ガチャっと、扉が開く音が聞こえその音がした方へと振り向く。
見てみると、僕の幼馴染 ジントニックが気だるそうな顔しつつ、ソファーに座った。
「ただいま〜。今日もバイト疲れたし、ご飯まだ〜?お腹すいたんだけど。」
帰ってきて早々、それか…と微妙な気持ちになりながらも苦笑いを浮かべる。
「はいはい、ちょっと待ってなー。もう少しでできるからさ。」
「今日はー?」
「ありものでチャーハン。」
「ふーんそう。」
それを聞いたからか、すぐさま取り出したスマートフォンに目線を落とした。
「……せめて皿出したりとかして欲しいのになぁ?」
僕の小言は、チャーハンを混ぜる音に混ざり消えていった。
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彼女とは、小学校からの付き合いで中学校で僕の方から告白し、同じ学校に進学して大学生となった今は、アパートを借りて同居してる。
「でさー、マスターのクロトビさんがさ〜」
彼女が掛け持ちしてバイトしてるお店の1つで、マスターをしている方。1度足を運んだことがあるが、とてもカッコ良い人で何事もスタイリッシュで動きの一つ一つが洗礼されてるように感じた。
そんなクロトビさんのあれこれを喋ってるのだが、これしようとして、嬉しそうにクロトビさんにアドバイスを受けたのやらクロトビさんからこういう物をプレゼントされたとか、バイトの話っていうより、クロトビさんの話ばかりだ。
「そっか…。クロトビさん凄いね」
「そうね。…鈍臭いあなたとは違って。」
「……アハハ、悪かったね。」
「悪かったわねじゃないわ、見習って欲しいわよほんと………はぁ…。」
決まって、僕とクロトビさんと比較をされる。正直な所、クロトビさんには叶うわけないと思っているけどここまでボロクソに言われるのは心外ではある。
彼女は、バーの他にも色んなことをやってるから正直僕よりも上手くできてると思うんだけど、何故か家事は僕任せ。
それに、遅ければ怒られるしで正直自分でやれ!!って言いたくなったのもしばしば。
「あ、そうだ。明日友達と遊びに行くからさ、夜作っておいて」
「わかったよ。」
……どうして、彼女と付き合ってるのかな?って度々思ってしまうけど、愛想つかれたと思うくらい、最近はずっと冷たい。
前まではそんなことなかったのに。
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そんなある日の出来事だった。気分転換に街へと出かけたのだが偶然にも、お出かけしてたはずのジントニックの姿を見かけた。
こんなにも人が居る中で、スマホをいじりつつも辺りを見渡しているので、友達でも待ってるのかな?と考えたが、そんなことはないはず。確か…誰かと一緒に行くとかは聞いてはない。
少し気になって声を掛けようと思ったが、立ち止まった。ジントニックの目線の先に手を振っている華奢な男性が手を振って走ってきた。
僕が見ているとは露知らず、仲が良さそうに話をしたりと笑顔を浮かべている。
そんな彼女を見てか、華奢な男性の方も困ったように頭をかいていた。
そして、時計を見て何処かへと二人で歩いていった。
そんな光景を目撃した僕は、出しかけた声を飲み込み、踵を返した。
ほんとに楽しそうだった……。
──僕の気持ちなんて知らないで。
ふと、痛みを感じそこに目を向けるといつの間にか握りしめ震えていた。
いつの間にか、強く握りしめてたらしくピトッピトッと、血を垂れ流していた。
「………ぐっ。」
わかっていた。いつかはこうなることなんて。僕と君とじゃ釣り合わなかったってことくらい。
告白したあの日からずっと、浮かれていたのは僕だけだったのではないか
僕なんかに囚われないでいた方が彼女は、幸せだったんだろう。
───僕は、君にふさわしくなかった。
ただそれだけのことだった。
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ありがとうございましたという、店員の声を聞きながらお店を後にする。
「ありがとうございます、ノクタリアさん。おかけで彼に渡せれそうです。」
「いいわ。彼が喜ぶといいわね。」
まもなく誕生日な彼にプレゼントを渡すために、クロトビさんから紹介してもらった、プレゼントに詳しいノクタリアさんにアドバイスを貰いながら彼が好きそうなものをチョイスした。
サプライズで用意したから、きっと彼は喜んでくれるかな?
いつも彼に冷たくしまってたのは自覚してた。
それは、彼が優しかったから。私は、それに甘えていたから。
彼が私を見限るなんてことはないって、何処か根拠の無いものを宛にしていた。
彼と初めてあった時のことを鮮明に覚えてる。春の風が吹く入学式のこと、友達なんてどこにもいなくて、ただひとりぼっちだった私を引っ張ってくれたのは彼だった。
かっこよくて、頼りになって、相談にも乗ってくれて、一緒に遊んだりして
隣にはいつも彼が居た。
そんな彼にいつの間にか恋していた。
頼って貰った時の顔、微笑んでくれたこと、嬉しんだり悲しんだり、苦楽を共にしてたからこそ惹かれるのも時間の問題だったと思う。
そんな彼が私に告白してきた時はほんとに嬉しかった。いつまでも一緒に居てくれるんだなって思ってしまった。
「……なんで!?」
手に持ってた袋を思わず落としてしまった。いつもよりも早く帰って来たのにドンヨリとした雰囲気の部屋には、1枚の手紙とラップが掛かった手料理がそこにはあった。
『ジントニックへ
この手紙を読んでるってことは、帰ってきたんだね。
単刀直入に言うと、君を愛してるかどうか分からなくなってしまいました。いつもクロトビさんとかの話で比較され、バカにされて本当に愛してるかが分からなくなった時に、他の男の人と楽しそうに話してデートしてる姿を目撃してしまって決心しました。この手料理は既に作っちゃった後なので食べてください。
僕からはこれが最後となります。ずっと君のことが好きでしたが、他の人が好きと言うなら身を引きますのでどうか、僕の事は気にせず幸せになってください。 〇〇より』
思わず座り込んでしまった。
信じられなかった。
彼が出て行ってしまったなんて…私があんなことを言わずに素直になれたなら…
正直に言ってればよかったって…
私のせいで、彼は離れてしまった。
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「…まさか、またここに来るなんて思わなかった。」
ジントニックから離れて半年は過ぎたと思う。一部の貴重品と服を持って友達のアパートに転がり込んで、暮らしていた。大学構内で避けるようにしてたからかジントニックから接触は全くなかった。
だが、最近ジントニックが来ないから様子を見てきて欲しいとその友達から頼まれ、再びここに訪れた。
スマホとかも、変え彼女の連絡先も分からなくなったが、おそらくきっと、僕のことは忘れて新しい人との暮らしを始めたんだと思ってるし、僕は邪魔者だろうしそそくさと確認して帰ろうかな。
案の定、ドアには鍵がかかっておりどこかに隠したスペアキーを探す。
……昔と変わらないところに鍵は隠してあった。変えないのかな?と疑問に思ったが既に赤の他人だし、大きなお世話だと思い振り切った。
鍵を差し込み回すと、ガチャンと鍵が開いた音が聞こえ、ドアを開けた。
久しぶりに帰ってきたここは、いい思い出こそないが、前とあまり変わらないように思えた。
リビングも変わらず綺麗なままで、いい匂いが鼻腔をくすぐる。
ジントニックがいるのかと思い一通り見たが、残念ながら見当たらないどころかその気配すら感じなかった。
そろそろ帰ろうと思ったが、自身が使ってた机の上に日記が置いてあった。
ふと、僕が居なくなってからジントニックはどのように過ごしてきたんだと思い思わず日記へと手を伸ばし、ページを捲った。
丸月バツ日
今日から日記をつけることにした、帰ってきたら彼の姿はなかった。でもすぐに帰ってきてくれると思って、彼が作ってくれたものを食べる、案の定いつもと変わらない味がした。とても、美味しくて安心出来て心が安らぐような優しさを感じた。
でも、いくら待っても 彼は帰ってこなかった。
丸月〇日
とうとう彼の残したものは無くなってしまった。もう彼の手料理は食べられない。頑張って再現してみようと努力しても、何かが足りない。彼と話したくて電話したのに着拒になってるのか電話には出なかった。
どんなに頑張っても、どんなに願っても、彼は帰ってこなかった。
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V月A日
既に帰らなくなって ヶ月は過ぎた。彼の声が聞きたい、彼の笑顔が見たい、彼に甘えたい、彼に謝りたい、彼とデートしたい、彼と一緒にご飯が食べたい、彼と……………
彼は帰ってこなかった。
V月E日
彼と話したい彼と笑ってたい彼と居たい彼と手を握りたい彼に触ってほしい彼に褒めて欲しい彼に慰めて欲しい彼がいて欲しい彼に抱きしめて欲しい彼と…………………………
彼は帰って来なかった。
W月A日
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい………
早く帰ってきて
「なんだこれ…!?」
思わず後ずさりをした。こんなにも、狂気に満ちた日記は見たことがなかった。
それに、見始めてから、なんだか視線を感じる……震えが止まらない。
早く…ここから帰らないと……!!!
「 お か え り 〇 〇 。」
聞きなれた声が聞こえた…振り返ろうとしたが、頭に強い痛みを感じ、思わず気を失った。
最後に見た光景は、彼女が立っていた気がした。
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気を失った彼を眺めながら、今後のことを考えて見た。
あの日居なくなった彼がいつでもそばにいてくれること。
もうあんなに寂しい思いをしなくてもいいこと。
もうひとりじゃないってこと
もう素直になれるってこと
………
あはっ!
あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは
あぁ…本当に幸せ…!
うっとりするかのような微笑を浮かべ笑う彼女の瞳には、既に彼しか映されていない。
ツンケンしてる子が見せるドロっとした独占欲っていいよね…(小並感)