まぁ幻想「少女」ですし問題ないですよね!
「ちょっと待って! 代行! 見つけた、待ってたわよ! 連邦生徒会長を呼んできて!」
昇降機を降りてある部屋に入ったその瞬間、菫色の髪の少女がリンさんのもとに詰め寄ってきました。
周りをざっと見渡してみましたが、生徒と思われる少女は数名いましたが、大人の姿が見えませんでした。
……成程、リンさんがどう見ても十八くらいにしか見えなかった時点で薄々そんな気はしましたが、これが学園都市の政府が連邦「生徒」会と言われる所以ですか。
そういえば、三途の川を渡っているかなり若い霊魂から、なんちゃら高校の生徒会で、かわいい後輩と学校の運営をしていたみたいな話を聞いたことがあるような?
ずっと幻想郷か地獄かにいるので外の世界の学校制度に詳しくないんですよね。
なので外の世界ではそれが一般的なのか、それとも珍しいことなのかはわかりません。
でも、その霊魂が言っていたような学校が沢山あるのがキヴォトス、ってことなんでしょうかね。
それはそうと、これから関わっていくことになるかもだし挨拶しなk
「……うん? 隣の羽の生えたかわいい生徒は? どこの制服とも違うけど……」
……うん?
うん??
うん????
今、生徒って言いました?
私のことを?
リンさんのことではなく?
……あれ、もしかして……
私って神って認識されてない?!*1
記紀に書かれし神ではありませんが、それでもそれなりに古い時代から信仰されてきた立派な神ですよ?!
いやまぁ、外の世界では神って信じられてないらしいので、神だと思われてないのは当たり前といえば当たり前なんですが。
だとしてもそれなりに生きてるはずなんですけど……
「ピ……?」
「……大丈夫です、ちょっとしょげてるだけなんで」
まぁ、そういうこともありますよね。
小声で返しながら、そう思うことにしました。
「首席行政官。お待ちしておりました」
「この混乱について、連邦生徒会長に問い質させてください」
「風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求されています」
菫色の髪の少女に続いて、三人の少女がリンさんに迫りました。
「あぁ……面倒な人たちに捕まってしまいましたね」
リンさんが人気者……というわけでは、どうやらないようですね。
リンさんを含めて、全員から切羽詰まっているような雰囲気を感じました。
……あれ、もしかして私、呑気に寝てたせいでリンさんに迷惑をかけたのでは?
「こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余している皆さん」
リンさんはその雰囲気の中で一度冷静さを取り戻し、キリッとした表情で挨拶をしました。
……暇を持て余しているようには見えませんが。
「こんな暇そ……普段は中々集まらないような方々がここに集まってきた理由は、よく分かっています。……今、学園都市に起きてる混乱の責任を問うために、でしょう?」
ああ……そういえば、生徒(と思われる少女)の皆さんも「混乱」とか「今の状況」とか、そういうことを話していましたね。
リンさんも、「学園都市の命運をかけた大事なこと」とか言っていたような……?
……とは言っても、私何も知らないんですよね。
実際何が起こっているのか、窓から見ただけでは何も分かりませんでした。
ただただ綺麗にしか見えないあの景色の裏の混乱なんて、右も左もわからない私に分かるはずもありませんでした。
学園都市の命運が危ぶまれるほどの混乱……うーん……
「そこまで分かってるなら何とかしなさいよ! 連邦生徒会なんでしょ!」
菫色の髪の少女が更に強く迫りました。
うーん……これだけ焦るような事情……
「数千もの学園自地区が混乱に陥ってるのよ! この前なんか、うちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」
……え、学園の数多くないですか?
いやまあ巨大なとは言ってましたけど……
というか数千もある学園全体が混乱って、ええ?
「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱出したという情報もありました」
れんぽーきょーせーきょく……連邦強制曲?
なんだかよくわかりませんけど、この状況で出てくる話ですから結構やばい?
「スケバンのような不良たちが、登校中のうちの生徒たちを襲う頻度も、最近急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています」
んん??
よく見たら彼女たちも銃持ってるし、相当やばいのでは?!
「戦車やヘリコプターなど、出所のわからない武器の不法流通も2000%以上増加しました。これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます」
2000%って20割だから……20倍?!
不法流通が?!
これもう治安の悪化じゃ済まないですよね?!
是非曲直庁の仕事絶対増えますよね?!
「……」
リンさんもすっかり黙り込んでしまいました。
つまり……事実ってことですよね。
……なんか、思ってたよりかなりまずい状況らしいです。
私、今からそんな場所で働くんですよね。
映姫様、小町さん、大丈夫かな……
……あと、もう一つ気になるのが、
「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの? どうして何週間も姿を見せないの? 今すぐ会わせて!」
リンさんからも何度か話が出てきた、「連邦生徒会長」という言葉。
名前からして、キヴォトスのトップみたいですが……
リンさんは「首席行政官」らしいですから違いますよね。
そもそも、「先生」を呼び出したという肝心の連邦生徒会長が、
「……」
リンさんは深呼吸をして、彼女たちに向き直りました。
「連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、行方不明になりました」
……え、
「……え!?」「……!!」「っ……」「やはりあの噂は……」
ええええええええええ?!
あれですよね、私からすれば映姫様が突然失踪したのと同じですよね?
「結論から言うと『サンクトゥムタワー』の最終管理者がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です」
すみません前言を撤回します。
幻想郷から見て
そりゃあ治安も悪化するはずです。
「認証を迂回できる方法を探していましたが……先ほどまで、そのような方法は見つかっていませんでした」
結構やばくないですかそれ?
最終管理者が失踪して、それを引き継ぐこともできないなんて……
……うん? 何故過去形?
「それでは、今は方法があるということですか、首席行政官?」
黒髪で長身の少女も同じ疑問を持ったようです。
「はい。この先生こそが、
「えっ、私ですか?!」
いや確かに、「学園都市の命運をかけた大事なこと」ですけど……
ここに来て数時間の私にそれを委ねます普通?!
「ちょっと待って。その方生徒じゃなくて先生だったの?! そもそもどなた?! どうしてここにいるの?!」
そりゃあ驚きますよね。
どこかの生徒だと思っていた人が実は「先生」で、しかもキヴォトスの命運を握っているだなんて思うはずがないですもの。
私ですら驚いてるんですから。
「こちらの
厳密には少し違いますが、とリンさんは小声で付け足しました。
「行方不明になった連邦生徒会長が指名……? ますますこんがらがってきたじゃないの……」
大丈夫、私もわかってません。
連邦生徒会長も多分私のこと知らないでしょうし。
……まぁでも、これから付き合っていくことになりますもんね。
「はじめまして、
「……こんにちは、先生」
紫髪の少女が答えてくれました。
「私はミレニアムサイエンススクールの……い、いや、挨拶なんて今はどうでもよくて……!」
彼女はそこで何かを思い出したかのように自己紹介をやめてしまいました。
名前が分かったほうが呼びやすいので名乗ってほしかったんですけどね……
……まぁ、状況が状況なので仕方がありません。
「そのうるさい方は気にしなくていいです。続けますと……」
「誰がうるさいって!?」
リンさんの言葉を遮って、彼女は反論しました。
実際声は大きいと思いますが、あんまり他人のこと言えないんですよね……
「わ、私は
「……すみません鳥頭なんで覚えられないかもです」
「この方が先生で本当に大丈夫なの?!」
「あはは……」
これに関しては私も苦笑いするしかないんですよね……。
「……」
あ、リンさんがすごいこっちを睨んでる。
すみません……
「……先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の担当顧問としてこちらに来ることになりました」
「部活の顧問、ですか?」
学校の教師とかではなく?
いや、そっちの方がむしろありがたかったりはするんですが、
なんか、思ってたのと違うというか……
「……連邦捜査部『シャーレ』。部活というよりかは、どちらかといえば一種の超法規的機関といった方が正確でしょう。連邦組織のため、キヴォトスに存在するすべての学園の生徒たちを、制限なく加入させることすらも可能で、各学園の自治区で、制約無しに戦闘活動を行うことも可能です」
中々権力が強そうな組織ですけど……大丈夫ですかね?
映姫様の説教とか裁判とかを聞いていると、権力をもった
どこかの同盟長とか絶対そうですもんね。
「連邦生徒会長がこれだけの権限を持つ機関を作った理由は私含め、連邦生徒会長本人以外の誰にも分かりませんが……まぁつまり、久侘歌先生にはキヴォトス全体に影響力のある部活の顧問になっていただきます」
つまり私が、キヴォトスの賢者(?)になるってことですよね?
数千もの学園……うまく纏められる気がしません……。
でも、引き受けたからには頑張らないと。
権力に溺れないようにもしないと。
「シャーレの部室はここから約30km離れた外郭地区にあります。今はほとんど何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令で、そこの地下に『とある物』を持ち込んでいます」
「とある物?」
「……これに関しては、説明するより実際に見ていただいたほうが良いですね」
なんでしょう、その部活の顧問の先生専用の道具とかですかね?
普通に資料の可能性もありますけど……。
うっ、
そういえば、昨日の資料、家に置いたままでした……
申し訳ございません映姫様……
リンさんは誰かに電話をかけはじめました。
「……先生」
薄橙の髪の毛の少女が話しかけてきました。
「はじめまして、ゲヘナ学園風紀委員会の
「トリニティ総合学園の
「同じくトリニティ総合学園、自警団の
「庭渡久侘歌です。よろしくお願いします!」
……えっと、
菫色の髪の方が早瀬ユウカさんで、
薄橙の髪の方が火宮チナツさん、
黒髪で長身の方が羽川ハスミさん、
白髪の方が守月スズミさんで合ってますよね?*2
覚えられるかな……*3
「……」
と、私達が自己紹介を終えたとほぼ同時に、リンさんがピキピキしながら電話を切ったか切られたかしていました。
リンさん、この部屋に来てからずっと負のオーラを感じるんですけど、
今のは小町さんがサボってるって私が連絡したときの映姫様のオーラですよ……
一番やばいやつですよ……
「……リンさん、大丈夫ですか? 深呼吸でもします? あ、深呼吸は先に息を吐くといいですよ!」
「そうなんですね……ですが、大丈夫です。少々問題が発生しましたが、大したことではありません」
そう言いながら、リンさんはじーっと此方を見つめました。
「ちょうどここに各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいるので、私は心強いです」
「暇そう」はやっぱり皮肉なんですかね。
普段から映姫様を見てるからわかります、これはそろそろ壊れるやつです。
最悪の場合時すでに遅しの可能性もあります。
喉しか癒せないのが悔やまれます……
「キヴォトスの正常化のために、暇を持て余した皆さんの力が今、切実に必要です。行きましょう」
「ちょ、ちょっと待って!? ど、どこに行くのよ!?」
……なんだか、一筋縄ではいかないような予感がします。
本当にやっていけるんでしょうか、私。