連邦捜査部の番頭神   作:九長秀真

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前回投稿が一ヶ月前……誠に申し訳ありません……
今回はアビドスの続きとかではなく幻想郷サイドの話です。ブルアカ要素はほぼゼロに近いですがよろしくお願いします。


庭渡久侘歌消失異変
幻-1 居ない


 ――幻想郷、三途の川近辺

 

「……」

 

 楽園の最高裁判長、四季(しき)映姫(えいき)・ヤマザナドゥ。

 青春の楽園で七神リンが「先生」の到着を待ちわびていた頃、忘却の楽園にいる彼女もまた、険しい表情を浮かべていた。

 

「……遅い」

 

「珍しいですよね、普段なら一番最初に来るはずなのに」

 

 三途の水先案内人、小野塚(おのづか)小町(こまち)

 サボり癖のある彼女にしては珍しく、今日は映姫よりも早く集合場所にいた。

 

「貴方といい久侘歌といい……明日は大異変でも起こるのですか?」

 

「なんでそこに私も含まれてるんですか」

 

「貴方が一度でも()()()使()()()()約束通りの時間に来たことがありますか?」

 

「うっ……」

 

 小町は黙り込む。

 というのも、今日の彼女も別に早く行こうと思って早く行ったわけではない。

 ただ、予定を聞き間違えただけなのだ。

 

「……しかし、まさか久侘歌が遅れるとは……」

 

「鶏の神ですから、朝には強いはずなんですけどね」

 

「だとすると、何かの事故……ですかね? 育てている鶏が脱走するとか、久侘歌ならそういうこともありうるでしょうし」

 

「ですけど、もしそうでも久侘歌ならピヨちゃんに連絡させません?」

 

「確かに……」

 

「……まさか、(自称)鳥頭だから忘れたなんてことは「ないです、久侘歌に限っては絶対に」ですよね……」

 

「ただそうなると、ピヨちゃんを送れないほどの急用としか……」

 

 映姫は下を向く。

 小町ならまだわかる。

 普段の行いを見ていればそんな気はするし、前科もある。

 だが、久侘歌はどうか?

 確かに彼女は鳥頭を名乗っているし、そのことを完全に否定はできない。

 しかし、映姫は知っている。

 彼女は大事なことは必ずメモを取り、毎朝日の出前に起きてそれをすべて確認していることを。

 そしてそのメモを見ればそこから一週間はだいたい覚えていられるということを。

 久侘歌が寝坊するなんてことはない、本人が鶏であることに加え、飼っている鶏の長鳴でどのみち起こされるから。

 

「……まさか……いや、そんなはずは……」

 

「なにか思い当たることでもありました?」

 

「……小町、久侘歌の仕事疲れは」

 

「久侘歌ですか? 昨日会いましたけど、大丈夫そうでしたよ。霊長園のときの方がまずかったと思います」

 

「そうですよね……となるとやはり……?!」

 

 映姫は何を思い立ったのか、小町にしがみついた。

 

「……あの〜、映姫様? 何をされてらっしゃるので?」

 

「小町、今すぐ久侘歌の家とここを繋ぎなさい」

 

「え、あ、はい」

 

「久侘歌の家の合鍵は持ってます?」

 

「聞く順番絶対逆でしょ……まぁ、一応持ってますよ。いつでも返せるように。でも、何をする気で……?」

 

「久侘歌の家を確認しに行きます。万が一私の勘が正しければ……」

 

「わかりました。しっかり捕まってください!」

 

 白黒はっきりつけて行動する映姫が、「勘」に頼っている。

 つまり映姫は、自分には思いついていないケースを考えついたのだろう。

 そう考え、小町は能力を使用する。

 

 

***

 

 

「小町、そっちは?」

 

「見つからないです、周囲の天狗や河童に聞きましたが、今日は餌やりをしている姿すら見ていないと……」

 

「そう、ですか……」

 

「……やっぱり、変ですよね」

 

「ええ」

 

 久侘歌の家とその周辺を、二人はくまなく探した。

 しかし、彼女の痕跡は見つからない。

 ……それどころか。

 

「……『昨日は(もみじ)と将棋を指して、日が暮れてすぐに寝た。夜の間起きていたけど、少し目を話した隙にいなくなっていた。ご飯もらってない、お腹すいた、ご飯ちょうだい』……ですって」

 

「ご協力ありがとうございます、茨華仙(いばらかせん)。それと鶏の皆さん、ご飯を持ってきました」

 

「コケッ! コケッ!」

 

 鶏たちも相当お腹を空かせていたのか、餌を持ってくると勢いよく群がってきた。

 

「……本格的にまずいことになってきましたね」

 

 我先とご飯にありつく鶏たち、その姿を見ながら映姫は呟いた。

 

「どういうこと?」

 

 「ニワタリ神が行方不明だから探すのを手伝ってほしい」という映姫からの頼みを二つ返事で了解した、片腕有角の仙人こと茨木(いばらき)華扇(かせん)(茨華仙)。

 彼女は映姫の発言の意図を汲み取れず、問うた。

 

「私達は久侘歌を覚えている、つまり彼女が完全に消失したわけではありません。ということは、どこか知らない場所へ消えたと考察するのが妥当です」

 

「まぁ、あまり関わりのない私ですら覚えているのだからそうよね」

 

「それで、ここからが本題なのですが……結論から言うと、幻想郷が危険です」

 

「?」

 

「彼女の役目は、異界と現世の間の関所の番人。以前、畜生界の動物霊が幻想郷に現れた異変があったでしょう?」

 

「そういえば……」

 

「あの異変のとき、久侘歌は関所で動物霊をかなり食い止めていました。霊夢達三人だけであの異変を解決できたのは、実は久侘歌のお陰である部分が大きいのですよ」

 

「畜生界に通したのも、久侘歌がいいと判断してのことですしね」

 

 映姫は頷く。

 

「この幻想郷で、畜生界の動物霊たちの正しい対処方法を知っているのは久侘歌と日白(にっぱく)残無(ざんむ)だけ」

 

「……と、いうことは……」

 

「想像していらっしゃる通りです。そして、恐らく……」

 

 映姫がそう言いかけたそのとき、小町が帰ってきた。

 

「駄目でした映姫様、関所と三途の川を一通り見聞きしてきましたが、久侘歌の目撃情報は一つも……」

 

「……でしょうね。ありがとうございます、小町」

 

 映姫は溜息を吐き、続ける。

 

「小町、今日の視察は私一人で行くことにします。その間、小町は久侘歌の情報を集め続けてください」

 

「わかりました」

 

「私も協力するわ。霊夢(れいむ)(ゆかり)にも話をつけましょうか?」

 

「いえ、それはまだ先で大丈夫です。食い違いの可能性もなくはないですので。しばらく捜索して見つからなかったら私の方から話そうと思います」

 

「わかったわ。もし手がかりが見つかったら報告するわね」

 

「ありがとうございます。私も視察をなるだけ早く終わらせて対処に当たります」

 

 小町を呼び、浅間浄穢山(ピラミッド)へと向かおうとする。

 

「あっ、そうだ」

 

 その直前で何かを思い出し小町の身体から離れる。

 

「どうしました?」

 

「小町も、茨華仙も、今から言うことを覚えておいてください」

 

「なんでしょう?」

 

「今回の件は、異変として取り組んだ方が良いでしょう。何があるか分かりません、心してかかるように」




ちなみにこの時点で視察開始予定時刻のだいたい15分前です。余裕を持って行動するのって大事ですね。

アビドスの間、今後は時々幻想郷サイドの話をしようと思います。
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