小生のと比べるのも烏滸がましすぎる…。
この時期になると、ソワソワする者、ピリピリする者と二手に分かれる。
何を隠そうバレンタインの季節である。
ある程度の交流があれば、義理チョコの一つや二つ貰えるだろうが、残念ながらそんなものは無い。…というか入れなかったのだ。
「チョコを貰えない可哀想なせーんぱい。アタシがチョコをあげましょうか〜??笑笑」
そして、ケラケラと笑いながらバカにしてくるのは俺の1個下である後輩のアシュリー。
なんでか俺に懐いて突っかかってくるうるさい後輩である。
「あー!先輩アタシのことうるさいやつ〜とか思ってるでしょ??そうよね??そうだよね???」
「うっせぇ!!そうだわ!!何時にもましてやかましいわ!!」
「ひっどーい!先輩そんなこと言うなんて…」
「これだから童貞は笑、そんな細かいことを機にしてるからチョコの一つなんて貰えたことないんですよー??笑」
ププッと言いたげに口元に手をあてやがって……今に見てやがれ。
「いーや、今年ことはチョコを貰うから0じゃないね!」
「ふーん?先輩が??無理ですよ笑笑例年通り0ですよ、ぜーろ♡」
「勝手に言っとけや」
…にしても、いつにも増してうるさいのはなんだろうな?僅かな休み時間でも来るのは?彼女の性格は把握してるはずだが、こんな短時間は来たくない性格だと思っていたが違ったか…?
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あっという間にバレンタインデー当日となったが、案の定下駄箱を開けても机の中にも入ってはいなかった。
例年通りだなと、自虐しつつも早く終わらないかなと授業を聞きつつ時計を見ていた。
午後1時になる頃、午前の授業が終了したので、売店へ向かおうと階段を降りていたところちょんちょんと、肩を叩かれた感触がした。
またアシュリーだろうかと思い振り返って見ると、アシュリーではなく隣のクラスの眼鏡が良く似合う、花飾りを付けた三つ編みの少女だった。
「あの…良ければこれ…どうぞ!」
赤面しつつも可愛い袋に入れられたチョコマカロンがあった。
「え…?これって?」
「じゃ私これで失礼するね!じゃあね!」
手で顔を覆ったまま、うつむき加減で走り去ってしまった。
「えっ!?…え!?」
驚くばかりではあったが、その可愛くラッピングされた袋の中に
『ずっとアナタの事を見てました。アナタのことが好きです。
もし、良ければ明日お返事を頂けると嬉しいです。』
というメッセージカードが添えてあった。
一瞬脳がフリーズしたが、冷静になり再度手に渡された物を見る。
正真正銘女子から貰った初めてのバレンタインチョコである。
「っしゃあ!!!!」
誰か駆け上がる音が聞こえたので小声で叫び思わずガッツポーズ。
今日はなんていい日なんだと、信じたことの無い神様へ祈りを捧げたい気分だ。
ルンルン気分で、売店へと向かうが背後で何かが落ちる音がしたのを気が付けなかった。
「……うそっ!?」
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最後の授業を終え帰路につこうとしたところ、LINEが届いた。
どうやらアシュリーからのようで、屋上に来て欲しいとの事。
下校時間まで余裕があるので、ゆっくりと屋上へと向かった。
キィッ…という音が響き、ドアが開いた。その音を聞いてか、アシュリーはこちらに視線を向かって手を振ってきた。
「せーんぱい!」
「おっ?どうしたアシュリー?」
「先輩は、今年バレンタインチョコ貰えなかったんですよね?…残念でしたね〜!」
ケラケラと、腹を抱えながら笑ってきた。
「あー。それなんだけどね…」
「貰えなかったんですよね?分かりますって先輩w。このアタシが…」
「貰ったんだ今年。バレンタインチョコ」
そう言って、バッグの中から貰ったチョコを取り出した。
それを見たのか、仰天しわなわな震えながら貰った物を指を指してきた。
「…それ、なんですか?」
「あー?これか?階段んとこで貰ったんだバレンタインチョコ。しかも、『好きです。お返事待ってます』だってさ!いやあ…嬉しいったらありゃしない。言っただろ?今年こそ貰えるって」
「…え?…いや…そんな。……先輩が貰ったなんて…。」
信じられない物を見るかのような表情を浮かべ、こちらを見つめてくる。
「なんだよその顔…別に貰ったっていいだろ、ほら帰るぞ」
帰ろうとドアに向かって歩こうとしたが、ギュッと左腕を掴まれた。
「…え?」
「先輩…なんで貰っちゃったんですか?」
握られた左腕に圧が掛かる。
「なんで、いつも一緒にいるのにぽっと出の人から貰っちゃうんですか?」
「いいだろ別に。誰から貰おうが自由だろ!」
振り払おうとしたが、腕がビクともしない。…鍛えてはいるはずなのに何故か振りほどけない。
「あっは♡せーんぱい。よーっわ♡そんな力じゃ解けませんよー♡」
「なんだよ…!おい離せよ!!」
いくら振り払おうとしても、ビクともせずにアシュリーの握る力が強くなっていく。
「ぐあああぁ!」
骨が折れてしまいそうだ。なんでこんなにも強いんだ!
「痛いですか?先輩。私だって今すんごーく痛いんですからね。心が」
「はぁ?それが何と関係するんだよ!」
「わからないですか?先輩。
「…はぁ!?」
アシュリーが俺のことが好き…??
「先輩って、ほんとに鈍感なんですね。…わたし、そういうところに惹かれちゃいましたから。」
「なんの冗談だ??からかうのは辞めろ。」
「からかってませんよ?本気ですから。」
「…は?」
「わからないですか?先輩。わたしって、自覚こそありますけどめんどくさいですよね?こんなめんどくさいのにも構ってくれるのほんとに嬉しかったんですよ?それに、わたしの相談にも面倒くさそうな顔しつつも、しっかりと乗ってきたじゃないですか?先輩ってダルいめんどいとかすぐに言いますけど、ちゃんとしてくれるじゃないですか?それにわたしって、はたから見たらかなり美人じゃないです?それだから、他の男子からどういう視線を寄せられてるかって嫌なほどわかるんですよ?知ってますよね??でも、そんな事先輩はしなかった。それどころか、しっかりわたしの中身を見てくれる人だったのもすごく嬉しかった。先輩がポツンと1人でいるのを見てて、チャンスかなって思ってたんですよ。少しづつでもいいから先輩と一緒にお話して、一緒に勉強して、遊んだりして…色々わがまま聞いてくれたじゃないですか?…だから、わたしの気持ち伝えたくて…今日バレンタインデーだから一緒懸命作ったチョコと気持ちを伝えたかったんですよ?……それなのに!!!」
さらに握る力が強くなる。痛いのとあまりの豹変ぶりに恐怖で、思わず座り込んでしまった。
「あの女狐が!!!わたしよりも先に!!!チョコなんて渡しやがって!!!!あ゛あ゛あ゛あ゛!!!許せない!!!!!」
「……ねぇ?先輩お願いがあるんだけどいいかな?」
そう言うと、握っていた手を離した。とても痛い…捲ってみれば赤い手跡が付いており、どのくらい強く握られてたのかを確認できる。
それを見て満足したのかあはははっと、アシュリーは笑う。
「またこんな事して欲しくなかったら、わたしと付き合って。今すぐその渡されたチョコをゴミに捨てて明日断ってよ。」
「…!」
「できるよね?先輩。あんなことされたんだもの、できないわけが無いよね?」
強い剣幕で言い放った。もし断るなんてしたらどんなことが起こるのだろうか?想像もしたくない。
「…わかった、いいよ。捨てるし、断る。…これでいいか?」
そう言うと、望んでいた回答だったらしく満面の笑みを浮かべた。
「よく出来ました〜せーんぱい♡偉いですね〜♡」
ヨシヨシと、頭を撫でられる。…正直な所彼女が怖い。この場からすぐにでも離れてしまいたいのに、離れてしまったら何をされるのかがわからない。
「ご褒美あげますからね〜!」
そう言って、バッグから取り出したのは、ラッピングされてはいるが形が崩れてしまったチョコレートだった。
「ごめんなさい先輩。渡されてるのを見て思わず落としてしまったの。でもね、今わたしと先輩は付き合ってるし、特別な方法で食べさせてあげるから」
そう言って、割れてしまったチョコレートの欠片を口に入れて近ずいて来る。
「恋人同士なら、キスをしましょ?せんぱい♡きっとあまーい味がしますよ?」
「いつまでも、忘れられないキスにしちゃいましょ?」
悪魔のような彼女が甘く微笑んだ。
これ(ヤンデレなのかメンヘラなの)もうわかんねぇな?