GANTZ 〜SIDE G〜   作:@蛇足

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FILE.3 とある日常 その3

 

[CASE.5/倉今(くらいま) 佳歩(かほ)

群馬県内某所/05:13 P.M

 

 

運動神経がいい。

勉強ができる。

センスがある。

知識が深い。

 

この他にも人には長けた才能というものがある。

長所、特技とも言え、種類や質が異なればいち個人が保有する数も違う。

そしてその能力は個人の魅力に直結し、名を体現する。

自信が生まれる。

でも周りより秀でていたものだと思っていたものが、外に出たらゴロゴロいるなんてこともある。

自分よりも高い才能。

羨ましい。

妬ましい。

俺も、私も。

あの人みたいに才能があれば。

 

才能があることは素晴らしい。

恵まれている証。

祝福すべき。

喜ばしいこと。

 

でも。

もし。

もしその才能が不幸を招く原因なのだとしたら。

 

 

私は迷うことなくかなぐり捨ててやる。

 

 

大きく、くりくりとした目を迸らせて歩く女子高生。

倉今佳歩は降りしきる雨に打たれながら、背後から迫ってくる気配に注意を払っていた。

互いが傘をさしている為、はっきりと姿を捉えることは出来ないが、誰か1人確実に彼女の後を着けている。

 

その存在に気づいたのは学校を出てからすぐのこと。

校門を通り過ぎて一つ角を曲がったところからずっと着いてきていた。

パッと見えた姿から、多分男。

それでも佳歩は慌てることはせず、ただただ早足で進む。

眉間に皺を寄せることはしても派手な動きは見せない。

 

慌てず騒がずにいることが大事。

だってこんな経験、一度や二度じゃないから。

相手を刺激しないように。

そうすれば何とかなってきた。

 

厳格な両親と2人の姉の下で育った佳歩。

加えて倉今家は裕福であった。

その為、両親の高い意識もあって3人の姉妹は幼い頃から上質な教育を受けて育った。

勉強、運動、一般常識、マナー。

決して強要せず、本人達が進んで取り組むようにきっかけだけを促し、時間をかけて養う。

その方針は功を奏し、子ども達は上品に且つ立派に育った。

 

三者三様の育ちが出る中で特に佳穂が恵まれたのが容姿だった。

くっきりとした綺麗なパーツが良い比率で配置されていて、身長は同世代の女子と比べて高かった。

容姿、身長。

父と母のそれぞれ良いところを引き継いだと言っても過言ではない。

 

母の影響で美容にも余念は無く、思春期で不安定な肌事情を垣間見せない状態を維持してる。

誰もが羨む見た目。

そんなポテンシャルに胡座をかいていればまだ隙はあるのだが、2人の姉同様そのようなことはなく。

同性からは羨望の、異性から好意的な眼差しを向けられる。

 

そう。

私はとても恵まれている自覚がある。

ありがたい事ばかりだ。

でも。

 

 

 

 

「……。」

 

 

 

 

男はずっと一定の距離を保って着いてきている。

あの服…もしかして学校の人じゃないのかもしれない。

だとしたら誰だ?

思い当たる節は、バイト先の人しか思いつかない。

でもあんな細くて高い人いただろうか。

 

いた。

ただそれは店側の人ではなく、お客さんの方。

この1ヶ月の間で見かけるようになった、20代くらいの男の人だ。

 

 

 

 

「ほんと最悪…」

 

 

 

 

更に不運は重なり、目の前の信号が赤に変わり、足を止めざるを得なくなってしまった。

このまま立ち止まるか?

もしかしたら後ろの男はこの先の駅に向かう人で、私の勘違いって事もあるし。

そう。

これはストーカーじゃない。

僅かな望みを胸に、佳歩はいつもの通学路から外れて歩き続けることを選択した。

左に曲がってから少ししてひっそりと後ろを見てみる。

儚い希望も束の間、あっさりと崩れ去り、男の存在はしっかりと佳歩の後をつけていた。

駅に向かう人ではなく、男は確実に佳歩を狙っていたのだ。

 

十分な程の確証を得て、現状を打破すべく、佳歩はストーカーを巻く決心をした。

狭い住宅街を右へ左へ。

細かく進む道を変えて相手からの追跡を断つ。

奮闘始めて数分。

どうにか撒くことに成功した。

 

 

 

 

「はあ…」

 

 

 

 

じわじわと募っていた緊張感から一気に解放され、佳歩は大きく肩を弾ませて息を吐いた。

後方からは誰も着いてくる気配は完全に無くなった。

後はもう自分の家へ帰るのみ。

住宅街を通り抜けて元の道へ戻る。

わざと道を外したあの信号が見える道へ出た時、恐怖は突如襲いかかった。

道の遠い先で。

撒いたストーカーの姿が、佳歩の目の前に現れた。

 

 

 

 

「⁉︎」

 

 

 

慌てて踵を返し、佳歩は全力で走り出した。

今までに襲ったことのない恐怖が全身に駆け巡る。

時折振り返ると、男もまた全力で追いかけてくるのが見えた。

 

 

 

 

「はあ…!はあ…!はあ…!」

 

 

 

 

涙と雨で顔がぐちゃぐちゃ。

走りながらさす傘は最早雨を防ぐ働きをしておらず、顔だけでなく髪や肩までぐっしょりとなってしまった。

どこまで鬼ごっこが続くのか。

当てもなく逃げ惑っていた佳歩の目に飛び込んできたのは、停留所に到着したばかりのバスだった。

 

 

 

 

「乗ります!乗ります!」

 

 

 

 

下車する利用者と入れ違いで乗り込むとバスは扉を閉めて発車した。

乗車してる人たちの視線を省みず、佳歩は呼吸を整えながらバスの外を見る。

そこには数秒の差で迫ってきた男が、息を切らしてバスを見つめる姿が。バス越しで見るその男の目はなんとも言えない怖さを含んでいた。

佳歩は傘を纏めると、重い足取りで空いている座席へ座り込んだ。

 

 

 

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