騎士(笑)の日常   作:ガスキン

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今回はキャラ崩壊著しい人物が出て来ますので、原作の性格を大事にされる方はこれ以上読み進めない事をお勧めいたします。


オラリオに騎士(笑)がいるのは間違っているだろうか その四

「行ってきます! 神様、リョーマさん!

 

「ああ、行ってらっしゃい」

 

「夕飯までには帰って来るんだよ~」

 

 オラリオに来てはや二週間。今日も朝からダンジョンへ向かうベル君をヘスティアと共に見送る。何故同行しないのかというと、俺は冒険者になっていないからだ。

 

 俺はベル君を支えると約束したが、なにも一緒に戦う事だけが支える事ではない。彼が冒険者として思う存分活動できるようサポートするのが俺に求められるものだと思ったのだ。

 

 ベル君には最初残念がられたが、「でも、甘えてばかりじゃいられませんもんね! 自分を追い込むためにも一人で頑張ります!」と納得してくれた。

 

 そういうわけで、ヘスティアより冒険者となるために必要な『恩恵』を授かったベル君は晴れて冒険者となった。アビリティという冒険者の能力を数字化されるというシステムを最初聞いた時はゲームみたいだなと思ったものだ。その数字は部外秘だというので俺も部屋の外で待っていたのだが、中からヘスティアの「ほあぁっ!?」なんて声が聞こえて来た時は何事かと思った。何でもないと言っていたが、絶対何かあっただろう。

 

 この『恩恵』がなければ冒険者として認められず、ダンジョンに潜る事は許されないそうだ。なので当然俺も潜る事は出来ない。まあ行く事もないだろうが、いざという時はオルゴン・クラウドでこっそり……。

 

「リョーマ君、ボーっとしてるけど準備しなくていいのかい?」

 

 ヘスティアに声をかけられて我に返る。ああそうだそうだ。今日は朝から出かけないといけないんだった。

 

 冒険者にならなかったのなら、お前は一体この街で何をやっているのかと聞かれたら……。

 

「キミは大丈夫なのか、ヘスティア?」

 

「ああ、今日のバイト先に行くにはまだ時間があるからね」

 

 バイト。そう、アルバイトである。神様の口から出たとは思えない単語だが、なんだかんだベル君の言葉に感動した彼女はこのままでは駄目だと言ってバイトを始めると宣言した。確かに何をするにも金は必要かと思い、俺もそれに倣い二人でバイトを探し回り二日目にはいくつかの募集先に採用してもらった。

 

 そういうわけで、今日も朝からバイトというわけだ。ちなみに、今日のバイト先は「じゃが丸くん」という食べ物を売っている店だ。このじゃが丸くん、割と人気なメニューらしく、味のバリエーションもあってか子どもから大人、男性女性問わずたくさんのお客さんが来店する。

 

「おはようございます」

 

「……おう」

 

「おはようございます、カンザキさん」

 

 店に着くと、店長と先輩がすでにジャガイモの皮むきを始めていた。俺も手を洗い早速そこに混ざる。

 

 店長は四十代の男性で、物静かな人だがまさに職人と言える腕をされていて、今も大小様々なジャガイモが彼の手であっという間にツルツルにされていく。

 

 それには及ばないまでも、先輩もまた器用にジャガイモの皮を剥いていく。五年ほど前からここで働いているという彼女は丁寧に仕事を教えてくれる優しい人で、しかも誰が見ても美人だと答えるくらい綺麗な人で男性客からも人気が高い。

 

 彼女も落ち着いた性格の人なのだが、一つ特徴的な日課みたいなものがあった。

 

 休憩時間中にたまたま彼女が鞄から小さな人形を取り出してそれに数分間祈りを捧げている所を目撃したことがあるのだが、俺が不思議に思っていると先輩が教えてくれた。

 

 先輩は五年前まで冒険者として活動していたのだが、ある時自分を含めたファミリアの人間が別のファミリアの罠によって死にかけるほどの出来事があったそうだ。彼女も腹を深々と貫かれこのまま死ぬのだと思った時、突然どこからか現れた冒険者が自分達を襲ったモンスターを一太刀で倒し、死にかけていた先輩達を見た事も聞いた事もないような魔法で一瞬で回復させただけに留まらず、傍で見ていた犯人をボコボコにした上でファミリアに突撃、残りの団員はもちろん、なんと神様までも斬ったのだとか。

 

 基本神様は死ぬ事はないそうで、団員達も手加減されたのか命に別状はなかったらしいが、斬られた者達はみんな傷が癒えた後も痛みを訴え続けついには発狂してしまったのだとか。神様も「アレは神を殺す! 存在してはならない!」と言い残して天界という元々神様達がいたという場所へ自ら還っていった。

 

 この出来事はとんでもない大事件として世間を騒がせ、先輩達を助けたという冒険者を一斉捜索したが結局現在も見つかっていないらしい。先輩達も何度も事情聴取されたらしいが、その冒険者は全身を蒼い鎧で覆っていて素顔もわからず、一言もしゃべらなかったので男性か女性かもわからなかったとか。

 

 その謎の冒険者は今も神斬(シンザン)と呼ばれ、当時の関係者達の脳裏に深々と刻まれていると先輩は言う。その後、先輩の所属していたファミリアは神様が責任を感じて解散を宣言、今ではこの街の外で暮らしているそうだ。残された団員達は先輩の様に冒険者を引退、または別のファミリアで活動していて今も交流していると先輩は笑顔で語る。

 

 あの時、感謝の言葉すらかけれなかった事が心残りで、記憶を頼りに生産ファミリアに作ってもらったという青銅の人形にこうして毎日感謝の祈りを捧げているのだと先輩は最後にそう締めた。

 

 中々にハードな人生を送られているんだなと思いながら、先輩に断ってその人形を見せてもらったのだが、右手に剣、左手に盾(どっちもなんか変形しそう)を持っていて、胸部に窪みみたいな部分があったり背中に不思議なものを背負っていた。これがロボットだったらビームの発射口とかブースターに見えるんだけど、人が纏ってる鎧なんだから違うだろうし。

 

 「いつか会えるといいですね」と言うと先輩も微笑みながら「そうですね。その時は今度こそあの時のお礼を」と答えてくれた。うーん、こんな素敵な女性に5年間も忘れられずに想われてるなんて羨ましいなぁ。……爆ぜろ。

 

「……そろそろ始めるぞ」

 

「「はい」」

 

 揚げたてのじゃが丸君を袋に入れ店頭に並べる。さて、今日も一日頑張りますか!

 

………

 

……

 

 

 改めて言うが、この店は割と人気で昼時なんかは大忙しになる。その為、それを理解している常連さん達はそれ以外の時間を狙ってスルッと買いに来たりする。

 

「……こんにちは」

 

 噂をすれば早速だ。この綺麗な金髪をなびかせながらやって来たのはこの店の常連さんの一人だ。ちなみに名前は知らない。こっちから尋ねるとナンパと思われて気分を害されて来なくなったら店長に申し訳ないし。剣を下げてるので心の中では冒険者ちゃんと呼んでいる。

 

「いらっしゃい。今日もいつものでいいかな?」

 

「うん」

 

 彼女はお気に入りの味があっていつもそれを頼む。なのでこちらもそんな風に対応する。代金を預かり、熱々のじゃが丸くんを手渡す。

 

「どうぞ、熱いから気を付けて」

 

「ありがとう」

 

 じゃが丸くん片手にそのまま去って行くかと思ったが、冒険者ちゃんはその場を動かない。

 

「ん? もしかしてもう一つ欲しいのかな?」

 

「お兄さん、この後時間ありますか?」

 

 聞く者が聞けば勘違いしそうなセリフを発する冒険者ちゃんだが、生憎彼女が言いたいのはそういう意味じゃない。

 

「もしかして、また話を聞きたいのか?」

 

 俺がそう言うと、冒険者ちゃんは懐から一冊の本を取り出した。

 

「今日はコレ」

 

 その本のタイトルは『鋼の救世主』。……そう、この子もまたベル君と同様この本のファンなのだとか。ただ、ベル君と違う所は、彼女は書かれた部分を自分なりに解釈して物語を広げるのが好きらしい。それで、自分が気になった部分を俺に色々質問してくるようになったのだ。

 

 そもそものきっかけは、店の向こう側で英雄ごっこ遊びをしている子ども達を眺めていて無意識に「英雄……か」と呟いたところをこの子に聞かれた事だった。

 

「あ、いらっしゃいませ」

 

「……」

 

「? どうかしたのかな?」

 

「……お兄さんにとって、英雄って何ですか?」

 

 一瞬、はて? となったが、それが数秒前の自分のつぶやきに対する問いだと気づく。そういえば、おじいさんに聞いたが、この世界では「英雄」って特別な意味を持ってるんだよな。……そういえば、以前にも似たような質問をされた事があったっけ。

 

 そんな事を思い出しつつ、俺は答える事にした。

 

「そうだな。英雄と聞くと歴史に残るような偉業を成し遂げた人間を思い浮かべるけど、俺は人の数だけ英雄がいると思うんだ」

 

「人の数だけ?」

 

「例えば、あそこで遊んでいる子ども達。あの子達が毎日楽しく遊び回れるのも、親御さんが一生懸命汗水流して働いているからだ。大切な家族の為に懸命になって仕事に励む……俺からすればそれだけで十分偉業さ」

 

「あの子達にとっては親が英雄って事?」

 

「ああ。超人的な能力が無くても、歴史に名を残さなくても、世界を救わなくても、人は誰かの英雄になれる。その誰かが多いか少ないかの違いだけだと俺は思う。キミにだって、そういう人達がいるんじゃないかな?」

 

「……私の英雄。そんなの……」

 

「何か言ったか?」

 

「何でもない。なら、お兄さんにもいるの? そういう人」

 

 それはもちろん両親……と答えたいが、初対面の子には中々ショッキングな話になるし、ここまもうちょっと明るい方向にもって行きたいし……。

 

「そうだな、『鋼の救世主』なんか……」

 

「え……?」

 

 っておい! 何でそうなる! ああやばい、俺、ベル君の英雄=鋼の救世主理論に浸食されてる!? いやまあ確かにまごう事なき英雄だが、さっき俺が偉そうに語った内容とそぐわないじゃねえか!

 

「い、いや、今のは―――」

 

「お兄さんも『鋼の救世主』を読んでるんですか……!?」

 

 先ほどまでの無表情から一変、目をキラキラさせながら顔を近づけてきた冒険者ちゃん。その瞬間俺は悟った。この子……ベル君と同じだと。

 

 それから『鋼の救世主』についてもっと話がしたいとせがまれたが、流石に仕事中だと断ろうとしたところで店長が「……休憩行ってこい」と何故か冒険者ちゃんの味方をした結果、近くの広場の芝生に腰を下ろして話をする事になった。

 

 最初に言ったが、冒険者ちゃんは何度も同じ場面を読み返しては登場人物がこの時どう思っていたとか、この裏では実はこうなっていたとか自分なりの考察を披露してくれた。その中には的を射ているものもいくつかあって、聞いている内に面白くなってきた俺はつい口を挟んでしまったのだ。

 

「はは、そうそう。キミの言う通りあの時は出撃前に……」

 

 それがいけなかった。どこにも載っていない情報をスラスラ語りだす俺に冒険者ちゃんは増々興味を持ってしまったらしく。休憩時間ギリギリまで質問攻めにされたのは忘れていない。

 

 それから来る度にソワソワと話を聞きたそうにされるので、休憩時間でよければと答えている内に気づけばこうして休憩時間間際に来店する様になってしまった。

 

「……行ってこい。女の誘いは断るもんじゃねえ」

 

「はい……」

 

「ふふ、行ってらっしゃい」

 

 店長と先輩に見送られ。いつもの場所に向かう。はてさて、今日はどんな事を聞かれるのやら……。

 

………

 

……

 

 

 休憩時間が終わり、冒険者ちゃんと別れた俺は仕事を再開する。別れ際、近い内に遠征するからしばらく来れなくから戻ったらまた話を聞かせて欲しいと言われた。とりあえず冒険者ちゃんの無事を願いつつ彼女を見送った。

 

しばらくすると、最近になって新たに常連さんとなった人物が現れた。

 

「いらっしゃいませ」

 

 この世界には人間と呼ばれる種族が複数存在している。今来店されたのは猪人と呼ばれる種族の男性だ。かなり大柄な人で、そのせいか店長も先輩もちょっと緊張しているように見える。そんな中、毎回彼が小さなじゃが丸くんを美味しそうに食べている姿を見て和む俺。うんうん、こんなに美味そうに食べる人が悪い人なわけないじゃないですか。

 

「今日もお遣いですか? いつもありがとうございます」

 

「うむ」

 

 この人は仕えている人の代わりにじゃが丸くんを買いに来ている。聞くところによると、その主さんがたまたま見かけた俺の仕事ぶりを気に入ってくれたそうで、それから売上に貢献してくれるようになったのだ。言われてみれば、バイトを始めてからどこからか視線を感じた事が何度かあった気がする。流石に空の方から感じたのは気のせいだろうが、それ以外の視線の中にもしかしたら主さんがいたのかもしれないな。

 

 まだ始めたばかりなのにというありがたさと申し訳なさに恐縮しつつ、それなら一度お礼くらい言っておかないとと思って来店をお願いしたが、恥ずかしいからと断られてしまった。ずいぶんとシャイな人なんだろう。

 

「あの方は忙しいからな(礼を言いたいと伝えたら突然鼻歌とスキップを始め、来店を勧められたと伝えたら「え、いや、待って頂戴それは無理。至近距離だなんて尊すぎて直視できない」と目を覆う……やはりあの方の考えは俺の及ぶところではない)」

 

 そう言われてしまっては仕方ない。けど、時間が出来たらいつかは会えたらいいな。

 

「お待たせしました。熱いので気を付けてください」

 

「ああ。また来る」

 

 両手いっぱいに袋を下げて去って行く男性に頭を下げる。今日も美味しく食べてくれればいいんだが。

 

 その後、時間いっぱいまで働いた俺は店を後にした。いやぁ、今日も盛況だったな。あれから他の常連さんも何人か来てくれたし。……あ、でも……。

 

「そういえば、今日は()()()()()()()来なかったな」

 

 マックールさんは小人族という名前の通り四十代でありながら少年の様な姿をしている男性冒険者で、あのロキ・ファミリアに所属している。

 

「やあ、キミが噂のお兄さんだね。僕にも話を聞かせてくれないかな」

 

 初対面でいきなりそんな事を言われて混乱したが、詳しく聞くとあの冒険者ちゃんの関係者との事。男性なら大丈夫だろうと名前を聞いてみると。

 

「へえ、僕の事を知らないのか。……なら、僕の事はマックールとでも呼んで欲しい」

 

 口ぶりからして有名な人なんだろう。偽名っぽいが、知らねえなら自分で調べろバーカって事なのかもしれない。

 

 と思っていたのだが、実際話してみるとマックールさんは凄い人だった。物腰柔らかだし、何より話していてこの人頭いいんだなってすぐに理解できた。なので、そんな彼がロキ・ファミリアに所属していると聞いた時は思わず顔をしかめてしまった。

 

「どうかしたのかい?」

 

 そう気遣ってくれるマックールさんに俺はつい尋ねてしまった。あなたみたいに優しくて落ち着いた人がロキ・ファミリアにいて苦労してませんかと。

 

 どういう意味かと聞いて来るマックールさん。俺は初日にあった出来事を話した。話している内に彼の顔はどんどん不機嫌なものに変わっていった。

 

「試験は厳しいけれど受けるのは自由……ロキ・ファミリアの団長の言葉ですが、俺と一緒にこの街に来た男の子は受けさせてもらえる事無く追い出されました。結局、アレは対外的にイメージを良くしようとしただけの上辺だけの言葉で実際はそうじゃないのか。それとも、団長の考えが団員達に周知出来ていないのか。そんな統制出来ていない組織じゃマックールさんみたいに真面目な人は苦労しているんじゃないかと勝手に思っただけなんですが」

 

「……いや、ありがとう。大事な事を教えてもらったよ。この件は責任を持って僕が()()()()()()()()()()

 

 言い聞かせて? ああ、もしかして団長さんに直接言ってくれるのかな?

 

「しかし、それでマックールさんの立場が悪くなったら」

 

「心配は無用さ。その男の子への対応も問題だが……初対面で男娼呼ばわりなんて冒険者以前に人間として論外だ。とにかく、後は僕に任せておいてくれ」

 

 やけに迫力のある雰囲気のままマックールさんは去って行った。その数日後に来店した時には「当事者にはしっかり話をつけた」と言っていたが、あの二人は上手い事反省してくれたのだろう。マックールさん……やっぱり凄い人なのかも。

 

 と、マックールさんの事を考えている内にホームへ戻って来ていた。地下に向かうと二人の姿はない。ベル君はダンジョン、ヘスティアはまだバイト中かな。ならとりあえず、片付けでもするか。初日からチマチマやってるがまだ十分じゃないしな。

 

 そうして、二人が帰ってくるまで俺は部屋のホームの掃除に勤しんだのであった。

 

………

 

……

 

 

 そうしてさらに半月後、バイトから帰宅したらヘスティアが先に戻っていた。

 

「やあ、お帰りリョーマ君。今日もお疲れ様だ」

 

「ヘスティアもお疲れ様。ベル君はまだか?」

 

「もうそろそろ戻って来ると思うけど」

 

 などと会話している間に上の方からどたどたと足音が聞こえて来た。

 

「はぁ……はぁ……た、ただいま帰りました」

 

「ど、どうしたんだいベル君!? そんな息を切らして!」

 

「はぁ……はぁ……。き、聞いてください二人とも! 今日、凄い人に会ったんです!」

 

 ベル君の出会ったという凄い人。果たしてどんな人物なのか。まあ、それを聞く前にまずは……。

 

「水でも飲むか?」

 

 この汗だくのベル君を落ち着かせないとな。

 




はてさて、今回登場した人物達。いったい何者なんでしょうかね。

怪物祭りまではなるべく早めに更新したいと思ってます。
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