東方煩悩漢   作:タナボルタ

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お待たせいたしました。

インフルエンザに罹り、熱が四十度近くまで上がったりしました。

皆様も病気にはお気をつけください。

それではまたあとがきで。


第二十五話『お前は、永遠の命を欲しいと思うか?』

「うっし、これで買い物は終了だな」

 

「それじゃ、早く帰りましょー」

 

 横島と一号達は人里での買い物を手早く済ませ、紅魔館へと帰ろうとしている。横島としてはもう少し人里でゆっくりとしていても良いのだが、何故か一号達は急いで帰ろうとしている。

 

「おいおい、そんなに急かすなって。何かあったのか?」

 

 横島は一号達の様子が少し気になり、聞いてみることにした。一号達は妙にそわそわとしている。

 

「……今日は滅多に()()()()()()()()()お客さんが来る予定だから。……きっとおやつも豪華」

 

「ああ、なるほどね」

 

 三号の回答に横島は苦笑した。三号は他の妖精メイドに比べて少々大人びた所があるのだが、興奮気味に豪華なおやつを夢想している姿は見た目相応の幼い少女そのものだった。

 

(これで俺よりずっと年上だっつーんだからなぁ。……紅魔館の妖精メイドが全員そうだとは思えねーよな)

 

 横島忠夫、こう見えて紅魔館で二番目に若い存在である。

 

「早く帰りましょーよー! 早く早くー!」

 

 二号が横島の手を取り、ぐいぐいと引っ張る。進行方向に目を向けずにいるものだから、二号は自分の背後に存在した通行人に気が付かなかった。だが、間一髪気付いた横島が二号を引き寄せることで事なきを得る。

 

「こらこら、ちゃんと前を見なきゃ駄目だろー?」

 

「ごめんなさーい……」

 

「そっちの子もごめ――――あれ?」

 

 横島は二号を軽く叱り、二号とぶつかりそうになった少女に謝ろうと向き直ったのだが、そこにはすでに誰も居なかった。

 

「どうしたんですかー?」

 

「ん、いや。二号とぶつかりそうになった子に謝ろうと思ったんだけど……」

 

「……近くには誰も居ない」

 

 横島達の周りには誰も居なかった。人通りがあるのは確かだが、横島達とぶつかりそうになるほど近くには誰も居ない。

 

「あれー、おっかしーな。もう行っちゃったのかな?」

 

 横島は首を捻る。見間違いということはないだろう。何せその相手は中々に派手な色調の服装をしており、何より守備範囲外ではあるが、実に将来が楽しみになるほどの美少女だったのだ。

 

「……その人が居ないなら、もう帰りましょうよー」

 

「んー……そうだな、帰るか」

 

 横島はもう一度周りを見回し、ぶつかりそうになった少女が居ないことを確認し、一号の言葉に従うことにした。

 

 一号達が横島の体にくっつき、横島は霊力を操作して()()()()()に集中する。

 

「んじゃ、戻りますか」

 

「はーい!」

 

 横島の言葉をきっかけに一団は空を飛び、紅魔館への帰路に着く。横島は人里の様子を空から眺めながら、先程ぶつかりかけた少女のことを思い浮かべていた。――――何やら、霊感が疼くのだ。

 

(やっぱ見間違えじゃないと思うんだけどなぁ……。()()()()()()()()()()()()なんていう派手な格好だったんだしなぁ……)

 

 横島は何故そこまで自分がその少女を気にするのかに気付けていない。いや、気付けるはずも無いのだ。彼は先の霊感の疼きを忘れてしまった。完全に、()()()の内に。

 

――――それは、そう遠くない未来に、重大な決断を強いられる切っ掛けとなる。

 

 

 

 

 

 

 

第二十五話

『お前は、永遠の命を欲しいと思うか?』

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃー、到着っと」

 

 人里への買出しを終え、紅魔館へと戻ってきた横島達。横島は額に浮かんだ汗をハンカチで拭い、少々荒くなった息をゆっくりと整える。

 

「浮かぶだけとは言え、やっぱりまだしんどいですか?」

 

 疲れが見える横島を心配したのか、一号が尋ねる。見れば、二号や三号も心配そうな表情を浮かべていた。

 

「ま、まだまだ精進が足りんってこったな。浮かぶのは結構慣れてきたけど、飛ぶのはまだ難しいな。……早く自力で飛べるようになりたいもんだけど」

 

 横島は近頃、空を飛ぶための訓練に重きを置いていた。まずは感覚を掴むために、買出しの際には霊力をコントロールして浮かぶことにした。一号達はそんな横島をしっかりと支え、補助をしつつ前進させる。最初の頃はすぐに集中が切れていつも通りに一号達に運んでもらっていたのだが、横島はほんの一週間程で人里までの距離ならば浮かんでいられるようになった。一号達の補助があるとは言え、これは驚くべき進歩であろう。

 

「あんまり無理しちゃダメですよー?」

 

「……最近疲れが溜まってるっぽい」

 

 とは言え、元々霊力のコントロールが不得手な横島は無駄に力を入れすぎる嫌いがあり、それが原因で精神的な疲労が溜まってきている。一号達はそれを危惧していた。

 

「ああ、分かってるって。咲夜さんからも言われてるし、しばらくは買出し班から外れるみたいだしな。……これからは料理とか裁縫とかを重点的に鍛えるらしい」

 

 一号達の言葉に頷き、これからの予定を話す。咲夜曰く「裁縫は即戦力になりそう」とのことだが、横島としては不安しかない。何せ彼がまともに縫えるのは雑巾くらいなのだ。咲夜が望むレベルの裁縫技術など、今の自分は有していない。

 

「咲夜さんのことだから、お嬢様や妹様の服とか、全部手作りなんじゃないかなー」

 

「それは……どうなんでしょうね?」

 

 横島がぽつりと呟いた言葉に、一号は首を捻る。咲夜の補佐をしている一号も、それについては知らないらしい。

 

「あ、見つけた! おーい、横島さーん!」

 

「あん?」

 

 横島が一号達と雑談をしながら買出しの荷物を運んでいると、一人の妖精メイドが手を振りながら小走りに向かってくる。

 

「どした、そんな急いで?」

 

 ふうふうと息を整える妖精メイドの背中をさすってやりつつ、横島は問うた。妖精メイドは背中を優しくさする感触に頬を緩めながら、横島に報告をする。

 

「お嬢様が大図書館でお待ちです。何でもお客様がいらっしゃるとか……」

 

「そっか、知らせてくれてありがとな」

 

 横島は妖精メイドの頭を撫でると、一号達に荷物を任せて大図書館へと向かう。勿論その際に一号達の頭を撫でることも忘れずにいる。横島は妖精メイドへの対応が体に刷り込まれているのだった。

 

「……」

 

 一号達は撫でられた頭を一つさすると、ふんすと鼻息荒く仕事へと戻っていった。

 

 

 

 

「さて、一体誰が来たのかなっと」

 

 横島は独り言を呟きながら大図書館の扉を開ける。レミリアがどこに居るのかは聞くのを忘れていたが、横島は「お嬢様のことだから」と、大図書館の中心部に居るだろうと当たりをつける。そうして向かった先には、やはりレミリアと他数人が居た。

 

「お嬢様、お待たせして申し訳ありません」

 

 横島はレミリアに頭を下げる。客人が居るということもあり、その言葉は丁寧なものとなっていた。それは客人に悪印象を抱かせないようにするためと、客人が女性だったがために好印象を抱かせようと画策したからである。

 

「ああ、おかえり。別に気にしなくていいわよ、アンタも帰ってきたばっかだし――」

 

「ただお兄様おかえりなさーい!!」

 

「おふぅっ!!?」

 

「――ちょっとこら、フラン!?」

 

「よ、横島さん大丈夫ですか!?」

 

 レミリアが頭を下げる横島に言葉を掛けるが、フランがそれを遮って横島に突撃。強烈な衝撃に横島は吹き飛ばされ、レミリアは奔放なフランを叱る。そして吹き飛んだ横島を小悪魔が助け起こす。一連の流れはすでに日常茶飯事と化していた。咲夜も澄まし顔で平然としており、パチュリーは「毎回大変ね」と言って新しい本を取りに行く程には馴染んでいる。

 

「……妹紅が言ってた通り、人外に対して害意を持っていないんだな」

 

 小悪魔に助け起こされ、彼女の頭を撫でながら感謝を告げる横島の姿を見て、慧音はぽつりと呟く。胸に張り付いたフランも頭を撫でてやっているその表情には、人好きするような笑顔が浮かんでいた。

 

「フラン、これで何度目か忘れたけど、アンタの力で飛びつくのは危険だっつってんでしょうが」

 

「でも、ただお兄様は毎回受け止めてくれるよ?」

 

「思いっきり吹き飛ばしといて、そーいうこと言うの……」

 

 フランの返答に頭が痛くなるレミリアであった。その場はとりあえず横島の取り成しで収まった。レミリアは空気を変えるために咳払いを一つし、慧音へと向き直る。

 

「あーっと、色々あって紹介が遅れたけど、彼女が客人の上白沢慧音よ」

 

「はじめまして。人里で寺子屋の教師を務めている上白沢慧音だ。よろしく」

 

「ああ、君……じゃなくて、貴女が。妹紅から話はよく聞いてます。俺……じゃない。私は紅魔館の執事の横島忠夫です。こちらこそ、よろしくお願いいたします」

 

 横島は妹紅から聞いていた慧音の印象から、いつもの砕けた言葉遣いはまずいと判断した。そうして彼の口から出てきた言葉は慣れていないのが丸分かりであり、慧音も思わず苦笑してしまった。

 

「ふふ……。いや、失礼。言葉遣いは普段通りで構わないぞ? 私もこんなだからな、お互い様ということで」

 

「あー……了解っす。とりあえず、慧音先生って呼ばせてもらいますね」

 

 横島は慧音の申し出をありがたく受け入れた。正直、先程のような言葉遣いは違和感しかなく、彼の腕には鳥肌が立っていたほどだ。砕けた敬語なのは教師に対する苦手意識からだろう。

 

「それじゃ早速なんですが、慧音先生に聞きたいことがあるんすよ」

 

「聞きたいこと? ……ああ、何でも聞いてくれ」

 

 互いに席に着いたところで、横島から慧音に話しかけてきた。慧音は少々驚いたが、逆に好都合でもある。質問の内容如何によっては彼の性格などが分かるからだ。慧音は少しの笑みを浮かべて了承した。

 

(うおー!! 可愛いやないかい!! あともうちょっと育っとったら……!! もうちょっと育っとったらーーーー!!!)

 

 横島は内に煮えたぎる煩悩を表には全く出さずに「じゃあ遠慮なく」と笑顔を浮かべた。余談だが、とあるゲストルームにおいて心を読める少女が何故か紅茶を噴き出すという珍事が起こったらしい。曰く、「恐ろしいほどに強烈な意思だった」とのこと。

 

「慧音先生の知り合いに、俺よりも見た目と実年齢が年上で美人のナイスバディなお姉様が居たら紹介して欲しい……」

 

「はいはい、自分から好感度を下げるようなことをしないの」

 

「いひゃひゃひゃひゃひゃ!!?」

 

 外面は取り繕えても、所詮横島は横島だった。真剣な表情から紡ぎ出された言葉は煩悩に塗れており、純粋なまでに輝きを放つ瞳の色はピンク色をしていた。当然周りは横島の愚行を阻止するべく行動を起こす。今回横島を止めたのは新しい本を取ってきたパチュリーであった。

 

「パチュリー様、何かある度にほっぺた抓るのやめてくださいよ!」

 

 横島はヒリヒリと痛みを訴える頬をさすり、涙目になりながらもパチュリーに抗議をする。パチュリーはそんな横島を見て、背筋に走るゾクゾクとした異様な感覚を自覚する。それは、癖になりそうな程の快感に似た何か。否。初めて頬を抓り、彼の涙目を見たときから、既に癖になっているのかも知れない。

 

「そういうことをされたくなければ普段からもっと落ち着きなさい。少なくとも初対面でするような質問じゃないでしょうに」

 

「いやいや、初対面だからこそあの質問をしたわけで……」

 

 胸に宿る妙な感覚に多少戸惑いつつもパチュリーは横島にいつも通りに対応する。置いてけぼりにされ、その様を見ているしかない慧音にレミリアが苦笑を浮かべながらも横島の弁護をする。

 

「悪いわね。まあ、あいつもあいつで大変なのよ。四六時中妖精メイドに付きまとわれて、()()することもままならないんだ」

 

「あー……。思春期の盛りにそれは辛いだろうなぁ……」

 

 レミリアの言葉の意味を正しく理解した慧音は顔を赤く染め、納得を示す。先程の質問で多少下がった横島への印象は、そういった状態でも周囲の少女たちへ手を出さないということを知り、回復していた。しかし、やはり初対面の女性にするような質問ではないために良い印象では決してないのだが。

 

「えっと、横島?」

 

「あ、はいはい。すんません、何か色々と焦っちゃって」

 

「いや、まあ、気にしなくてもいいさ。それより色々と聞きたいことがあるんだが、良いか?」

 

 慧音は改めて横島へと話しかける。横島は多少追い詰められているような表情で謝罪をし、慧音に同情の念を抱かせていた。慧音とて横島よりはずっと年上だ。彼の年齢で今の状況に追いやられる辛さは、その聡明な頭脳で容易に想像出来た。

 

 それはさて置き慧音は横島に数々の質問を寄越す。それは趣味・特技に始まり、幻想郷にやってきた経緯や紅魔館の執事になった理由など。いくつかは既に妹紅から聞いていたが、やはり本人から聞いた方が何かと分かりやすい。横島は特に隠そうともせず、質問に次々と答えていく。

 

「それじゃ次の質問はね~、ただお兄様の好きな食べ物が知りたいなー」

 

「そうっすねー。大抵の物は好きっすけど、特に好きなのはハンバーグっすかね」

 

 ここで活躍したのがフランだ。彼女は慧音の質問に便乗し、自分から様々な質問を投げかけている。フランの価値観ではこそこそと嗅ぎまわるのは駄目だが、真正面から攻めるのはOKらしい。

 

 慧音と横島達がにぎやかに過ごしている中、そんな彼らを覗き見ている者達が居た。

 

「にしししし、これは面白い場面に出くわしたわね……♪」

 

「おい、何で隠れる必要があるんだよ……?」

 

 輝夜と妹紅、蓬莱人の二人である。たまには静かに読書をしようと大図書館に赴いたのだが、ちょうど横島達が話しているところを見かけたのだ。

 

「とにかく静かに。私達が聞きにくいようなことでも、あの子なら無邪気な感じで聞きだしてくれるかもしれないじゃない」

 

「そんな理由かよ……、まあいいけど。しかし慧音の奴、ここに来るならそう言ってくれれば良かったのに」

 

「きっと言えないような理由があったのよ、きっと」

 

「言えない理由ねぇ……?」

 

 妹紅は輝夜が掲げた隠れる理由に呆れるように溜め息を吐くが、そこはそれ。自分も気になることであるためにそれに従うことにした。二人とも好奇心という欲には弱いのだろう。

 

「えっと、それじゃ次はー……」

 

 フランの声が響く。その声はどこか躊躇っているようにも聞こえる。輝夜達は話を止め、聞くことに集中する。

 

「えっと、ただお兄様の好きな女の子はどういう子なのかを教えて欲しいなー……?」

 

 フランは指をもじもじと弄び、頬を赤らめ、上目遣いで横島に問う。その姿は非常に可愛らしく、レミリアや咲夜、小悪魔に輝夜の心が一瞬にて撃ち抜かれた。横島もまたフランのいじらしい姿に動揺を隠せない。

 

「なにあの子、お持ち帰りしたい」

 

「おいやめろ、紅魔館と戦争する気か」

 

(フランには後でお小遣いをあげよう)

 

「お、おう……。ん~、しかし、好みの女の子か……」

 

 横島は胸に去来する未知の感情に戸惑いつつも、フランの問いにあった好みの女性を思い浮かべる。

 

「んー……」

 

 横島の脳内にありとあらゆる女性が現れては消えていく。しかし、言われてパッと思いつくのは決まって一つのタイプ。彼の好みは非常に分かりやすかった。

 

「妹紅妹紅、横島さんのタイプの女の子ってどんな子だと思う?」

 

「ん? あー……、てゐが気の強い女がタイプだとか言ってなかったっけ?」

 

「そうだったっけ? ……じゃあ私らで考えたら妹紅の方がタイプってことかな?」

 

「ぅえ? ……いや、私って気強いか?」

 

「……え?」

 

「……」

 

 妹紅は輝夜の「何言ってんだこいつ?」という視線を受け、落ち込んでしまう。自分が輝夜よりも横島のタイプの女性に近いことにほんの少しの喜びが過ぎるが、それにはまだ気付かない。そうこうしている間に横島がフランの問いに答えた。

 

「……ん。気の強い女の子、かな?」

 

「……そうなんだ」

 

 横島はフランを見ながら答える。フランはその答えに俯いてしまう。自分はお世辞にも気が強いという性格ではなかったから。レミリアには強がって見せたが、彼女の本質は『強さ』ではないのだ。横島は何の気なしに答えたのだが、それによってフランが落ち込んだのを見て、困惑する。

 

「ふーむ、少し意外だな。横島は何と言うか、押せ押せな感じというか。大人しめな子が好みだと思っていたが……」

 

 少し重くなった空気を変えたのは慧音だった。横島に対する印象から彼の好みのタイプを推測していたのだが、それは外れていたようだった。

 

「いや、まあ大人しい子がタイプじゃないってわけでもないんすけどね。ただ何というか、こう憧れるっていうか……」

 

「ほう……」

 

 遠くを見て語る横島は誰かを思い出しているのか、どこか懐かしそうに目を細めている。その様子を見て、慧音は横島に対する印象を更に改めた。

 

(気の強い女性に憧れるということは、横島本人はその逆だということか? 自分に自信がない。コンプレックスを持っている……? 妹紅は横島には卑屈なところがあると言っていたが、傍から見ている分にはまだ分からんな)

 

 慧音は少々考え込み、方針を決める。少し踏み込んでみることにした。

 

「しかし妖精メイドにかなりの人気があるようだし、やっぱり人間の女性にも人気があったのか? 例えば気の強い恋人がいたとか……」

 

「……!!!!」

 

 慧音が何気なく聞いた事柄は、横島に多大なるショックを与えた。それは、ゲストルームに居る心を読む能力を持った少女が思わず紅茶を噴き出し、目の前の少女にぶっかけてしまったほどに強烈な思念だった。

 

「どーせ……!! どーせ俺なんて……!! ちくしょーーーー!! そんなに俺は不細工か……!! 美形め!! 美形めーーーー!!!! 糞親父め……!!!! そして西条めええええええーーーーーー!!!!!!」

 

「え、ちょ、ええぇ……? 西条って、誰……?」

 

 急に泣き出し、どこからか酒を取り出して呷りだす横島に慧音は困惑するしかない。横島の嫉妬による昏い情念はそれだけで人を呪い殺せるほどにまで高まっており、とある地底の橋姫の力が急激に膨れ上がったほどだ。恐るべきはモテない(と思い込んでいる)男の嫉妬心か。

 

「横島って別に不細工じゃないわよね?」

 

「私もそう思うけど……。その糞親父と西条とやらが、横島よりよっぽどモテてたんじゃない?」

 

(横島さんの笑顔は素敵だと思います……)

 

(ただお兄様、かっこいいと思うけど……)

 

 レミリアとパチュリーは横島の容姿を悪くないと評し、小悪魔とフランは心の中で横島の容姿を褒める。本来なら口に出してしまいたいのだが、レミリア達はともかく、慧音の前でそれを言うことは躊躇われた。それは男性に好意を抱いていることを知られるのが少々恥ずかしいという微妙な乙女心のせいだった。

 

「ま、まあ落ち着け。えーっと、ほら! こっちに気になる女の子とかいないのか? お近づきになりたい子とか……」

 

 慧音は男泣きする横島にいたたまれなくなったのか、話を強引に変える。内容自体は女の子に関することであるし、これならば横島も乗ってくるだろう。結果としては何とか思い通りになったのだが、何やらフランや小悪魔の視線が痛い。性格的にも肉体的にも横島の好みから外れているのが原因だろう。

 

「んー、皆可愛いから将来的には皆まとめて俺のもんじゃーとかそういう……」

 

「よし分かった。頭突きを食らえ」

 

 横島は慧音の頭突きによって椅子から転げ落ちた。レミリアとパチュリーは「仕方ないなぁ」とでも言いたげな顔で横島を助け起こす。レミリアが右頬を、パチュリーが左頬を力いっぱい抓んで。

 

「あああああああああ!!?」

 

 頬を基点に持ち上げられた横島は痛みに悲鳴を上げるが、それを助ける者は一人もいなかった。普段なら割って入りそうなフランと小悪魔は横島の「俺のもん」発言に正気を失っていたから。

 

「……私らも入ってんのかな?」

 

「入ってるんじゃない? まあ私の場合は難題をクリアしてもらわないと無理だけど」

 

 横島達の話を盗み聞きしている妹紅達も、俺のもん発言に少なからず動揺した。輝夜はそういったことを言われ慣れているのか余裕綽々だが、免疫のない妹紅は顔を赤くしている。しかし直接言われたわけではないせいか、輝夜の言葉に反応出来るくらいの冷静さは残っていた。

 

「……難題? あいつに出したのか?」

 

 それは少し意外だったのか、妹紅は輝夜に問う。

 

「ええ。もし自分が交際を申し込んだらどんな難題を出すのかって聞かれてね」

 

「ふーん。それで、どんな難題なんだ?」

 

 輝夜の難題は理不尽なことで有名だ。輝夜が横島にどんな無理を吹っかけたのか、興味が湧いてくる。

 

「簡単なことよ。――――私の探している人を連れてくること。それだけよ」

 

 輝夜は何でもないように答えた。だが、それに妹紅は大きく目を見開き、やがて深い溜め息を吐く。

 

「なるほど。そりゃまさに()()()()だな」

 

 妹紅の言葉に輝夜は苦笑を返す。輝夜が横島に出した難題は、出した本人すら決して達成出来ないだろうことを理解している。達成出来る可能性はゼロではない。だが、限りなくゼロに近いのだ。特に、()()()()()()()

 

「……ま、()()()()()()()()()()。もしかしたら、あいつがひょっこり見つけてくるかもよ?」

 

「……本当にそうなったら、永琳も連れて横島さんに嫁ごうかしら。ついでに鈴仙とてゐも一緒に」

 

「……おいおい」

 

 妹紅は輝夜の口ぶりに苦笑を浮かべる。輝夜は難題を達成することは不可能だと確信しているのだろう。妹紅には輝夜が男を弄ぶ悪女に見えた。

 

 妹紅は輝夜の探している人物を知っている。勿論それは顔を見知っているということではなく、輝夜からその人物が()()()()()()を聞いたのだ。

 

 結果、妹紅が得たのは理解と共感。何てことはない。結局、二人は()()()()()だったというわけだ。

 

 妹紅達は視線を横島達に戻す。慧音が仁王立ちで横島に説教をし、横島は怒れる慧音に土下座をしている。レミリアとパチュリーは横島の尻を執拗なまでに蹴り、フランと小悪魔は少々はしたないまでににやけながらキャーキャーと語り合っている。慧音は横島を叱ってはいるが、そこに嫌悪という感情は見えなかった。横島の性質がそうさせるのか、楽しそうな雰囲気すら感じる。

 

 その様を見て、二人は同時に吹き出した。

 

「もう慧音が馴染んでる」

 

「相変わらず溶け込むのが上手いわね、横島さんは」

 

 性格的に相性が悪いと思っていたが、こうして見ている限りそれもなさそうだ。輝夜は思う。

 

「……真面目な学級委員長と、不良少年とか、それに近い感じかしら。中々萌えるじゃないの」

 

 永遠の姫は俗世に染まっている。

 

「ふう、まったく……。男たる者、もう少し節度というものをだな……」

 

「すんませーん」

 

 土下座を止めさせた慧音は新しく入れられた紅茶を飲みつつ、未だぶつぶつと横島に説教をする。横島は情けない顔で謝っているが、まだまだ終わりそうにない。慧音の説教は長いのだ。しかし、そこに咲夜が割り込んでくる。

 

「もうそこまでにしておいてあげたら? 冗談の一言でこれはいささかやりすぎよ」

 

「むう……。それも、そうだな」

 

 慧音は咲夜の言葉に頷いた。何かいつもよりも執着が強い気がするのは、横島への嫉妬故か。そこで慧音は思う。結局横島は妹紅のことをどう思っているのだろうかと。

 

「……」

 

 しかし、それを一体どうやって切り出したものか。慧音は考える。何か、彼の考え方からそういった話に持っていけないものか……。

 

「――――そういえば」

 

 唐突に慧音は思い至った。ここに来るまでに一度は考えていたことだ。それを聞くのもいいだろう、と。しかし。

 

「……?」

 

 慧音はちらりとフランを見る。これを聞くのは彼女の前では中々に酷なことだ。彼女に席を外してもらおうにも、彼女自身に一度苦言を受けている。暫しの間悩んだが、慧音は聞くことにした。いずれは確認しなければならないことだからだ。慧音はまず疑問の一つを口にする。

 

「横島は……」

 

「はい?」

 

「横島は、妖怪達も恋愛対象に含んでいるようだが、相手との寿命の差はどうするんだ?」

 

 瞬間、空気が変わる。

 

「……寿命っすか」

 

 いくら人間離れしている横島でも、結局のところ彼は紛れもない人間。妖怪と比べてその一生は一瞬だ。横島は天を仰ぐ。

 

「んー……、正直、あまり考えたことはなかったっすね……」

 

 彼から出た言葉は能天気な響きさえあった。レミリアからはあからさまなほどに大きな溜め息を吐かれる。

 

「ま、アンタらしいっちゃらしいけど。……吸血鬼にしちゃえば問題解決じゃない?」

 

 とりあえず横島の寿命の解決策を一つ提示する。周りはなるほどと頷いたり、魔法使いにすることで寿命を無くすという案も出している。

 

「ははは……」

 

 それに対し横島は苦笑いを浮かべるのみ。慧音は皆の様子に疑問を持っていたのだが、それよりも横島の方が気になった。

 

「なあ、横島」

 

「何すか?」

 

「お前は、『永遠の命』を欲しいと思うか?」

 

「……」

 

 沈黙。それは慧音の質問がおかしなものだったからではない。横島の雰囲気が、変わったからだ。

 

「……?」

 

 何が変わったのかは分からないが、何かが異質なことだけはその場の皆には理解出来る。しかし、どう変わったのかを真に理解出来るのは、今はこの場にいない少女のみ。

 

「――――!?」

 

 ゲストルームにて紫と談笑していた少女、さとりは弾かれたように立ち上がった。彼女が目を向けるのは部屋の壁。否、そのずっと向こうにある大図書館。

 

「これは……」

 

 さとりは驚愕する。まさか()()()()()の心があるのかと。それでいて、()()()()()()安定していることに。さとりは紫に視線を送る。心の表層しか覗けない自分ですらはっきりと分かる異常性。紫の手助けで遠く離れた少年の心を感じることが出来ているが、その原因までは読み取れない。

 

「後で、彼に時間を取ってもらうわ」

 

「……はい」

 

 紫の言葉を聞き、さとりは深く息を吐いてソファーに腰を沈める。どうやら、思っていた以上に大変な息抜きになりそうだ。さとりは少しぬるくなった紅茶を啜る。その際に紫がさとりに対して警戒するようなそぶりを見せたのは、仕方の無いことだろう。

 

 

 

 

 慧音は横島の言葉を待つ。彼は目を瞑り、何か考えを纏めているように思える。

 

「永遠の命。ずっと若い体。女の子ナンパし放題で遊び放題! ま、ロマンではありますよねー」

 

 彼の言葉はふざけたものであったが、彼はふざけてなどいない。事実、彼が発する雰囲気は非常にまともなものだった。

 

「たしかにそういうのに憧れたこともありますね。……でも、俺は永遠ってものに良い印象を持ってないんすよ」

 

 横島の口元は皮肉気に歪んでいた。

 

「お嬢様達には話しましたけど、俺が元居た世界では、魔神の一人が人間界に攻めてきたんすよ。アシュタロスって奴です」

 

 横島の言葉に驚愕を示し、慧音はレミリア達を見る。彼女達は神妙に頷き、それが事実であることを肯定する。その様から、何らかの手段によって横島の話に対する確証を得たのだろう。慧音は横島の話に集中する。

 

「そいつの目的は二つありましてね。一つは今の世界を滅ぼして新しい世界を作ること」

 

 何とも壮大な話だ。慧音は我知らず唾を飲み込んだ。

 

「……もう一つは、自分が()()()()()()()

 

「……な、に?」

 

 慧音は目を大きく見開いた。魔神の一柱が死ぬことを望むとは、一体どういうわけか。

 

「俺の世界では、神魔族がデタントの状態にありましてね。互いに小競り合いはしていたみたいっすけど、基本的にはこう、仲良くしてたみたいで」

 

「……デタント。緊張緩和、というやつか」

 

 慧音の言葉に横島は頷いた。

 

「んで、アシュタロスは魔界でもトップクラスに強い奴でしてね。神魔のバランスが崩れたらマズイってんで、一部の強力な神魔族は死んでも強制的に()()()()()()()()んですよ。記憶もそのままで」

 

「な……」

 

「あいつは『魂の牢獄』って呼んでたみたいっすね。あいつは魔族だから、最終的には()()()()()()()()()()()()()を何度も強いられて、何回死んでも生き返って、また負けて死んでも何回も生き返って」

 

 それは、何と言う地獄だろうか。慧音は沈痛な面持ちで俯いた。その地獄に、覚えがあったから。

 

「……」

 

 横島の話に衝撃を受けたのは、慧音だけではなかった。その場の、全員だった。以前話した時には語らなかった、魔神の侵攻の真実。なるほど、その理由は理解出来た。

 

「……ほんの少し、妹紅に似ているな」

 

 慧音が呟いた言葉に、空気が重くなる。妹紅は不老不死の蓬莱人。その魔神のように、幾度と無く死を望んだこともあるだろう。もしかしたら、今もそうかも知れない。

 

「……?」

 

 非常に重たい空気が支配する中、その理由がまるで理解出来ていない人物が一人だけ存在した。

 

「一体、今の話のどこに妹紅と似た要素が……?」

 

「――――は?」

 

 横島の台詞に、始めに反応を返せたのは誰だったか。

 

「……いや、妹紅は蓬莱人なんだぞ? その魔神と同じように考えることもあるかもしれないじゃないか」

 

 慧音は横島に言葉を濁しつつもそう言った。その言葉が意味することに、横島は衝撃を受ける。

 

「なにーーーー!? 妹紅は蓬莱人だったのかーーーーーー!!?」

 

「って、気付いてなかったのかーーーー!!」

 

 だあぁっ!! と皆が盛大にずっこける。それは妹紅達も例外ではなかった。

 

「いやー、人間にしてはやたら長生きしてるっぽいとか、あと色々気になるところもあったけど、まさか蓬莱人だったとは……」

 

「……そういえばこいつ、蓬莱人のこと私が教えるまで知らなかったのよね……」

 

 何か感心している横島を見て、パチュリーが頭痛に耐えるかのように額を押さえながら呟いた。

 

「あ、ちょっと待ってくださいよ。だとしたら、妹紅もいわゆる月人ってやつっすか?」

 

「ん? いや、妹紅は純粋な地球の人間だが……、何故だ?」

 

「あー、何か永琳先生や輝夜様と、こう何というか……。そう、存在? が似てるというか……。そうか、あの二人も蓬莱人だったんすね」

 

 うんうんと納得する横島に、慧音は感心を覚える。何だかんだ情けない部分ばかりが目立っているが、その観察眼は中々のものであるようだ。では、何故妹紅が魔神と似ていないと思うのだろう。

 

「妹紅なんすけど、あいつ、めちゃくちゃ可愛く笑うんすよ」

 

「……ん?」

 

 横島は唐突にそう言った。惚気かとも思ったが、どうやらそうではないらしい。彼は柔らかく微笑みつつも、真剣な光を瞳に湛えている。

 

「妹紅が美味い飯を食べてる時とか、妖精メイドを構ってやってる時とか、掃除や洗濯を上手く出来た時とか。あいつ、笑うですよ。そりゃもう、嬉しそうっつーか、楽しそうっつーか」

 

「……」

 

「そりゃ俺は妹紅がどれだけ生きてて、どれだけしんどい思いをしてきたのかは知りませんけどね? 俺なんて二十年も生きてない若造ですし。でも、俺は()()()()なら知ってます。些細なことでも笑って、喜んで。食事を抜いたり寝なかったりもしてたりしますけど、妹紅はそれも全部ひっくるめて()()()()()()()()()と思うんすよ。アシュタロスみたいに死にたいなんて思ってたら、あんなに生き生きと笑えないんじゃないっすかね?」

 

「――――!!」

 

 慧音は頭を鈍器で殴られたかのような衝撃を受けた。

 

 妹紅のことを思い返してみる。確かに自分は幻想郷において誰よりも妹紅のことを知っているだろう。だが、それによって妹紅に対する認識が誤っていたのではないか? 確かに妹紅はよく笑っている。慧音はそれを何度も見ている。しかし、それは本当に妹紅の笑顔を見ていたと言えるのだろうか。

 

 妹紅は輝夜への復讐のために蓬莱の薬を奪い、蓬莱人となった。それからおよそ千年もの間、輝夜に復讐するためだけに日々を過ごしてきた。時には人と寄り添い、裏切られ、それでも人と共にあり、やがてこの()()()()()()()()()()()。慧音はその辺りの詳細を聞いたことはなかったが、おおよそどんなことがあったかは推察出来ていた。

 

――――それが、認識を誤らせていたのではないか?

 

 慧音は思う。確かに妹紅は頻繁に食事を抜いたり、あまりちゃんとした睡眠を取らないことがある。慧音はそれを、自分には訪れない死を少しでも身近に感じようとしているのだと思っていた。

 

 だが、もしそれが違っていたのだとしたら。歪んでいるが、それらは生の実感を得るための行為なのだとしたら。彼女の笑顔の意味はまるで違ってくるのではないだろうか。

 

 妹紅の笑顔。本当に眩しい、心からの笑顔。そこに、死を望む陰鬱さは、存在しない。

 

「……よく気付けたものだ。いや、()()()()()()()()()()、なのかな」

 

 改めて考えてみれば、横島の言うとおりに思える。妹紅について()()()()()()()()()誤った認識を抱き、()()()()()()()()()()正しい認識を抱けた。

 

「なあ、横島」

 

「何です?」

 

「お前は、『永遠の命』を欲しいと思うか?」

 

 それは先程と同じ問い。横島は「んー……」と考え込む。

 

「……俺自体は、あんまり妖怪になるとか、魔族になるとかに忌避感は無いんすよ」

 

 彼の脳裏に浮かぶ、あまりにも短い時を駆け抜けた少女。いつか言った、『俺は俺らしく』。たとえ()()()()()()()()()()()、いつだって彼の中心に在り続ける少女への誓い。横島は自らの胸に手を添える。

 

「……」

 

「でも……。でも、俺は今()()()()()()()()を抱えてますから。それに、何て言えば良いかな……。上手く言えないんすけど、俺は()()()()()()()()()()()()()()()と思うんですよ。だから、永遠の命は、いらない……っすかね」

 

「――――そうか」

 

 横島の答えを聞いた慧音は、薄く微笑んだ。慧音は脳裏に、とある未来を幻視する。

 

――――こいつなら、良いのかもな。

 

 横島を見る目を眩しそうに細め、慧音は心の中で呟いた。

 

「横、島……」

 

 そして、慧音と同じことを考える者が存在した。

 

(妹紅……)

 

 輝夜だ。妹紅の隣にいる彼女は妹紅の表情を盗み見る。妹紅は、今自分がどのような表情(かお)をしているか気付いていないだろう。自分の歪みを捉え、それでもそれを受け入れる。無意識に胸を押さえる彼女は、胸を焦がす熱に浮かされた、()()()をしていた。

 

 ……少しだけ、妹紅を羨ましく思う。ここまで誰かのことを理解出来る者など、稀だろう。

 

「横島さんへの難題。もっと、簡単なのでも良かったかな……?」

 

 我知らず呟いた言葉は、誰にも聞かれることなく大図書館に溶けていった。

 

 その後、横島達と慧音は穏やかに時間を過ごす。永遠の命をいらないと言った横島に対し、フランと小悪魔の二人はあからさまに落ち込んだ。逃れられぬこととは言え、別れは必ずやってくる。愛する者と出来れば共に永遠を生きたいと思うのは、罪ではないだろう。

 

 出逢いがあるからこそ別れがあり、別れがあるからこそ出逢いは尊いのだ。

 

 横島は落ち込んだ二人に笑いかける。色んな話題をふり、時にはスキンシップを交え、二人にいつもの元気を取り戻そうと。レミリアもパチュリーも、咲夜もそうだ。

 

 その甲斐あって、二人にもぎこちなくだが笑顔が戻る。二人は精一杯の笑顔で言った。

 

「もしもの時は、むりやり長生きしてもらいます!!」

 

 鼻息荒い二人の言葉に、周りは笑う。強がりで浮かべたものだろうと、二人の笑顔にはそれだけの力があったから。

 

 だから、横島も笑った。突如走った霊感。それに意識を向けないように――――。

 

 

 

 

 

 

第二十五話

『お前は、永遠の命を欲しいと思うか?』

~了~

 




不穏なフラグも大量にばら撒く男、スパイダーマッ!!(挨拶)

長くなりすぎましたので、分割しました。慧音のもう一つの疑問やさとりとの絡み、てゐの美味しい思いなどはまた次回です。申し訳ねぇ……!

今回も独自路線が強めですね。個人的には横島君は魔族化や妖怪化することなく、人間のまま寿命を終えるのが一番彼らしいと思っています。

煩悩漢においては……まだ秘密です。うふふ。

それではまた次回。


以下、Fate/zeroを読み返して思いついた妄想。

約束された勝利の剣

(略)戦場に散っていく全ての兵達が今際の際に懐く悲しくも尊きユメ

『栄光』という名の祈りの結晶(略)


栄光の手

横島が発現した霊能の一つであり、彼が美神を超えるという栄光を幻視した力。その手は栄光を掴むためにある。



つまり、横島が栄光の手を極めることが出来れば、それは即ち約束された勝利の剣と同義であるということ……?(錯乱)

よし、真名は『掴み取る栄光の剣(エクスカリバー)』でどうだろう。(白目)


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