騎士(笑)の日常   作:ガスキン

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D×D小説執筆中の2代目パソコンが逝ってしまったのでむしゃくしゃして書いた。短編なんで設定やらなんやらもう滅茶苦茶なんで注意。




IF
もしも騎士(笑)がスパロボ世界に転生したら


『なあ、アンタ。別の世界に興味あらへん?』

 

 明くる日の朝、唐突にオカンからそんな連絡が入った。どういう意味ですか?

 

『いや、アンタはウチの勘違いでその世界に行くことになったやろ。楽しそうに暮らしてくれとるからええんやけど、その勘違いがなかったら今頃どんな風に過ごしとるんやろうかなって……』

 

 まだ気にしてたんですか? すでに謝罪してもらってますし、俺は気にしてません。むしろ感謝してるくらいですから。

 

『ありがとな。けどウチ、こういうの一度気にしだしたら収まらんのよ。せやから、どうやろ。今回は転生なんて大げさなもんやなくて、アンタの“もしも”を体験してみいひん?もちろん、こっちの世界に影響は無いから安心してくれてええで』

 

 なんかいつも以上にぐいぐい来るなぁ。けど、そうだな……ここまで言ってもらえてるんだし、ちょっとだけ体験してみるのもいいかもな。

 

『よっしゃ! そういう事ならさっそく始めよか! さっきも言うたけど、体験が終わったらちゃんとこっちの世界の今の時間に戻したるから安心しいや』

 

 わかりました。ところで、体験時間はどれくらいですかね?

 

『そうやな……向こうで天寿を全うする程度や』

 

 ああ、なるほ……え?

 

『ほな、行ってら~~』

 

 ちょ、ま、それ長すぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!

 

………

 

……

 

 

「……真。亮真」

 

「っ……!?」

 

 気づいたら目の前にナイスミドルなおじさまの顔があった。え、何これどういう状況!?

 

「はは、緊張しているのか。大丈夫だ。今回の謁見はシャナ=ミア様からのご希望だ。お前ならばきっと仲良くできるはずだ」

 

 ふむふむ、どうやら俺はこのおじさまと一緒に今からシャナ=ミア様という人に会いに行くみたいだな。……はて、シャナ=ミア? シャナ=ミアってもしかしなくてもあの……。

 

「エ=セルダ・シューン。息子、リョウ=マ・シューンを伴い参上した。皇女様に取次ぎを」

 

「はっ!」

 

 気づいたら巨大な扉の前にたどり着いていた。剣を持った男性が中に入り、しばらくして戻ってきた。

 

「どうぞ。シャナ=ミア様。アル=ヴァン様がお待ちです」

 

「うむ」

 

 ……もう疑いようないなこれ。シャナ=ミア。エ=セルダ。そして先生(アル=ヴァン)

この名前から導かれる答えは一つしかない。

 

 開かれた扉の向こう。美しい花に囲まれた庭園のような場所にその二人はいた。

 

―――椅子に座り、こちらを見てふわりと微笑む少女。

 

―――少女の背後に立ち、鋭い視線を向けてくる騎士然とした男性。

 

 間違いなく初対面。けれど見覚えのあるその顔を見て俺は心の中でつぶやいた。

 

(あ、J世界だわこれ……)

 

 しかも、状況から察するに俺、統夜ポジじゃん。なのに名前亮真なんですけど。あれか、本名プレイか。誰だこんな設定にしたの。

 

『ふふーん』

 

 いや、うん、まああの人だな。それ以外考えられんわ。

 

「待っていましたよエ=セルダ」

 

「申し訳ありません。シャナ=ミア様。どうも息子が緊張しているようでして」

 

「まあ! うふふ、そんなに緊張されなくてもいいのに」

 

「この場所に来てからそわそわと落ち着かないご様子だったのはどなたでしたかな」

 

 笑顔の少女に背後の男性も笑いながらそうツッコむ。すると見る見るうちに少女の顔が赤らんだ。

 

「も、もうお従兄様!」

 

「シャナ=ミア様。私の事はアル=ヴァンと」

 

「いいのです。ここには私たちしかいないのですから」

 

「しかし……」

 

「ははは! シャナ=ミア様がこうおっしゃっているのだ。いいではないかアル=ヴァン

 

「……仕方ありませんね」

 

「と、ところで、そちらの方が……」

 

「ええ。リョウ=マ。皇女様に挨拶しなさい」

 

ええ……。皇女様に挨拶なんてハードル高すぎでしょう。仕方ない。向こうで培った騎士ムーブで乗り切ってやる。

 

(そう! 俺は騎士! 目の前の皇女様に使える最高の騎士!)

 

俺は少女の前で片足立ちとなり、そっと彼女の手を取った。

 

「え……」

 

「うん……」

 

「ほう……」

 

 固まる皇女様。目を丸くするおじさま。興味深そうな男性。三者三様の反応を見せる中、俺は口を開いた。

 

「……私のような者にこうして尊き方のお顔を拝見する機会を頂き、この亮真、望外の喜びに打ち震えております。これ以上を望める身ではありませんが、もしもお慈悲を頂けるのならば、皇女様のお名前を口にするお許しを頂ければと存じます」

 

 よし、満点とは言えないだろうが、それっぽく出来たぞ。あの人曰く「フューリーさん、最後に手の甲にキスすれば完璧だよ!」らしいが、僕にそんな度胸はありません。

 

「……」

 

「シャナ=ミア様?」

 

「え? あ、は、はい! ゆ、許します!」

 

 なんかポヤポヤしてた少女が男性に促されて慌てて頷いてきた。うーん、あれでもまだ及第点じゃなかったんだろうか……。

 

 まあ、失敗してしまったのなら仕方ない。それより許可もらったんだし呼ばないと失礼だな。

 

「ありがとうございます、シャナ=ミア様。私の事は亮真とお呼び下さい」

 

「は、はい、リョウ=マ……」

 

 こうして、俺は少女……シャナ=ミアちゃんの名前を呼べるようになりましたとさ。……ところで、彼女の声は初めて聞いたわけだが、なんだろう……女の子なのに「オッス!」って言わせたい気がする。

 

「さすが、エ=セルダ殿のご子息ですね。この幼さで既に騎士としての立ち振る舞いを覚えているとは」

 

「いや、私も教えた覚えはないのだが。亮真、お前どこでそんな挨拶を覚えたのだ?」

 

 え? あー、やべえ。とりあえずごまかさないと。

 

「ネットで昔の騎士の立ち振る舞いを調べたんだよ。それからひたすら反復練習しただけさ」

 

「そうか。そういえば確か最近PCを買ったばかりだったな。早速活用していたわけか」

 

「付け焼刃だけどね。一杯一杯だったよ」

 

「そんな事はない。見事な挨拶だったよ」

 

「ありがとうございます。先生にそう言ってもらえると嬉しいです」

 

「先生?」

 

「あ、す、すみません。俺のお世話になってる人に似ていたもので」

 

「そういう事か。何、気にしていないさ。私の事はアル=ヴァンでいいが……なぜだろうな、キミにそう呼ばれる事を喜んでいる自分がいる」

 

 流石、先生の優しさは天井知らずやでぇ。

 

「リ、リョウ=マ。お従兄様とばかりではなく、私ともお話しましょう」

 

「ああ、失礼しましたシャナ=ミア様」

 

「さ、様はつけなくていいですから。ほら、あちらに私のお気に入りのお花があるんです。見に行きましょう」

 

 俺の手を引き走り出すシャナ=ミアちゃん。ああ、そんなに慌てたらこけちゃうぞ。

 

「早速仲良くなったようで何よりだ」

 

「ええ。ですが、リョウ=マ君は将来苦労しそうですね」

 

「どういう意味だアル=ヴァン?」

 

「主に女性関係で。……結婚される前のあなたの様に」

 

 その場から去った俺達の背後でそんな会話がされている事に俺は気づかなかった。

 

………

 

……

 

 

さて、そんな出会いから数年が経った。ここまでくるとオカンが言っていた天寿を全うするまでが現実味を帯びてきたが、ここまで来るともう受け入れるしかない。

 

結局、シャナ=ミアちゃんと先生に会えたのはあれが最初で最後だった。そして、それからは俺の予想通りの日々が待ち受けていた。

 

まず、エ=セルダ……父さん(色々抵抗があったがようやく呼べるようになった)が俺の前から姿を消した。覚悟していたがやっぱりショックはでかい。俺は二人目の父親を失った……はずなのだが、不思議な事に生活費がずっと振り込まれ続けている。確か、統夜は遺産で生活していたはずなのにこの違いは何だろう。生きていてくれているのならばこんなに嬉しい事はないが……。

 

次に、この世界の情勢だが、Dr.ヘルだったりオルファンだったりとこちらに乖離はなさそうだった。物騒なのは物騒だが、そんな連中から人々を守る正義の味方達のおかげで割と平和に暮らせている。

 

そして、俺は成長し、高校生となった。……のだが、ここでも予想外の出来事が俺を待っていた。

 

「亮真先輩! 卒業おめでとうございます!」

 

「これ、私達からです」

 

「花のチョイスはオレ様とさやかでやったんだぜ!」

 

「ありがとう、()()()()()()()()

 

 花束を受け取った俺を満面の笑みで見つめてくる三人。左から兜 甲児君。弓 さやかさん。そしてボス君。改めて説明する必要も無いが、Dr.ヘルの機械獣から日本を守ってくれる鉄の城「マジンガーZ」のパイロットとその仲間達だ。そんでもって、本来ならば俺は彼らと同級生になるはずだったのだが……どういうわけか先輩となってしまっていた。シャナ=ミアちゃんが年下っぽかった時点で気づくべきだったが、どうも本来の年齢から二歳上になっているようだった。まさか、こっちでも“先輩”になるとは思わなかったよ……。

 

「やけにセンスのいい花束だな。ホントにボスが選んだのか?」

 

「ふっふっふ。花屋でバイトした経験が活きたぜ。他でもねえ先輩のためだ。オレ様のセンス全開で選んだんだ、間違いはねえ!」

 

「ああ、本当にきれいだよボス君」

 

「へへ、アンタに喜んで貰えたんなら何よりだぜ」

 

「先輩、卒業してもいつでも会いに来てくださいよ!」

 

「研究所に来てくれたらいつでも歓迎しますから!」

 

「ありがとう。必ずお邪魔させてもらうよ」

 

 三人と別れ、級友たちとも挨拶を交わした後、俺は帰路についた。道すがら、兜君たちの事を思い出す。一年しか交流できなかったけど、みんないい子たちだった。

 

 (彼等が進級する四月以降、始まるのはそこからか……)

 

 多分、トリガーとなる“夢”をそろそろ見る事になるだろう。“彼女”が俺に向けて送るメッセージ。全てが動き出すその時が……。

 

………

 

……

 

 

―――許して…どうか許してください…。

 

(来た……)

 

 卒業式から二週間後、俺の目の前に祈りを捧げる“彼女”がいた。

 

―――もう私には止めることができない。私には止められないのです。滅びるべきは私達、立ち去るべきは私達。この世界はあなたがた子ども達のものなのに。待ち続けた永き刻のその暗闇の冷たさがすべてを狂わせてしまった。どうか…力なき私を許してください。

 

 ここで見ているだけ……というわけにはいかんな。というわけで突貫します!

 

「シャナ=ミアちゃん」

 

「ッ……!」

 

 恐る恐るといった様子で顔を上げるシャナ=ミアちゃん。そして俺を確認するとその目を大きく見開いた。

 

「リョウ=マ……リョウ=マなのですか?」

 

「何年振りだろう。大きくなったね」

 

「リョウ=マ!」

 

 弾かれる様に駆け出したシャナ=ミアちゃんがそのまま俺の胸に飛び込んできた。

 

「リョウ=マ! ああ、リョウ=マ! 会いたかった! ずっとあなたに会いたかった!」

 

「シャナ=ミアちゃん。ここは? 俺は夢を見ているのか?」

 

「ええ、ここはあなたの夢の中です。サイトロンの力でこうして直接あなたの元へ私の意思を届けに来ているのです。あなたに……あなた達の住む星の皆さんに危機を伝えるために」

 

 あー、やっぱり絶望総代さん動き出しちゃったか。死んでいった人達に報いたいっていう気持ちは素晴らしいけど目的と手段がごっちゃになってんだよなあの人……。

 

「名ばかりの皇女となってしまった私にはもう彼等を止められません。同胞達の想いを果たしたい。ですが、その為にこの星に住む人々を害していい理由にはならないというのに……」

 

 涙を滲ませるシャナ=ミアちゃん。俺はそんな彼女の涙を拭……わずに、そのやわらかいほっぺをムニっと掴んだ。

 

「ふえっ? リ、リョウ=マ?」

 

「シャナ=ミアちゃん。何を悩んでいるか知らないが、あの時、交わした約束を忘れたのか?」

 

「約……束……?」

 

 庭園で二人きりになった時、シャナ=ミアちゃんは俺にこう言った。「将来、私の騎士になってくれませんか。私の傍で私を助けてくれませんか」と。

 

「……あの時、あなたは騎士になれるかどうかわからないからと言いましたね」

 

「けれど、こうも言ったはずだ。騎士としては無理かもしれないけど、友人としてならばいつでも力になるって」

 

「友……として?」

 

「ああ。きっと父さんもその為に俺達を合わせたんだと思うんだ」

 

 父さんが言っていたきっと仲良くなれるというのはきっとそういう期待を込めて言った言葉だと俺は思う。

 

「詳しい事情はわからないけど。キミが困っているのならば……俺は全力でキミの力になるよ」

 

「リョウ=マ……」

 

 シャナ=ミアちゃんはぼうっと俺の顔を見つめた後、決意したかの様に頷いた。

 

「……ありがとうございます。私も決心がつきました。リョウ=マ。あなたの力を私に貸してください」

 

「ああ」

 

 周囲の景色がゆがみ始める。そろそろこの夢から覚める時間のようだ。

 

「リョウ=マ! 私は……私はいつでもあなたを想っています!」

 

………

 

……

 

 

 その日、俺は久しぶりに高校への道を歩いていた。周囲には制服を着た子達の姿も見える。

 

「ほら急ぎなさい! もうチャイムが鳴るわよ!」

 

 校門前に立つ先生が生徒達を促す。懐かしい顔に俺もついそちらへ足を向ける。

 

「おはようございます神楽坂先生」

 

「え? あ、あら、ひょっとして紫雲君!?」

 

「はい、お久しぶりです」

 

「ええ、ホントに! 今日はどうしたの? 学校に用事?」

 

「いえ、先生の顔が見えたんで挨拶をと思いまして」

 

「ふふ、礼儀正しさは変わっていないわね。……あの子達にキミの爪の垢を煎じて飲ませてあげ……」

 

 先生が玄関の方へ視線を向けようとしたその瞬間、突如として警報が鳴り響いた。

 

「な、何!? 空襲警報!?」

 

「伏せてください先生!」

 

 先生を抱きかかえて地面に伏せる。数舜後、凄まじい轟音と振動が俺達を襲った。完全に収まった頃を見計らい上体を起こす。先生は……よかった、気絶しているけど怪我は無さそうだ。

 

「まずは先生を避難させないと」

 

 確か学校のすぐ近くにシェルターがあったはずだ。俺は先生を抱きかかえ、全力で足を動かした。

 

「ロケットパーンチ!」

 

 勇ましい声の方へ眼を向けると、そこには鉄のスーパーロボットの姿があった。その雄姿を背後にひたすらシェルターへの道を進む。

 

「し、紫雲先輩!?」

 

シェルター内に飛び込むと、制服をまとった少女が俺見て叫んだ。俺も彼女の事は知っているのでその名前を呼ぶ。

 

「千鳥さん。すまない、この人を頼む」

 

「え? あ、神楽坂先生!?」

 

「気絶しているだけだから横にしておいてあげてくれ」

 

「って、先輩はどこに行くんですか!?」

 

「ちょっと確かめないといけないものがあるんだ」

 

 千鳥さんに先生を任せ。俺は学校に戻った。先ほどの落下物……“彼女達”の乗ったロボットがそこにはいるはず。

 

 さて、果たしてどの機体なんだろう。グランティード? クストウェル? ベルゼルート? それともまさかのヴォルレント?

 

「……ファッ?」

 

 んん? 見間違いか? ええっと、目をこすってもう一度……。

 

「……えぇ……」

 

 なぁんで()()()()()()()が片膝立ちしてるんですかねぇ……。いや、別におかしくはないけど、キミ、出てくるのもっと後じゃん……。

 

 予想だにしない機体の姿に目を見開く俺をさらなる衝撃が襲う。コクピット部分が開いた事でパイロットの姿が見える事が出来たのだが、そこにいたのは……。

 

「ぐ、うう……」

 

「父さん……?」

 

 苦悶の表情を見せ、脇腹を真っ赤に染めたその人物は……俺の父、エ=セルダだった。

 

 衝撃はさらに続く。父さんの横から顔を覗かせたのは……。

 

「エ=セルダ! 大丈夫ですかエ=セルダ!?」

 

「シャナ=ミアちゃん……!?」

 

 皇女様!? 皇女様ナンデ!? 本来いないはずの二人の姿に動けない俺を尻目に父さんの背後から少女達が顔を覗かせる。

 

「こんなところに落ちちゃって大丈夫なの!?」

 

「メルア、オルゴン・エクストラクターは?」

 

「大丈夫、安定しています」

 

「ならば、急いでこの場を離れなくては……ぐっ」

 

「エ=セルダ! ですがその傷では……!」

 

「この程度で参るほど軟な鍛え方はしておりません。今はとにかく一刻も早く奴らから離れ、亮真の元へ向かわなければ」

 

「いや、俺ならここにいるんだが」

 

「「「「「え?」」」」」

 

 五人の表情が一斉にこちらに向けられる。一瞬呆けた様子の父さんがいの一番に正気に戻って俺の名を呼んだ。

 

「り、亮真!? なぜここに!?」

 

 それはこっちのセリフじゃい! いや、生きてくれてたのは超うれしいけどさ!

 

「ッ! ダメ! あの人達が来ます!」

 

金髪の女の子が叫ぶ。父さんは何かを決めたように頷いた。

 

「亮真。色々聞きたい事があるだろう。後で必ず話す。だから今は黙ってこの機体に乗るのだ」

 

「わかった」

 

 秒で頷くと、父さんはなぜか目を丸くした。

 

「どうしたんだ父さん?」

 

「いや、即答してくれるとは思えなかったからな」

 

「状況が状況だしな。それに、シャナ=ミアちゃんがいるという事は()()()()()なんだろう? なら、俺は俺に出来る事をやるさ」

 

「リョウ=マ……」

 

「あの……」

 

「三人とも、これが私の息子だ。サポートを頼む」

 

「彼が……」

 

「ですが、この人数で戦闘は……」

 

「そうだな。では私とシャナ=ミア様とカティア、そしてメルアはここで待機。テニア、任せてもいいかな?」

 

「わ、わかった!」

 

「急ごう。もう時間がない」

 

降りてくる四人と入れ変わるようにコックピットへ向かう。……その前に。

 

「ちょっと待ってくれ父さん」

 

 脇腹に向かって「信頼」をかける。

 

「これは……!? 亮真、今のは……!?」

 

「軽いまじないだ。さあ、早く離れてくれ」

 

「リョウ=マ。必ず、必ず無事に帰って来てくださいね!」

 

 四人が離れるのを見届けてハッチを閉める。眼前のモニターの向こうでマジンガーZが機械獣相手に大暴れしているのが確認できる。

 

「流石、兜君だな」

 

「ね、ねえ、亮真……でいいんだよね?」

 

 複座の方から恐る恐るといった感じの声が届く。務めて明るい声で俺も返事をした。

 

「ああ、よろしく。ええっと……」

 

「フェステニア・ミューズ」

 

「ありがとうミューズさん」

 

「テ、テニアでいいよ。それで、その。怖くないの? いきなりこんなロボットに乗せられて」

 

 まあ、オカンのおかげでちょっとやそっとじゃ動じませんからね。いやうん、あっちの世界でもだけどホントにありがたいわ。オカンがいなけりゃ多分初期の統夜以上にテンパってたと思うし。

 

 ところで、この子こんなにおどおどした性格だったっけ。むしろ「怖いの? 怖くないなら乗れるでしょ」くらい言いそうだけど。

 

 ひょっとして、いきなり俺みたいなヤツに操縦させるのが不安なんじゃないだろうか。そりゃあ父さんに比べたら頼りなさそうに見えるかもしれんけど、俺も生半可な気持ちでここにいるわけじゃないよ?

 

「……安心してくれテニアちゃん」

 

「え?」

 

「何も知らないまま死ぬつもりはない。それに、震えている女の子一人守れないような情けない男に成り果てるつもりもないさ」

 

 ちょっと大げさだったかな。けど、効果はあったようだ。テニアちゃんの震えが少し収まったように見えた。

 

「ふ、ふんだ。カッコつけちゃってさ……あれ」

 

「どうした?」

 

「サイトロン・コントロールのリンゲージが……70……83……すごい、おじさんを超えてる……!」

 

(何かわからんがとにかくよし!)

 

 グリップを握る。……大丈夫。俺とラフトクランズは一心同体。そう、俺の手足も同然!

 

「ッ……来るよ、亮真! 十一時方向に三機!」

 

ラフトクランズを立ち上がらせると同時にテニアちゃんが警告を発する。十一時……あっちか。

 

突如として空間がゆがみ、そこから三体のロボットが現れた。左右に黒いリュンピーを従え中央に滞空するのは……ラフトクランズだった。

 

「―――見つけたぞ、エ=セルダ」

 

 ッ!? な、なんだこの島田兵にシリアスと外道をたっぷりミックスしたような声は!?

 

「流石は禁士長。しぶとさも一級品というわけか。だが、もはや逃げ場はない。グ=ランドン総代に代わり、謀士長カロ=ラン・ヴイが貴様を始末する」

 

(誰だお前は!?)

 

 待て待て待て待て。マジで待って。カロ=ラン!? 誰よカロ=ランって!? あと謀士長って何よ!?

 

「気を付けて亮真! アイツ、不意打ちでおじさんを……!」

 

 聞いた事もない名前に慌てる気持ちが一瞬で凪ぐ。……ほお。そうかそうか、父さんのあの傷はあなたの仕業というわけですな。

 

「ん? エ=セルダではないのか? 何者だ、貴様」

 

「……紫雲 亮真。エ=セルダの息子だ」

 

「息子だと? ふ、死んだか、エ=セルダ」

 

 生きてますけどね。まあ、それをテメエに教える義理はねえけど。

 

「ならば亮真とやら。皇女はどこにいる?」

 

「それを知ってどうするつもりだ?」

 

「私は謀反人から皇女を取り戻すために追ってきたのだ。……最も、帰還中に不慮の事故に遭われてしまうかもしれんがな」

 

 シャナ=ミアちゃんがいなくなって大騒ぎになるのはわかるけど、それならこいつじゃなくて先生あたりが追ってきそうだけど……なるほど、どうして代わりにこんな胡散臭い輩が追ってきたのかわかった。この野郎、最初から父さんとシャナ=ミアちゃん殺すつもりで来たな。

 

「ついでにその機体も返してもらおう。量産型や騎士のものとは違い、その禁士長専用のラフトクランズは特別性なのでな」

 

「断る」

 

「……何?」

 

「断ると言ったんだ卑怯者。この機体もシャナ=ミアちゃんも貴様には渡さん。俺は父さんの息子として、そして彼女の友人として貴様を止める」

 

 もう話すことは何もない。ただ全力でこいつらをぶちのめす!

 

「所詮、愚か者の息子か。……やれ」

 

 二体のリュンピーが指示と同時に高速でこちらに向かって迫ってくる。それを正面に見据えながら俺は大きく深呼吸をした。

 

「来るよ、亮真!」

 

「テニアちゃん。少しばかり乱暴に動かすけど許してほしい」

 

「え?」

 

 さあ、行くぞ相棒!

 

SIDE OUT

 

 

テニアSIDE

 

「テニアちゃん。少しばかり乱暴に動かすけど許してほしい」

 

「え?」

 

 そう謝罪してくる亮真に聞き返そうとした次の瞬間、私はその言葉の意味を身を以て知る事になった。

 

「ッ~~~~~!?」

 

 あろうことか、亮真はいきなりブースターをフルスロットルにして敵機……リュンピーに向けて突撃を始めた。瞬く間に縮まる両者の距離が0になろうとしたその瞬間……。

 

「遅いっ!」

 

 ラフトクランズの武器の一つ「オルゴンソード」を抜くと同時に一機のリュンピーに向かって振りぬく亮真。そのまま勢いを殺さずに大きく旋回をする。

 

「は、外れた!?」

 

 斬ったはずのリュンピーは未だに健在だった。そして、そのリュンピーが照準をこちらに向けようとしたその瞬間、敵機の四肢が一斉に切断され地面へ落ちていった。

 

(嘘!? 一回しか斬ってないはずなのに!?)

 

 それが高速すぎて視認できなかったのだと私は後で知る事となるのだった。

 

「お、おのれ!」

 

「突っ込むぞ」

 

 ライフルを連射するもう一機に対し、亮真は「オルゴンクロ―」をシールドモードにして攻撃を防ぎながら再び距離を詰め、今度はシールドからクローモードに移行して相手の頭部を掴むとあっという間に破壊してしまった。

 

「失せろ」

 

 カメラが壊されたからか動きが止まったリュンピーに見事な踵落としが決まる。先に倒されたもう一機と共に地面に転がるリュンピーを視界に収めようとしたその時、目の前のモニターがゆがんだと思ったら、目の前にはカロ=ランの機体の背中があった。

 

「何っ……!?」

 

「……なるほど、そうやって父さんの背中を撃ったわけか」

 

慌てて距離を取るカロ=ランに対し、亮真は嘲る様に指摘する。

 

「え……え……?」

 

「テニアちゃん、ヤツは今俺達の背後から砲撃して来たんだ。それをオルゴン・クラウドを利用して回避ついでに背後に回ったんだよ」

 

「そ、そうなんだ……」

 

 対して優しい声色で私に説明してくれる亮真。

 

「馬鹿な……。オルゴン・クラウドを使いこなすなど、搭乗したばかりの貴様に出来るはずが……!」

 

「馬鹿はアンタでしょ。実際亮真はそれを使ってアンタを出し抜いたんだから」

 

「なっ……!?」

 

 何だろう。亮真が馬鹿にされるのが妙にイラつくからつい割り込んでしまった。

 

「ありがとう、テニアちゃん。少しすっきりしたよ」

 

「べ、別に。私がそう思っただけだもん。それより、来るよ!」

 

 カロ=ランの機体が動き始める。こっちと違って向こうのラフトクランズは両腕にオルゴンクロ―が装着されている。あれがメインウエポンなんだろう。

 

「貴様は危険だ。我等の脅威となる前にここで確実に殺す!」

 

「それはこちらのセリフだ。シャナ=ミアちゃんのためにもお前はここで倒す」

 

「ほざけ、謀士でありながらラフトクランズを与えられた私に、バスカー・モードすら発動出来ない貴様が敵うと思うたか!」

 

 バスカー……モード?

 

テニアSIDE OUT

 

 

IN SIDE

 

「ほざけ、謀士でありながらラフトクランズを与えられた私に、バスカー・モードすら発動出来ない貴様が敵うと思うたか!」

 

 ああ、はいはい。そうやって聞きなれない言葉を吐けばこっちが動揺するとか思うなよ。ラフトクランズでモードっつったら……Fモードの事だろ。うわ、ひょっとして自分だけの特別な名前でも付けてんのかこいつ。

 

 上等だ。お前がそういうノリを押し付けてくるんならこっちだって乗せられてやるよ。行くぞ! 気合い入れろよ俺!

 

「黙れ!」

 

SIDE OUT

 

 

シャナ=ミアSIDE

 

リョウ=マとカロ=ランの戦いは佳境を迎えていた。対峙する二機を遠目に、私はただリョウ=マとテニアの無事を祈り続けていた。

 

「すごいですね亮真さん。あっという間に2体も倒しちゃいましたよ!」

 

「ええ、さすがはエ=セルダさんの息子ね」

 

興奮するメルアにカティアも頷く。確かに、先ほど見せたリョウ=マの戦いぶりは圧倒的だった。あれほどの動きはアル=ヴァン並みと言っても過言ではない。

 

「……サイトロンの導きなのか? いや、それにしても動きが良すぎる。亮真、お前に一体何が……」

 

そんな中、エ=セルダは考え込むような様子でリョウ=マの乗るラフトクランズに目を向けていた。あの機体……ラフトクランズ・シンは歴代の禁士長にのみ乗る事を許された護皇の剣。その真価は皇家の者が同乗する事で初めて発揮される。

 

(あなたが私を支えてくれるのならば、私もあなたを支えたい)

 

 けれど、今の私はこうして祈る事しかできない。だから、ただ願います。リョウ=マ。テニア。あなた達が私達の元へ帰って来てくれる事を。

 

「ほざけ、謀士でありながらラフトクランズを与えられた私に、バスカー・モードすら発動出来ない貴様が敵うと思うたか!」

 

「ッ……カロ=ランめ、本気か!」

 

 カロ=ランの声色に何感じ取ったのかエ=セルダの顔に緊張が走る。それを見た私達の間に不安が沸き上がるが、次の瞬間それは吹き飛んだ。

 

「黙れ!」

 

 リョウ=マの声に初めて怒りの感情が込められる。いえ、ため込んでいたものが爆発したといった方がいいのかもしれない。

 

「我が名は亮真! 紫雲 亮真! 我は……シャナ=ミアの剣なり!」

 

「ッ……!?」

 

 ど、どうしましょう。こんな状況なのに、嬉しいと思ってしまっている自分がいる。頬が熱い。心臓が激しく鼓動しているのがわかる。

 

「亮真さんのラフトクランズが……!」

 

 眼前に剣を構えるリョウ=マのラフトクランズ。その機体から緑色の眩い光が溢れ出した。

 

「あれは、オルゴンの光!」

 

「亮真、まさかバスカー・モードを……!?」

 

 エ=セルダの声に応える様に、リョウ=マのラフトクランズはその姿を変えていく。そして、構えていた剣の刀身が大きく割れたと思った次の瞬間、そこから新たにオルゴナイトで出来た巨大な刀身が天へと伸びていった。

 

「馬……鹿……な。バスカー・モードまでも……。何なのだ、貴様は一体何なのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 もはや余裕すらなくなったカロ=ランに対し、リョウ=マは大剣の切っ先を向けながら静かに答えた。

 

「俺は……お前を止める者だ」

 

 ああ、リョウ=マ。あなたはかつて自分は騎士になれるかわからないと言いましたね。ですが、今のあなたの姿を見れば誰もあなたを騎士として認める事でしょう……。

 

シャナ=ミアSIDE OUT

 

 

テニアSIDE

 

(凄い、凄いよ亮真!)

 

 モニターに表示される全てのパラメータが限界値を超えている。亮真は今、この機体の限界を超えさせたんだ。

 

「馬……鹿……な。バスカー・モードまでも……。何なのだ、貴様は一体何なのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「俺は……お前を止める者だ」

 

 そうだね亮真。お姫様やおじさんを守るためにも、こいつをやっつけよう!

 

「テニアちゃん、これで決めるぞ!」

 

「OK! やっちゃって!」

 

 再び襲い来る加速の衝撃。それすらも今の私には心地よかった。

 

「おのれ! 寄るな! 私の傍に近寄るなぁ!!!」

 

私達を近づかせまいと両腕のクローを振り回し、背部のオルゴン・キャノンを乱射するカロ=ラン。最早私達を追いかけていた時のようなプレッシャーは感じなくなっていた。

 

「跳ぶよ、亮真!」

 

 オルゴン・クラウドのコントロールをこちらに回し、タイミングを見計らって発動する。私達がいるのは……カロ=ランの上。さえぎるものは何もない!

 

「亮真、今だよ!」

 

 オルゴンソードを振り上げながらカロ=ランへ肉薄する私達。そして、とどめの一撃が放たれる!

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「ちぇあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 私達の雄たけびと共に振り下ろされた斬撃はカロ=ランの機体を一直線に切り裂いた。同時に世界から音が消える。けれど、それも一瞬の事。後に残されたのは刀身が砕け散った事で通常サイズに戻ったオルゴンソードを持った私達のラフトクランズと……。

 

「ば、馬鹿な……。私が、私がこんなところでぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 紫電を発しながら力無く崩れ落ちるカロ=ランのラフトクランズだった。

 

(カティア、メルア、亮真が……この人がいてくれたら、きっと私達……)

 

私達を助け出してくれたおじさん。そしてその息子である亮真。この出会いはきっと“運命”だったんだろうって、この時の私はそう思ったんだ……。

 

テニアSIDE

 

 

かくして、可能性の世界で生きる事となった騎士(笑)。果たして、これから先に待ち受ける運命に立ち向かう事は出来るのだろうか。そして、本当に天寿を全うするまで戻れないのか。それは“彼女”だけが知っている。

 

「んふふ。今度はあの子の好きだったものに合わせた世界に送ってあげたから喜んでくれとるやろうなぁ。どうしてもアカンくならんと手を出したらいけんって言われとるし、しばらくはデバガメせずに他の子の様子でも見とこうっと」

 

……知っている?




続かない(断言)

3000文字くらいでさらっと書こうと思ったのに、気づけば半日使ってこれですわ……。ただ、熱量さえあればまだこれだけ書けるとわかったので良かったです。

ここからは設定を考え付くだけ。

この短編はD×D小説の執筆中、相棒の2代目PCが起動時のディスクチェックから動かなくなった……つまり逝ってしまったショックと怒りで書きなぐったものです。

PCが逝く→ショックで放心→唐突にスパロボJを買いなおして遊び始める→シャナ=ミアの扱い酷くね?→CV早見さんとかヒロインにするしかねえだろ!→なら書きゃいいじゃん!

なお、オリ主はJ世界だと思っていますが、登場人物からわかる通りOG成分が混じってます。と言ってもすでに一人退場しましたが。

年上設定は、まあ本編でも年上だったしいいかなって。ヒロイン達の“ちゃん”付けはそのせいです。

そして、機体はラフトクランズにしました。設定的にグランティードだとも思いましたが、やっぱりこのオリ主にはこの機体しかないので。なお、後継機はラフトクランズ・セイヴァー(セイバー)になる予定。

エ=セルダとかカロ=ランの口調に違和感がありましたらすみません。もうあまりOGの記憶がないもので。


不殺……フューリーの脱出装置は宇宙一イイイイイイイ!!!!

時系列的には最新章とその前の章の間くらいの平和な時間中の話です。
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