黒い玉によって移動せられた純たち御一行。
事態を把握する者が少ない中、連れてこられた場所はとあるアーケード街。
「どこだここ」
「商店街か」
人気のない、閑散とした街並み。
奥まで見えるすべての商店にシャッターが閉ざされている。
俗に言うシャッター商店街が広がっていた。
外に出た。
という事は帰れるのか。
老人たちの問答に期待するように、アタッシュケースを握る純の手に力が入る。
「なんでもいい。外に出られたなら早く帰るんべや」
「いいのかい?全部あの人の言った通りになったんだよ?」
「知るか!あんなホラ吹きに惑わされるな!」
「でも幸三よ。やっぱ無視できん。これから起こる出来事をあの
「無視したらええ!あんなきな臭い男…信じるとバカ見るぞ」
自分たちに話しかけてきた男のことを痛烈に非難する熊井。
異議を唱える人間もちらほら見えるものの、結局は熊井の頑固さに気圧され、足並みを揃えることに。
「まっ。帰れそうなら無理に付き合うこともないか」
岡田をはじめ、有原も同じように帰路へつく。
倉今も漏れずに帰ろうとする…のだが。
何故か前田に声をかけられてしまった。
彼らが商店街の出口へ向かおうと足を進め始めると、後方から松永が声をかける。
「一緒に協力してもらえないのが残念です!そのまま進めば出口ですよ!お気をつけて!」
和田たちを従えた松永。
高く、かつ大きな声でニコニコした顔で手を振っている。
それに対し熊井たちは一瞥をする事なく進んでいく。
そんな双方のやりとりを純はじっと見ていた。
帰ろうとはせず、かと言って松永たちに着くわけでもない。
純が目を凝らしていたのはどちらの勢力に属していない清水と石村。
松永たちと同じような服に着替えていた2人は、帰ろうとはせず松永たちの動向を伺っている。
「……。」
そんなことを考えていると、前田から解放された倉今が熊井達と同じ方向へ進もうとする。
「待って」
その行動を純が視線を動かさぬまま静止した。
「……。」
「帰らないほうがいい…と思う。確証はないけど」
今度はお前か?と視線で訴える倉今に見つめることなく返事をした純。
しかし彼女はそれなら勝手にさせろと言わんばかりに純を睨みつけると、震える身体を丸めて進み始める。
「あーあ。行っちゃった」
「あれだけ松永さんが忠告したのに。可哀想な人たちだ」
「仕方ないですねえ。では…我々は行くとするか」
松永はトーンを落としてそう言うと、機嫌の悪くなった前田も引き連れて商店街の奥へと消えて行った。
いつの間にか清水たちも消えていて1人になる純。
どうするのか。
未だその場から動けずにいると、商店街出口の方向から騒ぎ声が聞こえてくる。
「なんだ?」
遠目に加えて夜道なためはっきりとはわからないが、振り返った純には誰かが倒れてるのが見えた。
その倒れた人物に1人が近づき、慌てふためいた様子で離れると急に動かなくなりまた倒れる。
間を置くことなく続け様に3人目、4人目と動かなくなり、その様子を見て男2人が走って戻ってきた。
悪い予感が純の脳裏に走る。
考えるより先に身体が動いていた。
「そこの!スバ女!戻って!」
「?」
純の言葉が聞こえたタイミングで、倉今の耳に不思議な音楽が聞こえてきた。
ピンポロパンポン。
何かの警告音か。
でもどこか気の抜ける調子が倉今の判断を遅くさせる。
「女子高生!戻れ!こっち行くと死ぬぞ!」
「何があったんですか!」
こちらに走ってくる岡田と有原に向かって純がたまらず大声で問いかける。
「しじいとばばあが死んだ!頭が吹き飛んだ!」
「死ぬ!死ぬ!やだ!怖い!」
誰かが狙ってる?
目の前で起こった光景を純は脳内で再生した。
何かが弾けて、倒れた老人。
あの弾けた部位って位置からして…頭だよな。
突然頭が弾けて死んだっていうのか。
そんなバカな。
純は取り憑かれるように持っていたアタッシュケース地面に置いて開錠する。
中に入ってるものが何かのヒントになると思って。
幼児が書いたような字で『かほちゃん』と書かれたアタッシュケース。
その中には綺麗に折りたたまれた黒いスーツが入っていた。
「これは…」
奇抜なデザインと色味。
首元にあるポインターを見て純は確信した。
このスーツは和田達が着ていた、あの黒いスーツだと。
「そうか。だからあの爺さんと中学生…玉の前で」
「おえええええええ」
「はあ…はあ…おい…中坊なにしてんだ」
純の目の前まで戻ってきた岡田達。
倉今はバツの悪そうにしていて、有原は少し離れて嘔吐をしている。
岡田は呼吸を整えながら両手を腰に当てて聞くと、純はスーツを広げて見せつけた。
「あの部屋にあったアタッシュケース。適当に取ったやつなんですけどこれが入ってました」
「なんだ…それ」
「スーツみたいです。おそらく、あの人たちが着ていたものと同じだと思います」
あの人…とは言うまでもなく、和田たちのこと。
岡田の頭にも彼らの独特なデザインをしたスーツを見に纏った姿が想起される。
「あの胡散臭せぇ奴ら…やっぱ何か知ってやがったな」
あの男の言った通りになった。
そうじいさん達は言っていた。
あの時。
じいさんとばあさんは信じてない様子だったけど、男がなんか言っていたな。
想像でしかないが、男は老人たちにきっとこう言ったのではないか。
これから玉から音楽が流れて外に出ると。
一通り吐き終わってスッキリしたのか、路肩から口を吐きながら有原が戻ってくる。
「なんで…こんな目に」
「あの男、何かお爺さんたちに耳打ちしてましたよね。何か話してるなって思って見てたんですけど」
「そん時になにか吹き込まれたか。でも何を言っても聞く耳持たない、自分より若いやつの言うことに従いたくないって感じだったからな」
「親切心で教えてあげても聞かなかったから、もうそれ以上説明しなかったってことですか。話をしていない俺たちも含めて」
「ちっ。最初に説明する人選間違えんなよ」
これから起こることを教えていた…のにも関わらず。
男の言うことを無視した結果、老人たちは死んだ。
嘘だと決めつけ聞かなかった話。
唯一帰り道の案内だけ言うことを聞いてしまったばっかりに。
皮肉なものだ。
「あの人の言った通りだ。本当…だったんだ」
○ARRIVE
松永 太一
福田卓郎
和田彩
前田剛
清水恒彦
石村和樹
羽鳥純
倉今佳歩
有原泰輔
岡田久志
TOTAL 10人
●DEAD
熊井幸三
村上幹二郎
菅谷トシ子
梅田トヨ
TOTAL 4人
50:02……50:01……50:00……49:59