声の聞こえた方を咄嗟に見てみると、遠く離れたところで有原がだるま星人に襲われているのが目に入った。
逃げ惑う有原に向かってだるま星人が捨て身の突進を繰り出している。
「まずい…」
商店街に響き渡る爆音の中、純は倉今へと振り返った。
握っていたスーツを彼女の前へ差し出し、勢いよく押し付ける。
「倉今さん!これ着て!じゃないと僕ら死ぬ!」
「⁉︎」
「早く着替えて!早く!」
捲し立てる様な勢いある剣幕。
その様子に思考まで固まってしまった倉今の耳に有原の悲鳴が聞こえてきた。
物陰に隠れているだけで何もできないのか。
悔しさで項垂れる純。
そんな彼の視界の端に黒い何かが横切った。
「?」
よろけながらも気力で足を動かして逃げていた有原。
豪快で、でも単調な突進攻撃が痛じて彼の命を繋ぎ止めている。
「うわああああ!」
どかどかとまるで痛みを覚えないのか、障害物をものともせず転がってくるだるま星人。
そんな彼が遂に袋小路に追い込まれた。
『お゛い お゛い お゛い』
「ああああ………」
スーツのズボンがじわじわと色を変える濃くなる。
腰を抜かし、有原は失禁してしまった。
そんな彼に、だるま星人の大きくて猟奇的な目が至近距離まで近づいていく。
そして。
踏み潰そうとするべく、大空へ跳ぼうと身体を震わせた…その時だった。
バンッ!バンッ!
だるま星人の背中の一部が突然弾けた。
『う゛お゛お゛!!!!』
「⁉︎」
「当たった…」
「いいぞ石村くん!その調子!」
「あ、あれは…」
岡田の視界に現れた、黒いスーツを着た2人の人物。
ショットガンのような銃を構え走りながらやってきたのは、老人と中学生…清水と石村だった。
「よし…今度こそ仕留めるよ!」
『お゛い お゛い お゛い お゛い お゛い お゛い!!!!!!』
攻撃されたことへの怒りか。
それとも身体の一部が抉れた痛みか。
だるま星人は怒鳴り声を上げると、身体だけでなく顔まで赤くして清水と石村へ襲いかかった。
「あああっ…」
「石村くん!怯えちゃダメだ!避けて!」
突進してくるだるま星人の攻撃を避けることが出来ず、石村が吹っ飛ばされてしまった。
一方隣にいた清水には運良く当たらなかったが、相手の勢いに尻餅をついてしまう。
しかしそのまま崩れることはしなかった清水。
尻餅をつきながら、無我夢中で手に持つ武器…Xショットガンを構えて放った。
「へえあああ!」
ギョーン。ギョーン。ギョーン。
弦楽器を弾いたような音と機械音が混じったような、今まで聞いたことのないような発砲音。
手元は乱れ、狙いは定まらなかったが、大振りな攻撃で動けなくなっていただるま星人は避けることはできず、1発ヒット。
踵を返しただるま星人の右目が破裂した。
『う゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛』
「痛てて…」
「石村くん!大丈夫かい⁉︎」
「は、はい…なんとか…」
「嘘だろ…なんともねえのかよ」
吹っ飛ばされたはずの石村がピンピンしてる。
あの勢い相当だったはずなのに。
純も倉今も驚嘆の表情を浮かべる。
「でも…」
だるま星人に着実にダメージを与えられているのは確か。
しかし、まだ致命傷とは言えず、相手の動きを鈍らせる他の効果は得られない。
右目の被弾で狼狽するだるま星人。
唸り声を上げると天を見て叫ぶ。
そして目と口を開き、ハイライトの消えた目をもの凄い勢いで動かした。
痙攣しているかのような不気味な震え。
やがてピタッと治ると、だるま星人の表情が一変した。
先程までとは違った驚異的なスピード。
ギアを1段階あげただるま星人は、清水目掛けて重い一発お見舞いする。
「清水さん危ない!」
「うっ……!」
石村の声も虚しく、悲鳴にならない声をあげて清水が吹っ飛ばされる。
空中で身体の自由を奪われた清水の身体は、純たちの前を通過しシャッターへ勢いよく打ち付けられた。
「清水さぁぁぁぁぁん!!!」
とんでもない勢いでつっこみ、アルミ製のシャッターがぶち破られる。
喧騒の中でXショットガンがカラカラと転がる音がなぜかはっきり聞こえてきた。
この事態を何か知っていそうな二人。
スーツを着た清水と石村が加勢したものの、だるま星人の猛攻に完膚なきまで叩き伏せられた。
事態が好転するかも。
そんな淡い期待が無慈悲に呆気なく消え去った。
「あんなの…敵うわけねえ…」
「はあ…はあ…はあ…」
「そんな…」
「マジかよ…」
皆の視線がぶち破られたシャッターの方へ。
まだ。
まだだ。
そんな意思を抱いているようにそこから腕が伸びてきた。
身体を這わせ、苦しそうに息をする。
そして力を込め、瓦礫の中から吹っ飛ばされた清水が起き上がる。
「い、生きてやがる…」
「石村くん…戦って…この怪物倒して…生きて帰ろう…」
「でも…僕は…」
「君たちも丸腰じゃ危ない…隠れたままじゃ…早く逃げ…て…」
「……。」
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『なあ純。どうしてママに嘘ついたんだ?』
『ぐすん…だって…りんたろうくんともうあそんじゃダメっていったから…』
『凛太朗くんを守るために…喧嘩したの? 』
『うん…さきにオモチャとったのアイツらだ!』
『でも先生から聞いたよ。純は仕返しせずに、ずっと凛太朗くんを守ってたって』
『うん!』
『手を出さなかったのは偉いって先生は褒めてたけど…パパはそうは思わない』
『えっ?』
『大切なものならちゃんと戦って…勝って…守らなきゃ。強くなって、お友達も守れて…自分も怪我しないようにすること。そうじゃないと…守りたいものは守れない。パパはね、純には…自分のことも守ってほしいんだ』
『だからぱぱもつよいの?せいぎのみかただから?』
『そうだ。強くなった。おかげでママと純も…自分のことも守れるようになった。だから純にもそうなって欲しい』
『わかった!ぼくパパとママまもれるようになる!』
『はははっ。そうか。それは楽しみだ。なら、パパとの約束だ』
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ああどうして。
どうして…。
どうしてこんな時に昔のことを。
「どうしたの?」
緊張の最中、不意に笑みを見せる純を見て、倉今が声をかける。
どことなく雰囲気の変わった純がそのまま立ち上がると、通りへ出て清水が持っていたXショットガンを拾い上げる。
「ちょっと…!」
「君は…」
「動かないでください。…僕も戦います」
飛び出してきた純に反応した清水を制し、だるま星人と相対する。
巨大な身体。
大きな目。
うわあ。
正面で見るととても気持ち悪いなあ。
「だめだ…死ぬ…」
「ひとりでやれんのかよ…中坊」
「岡田さん」
どこから出てきたのか、純の隣にXガンを持った岡田もやってきた。
純と同じように口角を上げて、手負いのだるま星人を見つめる。
「そのまま寝ててくれ爺さん。それにそこのガキも。このおもちゃで遊ぶにはまだ早えだろ」
「なにスカしたこと言ってるんですか。顔ギチギチに引き攣ってますよ」
「余計なことつついてんじゃねえよ…盛り下がるだろ」
だるま星人が歯を食いしばってこちらを睨みつけている。
身体が震え始めた。
もうすぐ攻撃を仕掛けてきそうだ。
「おいガキ…この銃どうやって使った?」
「えっ…えーっと…」
岡田に問われ、返答に詰まる石村に、清水が代わりに答える。
「2つの引き金を同時に押すんだ。…それは普通の銃とは作りが違う。弾は出ず、破裂させる。それに…当たるまで時間差がある…」
途切れ途切れで紡ぐ言葉を聞いて、純と岡田はトリガーに指を添える。
指はトリガーにちょうどよくフィットしスムーズに引き金を引けそうだ。
「本当に…戦うのかい」
「当たり前だ。じゃなきゃみんな犬死になる」
「やれるだけやってみます。スーツ着てないので命懸けで」
「君たち…」
「よし…やるぞ…こっから本気のバトルロワイヤルだ」
『お゛い お゛い お゛い お゛い お゛い お゛い!!!!!!』
回転を始めただるま星人がついに動き出した。
純と岡田へ向かって突進する。
2人はだるま星人の動きを察知するとそれぞれ武器を構え、だるま星人に狙いを定めた。
ここから第二ラウンド。
岡田と純による戦いが始まった。
○ARRIVE
???
???
???
???
清水恒彦
石村和樹
羽鳥純
倉今佳歩
有原泰輔
岡田久志
TOTAL ???人
●DEAD
熊井幸三
村上幹二郎
菅谷トシ子
梅田トヨ
TOTAL 4人
21:21……21:20……21:19……21:18………