騎士(笑)の日常   作:ガスキン

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今回はオリ主サイドです。ちょっとだけ頑張ります。


オラリオに騎士(笑)がいるのは間違っているだろうか その八

「うおっ!?」

 

「きゃっ!?」

 

「な、何だ!?」

 

 轟音と風圧にビックリしている人達を()()()俺はベル君とヘスティアを探し回っていた。逃げ惑う人々を避けながら進むよりこの方が早い。迷惑をかけて申し訳ないが、緊急事態なので勘弁してもらおう。

 

 この街は複雑に入り組んでいるから探すだけで一苦労だ。ベル君なら無茶はしないと思うが、それでも早く見つけないと。

 

 「ニャニャ! ウチの店を襲おうだなんてふてえ奴らだニャ!」

 

『豊饒の女主人』の近くに差し掛かったところでそんな声が耳に届く。目を遣ると、まさに店の目の前で数人の女性が狼の様な動物に囲まれていた。あれが本物のモンスターか。

 

(危ない!)

 

 俺はロクに状況も確認せずすぐさまその場に突っ込んだ。頭上から一頭のモンスターに向かって剣を振りぬき、そのまま着地と同時に盾で数匹まとめて殴り飛ばす。その勢いのままその場で一回転し後方に並んでいた三頭を剣で切り捨てる。

 

(ふう、腕は鈍ってないようだ)

 

「だ、誰……?」

 

 突然の乱入者に固まる女性達。あ、お邪魔しました。見た所みなさん怪我とかないようだし、俺はこれで失礼しますね。

 

「お、お待ちください! あなたは……あなた様はまさか……!」

 

 すぐさま焔を吹かし空中に飛び込む。なんか声をかけられたような気がするが急いでいるのでごめんなさい。

 

「と、飛んだぁ!?」

 

 俺は再びベル君達を探しに向かうのだった。

 

「あ、ああ……!」

 

「ど、どうしたのニャ、リュー!? 今のすっ飛んでいった()()を知ってるのニャ!?」

 

「あの剣……あの盾……そして、あの背中に背負う蒼き焔。……忘れるはずがない。アストレア様、私はまたしても()()()に救われました……」

 

………

 

……

 

 

 このまま闇雲にさがしていいものかと悩む俺だったが、突如として閃いた。追われているという事はつまり騒ぎの中心にいるという事だ。ならばそういう場所を目指せばいいのだと。

 

 そう結論づけてそれっぽい所に突き進む。するとバキバキと物が破壊されたのであろう音や人々の怒号が聞こえて来た。もしや、しょっぱなで当たりを引いたか?

 

「レフィーヤ、避けてぇ!」

 

 違ったぁぁぁぁぁ! けどあの女の子が危ないぃぃぃぃぃぃぃ!

 

 気色の悪いウネウネした物に襲われそうになっている女の子の前に盾を構えて滑り込む。間髪入れずにウネウネがぶつかって来たが、大した衝撃ではなかったので盾で受け止めたまま剣でウネウネを斬り飛ばす。何とも言えない色の液体をまき散らしながらウネウネが地面でビタンビタンしているのを尻目に俺は女の子に目を遣る。

 

「……間に合った」

 

 なんとか助けられた事に俺は無意識に声を漏らしたのだった。

 

SIDE OUT

 

怪物祭り当日、アイズ・ヴァレンシュタインは同じファミリアの仲間と共に街へ繰り出していた。

 

 そこへ突如としてもたらされたモンスター脱走の報。偶然出くわしたギルド職員から詳細を聞かされたアイズ達はその場で討伐依頼を受諾。すぐさま動き始めた。

 

 武器を携帯していたのはアイズのみであったが、彼女に同道していたアマゾネスの姉妹ティオネ・ヒリュテとティオナ・ヒリュテは素手でも十分に戦える実力を持ち。魔法を得意とするレフィーヤ・ウィリディスというエルフの少女の援護によりあっという間に鎮圧を完了した。

 

 住民や出店者の避難も完了し、後はギルドに任せればいいと気を抜きかけたその時、突然地面を突き破り触手の様なものがアイズ達の前に現れたのだった。

 

 しかし、冒険者としてこれくらいの奇襲は何度も味わってきた彼女達はすぐさま反応し、ヒリュテ姉妹が揃って拳を叩き付けたが……。

 

「うげ、何この感触!?」

 

「ブヨブヨでまともに殴れないよ!」

 

 そこらの雑魚モンスターなら一撃で絶命させるほどの拳を受けても触手の動きは止まる事は無い。その間にも触手は数を増やし、モンスターの本体であろう花の部分が完全に地上に姿を現した。その数、三体。

 

「だったら……!」

 

 まさに疾風とも言える速度でアイズがモンスターに斬りかかる。衝撃には強い半面、斬撃には耐性がないのか、触手は簡単に斬り落とされた。

 

「さっすがアイズ! 頼りになるぅ!」

 

「でも、触手だけいくら斬ってもキリがないよ。早く本体を倒さないと」

 

「ま、任せてください!」

 

 アイズ達ばかりに戦わせるわけにはいかない。焦る気持ちでレフィーヤは詠唱を開始した。そう、遮蔽物も何もないモンスターの真正面で。

 

「レフィーヤ、避けて!」

 

「え……?」

 

ティオナの叫びにレフィーヤが反応した時点で、すでに触手は彼女の眼前に迫っていた。そこでレフィーヤは己の失態を悟った。

 

 魔法職が前衛で戦う事は無い。故にモンスターの攻撃にさらされる回数も前衛に比べれば少なくて済む。それはつまり、前衛に比べ“耐久”がほとんど無いという事だ。

 

 そんな自分が、あんな巨大な触手に穿たれたらどうなるか。その答えは考えるまでもなかった。

 

「っ……!」

 

迫りくる“死”を前に、レフィーヤの頭が真っ白になる。視界の端でアイズが必死の形相で自分に手を伸ばしているのが見えた。

 

(アイズさん、私……)

 

 間に合う距離ではない。それが理解できてしまったレフィーヤは静かに目を閉じた。いずれ自分を襲うであろう痛みを想像しながら。

 

(……………………あれ?)

 

 しかし、いくら待っても痛みどころか衝撃すらやってこない。まさかそれすらも感じる事なく自分は死んでしまったのか。

 

 そうして恐る恐る目を開けた彼女の目に映ったのは、醜悪なモンスターの姿でも、慕っている女性の顔でもなく……鮮やかな“蒼”だった。

 

(な、何が起こって……)

 

 刹那、触手が宙を舞う。そのまま地面に落下したそれは数回ほどのたうち回ったあと動かなくなった。

 

「……間に合った」

 

「え?」

 

 レフィーヤの目の前に立っていたのは全身を蒼い鎧で覆う人物だった。そうして彼女は自分が見ていたのはこの人物の背中で、触手から自分を守ってくれたのだと理解した。

 

 顔は隠されているが声からして男性だろう。しかし、レフィーヤにはそれ以上に気になる事があった。間に合ったと口にした彼の声に心からの安堵と喜びが込められていたからだ。

 

(どうして、見ず知らずの私を助けたくらいでそんな……)

 

「レフィーヤ、無事!?」

 

駆け寄るアイズ達にレフィーヤは抱いていた疑問をしまい込み頷く。

 

「はい、この人に助けてもらいましたから」

 

「よかったぁ。アンタ、どこのファミリアの冒険者か知らないけどやるじゃん! ありがとね!」

 

「突然現れたからビックリしたよ。というか剣デカ!」

 

 突然の乱入者ではあるが、仲間を救ってくれた恩人に変わりはない。礼もそこそこにティオネがモンスターを指差す。

 

「アイツ、打撃が効きにくいんだよね。アンタの剣ならさっきみたいに触手もぶった切れるみたいだし、アイズと一緒に任せてもいい?」

 

 ティオネの説明に冒険者は応えない。しかし、その代わりとばかりに突然彼女に向かって手をかざした。

 

「なんの真似……って、え、何コレ……」

 

「お姉ちゃん?」

 

 不審な行動をする冒険者に怪訝な目を向けるティオネだったが、その顔が驚きに染まる。何が起きたのか尋ねようとした妹を残し、なんと彼女はモンスターに向かって走り始めた。

 

「な、何するつもりなのお姉ちゃん!?」

 

「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 これが答えだとばかりにモンスターを殴りつけるティオネ。その結果、殴られた箇所の肉が派手に千切れ飛んだ。

 

「は、はは……ホントにいけちゃった」

 

 殴った当人が信じられないとばかりに己の拳を見つめていた。

 

「ええ!?」

 

「す、凄いですティオネさん! まだ力を温存してたんですね!」

 

「……違う」

 

「え?」

 

 称賛の声をあげるレフィーヤにアイズが否定の声をあげる。

 

「ティオネは最初から全力だった。今のはこの人がティオネに何か魔法をかけたんだと思う」

 

「アイズの言う通りよ。なんか急に力が湧いて来たからものは試しと思って殴ってみたら通じちゃった。間違いなく、コイツが私に何かしたおかげよ」

 

 納得する両者に対し、レフィーヤが反論の声をあげる。

 

「ま、待ってください。この人、詠唱どころかいま一言もしゃべってなかったですよ!? それなのに魔法を発動させたなんてありえません!」

 

 通常、魔法を発動するにはそれに対応する詠唱を行わなければならない。しかし、レフィーヤの言う通りこの冒険者は全くそれを行ったそぶりは見せていない。それは彼女にとって到底信じられるものではなかった。

 

「そういうスキルを持ってるんじゃないの? それに、そんな事は今は問題じゃない。いま大事なのは、コイツがいれば私達の攻撃が通じるって事! さあ反撃開始よティオナ、アイズ!」

 

「了解! じゃあ、えっと。援護よろしく、蒼鎧君!」

 

「お願いします」

 

 モンスターへ立ち向かう三人へティオナが蒼鎧君と呼んだ冒険者は先ほどと同じように手をかざす。変化はすぐに現れた

 

「おお、来た来た来たぁ!」

 

「凄い、ホントに力が溢れてくる」

 

「……いける」

 

「みなさん!」

 

「レフィーヤも援護して! 大丈夫! 詠唱中はそこの蒼鎧が守ってくれるはずよ!」

 

 すると、任せろと言わんばかりにレフィーヤの前に立つ冒険者。再び目にするその背中に頼もしさを覚えた彼女は慌てて頭を振る。

 

(こ、こんな得体の知れない相手に私は何を……ま、まあ、助けてもらった事は事実だけれど)

 

「そっち! 触手が行ったよ!」

 

 複数の触手がうなりをあげてレフィーヤ達へ迫る。しかし、冒険者の右腕がフッとブレたかと思った瞬間、迫りくる触手達はその全てが両断され地に伏せる。

 

 自分では視認すら許されない超高速による迎撃をしてみせた冒険者にレフィーヤは何度目かわからない驚愕に顔を染める。同時に、彼がいれば自分の元に触手が飛んでくる事は無いと確信した。ならば、自分がやるべきことは……。

 

「解き放つは一条の光、聖木の弓幹。汝、弓の名手なり」

 

「やっちゃって、レフィーヤ!」

 

 レフィーヤの詠唱を聞き届けたアイズ達が左右に飛ぶ。そして、冒険者もまた己の役目は終えたとばかりに彼女の横へ下がる。そうする事で再びレフィーヤとモンスターとの間に遮るものがなくなった。しかし先ほどとは違い、彼女は既に詠唱を完了している。

 

「アルクス・レイ!」

 

 放たれたのは対象を追尾する光の矢。しかし、主神であるロキから「馬鹿魔力」と評され、副団長である「九魔姫」リヴェリア・リヨス・アールヴにいずれ後を継ぐものとして期待されているほどの可能性を秘めた彼女の発動させたそれは、杖を持たない今の状態ですらもはや矢と呼べるレベルのものではなかった。

 

 眩い光線がモンスター二体の腹部を呆気なく貫く。これが最期とばかりに触手を無造作に動かした後、モンスター達は動かなくなった。

 

「よくやったわレフィーヤ!」

 

「い、いえ、皆さんと……この人のおかげです」

 

 隣の冒険者に目を向ける。彼は相変わらず何もしゃべらず、その顔色をうかがう事も出来ないが、レフィーヤにはどうしてか、冒険者が称賛の意を示しているとわかった。

 

「っ……」

 

 それがどうしてか気恥ずかしくなり、レフィーヤはプイッと顔を背ける。けれど、そこに不快なものはなかった。

 

「ちょっとちょっと! まだもう一体いるの忘れてない!」

 

 ティオナの言う通り、射線からずれていた最後の一体は未だに健在である。するとそこでティオネの方が意外な提案をしてみせた。

 

「蒼鎧、後ろで守ってばかりで欲求不満なんじゃないの? アレ、アンタに譲ってもいいわよ?」

 

「お姉ちゃん……」

 

「何よその顔? いいじゃない。みんなこの謎の冒険者君の実力、気になるでしょ?」

 

「……ん」

 

「アイズさんまで……」

 

 ニヤニヤする姉と剣を収めるアイズに、妹とレフィーヤはそれぞれ溜息を吐く。

 

「それじゃ、好きにやっちゃっていいわよ。ああ、もしヤバくなったら助けてあげるから心配しないでね」

 

 四方から見つめられた冒険者は、観念したのか一歩踏み出すと左手に構えていた盾を掲げる。近くにいたレフィーヤは駆け足でその場を離れた。

 

 変化はすぐに始まった。アイズ達が見守る中、駆動音と共に盾がその形を大きく変えていく。やがて、身を守るための盾だったものは、冒険者の左腕を覆う巨大な剛爪となった。

 

「うわ、エグ……」

 

 指先で軽く触れるだけで斬り落とされそうなその凶悪な様相に思わずティオナは顔をしかめる。

 

―――ィィィン。

 

「?」

 

―――ィィィィィィン。

 

「ねえ、何か聞こえない?」

 

―――キィィィィィィン。

 

「あの人の後ろの方から聞こえ……」

 

―――キィィィィィィィィィィィィィン!

 

「ひゃあっ!?」

 

 四人の耳にどこからか聞きなれない音が聞こえて来た。まさか新手かと周囲を警戒しようとした瞬間、轟音と暴風がアイズ達を襲った。

 

「ちょっ、一体なに……が……」

 

「ティオネ?」

 

「ね、ねえみんな……アイツ()()()()()()

 

 ティオネが指さす先……そこには鮮やかな蒼い炎を背負い空中に浮いている冒険者の姿があった。

 

「な、何!? どういうカラクリ!?」

 

 見た事も無い芸当を見せる冒険者にティオナが思わず声をあげる。そんな中、アイズは驚愕

に目を見開き呟いた。

 

「……ブースターだ」

 

「ぶうすたあ?」

 

「し、知ってるんですか、アイズさん!?」

 

 レフィーヤの問いにアイズは答えない。何故なら彼女も信じられない思いでこの光景を眺めていたからだ。アイズの知る()()の中にしか存在しないはずの物が、現実に存在していたのだ。

 

 アイズの思考はあの冒険者の事でいっぱいになった。自分達の危機に駆け付け、見た事も無い力を使いこなし、極めつけは物語の英雄達と同じものを持っている。

 

(鋼の……救世主。私の……私の英雄……!)

 

―――いつか、アイズにもこの物語の様な英雄が来てくれるといいわね。

 

幼い頃、母親に読み聞かせてもらった『鋼の救世主』。読み終えた母親の言葉に、笑顔で頷く自分。それは今も決して忘れる事の無い記憶だった。

 

「ね、ねえ、もうちょっと離れた方がよくない?」

 

「そ、そうね。とりあえずあっちの方へ避難……」

 

 間違いなくこれからとんでもない事が起こる。そう予感したティオネ達だったが、移動は間に合わなかった。冒険者はモンスターに向かって突撃を開始した。

 

「~~~~~~~!」

 

 モンスターは本能で理解した。アレを近づけてはならない。近づけたら最後、自分は狩られると。

 

 残った全ての触手を駆使し、冒険者を近づかせまいとするモンスター。しかし、彼はまるで滑っているかの様に縦横無尽に空中を舞い、捕らえるどころか触れさせる事すらさせなかった。

 

 左腕の爪が甲高い音を立てながら展開する。それは眠っていた狩人が獲物を前にして目覚めの声をあげたかのようにレフィーヤには聞こえた。

 

 最早出鱈目に触手を動かすしか出来なくなったモンスターの頭上に影が差す。それにモンスターが気づいた時には何もかもが遅かった。

 

 剛爪一閃。それが全てを終わらせた。

 

 その凄まじき威力は、モンスターの体を引き裂いただけではなく、その背後の地面にまでその爪痕を残していた。その有様に戦慄するアマゾネス姉妹とレフィーヤ。それでも、アイズは熱の籠った目線をひたすら冒険者へ送っていた。

 

 その冒険者は、もはや役目は済んだとばかりに空中から周囲を見渡し、東の方へ顔を向けると再び背中に炎を灯した。

 

「ま、待っ……!」

 

 距離があったためか、アイズの静止の声は届かなかった。彼女は胸に手を当てながら、冒険者が消えて行った方角をいつまでも見つめていた。

 

「私は……私は、アイズ・ヴァレンシュタイン。あなたは……誰ですか?」

 

IN SIDE

 

 いやあ、花の化け物は強敵でしたねぇ。……なんて言ってる場合じゃないか。けど、あの状況で女の子を守らない選択肢はなかったし、もし女の子を無視してベル君を見つけたとしても絶対彼に軽蔑されていただろうしな。

 

 ただ、まさかあそこにヴァレンシュタインさんがいるとは思わなかった。多分一緒に戦っていた女の子達もロキ・ファミリアの団員達だったんだろう。正体がバレたら絶対にややこしい事になると思って()()()()()()()()()()()()()()()()大丈夫だろう。

 

 けど、モンスターってあんなデカいヤツもいるのか。精神コマンドで援護だけしてればいいと思ってたらいきなり倒せとか言われた時は焦ったわ。あんなのに毎日挑んでる冒険者って凄いんだなぁ。

 

 そんな感想を抱きつつ、俺はベル君探しを再開した。……のだが、結局俺が間に合う事は無く、追っていたモンスターはベル君自身が倒してしまったらしい。

 

 役に立てなかった申し訳なさと不甲斐なさに落ち込みつつ、俺は一足先にホームへと戻るのであった。

 

SIDE OUT

 

「ッ~~~~~~~~~!」

 

 この街で最高級の素材で作られた机を、痛む事などまるで気にしないかのようにバンバンと叩きながら悶絶する主神の姿を見て猪人の彼はくつくつと笑った。

 

(ふっ、()()め。また何かやらかしたな)

 

 彼が思い浮かべるのは、最近になって主が目をつけた二人の内、蒼い髪を持つ青年の顔だった。彼に関わる様になった事で、主は今まで見た事も無いような様々な表情を見せてくれるようになった。

 

 今もまた、つい数分前まで優雅にお茶を楽しんでいたはずの彼女が、自分の前で百面相をする様子に不遜であるとは承知しつつ、楽しくて仕方がなかった。

 

 猪人の彼にとって、青年はある意味恩人と呼べる存在であった。故に、彼もまた青年に対し、好ましい感情を抱くようになっていた。あの店に顔を見に行くのが楽しみに思えるくらいには。

 

「何か面白いものでも見れましたか()()()()()?」

 

「オ、オッタ! んぐ! 聞いてちょうだ! ああ! 彼! まさか彼! おえっ! シンザ! ファァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

「落ち着いてくださいフレイヤ様。お話なら後でじっくり聞かせていただきますので……まずは鼻血を吹きましょうか」

 

 用意していたタオルを手に、オラリオ最強と称されしレベル7の冒険者にしてフレイヤ・ファミリアの団長、『猛者』オッタルは敬愛する主神へと近寄るのであった。

 




オリ主の力って何? と気になられた方はぜひともD×D小説の方も読んで頂けると嬉しいです。

次回上手くまとめられれば最終回の予定です。

あと、オッタルがオリ主に感じているのは親しみであって断じてアッー! の方ではありませんのであしからず。

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