取られると、質問しにくいな・・・。
でも、ちゃんと質問しなきゃ!
「いえ、僕はあなたにお話しが聞きたくて、来たんです。」
「お話し? ふっ・・・あなたに話すことなんてないですよ。
曽口弁護士になら、色々話せば、俺を救ってくれるけど、あんたには、色々話しちゃったら、不利な証拠にされるだけでしょ?」
この態度に付き合っていたら、話が進まない。
僕は、鱒井医師の言葉を無視して、続けた。
「あなたは、昨日から一貫して無罪を主張していますが、その理由は何ですか?」
「理由? そりゃ、俺はやっていないから、やっていないと主張しているだけですよ。
まぁ、細かいことは曽口弁護士に伝えてありますが、あなたには教えられませんね。
明日の裁判の武器ですから!」
「そうですか。
では、今日の裁判で、刃崎医師のメスに毒物が付着していたことが明らかになりましたが、それもあなたは関係していないと?」
「当たり前ですよ。 あのメスには、触れてもいない。
麻酔医がメスに触れる必要なんてないですからね。」
「でも、石野さんや真田さん・・・それに、刃崎医師までが、あなたが犯人だと発言していますが?」
「そ、そんなの知りませんよ。 みんな自分が疑われなきゃ、それでいいんですよ。
あんたや一緒にいた刑事が、俺が犯人だって決めつけるから、他の奴らもそれに同意してるだけですよ。 根拠は何もない!」
「別に決めつけてなんかいませんよ。
例えば、手術器具を準備した石野さんも怪しいし、手術器具を渡した真田さんも怪しい・・・
そういった全ての可能性を考慮した上で、僕らはあなたを起訴したんです。」
「えっ・・・・・・・そんなの知るかよ!」
「とにかく、あなたが無罪を主張するなら、それはそれでいいですが、僕らはあなたが犯人だと考えています。 明日の裁判では、その主張を貫きます。
ですから、何か言いたいことがあったら、今のうちに言っておいてください。
判決が出た後で、不満を言われても困りますから。」
「・・・ないですよ、あなたに言うことなんて。
俺は、あなたには何も話すことはありません。 お引き取り下さい!」
そう言うと、鱒井医師は面会室を去った。
「あーあ。 行っちゃいましたね。」
「なんか、今のですごく疲れたよ。
本当は、石野さんとの共犯のことも探るつもりだったけど、なんかその話に持って行ける雰囲気じゃなかったし、聞き逃しちゃった。 ダメだね、僕って・・・。」
「もう、道比木さんは押しが弱いんですよ!
もっとこう・・・『おめぇさん、斬られたくねぇなら、さっさと証言しちまいなァ!!!』みたいな迫力がないと!」
「なんだよそれ、ユガミさんの真似?(上手いけど・・・)
まぁ、確かに、僕の場合、それくらいの迫力出したほうがいいのかもなぁ・・・」
「あ・・・れ? 道比木さん、本気で落ち込んじゃった? 大丈夫ですよ、道比木さん!
道比木さんの失敗をカバーするのが、この優秀な助手、七篠レイちゃんの役目ですからね!」
「えっ・・・・・・・・。」
「道比木さん。 鱒井医師が石野さんと共犯だった証拠ならばっちりつかんでありますよ!」
「!? ・・・い、いつの間に?」
「さっきの鱒井医師との会話ですよ。
道比木さんが、石野さんや真田さんも怪しいみたいなことを言ったとき、鱒井医師のまぶたが急にピクピク動き始めたんです。 あれは動揺している証拠ですよ。」
「動揺?」
「はい。 人は、動揺すると表情筋が緊張して、動くんです。
その中でも特に敏感な表情筋がまぶたで、この動きは隠そうとしても意思では止められない、
素直な反応なんです。
しかも、まぶたが動いたのは、石野さんといったときだけ。 真田さんの時は反応しませんでした。
それはつまり、動揺した理由は、石野さんとの共犯のことが道比木さんにばれたのではと思ったからです。 仮に共犯ではないとしても、あの反応を見る限り、今回の事件で鱒井医師と石野さんはつながっていましたね。」
「す、すごい。 そんな細かい変化が、分かるなんてレイちゃん、君は何者なんだ?」
「言ったじゃないですか! 検視官を目指す女子大生ですよ!
検視官になるには、生物学の他に法医学を学ばなきゃでしてね・・・」
「え? それって、法学部でやる、“法とは何か?”っていう哲学みたいなやつ?
あんなのが検視官に必要とされるんだ!」
「ち、違いますよ! それは法理学 でしょ! 私が言ってるのは法医学 です。
法医学っていうのは、法に基づく医学・・・ここでいう法っていうのは、刑事訴訟法 なんだけど、
要は刑事事件が起こった時に行う、検視の方法についての学問です。」
「ほう・・・なるほど。」
「・・・って、なんで生物学科の私が、法学部卒業した道比木さんに法学の説明してるんですか!」
「知らないよ。 レイちゃんが勝手に始めたことじゃない・・・。」
「まぁ、いいや。 ・・・で、そうそう、法医学自体の説明はどうでもいいんですよ!
その法医学の中身で、遺体の表情を読み取る訓練があるんです。
ほら、死後硬直ってありますよね?
遺体は、ほぼ亡くなった時の状態で硬直します。 その時、一番顕著な硬直を見せるのが表情なんですよ。 だから、表情から、亡くなったときの状況を予測することが可能なんです。
例えば、驚いたような表情であれば、何か突然起きた事態によって亡くなったとか・・・
歯を食いしばったような表情であれば、この人は殺害される前に抵抗したんだな・・・とかね。」
「でも、そんなにはっきりした表情の遺体なんて、僕見たことないけどな・・・」
「えぇ、遺体ですから、はっきりした表情なんて残していませんよ。
でも、表情筋の微かな変化を見破ることで、生前、最後にどんな表情をしていたか分かるんです!」
「へぇ・・・なるほどね。
・・・で、それが今の鱒井医師の話とどういう関係なわけ?」
「どてっ・・・み、道比木さん、ふざけてるわけじゃないですよね?
だから、法医学で表情筋を読み取る訓練をしたから、微かな表情の変化から、動揺や嘘を見破れるって話ですよ!」
「あーそういうこと。 レイちゃんの特殊能力“みやぶる”か!
うん、“みぬく”よりいいんじゃないかな?
使う道具は何? 勾玉? 腕輪? それとも、ネックレス?」
「は、はぁ???
もう、何言ってるか、わけ分からないんですけど・・・
道比木さん、きっと今日の裁判と捜査で疲れたんですね。 早く、帰って休みましょう!」
僕は、レイちゃんに引っ張られながら、留置所を後にした。
レイちゃん、ふざけてごめんよ。
でも、まともに対応してたら、君の優しさに涙が溢れそうでさ・・・。
『大丈夫ですよ、道比木さん!
道比木さんの失敗をカバーするのが、この優秀な助手、七篠レイちゃんの役目ですからね!』・・・か。
僕はいい助手を手に入れられたな。 ありがとう、レイちゃん!
よし、明日の裁判、絶対に勝つぞー!!!
つづく