「連邦捜査部の番頭神 〜 庭渡久侘歌のキヴォトス入り」→「連邦捜査部の番頭神」
それだけです!
「……おや?」
刹那、耳をつんざくような音と同時に眩しい光が走る。
それを皮切りに、スズミとユウカが一気に敵陣に肉薄する。
「フフ、連邦生徒会の子犬たちが現れましたか。お可愛らしいこと」
ワカモは戦車の上からスズミに照準を合わせる。
同時に、戦車もユウカの方へと発砲を始めた。
「っと、危ないわね!」
ユウカは発砲を避けながら、周囲の不良たちを撃ち倒していく。
(このあたり……でしょうか)
スズミが懐から閃光弾……ではなく、チナツに託された爆弾を取り出す。
(……嫌な予感がしますね)
本能的にそれを感じたワカモは、狙いを変える。
そして、スズミが爆弾を投げる、その瞬間。
「あっ……!」
“当てる”のではなく、“体勢を崩す”、それこそがワカモの狙いだった。
そして銃弾は狙い通り、スズミの足元を狙撃した。
戦車の下まで地を這うように進むはずだった爆弾は予定を外れ、大きく宙に浮く。
ワカモにとって、それを撃ち抜くのは造作もない。
[スズミさんっ!]
爆弾が投げ上げられた方向はほとんど真上に近い。
爆弾の威力からするに、少なくともスズミは無事ではない。
所有者のチナツはそのことを察してしまった。
しかし、察したところで、どうしようもできない。
彼女が今操作しているのは攻撃用のドローン。
攻撃は最大の防御とも言うが、あくまでそれは攻撃に巻き込まれない前提。
とはいえ幸い、支援用のドローンも準備していたので、切り替えること自体はできる。
……ただ、その選択肢が逆に彼女を迷わせていた。
〈何があっても、私が言った通りに爆弾の投下をお願いします〉
〈大丈夫です。何かあっても、私がなんとかしますから!〉
久侘歌は戦闘が始まる直前、チナツにこう言っていた。
この言葉が逆に、普段割と独断的な支援をしている彼女を悩ませていた。
「ピヨちゃん!」
「ピッ!」
久侘歌の声が聞こえた。
その声につられさっきまで久侘歌のいた方を少しだけ見ると、そこに彼女はいなかった。
いたのは、頭にいたヒヨコだけだった。
その、次の瞬間。
爆発音が、鳴り響いた。
「ピッ! ピッ!」
久侘歌のヒヨコが必死に鳴いている。
それが何を意味するのか、鳥でもニワタリ神でもない者にわかるはずがない。*1
ない……のだが。
今のチナツにはなんとなく、分かるような気がした。
その直感に従って、彼女はボタンを押す。
「おっと……」
スズミに注視していたワカモは一瞬視認が遅れたものの、すぐに戦車から飛び降りる。
だが、それは久侘歌の本来の目的ではない。
それに、それも想定して一応対応することになっている。
「っ!」
ワカモは空中で体を捻り、なんとかその銃弾を避ける。
ここまで完全に息を潜めていた羽川ハスミ、その目的はこの一撃にある。
勿論、ここで当たるのが一番いいのだが、当たらなくても問題はない。
本来の目的は、人妖ではなく機械の機能停止なのだから。
「大丈夫ですか、スズミさん!?」
「は、はい。ありがとうございます……」
久侘歌はチナツへの宣言通り、スズミの前に立ち、結界を張っていた。
そして彼女の狙い通り、戦車が爆発に巻き込まれる。
「……今のうちに行ったほうが良さそうですね。フフフフ♡」
今であれば、敵も自分を追うことは難しいであろう。
そう考え、ワカモは目的の物がある建物の中へと入っていった。
一方、戦車への爆撃に成功した久侘歌達。
「……これでまた動き出すとか、ないですよね?」
[あれだけ爆撃したのですから、恐らく大丈夫です]*2
「よかった〜、なら後は周りの不良を倒すだけですね!」
「こっち側はかなり片付いたわ!」
「ありがとうございます、ユウカさん!」
「私達も行きましょう、先生」
「はい!」
久侘歌が結界を解除したと同時に、スズミが飛び出した。
(こっち側はまだ敵が多いですね……)
「ハスミさんはユウカさんの援護を、チナツさんは私達の援護をお願いします!」
[承知しました][わかりました]
「ピヨちゃん、こっちに!」
「ピッ!」
久侘歌はヒヨコを頭に乗せて、笛を用意する。
いざというときのための、自衛装備だ。
「チナツさん、私から見て10時の方向に援護射撃をお願いします!」
「わかりました!」
チナツが支援用のドローンを数機向かわせ、発砲する。
「戦車もなくなったし災厄の狐もどっか行ったし、勝てなくないか、これ?」
「くそっ、撤退しよう!」
五人の猛攻撃に耐えられず、不良が一人、また一人と離脱していく。
「そろそろ大丈夫、ですかね」
「この戦車の処理だけどうしましょう……?」
[それは連邦生徒会の方で一時的に預かりますのでそこに放置しておいてください]
「わかりました、ありがとうございます」
[『シャーレ』部室の奪還完了。皆さん、ありがとうございました]
「先生のお陰で、かなり順調に進むことができました」
「いえいえ、私は何もしてません。皆さんがいなければ、今頃どうなっていたことか……」
久侘歌のこの言葉に、嘘偽りは一切ない。
もしかすると気付いていないだけで、出来るのかもしれないが……
[私も、もうすぐ到着予定です。それでは先生、建物の地下で会いましょう]
「わかりました!」
***
皆さんのお陰で、なんとか目的地に到達することができました。
本当にありがとうございます……!
今は皆さんと別れて一人、建物の地下室に向かっています。
そこでリンさんと待ち合わせしていますので。
「っと、ここですかね?」
階段を下った先に扉が一つありました。
普段引き戸ばっかり使ってるんですけど、これって多分開き戸ですよね。
開き戸って押すのか引くのかぱっと見ただけで分かりにくいので苦手なんですよね……
蝶番の有無、とかでしたっけ?
「ええっと、蝶番が見えてるからこれは引くんですよね?」
取手に手をかけ、扉を開いてみます。
すると、
「うーん……これが一体何なのか、まったく分かりませんね。これでは壊そうにも……」
中から聞き覚えのある声が……!
「ピッ……!」
あっ、ピヨちゃんが私の髪の中に隠れちゃいました。
……あれ、ということは……
「……あら?」
ほら、やっぱり……
目が合ってしまった以上、逃げることは出来ませんね。
……こうなれば、いっそ……
「はじめまして、今日からシャーレの先生として働くことになりました、ニワタリ神の庭渡久侘歌です!」
「……」
「まだキヴォトスに来て一日も経ってないので右も左もわかりませんが、よろしくお願いします!」
「……」
「ところで、素敵なお面ですね! 私の知り合いにもお面をつけてる人がいるんですけど、狐のお面は初めてです!」
「あら、あららら……」
「そのお面、どこで手に入れたんですか? あっ、もしかして特注品だったり?」
「あ、ああ……」
「そういえば、あなたのお名前はなんて言うんですか?」
「……」
目の前の彼女は黙り込みました。
なんか震えてる気がするんですけど……
「し、し……」
「しし?」
そう言って、彼女は部屋を飛び出てしまいました。
私としては仲良くなって、ピヨちゃんの恐怖をなくそうと思っただけなんですけど……*3
顔が紅潮しているように見えたのは気の所為ですかね?
純粋に惚れる描写って難しいですね……
投稿者の個人の事情で純粋な恋愛ってものを知らないんです。
もともと書くのが苦手というのもあって恋愛要素は当分出てきません(スミマセン)
あ、ワカモはちゃんと久侘歌に惚れているので安心してください。