転がってくるだるま星人に対して2人はX(ショット)ガンを構えると、勢いよくトリガーを弾いた。
ギョーン。ギョーン。ギョーン。
複数響き渡るトリガーを引く音のいくつかが、だるま星人へ被弾する音に変化する。
バンッ!バンッ!
バンッ!バンッ!
「まだまだあああ!」
更に引き金を引いてダメージを稼ぐ。
何度目かの攻防でようやく兆しが訪れる。
いくつかの着弾に少し失速したか。
勢いを増しただるま星人の動きが微かに鈍ると、4人は同じタイミングで攻撃を躱した。
「くっ。ダメか…」
「ぼ…僕だって」
純と岡田の銃撃戦に感化され、石村も参戦。
攻撃回数が増やし更なる追い打ちをかける。
迫り来る巨体を躱しつつ、狙いを定めて引き金を引く。
ひとつタイミングを見誤れば即死。
地鳴りによる平衡感覚を奪われそうになりながらも何度もだるま星人を狙い引き金を引く。
そして。
『う゛う゛う゛う゛!!!!!』
遂に限界を迎え、だるま星人はコントロールを失うとそのまま商店へと激突した。
Xガンによる被弾の蓄積とぶつかった衝撃。
このダメージではひとたまりもないはず。
「やったか…」
岡田から期待を込めた言葉が漏れる。
けれど、そんな期待を嘲笑うかのようにだるま星人は起き上がった。
息の根は止めてない。
ふらふらのだるま星人が歯を食いしばり、ボロボロになった身体を奮い立たせた。
「⁉︎」
異変を察知し、身構えた3人。
転がってくると予想し、Xガンを構えるとだるま星人が仕掛けてきたの別の行動だった。
身体を震わせている。
この動きは。
転がる攻撃、ではなく別の攻撃モーション。
「まずいぞ」
攻撃を予期し、動けなくなった3人…かに思われた。
皆が呆然とする中、純のXショットガンだけが、まるで意思を持ったかのようにするりと動き、だるま星人を捉える。
無駄のない動きでトリガーが2回。
ギョーンギョーンと弾かれた。
とても滑らかな所作からの独特な発砲音。
そして僅かなタイムラグの後に、飛び上がろうとしただるま星人の左目が弾けた。
『う゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛』
「はあ…はあ…はあ…」
呻き声を上げながらだるま星人の身体が倒れる。
邂逅してからおよそ28分。
遂にだるまの怪物が地に伏した。
「倒した…」
「凄い…」
「ふーーー…」
終わった。
なんとか倒せた。
緊張感からの解放され全身の力が一気に抜ける。
清水、石村、岡田、純。
4人で挑み、掴み取った勝利。
物陰で隠れていた倉今が姿を見せ、こちらに近づいてくる。
クールな印象を見せた彼女でも、流石に心配そうな顔をしていた。
「よかった。無事で…」
「ああ、なんとかね」
誰1人犠牲を出すことなく、窮地を乗り越えた。
皆がへたり込み安堵が広がる中、商店街の屋根から拍手をする音が聞こえてきた。
「おーお見事」
音のする方を見上げると大袈裟な挙動で拍手する和田の姿が。
その隣には福田の姿もある。
2人は屋根から飛び降りると、腰を下ろしている純へ近づいてきた。
「初めての参加なのに星人倒すなんて…凄いね君」
「何がお見事ですか。最後の一体やり損ねたんですよ」
「なんだお前ら。今更のこのこ現れやがって」
息の絶え絶えな岡田の苦言。
彼の苛立ちはごもっともだ。
碌な説明をせずに消え、自分たちが生命の危機に瀕しているのにも関わらず、慈悲の無い喝采。
結果としてどうにかこの死線を潜り抜けたが、どこか運命が掛け違えてたら生きていなかったかもしれない。
「そんな言い方ないでしょ。ウチらだって星人倒してたんだよ。こんなのよりも手強いやつを相手してね」
「そんなことは聞いてねえ!こっちは死ぬところだったんだぞ!」
「だからなんです?我々には関係ないことですが」
関係ないだと?
和田から注がれる眼差しを払いのけ、純は福田の発言に食いかかる。
「ちょっと待ってください。それ本気で言ってるんですか」
「何か知りたかったらそこにいる爺さんに聞けば?また今回も性懲りも無く生き残ったみたいだし。戦えない奴は足手纏い。隠れて怖気付いてるやつはもっと論外」
「戻りましょう。最後の1体を討伐されたのではここにいる意味がありません」
「だねー。きっと今頃太一さんと剛くんがボス倒してる頃かな」
これ以上は用はない。
そう答えるように和田と福田は背を向けるとここから去っていった。
「くそ!なんなんだよアイツら!」
「仕方ないよ。彼らが言うことは本当だ」
「そんなことねえよ爺さん!あんたが居なきゃ俺ら死んでた」
「そうですよ。僕だって清水さんがいなきゃあの時生き残っていなかったです‥」
岡田と石村の言葉を受けて清水の表情和らぐ。
心なしか、笑ったような気がした。
「お礼を言うのは私の方だ。君たちが居なかったら…死んでいた。特に君」
「えっ、俺ですか」
「うん。あの人達が言ったように初参加で星人を倒したのは凄いことだ。名前は?」
「羽鳥純です」
「私は清水恒彦。羽鳥くん。ありがとう」
「僕からも言わせてください。僕は石村和樹です。ありがとうございました」
ありがとう、か。
他人から、これほどまっすぐ礼を言われたのはいつぶりだろう。
なんか、素直に奮い立って戦ってよかったなってそう思える。
「だいぶふっ飛んでたけど、大丈夫なのか?」
「はい。これがスーツの力なんです」
このあとはどうなるんだろう。
このまま帰ってもいいのだろうか。
そろそろ帰らないと爺ちゃんが心配してしまう。
そんな純の疑問が岡田も抱いたようだった。
「それで…これで終わりか?帰れるのか?」
「多分ね。あの2人の仲間が、ボスを倒したって言ってたから」
「お、おう?」
「ミッションが終わったら、生き残った人間はまたあの部屋に戻る。『転送』が始まるまで待ってて」
「転送?」
「はい。あの人たちが黒い球で移動することをそう呼んでて」
2人の説明を聞いて相槌をする岡田だったが、眉を顰めたため、おそらく理解できてないんだろうな。
色々と疑問は尽きないがこれで終わりというなら何も問題ない。
程なくして『転送』が始まり俺たちはその場を後にした。