魔笛のゲマトリア   作:SCOPEWOLF

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記録:フェルス•ムズィークについて

彼について語る以上、まずは彼の簡単な情報をまとめる。

 

名:フェルス•ムズィーク

 

職:音楽家

 

研究概要:生徒たちの神秘を突発的成長という過程をもって増幅、活性化させることで崇高へと至らせる

 

特筆するとすれば、彼の研究内容についてだろう。

我々は生徒の持つ神秘の負の側面を増幅させることにより、神秘と相反する恐怖との融合……

ひいては、それによって発生する崇高へと至る力を観測してその制御方法を確立させることが主な目的である。

この点において彼は我々とは少々異なるアプローチとなるのだが……

しかし、その一方で確かな成果を出している。

彼の持つ遺物……

我々が「魔笛」と呼ぶその不可思議な道具による、生徒たちの神秘の増幅。

これには我々の求める崇高には届かぬ程度の力しかないが、それはあくまで彼女たちが増幅する神秘に対応しきれていない故なのだという。

対応しきれない神秘の力は彼女達が無意識に知らず知らずのうちに消費されており、失われたその神秘の残滓は大量の結晶という形で具現化する。

彼曰く、被験者である彼女たちの現在の状態は水が溢れ出している器とのことだ。

この器は成長によって拡張され、より多くの神秘を……ひいてはより優れた神秘を精製していけるようになるとのことだった。

我々のように短期間での力の活性化による崇高への到達ではなく、長期間を見越した育成での器の成長による崇高への到達を目指すのが彼なのである。

私の研究過程で生み出された「ヘイロー破壊爆弾」について聞いてみたところ、「か弱い神秘を持つ生徒なら通用するでしょうが、質や量に優れている神秘を持つ生徒に使っても破壊しきれずに神秘によって中和されるでしょう」と返された。

彼は我々の中でも、特に神秘そのものの性質をより深く知る存在。

私の作品を見た上でそう評価したということは、器に注がれている神秘の質や量というものはそれほどに強力かつ、恐怖のエネルギーへの反作用が強いのであろう。

どう改善すればそのような強者にも通用するのかも聞いたが、彼の話だと「爆弾」という形でのアプローチではどう足掻いても反作用が強く出てしまうことになるのだそうだ。

辛うじて黒服のような「科学的実験」というアプローチであれば、反作用を抑えて融合させることも理論上可能らしいのだが……

その場合、急な力の増幅による圧力によってテクストが剥がれるどころか、最悪肉体という物理的な器が耐えきれずに崩壊……もしくは破裂してしまうらしい。

特に、最初から高い質と量の神秘を持つ者にそれを実行してしまおうものならどのような惨状が起きるか、彼であっても予想がつかないのだそうだ。

彼の理論と研究成果を加味して考察してみたが、それを思うと黒服の「暁のホルス」を使った実験はあまりにもリスクが大きいと推測された。

彼もまた知的好奇心と自己の理論に従って行動していたが、こうして考えてみるとそのリスクによる被害も折り込み済みだとしてもあまり賛同しかねる実験であった。

一方、彼の研究自体はかなり地道な進捗ではあるものの実を結び始めている。

原初の被験者たるオシリスの神秘がさらなる活性を見せ、一時的にだが己の神秘のみならず恐怖をも調伏したことを黒服が観測した。

崇高に至るものではないが、これは新たな発見ともいえる。

もし、この調伏がかの色彩にも通用するのであれば……

未知の変数を含む不確定かつ不安定な希望的観測ではあるものの、我々の解釈とはまた異なる崇高が誕生する可能性を秘めている。

我々の求める崇高への解釈とは異なれども、その先に存在する結果においてはこちらの目的とも相違はないはずだ。

懸念があるとすれば、彼と相反するマダムが衝突していかなる結末を迎えるかだが……

未だ不確定なその可能性について考察したところで、結果は変わらぬだろう。

かの存在を前に、マダムはあまりにも非力であるのだから。

 

 

これは友人としての交流の中で知ったことだが……

彼は音楽を通じて様々な芸を魅せることも得意としている。

解釈として音楽という雰囲気の調和がその空間にある中でそれを実行することにより、その技能を引き立てて魅せているのだと思われる。

手品からダンスまで幅広く修める彼の器用さには感服されるものだ。

 

 

さてここまでは彼の人柄や目的などについてを纏めたが、次は彼の存在について纏めようと思う。

まず彼は我々や生徒である神々とは違い、様々なテクストの側面を持つ。

我々ゲマトリアを成り立たせる「悪い大人」としての側面。

探求者としての側面である「音楽家」。

そして、彼がもっとも我々と比べて特異な存在である理由……

彼の中に存在する神秘が由来の二つの側面である。

本来であれば、生徒ではない我々では神秘を直接扱うことができない。

しかし、彼の者においては生徒になり得ぬ半端物の神秘を二つ取り込むことによってそれを可能にしている。

それ故にか、彼は比較的生徒たちに近しい人型の形態を得ることもできている。

また、取り込まれた二つの神秘は彼の中で調和されている状態であり、表裏一体……例えるならばコインの裏と表のような物になっている。

この場合、普段の形態である表を■■■■■、彼の本来の姿に最も近しい戦闘に特化した形態を■■■■•■•■■■■と称している。

裏については多少なりとも条件があるものの、一度発動すれば例え相手がかのホルスやバアル等の強者たちであろうとも止めることは叶わないだろう。

……もっとも、今の彼が裏の側面を発動する相手など一人しかいないのだが。

今はゲマトリアとの制約がある故にそのようなことは起こり得ないだろうが……

私の思う限り、かの悪夢がこの地にて再現される可能性は非常に高いと考えて良いだろう。

 

 

以上で我が友フェルスについての記録を終了する。

願わくば、満月の下に時計塔の鐘の音と何もかもを包み隠す濃霧が現れぬことを祈る




――ガガッ……ふ、ふせ………不正……アク……

ピッ

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