例外があったらその都度前書きします。
――仕事を軒並み終わらせた後、シャーレ
「はぁぁぁぁ…………」
机に突っ伏して、溜息を吐く。
彼女、庭渡久侘歌はそうしながら今までに起こった出来事を整理していた。
――幻想郷、妖怪の山
「……いや〜、完敗です。やっぱり久侘歌さんは強いですね」
「そんなことないですよ。
「あそこで決めきりたかったんですけどね……」
あの日……というより、その前日。
仕事はお休みだったので、私の家で椛さんと将棋を指していました。
「ところで、椛さんは暫く休みですか?」
「はい。
「なるほど、それで今までサボってきた人にその分の仕事をさせるということですね」
「といっても、人によりますけどね。普段通り働いている人もいますし。ただ、私は何故か直々に指名されて『
「あー……ここ半年くらい休んでなかったからですかね?」
「でも、同じような天狗はいっぱいいるんですよ。その中から、何故か私だけなんですよね」
「……多分、妖怪の山で
「確かに、飯綱丸様からの指令は大体先鋒ですね。
「その分他の人よりも負担かけてるから〜ってことじゃないんですかね?
「確かにそうですね」
「まぁ、何にせよ良かったじゃないですか。休みをもらえて」
「ですね。今のうちに体を休めておかないと」
「あ、それなら旧地獄の温泉施設とかどうですか? ちょっと遠いですけどゆっくりできますよ!」
「え、そんなところがあるんですか?!」
「ご存じないですか? もしかしてまだ有名なの地獄だけ……?」
「はい、少なくとも天狗界隈では聞いたことがないです」
「確かに、旧地獄に来る天狗は少ないですね。よく考えたら、現世から旧地獄に行く
「どんな方々が来てるんですか?」
「
「そうなんですね。やっぱり里帰り客が多いですか?」
「そうですね。だから、観光客増加を目指して今回開業したみたいです。
「……ああ! だから最近よく地底に出張しに行ってたんですね飯綱丸様」
「あんまり部下にはしてないんですかね? そういうお話」
「多分、
「後援だけなら龍さんだけでもなんとかなるから、ですかね?」
「恐らくそうだと思います」
「……折角ですし、行ってみたらどうですか? 私も行ったわけじゃないので詳しくはないですけど、結構くつろげるみたいですよ!」
「そうなんですね! にとりも連れて行ってみます! ……あ、久侘歌さんも一緒にどうですか?」
「私はこのあとまた仕事が続くんですよね……次の休みもかなり遠くなりそうなので、多分無理かと……」
「大変ですね……頑張ってください」
「ありがとうございます! 仕事中に見かけたら声かけますね!」
「会えると良いですね〜」
「ですね!」
「……あれ、もうこんなに暗い」
「夏も過ぎましたからね。これから日が短くなっていきます」
「じゃあ、そろそろ帰りますね。仕事、頑張ってください!」
「ありがとうございます! 椛さんもゆっくり休んでくださいね!」
「わかりました!」
そうして、椛さんが帰ったのが、確か
「……さて、明日は早いですし今日は早く寝ましょう!」
次の日は、
以前、魔理沙さんから、浅間浄穢山がどんなところなのかっていう話をちょっとだけ聞いたんです。
入口に私みたいな役割の神様がいるらしいので、ちょっと会ってみたかったんですよね。
確か、謎掛けが好きなんでしたっけ。
私には何やら分かりかねますが、面白そうですね!
……そんな感じで、その神様と会うのを楽しみにしながら、夕餉を食べて、私も早く寝ました。
多分、椛さんが帰ってから半刻くらいだったと思います。
……普通の、何の変哲もない日常でした。
今振り返ってみても、どこがおかしいのか全くわからないほど、ただの日常でした。
なぜ、こうなってしまったのか。
その心当たりが全く無いのです。
……いえ。
一つだけ。
ほんの些細なことですが、あるにはあります。
その後、夢を見たんです。
確か、そこは電車の中でした。
席に一人、腰掛けていたのを覚えています。
何故、私がその電車に乗っていたのかはわかりません。
どこに行こうとしていたのか。
或いは、何をしようとしていたのか。
そもそも、幻想郷にないはずの電車に何故私が乗っていたのかも分かりません。
何かの拍子で幻想郷の外に出たのか、それとも私の願望なのか。
見渡してみましたが、何もありませんでした。
まるで、私とこの電車だけが、この空間に存在しているようでした。
ですから、私はただ座って、電車に自分の行く先を委ねていました。
……少し、訂正しようと思います。
そこには、車窓に映る景色もありました。
……ただ、その景色は、驚くほど綺麗でした。
一点の曇りもない景色が、そこには広がっていました。
私がこの透き通るような世界の唯一の穢れであるかのようにさえ、思えました。
私が見惚れていると、反対側から別の電車がやってきて、すれ違いました。
……一瞬しか見えなかったので、確かではありませんが、
二人、向かい合わせになって乗っていたような気がします。
容姿までは覚えていませんが……そのうち一人が女性の方だったのはわかりました。
恐らく、十八くらいの少女でしょう。
もう一人は詳しくは見えませんでしたが、スーツ姿だったのはわかりました。
外の世界で言うところの、学校の級友でしょうか。
それとも、教師と生徒の関係でしょうか。
想像はできますが、断定はできません。
電車はすぐにすれ違い、また透き通った世界が私を虜にしました。
これが、私に残っている最後の記憶です。
きっと、この後電車で寝落ちてしまったのでしょう。
あるいは、夢から醒めなければならなかったか。
「
休暇もある意味でそう言えるんですが、流石に休暇がきっかけというわけはないでしょう。
ただの、「
何の違和感もない、「
昨日も、その前も、そのさらに前の日も、変わったことはありませんでした。
きっと、明日も、その次の日も、同じだったことでしょう。
少なくとも、私は心の奥底でそう信じていました。
……次に、目が醒めるまでは。