藤丸立香(偽)が行く人理修復 作:藤丸立香(偽)
そんな妄想から始めました
書きたいところだけ書きます
オレの名前は藤丸立香。どこにでもいる普通の男子高校生。
でも強いて普通じゃないところを挙げるとすれば……オレの容姿が『Fate/Grand Order』というゲームに登場する男主人公、通称"ぐだ男"にそっくりなところだろうか。
日本人の標準装備である黒髪に、先祖返りだと親に言われた水色の瞳。名前までデフォルトネームと同じなのは、何らかの因果を感じる、というわけでもなく、友達との間で"藤丸立香"の物真似が鉄板ネタになる程度。
特に非日常に巻き込まれるというようなこともなく、当たり前でごく普通の日々を送っていた。
そんなある日のことだった。
その日、オレは友達と献血に行った。例のゲームから興味を持ったというのが主な理由だが、それはそれとして良いことでもある。やらない理由は特になかった。
「おまえが献血に行ったら、カルデアに連れてかれたりしてな」
「そうなったら大変だぜ?立香。人理を救わなきゃならないからな」
「もう、そんなことあるわけないだろ?ここは現実だぜ?」
そんな話をしながら笑い合って、順番待ちをしていた。
この時は、特になにも感じるものはなかった。
それこそ何かしらの主人公のように、何かが終わる予感がしただとか、そんなことはなかった。
ただなんとなく、この後行く予定だったカラオケで何を歌うか、みたいなことを考えていたのだと思う。
「君、ちょっといいかな?」
血液検査後にスタッフの人に呼ばれた時、オレの中から不安の感情が込み上げてきた。
といってもなにか病気にかかっているか心配になっただけだが。今となってはその方がよかったかもしれない。
「なんですか?」
「こっちで話そうか」
なんの疑いもなく奥の方についていくオレ。
「……何の話ですか?」
「なに、君にやってほしいことがあってね……」
その時、視界がぐにゃりと蠢いた。平衡感覚が保てなくなり、無防備に床に倒れ込む。目が回った状態をもっとひどくしたみたいだ。どうやったら体を動かせるのかすらよくわからなくなる。
「だから君には少し眠っていてもらうよ。命の危険はないから安心したまえ……」
意識が落ちる直前に思い浮かんだことは、あいつらと遊べなくなったな、ということだった。
「……ウ……フォウ!」
なにか小動物の鳴き声のようなものが聞こえる。
「……先輩、起きてください」
目覚めたばかりで白飛びした視界の中で、特徴的な薄紫色を見つける。
「……う…………ここは……」
正常になった視界に映ったのは、真っ白な種類不明の生物と眼鏡をかけた1人の少女。
当然のことだが彼女との面識などない。だがオレはその人物のことを知っていた。
「ま……マシュ……?」
「はい、私の呼称は確かにマシュ・キリエライトですが……なぜそれを?」
不味い、墓穴を掘った。
もはや無意識の内にそう感じたオレは即座に言い訳を開始した。
「い、いや、寝てる間にそんな名前が聞こえてきたから寝ぼけて言っちゃっただけだよ」
「そうですか。では、せっかくですしフォウさんの紹介もしておきましょうか」
物騒な”獣”の紹介を聞きつつ、辺りを見渡す。
見たことがないのに見慣れた通路。
オレの妄想じみた仮説が正しければここは……
「おっと、君が新人かい?」
これは確定か?
そんなことを考えながら、濃い緑色のタキシードを着た人物と会話を交わす。
彼の名はレフ・ライノール。俗に節穴と呼ばれることもある半ネタキャラ……とはいえそれはあくまでゲームの話。
どうあがいてもオレという凡人がかなう相手ではない。
とりあえずこの場は穏便に済ませるのが正解だろう。
「それでは中央管制室に急ぎたまえ。そこでもうすぐ説明会が始まる」
「はい、わかりました。ありがとうございます」
”藤丸立香”のエミュをしながら会話を終える。
さて、これからどうするか。差し当たってはやはり所長のところに行くべきだろう。こういうのは原作の流れをなぞっておけばどうにかなる。
「さてと……じゃあマシュ、案内をお願いできる?」
「はい、ご案内しますね」
中央管制室に到着したオレは指定された席に座る。
それらの席の中心にはやはり所長――オルガマリー・アニムスフィアその人がいた。
これはもう確実にカルデアにいるな。というか本当に存在したのかよ。
さて、今からは遅刻しかけた分ちゃんと話を聞いているというポーズをとるべきか?いやでもここで会場を追い出されないと今後の展開が……
そんなことを考える間もなくオレの意識は闇の中に溶けていった。
さて、原作通り所長の目の前で眠ってしまったらしいオレは、マシュの案内で自分に割り当てられた部屋へと向かっていた。
マシュが任務のためにみんなのところに戻っていったところで、ついてきたフォウ君と共に部屋へと立ち入る。
誰もいないはずのそこには先客がいた。
「うぉう⁉君は誰だい⁉」
このサボっていた男はロマニ・アーキマン。こんなんでも医療部門のトップという立ち位置にいる者だ。
ロマニの話を聞いている間に、やっと冷静になってきた頭で考える。
オレはこの後どうすればいい?マスターがオレ1人で人理を救えるのか?
いやそもそも……
「ロマニ、万が一に備えてこちらに来てくれないか?」
レフからの通信が聞こえる。
そうだ、オレはこのまま原作通りにいくなら……
それが最善だ、と理性が囁く。Aチーム、そしてその後いろいろあってのオルガマリー所長の死。それら全ては2部以降のために必要な要素だ。それらがなくなればどうなるかの予想ができないし、原作知識も役立たなくなる。そもそもここで本当にあのゲームと同じことが起きるのかどうかは今は置いておく。
だからここは何もしないのが正解だ。そのはずなんだ。だとしても……
んなこと言ってる場合かよ。
「レフ教授!そこにAチームの人はいますか!」
「な、なんだ⁉今レイシフトの準備をしているが……」
驚いた様子で答えるレフ。
今はまだ正体バレもしてないし、おおっぴらな妨害はできないはず……!
「キリシュタリアさん!そこにいるなら聞いてください!その部屋の所長の足元に爆弾が仕掛けられています!どうにかしてください!」
「君⁉なにをっ!」
「待ってくれ!どういうことだい⁉」
「事情は後で話します!早く!」
急に大声を出したせいでのどが痛い。心臓がドクドクと音を立てている。
これでなにもなかったら笑いものじゃすまない。何らかの措置を受けるだろう。
それがどうした。
これが今できるオレの最善。誰も気にしない死者たちをどうにか助ける唯一の手段だ。
「えっと……藤丸くん?どうしたんだい?」
「後で説明はします。それよりオレたちもはやくあっちに向かいましょう」
「……わかったよ。キミにとって大事な事なんだね。ボクも様子が気になるし、急ごうか」
ロマニの後を追いかける。ものの数分で管制室に到着した。
「ちょっとロマニ⁉これはどういうことなの⁉」
「いやぁーちょっとボクにも……まあでも彼が知っているって」
「あんたはさっきの⁉……説明してもらうわよ!」
「そうだね。私も話が聞きたい」
そこで話しかけてきたのは、所長ともう1人。
さすがの彼も困惑を隠せないようだ。まあ、自分が死んでいただろう状況下でここまで冷静なだけすごいのかもしれないが。その辺は一般人にはわからない。
「なんなんだあいつ……」
「あいつが爆弾のことを知っていたって?」
「なんでそんなこと知ってんだよ!一般人の癖に!」
「もしかしてあいつが仕組んだんじゃ……」
彼とは対照的に、管制室内は騒然としている。不確かな憶測も飛び交っているようだ。まあこうもなるか。
「少し落ち着いてくれるかい?全ては彼に聞けばわかることだ」
声が鎮まる。
「さて、では君の知っていることを話してもらおうか」
にこやかに問いかけてくるキリシュタリア。
さて、ここからが正念場だ。
「はい、もちろんです。でもその前に……犯人の捕縛が先じゃないですか?」
「なるほど……では、この事態を仕掛けた下手人を教えてくれるかい?」
「ええ、そこにいますよ……そうですよね、レフ教授?」
その人物は動揺する素振りを見せずにあくまで穏やかな調子で否定してきた。
「私が?はは、まさか。それにどんなメリットがあると言うんだい?」
……とりあえずここで暴露してやるか。
「もちろんありますよね?そんなことをする理由が……なぁ、
「……!」
今度こそその厚い面の皮が破けたか。
「な、何を……」
「いやぁ、こっちとしてはおまえの正体とかもう既に知ってるんだよ。もう無駄に足掻かないでくれないか?どーせ今も私の思い通りに動かないクズどもばっかで最悪、とか思ってんだろ?」
「ふふ……ハハハハハ!」
突然高笑いを始めるレフ。
「ああその通りだとも。だがそれを知っているからどうする?貴様が私に勝てるとでも?」
「いや?まさか。こんな一般人がかなうわけないじゃん。だからこそこの場で言ってやったんだからさ」
「なにか策があるのかと思えば他人頼りか!呆れかえるほど愚かだな。お前たちが何をしようと人類は滅びるというのに。これを見ろ!」
レフが指し示す先には、真っ赤に染まったカルデアスが。それがどういう意味を持つのか、ここにいる全員が知っていた。
「う、嘘よ。そんなこと……」
それが示すのは、人類史の終わり。100年先の人類の存続が、確認できないということである。
「これでわかったかな?君たちが何をしようと無駄だということが」
予想外の事態に戸惑う人々。
だがあえて言おう。それがどうした?
「無駄じゃない」
「なに?」
「どうにかするさ。人類がな」
「どうにかなるとでも?矮小で愚かな人類ごときで?」
「ああ、なるさ。オレはそう信じる」
そう啖呵を切ると、肩に手が置かれた。
「そこまで信じられてしまっては、こちらも答えなくてはね」
キリシュタリアがレフに掌を向け何かを短く唱える。
すると、さらっと逃げ出そうとしていた彼の上半身と下半身が逆回りに捻じ曲がる。
「がはっ!」
血と臓物がこぼれ、骨が折れる音が聞こえる。
オレはただ単にグロい、という感想しか出てこなかった。
「おや、逃がしてしまったか……」
少し残念そうにつぶやくキリシュタリア。
いやあなただいぶエグイことしてましたよね?
「さて」
今度は両の手で肩を掴まれる。
「改めて、全部話してもらおうか」
これ、オレ大丈夫か?
……所詮オレは、”藤丸立香”ではないのに。
藤丸立香
FGOを知っているだけの一般人(なお見た目は完全にぐだ男)
普通の善性の持ち主
持ちネタは"藤丸立香"の物真似であり、その結果エミュが上手い
ただしキレると素が出る
こんな感じのお話を書いていきます
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