騎士(笑)の日常   作:ガスキン

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コソコソと投稿。


ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか
オラリオに騎士(笑)がいるのは間違っているだろうか


 ―――見覚えのない部屋。

 

 ―――壁に沿って長々と設置された本棚。

 

 ―――そこから落ちたであろう床に散らばる本。

 

 ―――そして、一冊の本を胸に抱いたまま、尻もちをつきながらその真っ赤な目で俺を見上げている一人の少年。

 

 第三者がいればどういうシチュエーションだと言われそうだが、それは俺が知りたいくらいだ。何故なら、たった数分前まで、俺は自分の部屋でまったりしていただけだったのだから……

 

………

 

……

 

 

『あんなぁ、ちょっと相談があるんやけど』

 

唐突にオカンから連絡が入ったと思ったらそんな事を言われた。

 

『実は、『鋼の救世主』の事なんやけどなぁ。この世界でごっつい数の子達に読まれとるやろ? その結果、信仰の対象にしてしまう子もたくさんおるせいか、『鋼の救世主』というものが概念化してしもうたんよ。でなぁ、あまりにも読んだ子達の想いが強すぎたせいかその概念がその世界を飛び出してしもうて……簡単に言うと別の世界にも『鋼の救世主』が広まってしもうたっちゅうわけや』

 

……はい?

 

『で、ここからが本題なんやけど、別世界の子の中にアンタに憧れるあまり本来歩むべき運命から大きく逸れてしまう恐れのある子が出て来そうなんよ。せやから、アンタにはそんな子達が危険な道に進んでしまわんようにフォローしてあげてもらいたいんや』

 

 何でそんなとんでも展開になってるんですか!?

 

『? 人の想いが世界を飛び越えるなんてよくある事やで? アンタもよう知っとるやろ?』

 

 い、いやまあ、スパロボならよくある事ですが……。

 

『ま、そういうわけやからよろしく頼むわぁ。ちょうどそっちの世界のゴタゴタも落ち着いたみたいやし』

 

 それはそうですが……って、もう決定事項なんですか!?

 

『ほな、いってら~』

 

 ちょっ! またこのパターンかよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!

 

………

 

……

 

 

 と、あまりにもザックリとした説明と共に俺は別世界とやらに送り込まれましたとさ。……いや、とさじゃねえわ。もう大体予想つくわ。ここはこの男の子の部屋で、俺は彼の読書中にいきなり姿を現した不審者なんだろどうせ!

 

 いや待て落ち着け。ここで慌てた感じで言い訳始めたら余計怪しくなる。ここはむしろキミこそ誰だ? 的な感じで話しかけ―――。

 

「……す、凄い」

 

「?」

 

「凄い! あのお姉さんの言う通りだ! 本当に現れた!」

 

 そう言うやいなや、男の子は興奮を隠しきれない様子で立ち上がると勢いよく俺に近づいて来た。

 

「あ、あの! あなたは『騎士様』ですか!? 『鋼の救世主』を率いて戦ったという伝説の!?」

 

 ファッ!? 何でそれを!? ……え? ひょっとしてこの子がオカンの言っていた……。

 

「キミは……俺を知っているのか?」

 

 俺の問いに、男の子は目の輝きを増々強めて何度も頷いた。

 

「は、はい! 騎士様の事はこの本で知りました!  ぼ、僕、騎士様に憧れてて! それで、いつか僕も騎士様みたいな英雄になりたいってずっと思ってて! そしたら夢でお姉さんが!」

 

「夢?」

 

「そうなんです! 夢に今まで見た事もないような凄く綺麗なお姉さんが出て来て! その人が、近いうちに僕がずっと憧れていた人に会えるからって! だから僕、その夢を見た日から時間が出来たらずっとこの部屋で待ってたんです! 何故かわからないけど、会えるならここかなって思って!」

 

 ……オカンだな。間違いない。綺麗なお姉さんって部分が引っかかるが、事前に説明出来るのってあの人しかいないだろうし。

 

「そうか。ならば、俺を呼んだのはキミという事か」

 

「え、僕が……呼んだ……?」

 

「ああ。キミの言うそのお姉さんに言われたんだ。これからキミが歩むべき運命。それを支えるように」

 

「僕の運命……。そ、それってつまり、僕も騎士様の様な英雄に……!?」

 

「それはわからない。けれど、それがキミの目指すものだというのなら、俺はそのために力を貸すよ」

 

 それが俺の役目みたいだし。何より、こんな純粋そうな男の子に不幸な目に遭って欲しくないしな。オカン、俺がこの子に会ったらこう思うだろうって予想してたんだろうな。

 

「ッ~~~~~~~! 僕やります! 冒険者になってたくさん鍛えて、いつか騎士様みたいな英雄になります!」

 

 両こぶしを天に突き上げ、声を張り上げる男の子。……って、今この子冒険者って言った?

 

「キミ、そういえば名前……」

 

「はっ、そうだ! おじいちゃんにも知らせないと! おじいちゃーん! 騎士様だよ! 本当に来てくれたよー!」

 

 全速力で部屋を飛び出していく男の子。部屋の中、ただ一人残された俺。

 

「……とりあえず本でも拾っておくか」

 

 多分おじいさんを連れて戻って来るだろうし、その間にこっちも色々質問でも考えておこうか。

 

 少しして、男の子と彼に続いて老年の男性が部屋へ入って来た。そこで、未だ興奮冷めやらぬ様子の男の子を男性が落ち着かせた所で改めて自己紹介を行った。

 

 男の子の名前はベル・クラネル君。この家でおじいさんと二人で暮らしているらしい。おじいさんの名前も聞こうとしたら「秘密じゃ」とウインク混じりで言われてしまった。まあ、怪しさ満点だから仕方ないかと思ったらそうでもないみたいだった。

 

「わし、そういうのわかるんじゃよ。お主から邪なものは感じん。秘密と言ったのはほれ、その方がミステリアスでカッコいいじゃろ?」

 

 ……らしい。中々ユニークな方のようだ。俺も名前、そしてここに現れた理由を二人に伝えた。

 

「……なるほどのぉ。ベルがお主を呼んだと」

 

「はい。俄かには信じられないと思いますが」

 

「この人は本物の騎士様だよおじいちゃん! だってお姉さんが言ってた通りの人だもん!」

 

「ふむ。どうせならわしの夢にもその美人なお姉ちゃんに出て来て欲しかったもんじゃのう。……とと、話が逸れたわい。お主はベルの夢を支えると。ならばベルよ、お前の夢とはなんじゃ?」

 

「はいおじいちゃん! それはもちろん騎士様の様な英雄になる事です!」

 

「やれやれ、そう言うと思ったわい。わしとしては男に生まれたならばぜひともハーレムを目指して欲しいと思っておったのじゃが」

 

「? それは英雄になるために必要な事なの?」

 

 キョトンとするベル君におじいさんは首を横に振った。

 

「……これじゃよ。のう騎士殿、ベルの年齢で異性にチヤホヤされたいと思うのはむしろ当然の事だと思うのじゃが」

 

 また何とも答えにくい事を……。

 

「それは……まあ、個人差があるのでは?」

 

「とはいえこやつのは極端すぎると思うのじゃがなぁ。ほれ、英雄色を好むとも言うじゃろ? むしろ英雄こそモテモテなんじゃぞ」

 

「英雄がモテモテ……。つまり、英雄になるにはモテなければならないって事だね。そういう事なら僕、頑張ってモテモテになるよ!」

 

(こ、こやつ、手段と目的が逆になっておる……)

 

「クラネル君、一つ聞いていいかな?」

 

「ベルでいいですよ。何ですか騎士様?」

 

「俺の事も神崎か亮真で構わないよ。それでベル君、キミはどうしてそこまで英雄になりたいんだ?」

 

 まだ出会って少ししか経っていないが、彼が英雄というものに強烈に憧れているのは言葉の節々からよくわかった。そこまで彼を突き動かすものは何なのか、俺は少しばかり気になった。

 

「きっかけは、おじいちゃんが集めたこの『鋼の救世主』です。誰が書いたかもわからない。けれど、昔から読まれていたこの本を初めて読んだとき。僕は感動したんです。年齢も性別も立場も考え方も何もかもバラバラの戦士達が、人々を守るために命を懸けて、どんな相手でも決して諦めずに戦うその姿に。……だから憧れたんです。僕もいつか、誰かの為に、誰かの希望になりたいって」

 

「……そうか」

 

 これがオカンの言う本来の運命から逸れているってやつなのか? なら、ベル君の本来の運命っていったい……。

 

(いや、今は気にしても仕方ないか。まずはこの子が無茶しない様に見守る事が先決か)

 

「そのためにもおじいちゃん。やっぱり僕は冒険者になるよ!」

 

「そうじゃな。お前の夢の為にはそうするべきなんじゃろうて」

 

 そうだ、すっかり忘れてた。

 

「すみません、その冒険者というのは?」

 

「ん? おお、そうか。お主には馴染みの無いものじゃったな。では、少しばかり長くなるが説明させてもらおうか。ベルや、椅子を持ってきておくれ」

 

「はい!」

 

 ベル君が用意してくれた椅子に腰かけ、俺はおじいさんの話に耳を傾けた。途中で質問を交えつつ、全ての説明が終わった頃にはすっかり日が暮れてしまっていて、俺はそのままこの家でやっかいになる事となった。

 

………

 

……

 

 

 ベル君の口ぶりからして、てっきりすぐに冒険者となるため迷宮都市と呼ばれるオラリオへ向かうとばかり思っていたが、おじいさんから許可が出るまでは出発してはいけないと言われてしまった。まあ、彼からしたら孫と離れたくないんだろうなぁと思っていたら、なんとおじいさんの方からベル君と離れてしまった。

 

「騎士殿、ベルの事、よろしく頼むぞ」

 

 話があるとベル君を先に寝かせ、家の外に俺を呼びだしたおじいさんは神妙な声でそう言った。そして次の日、おじいさんはいなくなっていた。

 

 書き置きにはベル君に対する謝罪。そしてオラリオへ向かう許可が記されていた。

 

「……行きましょう、リョーマさん」

 

 そして今日、ベル君と俺はついにオラリオへと向かうため家を出る。この日の為に準備した荷物を背負い、ベル君も『鋼の救世主』のお気に入りの巻を数冊袋へ忍ばせていた。

 

「流石に全部持っていくわけにはいきませんからね」

 

 期待と不安の混じった表情を見せるベル君。さながらお守り替わりなのだろう。

 

 世界で唯一「迷宮」と呼ばれるものが存在するというオラリオ。果たして、ベル君を待ち構える運命とはいったい何なのだろうか。

 

 




最近プラモデルに熱をあげていたのですがいいかげんこっちも書かないとと思いつつ、まずはリハビリとばかりに書いてみました。

いつもの低クオリティですが、暇つぶしになれば幸いです。
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