四月と五月忙しすぎワロタwww
ワロタ……ワロ……
わァ…あ…
それではまたあとがきで。
誰もが動きを止めていた。今この場に居るはずがない者。その者が現れたことに、皆が虚を突かれたのだ。
「ギ……ギギギ……!!」
だが、
────衝突。大型トラックが事故を起こしたかのような轟音が辺りに響き、耳の良いシロやタマモが悲鳴を上げながら耳を押さえる。
ギシギシと、文珠の結界が音を立てて罅割れていく。
「……ちっ、結界を拡げすぎたか」
「よ、横島さん……っ!?」
しかし、結界を破られようとしている横島は冷静に自らの失態を分析している。その落ち着きようは、横島をよく知っているはずのキヌですら違和感を覚えるものだ。
知っているはずの人が、まるで知らない誰かのような振る舞いをする。その様に、キヌの中の不安が大きくなってくる。
「“集”まり、“固”まれ」
横島が言葉を紡ぐ。すると文珠の結界が鵺の腕に纏わりつき、固まり、拘束をする。
「ヒョ、オオォ……!?」
動かない。鵺の膂力を以ってしてもビクともしない拘束力。文珠の結界壁を一点に集中した、超強化型サイキック・ソーサーの応用だ。
……なお、この超強化型を横島は心の中で“壁尻盾”と呼んでいるとさとりさんが言っていたとか何とか。
「……ッ!?」
盾の霊力が急激に高まる。それを感知した鵺が逃げようともがくがやはりビクともせず、やがて最高潮に高まった霊力が膨張し────。
「ギャアァアアアァッ!!?」
爆発した。鵺の全身が霊力による爆炎に飲まれ、大きく吹き飛んでいく。
「へっ、ざまーみろバケモンめ」
先の声とは違い、まるで悪戯が成功したことを喜ぶかのような、生意気さを感じさせる声音。そうだ。その声、その言いよう、キヌの記憶の中の横島と一致する。だが、やはり……何かが違う。
髪型、身長、体格……少し変わっている。だが、皆が……キヌが感じたのは
霊波? 雰囲気? それとも別の何か?
何かは分からない。分からないが────目の前の少年、『横島忠夫』を見て、その少年がそうだと言う確証を感じ取れないのだ。
第九十六話
『あの人のはずなのに』
だが、『そんなの関係ねぇ!』とばかりに横島へ飛び付く少女が一人。
「先生ーーーーーー!! 横島先生ぇーーーーーーっ!!!」
「のわーーーーーーっ!!?」
どがぶぁわー!! と、突進の勢いそのままに横島の弟子であるシロは横島を押し倒した。ずしゃあああー! っと数メートルは地面を滑りながらも、シロは横島の顔面を舐め回す。
「あっ!? ああーーーーーーっ!? こ、ここじゃいやーーーーーーっ!!? せめて人目の無いところでーーーーーーっ!!!?」
横島の口から絹を引き裂くような悲鳴が上がる。(氷室キヌのことでは断じてない)
「よ、横島さ────!?」
シロが大粒の涙を流しながら横島の顔を舐め続ける、というある意味キヌ達にとっての日常の光景(?)が展開されたことで、ようやく周囲の時間が動き始める。
キヌも倒れた横島に駆け寄ろうとした時、横島が瞬時に起き上がり、屈んだ状態ながらもシロを背中へと庇う。
「ヒョオオオオオオアアア゛ア゛ア゛ッ!!!」
吹き飛ばされた鵺が口から涎を撒き散らしながら、狂乱したかのように突っ込んでくる。横島は瞬時にサイキック・ソーサー・プラスを複数生成し、投擲。鵺の身体に突き刺さり爆発し、鵺の進行を妨げる。狂ったように叫びながらソーサーに対して腕を振るい、遠ざけようとする。
「……なーんか妙な様子だな、あいつ」
鵺の荒れ狂う様子に首を傾げる横島だが、まあいいかと疑問を投げ捨てると、ゆっくりと立ち上がってシロの頭をポンポンと撫でる。
「再会の挨拶はまた後でな。今はあいつをどうにかするのが先決だ」
横島の身体から静かに、しかし力強く霊力が立ち上る。その姿、その言葉には、有無を言わせぬ迫力があった。
「よ、横島さん……?」
「先生……!」
キヌは己の知っている横島とのギャップに戸惑い、シロは横島の格好良い姿に目をハートにしている。いつの間にか隣にまで来ていたタマモに裏手でペシッとツッコミを入れられているぞ。
そして、横島を見て愕然とした表情を浮かべているのは令子だ。信じられない物を、そして信じたくない物を見た。そんな表情だ。
やがて、全てのソーサーが破壊され、爆炎を突き破って鵺が横島へと向かって突き進んでくる。
「ヒョオオオオオオオオッ!!」
怒りによって血走った目、空気を震わせる
「ヒョ―ヒョーヒョーヒョーうっさいんだよ、テメーはぁっ!!」
横島を圧し潰さんと迫る右腕────左手の化勁で受け流し、右の肘撃を叩き込む。化勁による威力の上乗せ、更に交差法を交えた一撃は、鵺の身体の“芯”へと響く。
「ごぉっ……!?」
苦悶の表情を浮かべ、鵺の体勢が崩れる。横島はすかさず右の足で鵺の左足を絡め捕り、地面と挟むように拘束。更に小さく鋭く身体を回転。
横島が最も得意とする、肩から背中と言う大面積による強烈な一撃────貼山靠をぶち当てた。
「ぉごぉぶぇっ……!!?」
鵺の口から粘ついた唾液交じりの血が吐き出された。たたらを踏んで後退る鵺に、更なる追撃が打ち込まれた。
守るように前に出された腕を左手でかき分け“道”を作り、真っ向から胸の中央に右の縦拳を叩き込む!!
────太極拳・
「ぎひぃえ゛っ!!?」
鵺の霊核へと打ち込まれた拳。その威力に鵺の身体が吹き飛び、強かに地に打ち付けられる。息も絶え絶えにビクビクと悶える鵺に、横島は残心を解いた。
「……」
────強い。圧倒的なまでの強さ。それを目の当たりにした令子達は、誰も言葉を発することが出来なかった。
確かに横島忠夫は強かった。それは西条も含め、誰もが認めるところだろう。だが、これほどではなかった。横島の纏う霊気、それは正に神魔級だ。その衝撃に皆が固まる中、その声は唐突に
「よーこーしーまーくーん……」
「……ん?」
己の名を呼ぶ声に横島が空を仰いでみれば、何と一人の少女が頭から落ちてくるではありませんか!
「たーすーけーてー……」
「うおおおおおおっ!?」
間一髪、何とか少女の落下地点に間に合った横島は、少女を優しく横抱きで受け止めることに成功する。
「だだだ大丈夫っすか
横島に助けられた少女────八雲紫。紫は頭を押さえつつ、自らの身に起こった事態を説明した。
「こっちの世界に慣れてないのに能力を使い過ぎましたから。横島君を追いかけてる途中で身体から力が抜けてしまって……」
「……すんません、俺のために」
スキマ空間を通り幻想郷世界からGS世界に着いた瞬間、ヒャクメが悲鳴を上げた。令子たちが“鵺”に襲われている、と。故に紫が法則がまるで違うこの世界で無理矢理にスキマを開かざるを得なくなった。
「やれやれ、どうにかなったようだな」
「良かった。紫に何かあったら色んな意味で大変だからな」
横島の左右に声と共に降り来たるのは、二人の少女だ。
一人は日本人と思しきもんぺ姿の白髪の少女『藤原妹紅』。そしてもう一人は日傘を差し、蝙蝠が如き翼を生やした吸血鬼の少女、『レミリア・スカーレット』である。
「すんません、先走っちゃって」
「気にするな。大切な仲間の危機だったんだろう?」
「間に合って良かったよ」
横島は紫を地面に下ろしつつ、二人に頭を下げた。二人は横島に頭を上げさせ、優しく声を掛ける。
三人……否、四人の雰囲気に声を掛けられない。キヌたちは自分たちが築いてきた絆とはまた別の絆で結ばれているのだろう横島の姿に、少なくないショックを受ける。
そして、その中でも令子の反応は異常であると言えた。
「……な……っ、なん、で……!? 横島君……!?」
それは、とても小さな呟きだ。
「……
横島に訪れた
「プハーッ! な、何とか間に合ったのねー! ハア、ハア……」
ひーん、と涙目で情けない声を上げて肩で息をするのは『ヒャクメ』だ。神族の一柱であり、令子たちとも親交の深いヒャクメ、そんな彼女は息を整えることも出来ない事態に追い込まれることとなる。
「ヒャクメェッ!!」
「ひょえぇっ!?」
隣に立つ令子に胸ぐらを掴まれたからだ。
「アンタ、知ってんでしょ!? 何で……
それは悲鳴にも近い叫びだった。ヒャクメの眼が驚きに、そして悲しげに細められる。
「……さすが美神さんなのね。一目で気付いちゃったんだ」
ヒャクメはほんの一瞬だけ目を伏せる。しかし、すぐに美神と目を合わせ、毅然と“上”からの指示を伝える。
「悪いけど今は何も言えないのね。
「……!!」
告げられたのは特級の爆弾。思わずヒャクメの胸ぐらを掴む手の力も弱まってしまう────が。
「そ……でも……わ」
「……え゛」
先程以上に強く。そしてその心の内を『
「そんなんどーーーでもいいわーーーーーー!! いいからさっさと答えんかーーーーーーっ!!!」
「ひえええぇーーーーーー!? だ、だから言えないのねーーーーーー!!?」
がっくんがっくんと令子に揺さぶられ、ヒャクメはぶしゃーっと涙を流しながら悲鳴を上げるしか出来ない。ヒャクメは非力で貧弱さんなのだ。令子に抗うなど彼女には不可能なのだ。
「……さすが美神さんだな」
令子とヒャクメのやり取りを横目で見ていた横島は、色んな意味で令子に対して驚愕を覚える。己の身に起こった変化を一目で見抜いたこと、神魔の最高指導部の意向を無視しようとする様。横島は猛る令子に冷汗がびっしょりだ。
「横島君」
「……西条」
そんな横島に声を掛けてきたのは、神妙な表情をその顔に浮かべた西条だった。視線は倒れたままの鵺に固定されているが、その動きに淀みはない。油断なく霊気を身体に張り巡らせ、ジャスティスも手に握ったままだ。そして横島に何かを語りかけようとしたのだが、横島に先に言葉を掛けられてしまった。
「ちょうどいい。“あいつ”、鵺に妙な感覚を覚えるんだが……」
「ん、ああ。実は────」
西条は事の経緯を横島に伝える。その表情には深い悔恨が滲んでいる。
「僕は鵺の力の源となっている土蜘蛛の欠片に気付けなかった。気付く要素はいくらでもあったというのに……!」
「……」
拳をぎゅっと握り、悔しそうにそう告げる西条に横島は何も言えない。……というよりは何も言わなかった。心の中では(……いや、そんなん気付ける要素どこにもないじゃん。分かるわけないじゃん)という感想を抱いたのだが、それを西条に伝えることはなかった。
だって西条が悔しそうに自省している姿を見ていると気分が良いからだ。とても気分が良いからだ。
「しっかし、あの姿に霊核に根付いた別の力、か……。『あのヤロー』を思い出すな」
ぼそりと呟いた言葉。見た目は完全に別物ではあるが、そこに含まれた要素は似通っている。『あの男』を思い出すのも仕方がないだろう。頭をガシガシと掻きながら、ちらりと妹紅に視線をやる。
妹紅は横島の視線に気付くと、少々の間を置いて微笑んだ。どうやらあまり気にしてはいないようだ。
横島が地底より戻ってから今日までのおよそ二か月の間に何かあったのか、以前よりも精神が安定している。
「……彼女は」
横島の視線を追い妹紅を見やる西条。と、横島にどういった関係なのかを聞こうとしたが、視界の端に一筋の閃光が走り、乾いた枝が爆ぜるような音が響いた。
「……ヒョ、オオォ」
「……まだ立ち上がるのか……!」
身に微かな雷を纏わせ、倒れ伏していた鵺がゆっくりと起き上がる。その様を見た西条は驚愕を露わにし、ジャスティスを構える。が、すぐに訝しげに首を傾げる。鵺の様子がおかしいのだ。
「ヒョ、オオオ……ヒョー、オオォ……」
深呼吸をするように、天を仰ぎ何度も声を上げる。荒々しかった妖気もその度に落ち着きを見せていく。やがて鵺の妖気は凪いだ湖面のような静謐さを見せ、その視線は横島に固定された。
「……感、謝……スル……強キ……現、代ノ……陰陽師、ヨ……」
「な……っ!?」
掠れたような、吼え声を無理矢理抑えたような声で。鵺は横島に語り掛ける。その目は理性を取り戻しており、聞き取り辛くはあるが声の響きは深い理知を感じさせる。
「最後ニ……己ヲ……取リ、戻セタ……。故ニ……」
鵺の妖気が高まっていく。紫電が渦を巻き、荒ぶり猛る。天を衝く勢いで高まり続ける妖気は狂乱状態をも超える強靭さを感じさせる。
「故ニ……見セヨウ……。我ガ……真ノ姿ヲ……!!」
鵺の言葉に横島は目を細める。
鵺との戦いは、これより最終段階に入る。
第九十六話
『あの人のはずなのに』
~了~
お疲れ様でした。
……おや!? 横島君の様子が……!
次回、ようやく鵺との決着が付きます。
そして予定が狂ったので話が少し伸びます。
果たしてぬえちゃんの真の姿とは……!?
それではまた次回。