東方煩悩漢   作:タナボルタ

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スーパーミニプラのキングジェイダーでか過ぎワロリオンハンマーwwwwwwwww(これが言いたかった)

いや、スーパーミニプラのガオガイガーのサイズを考えると、MGのガンプラのサイズを越えているのでは……?

値段も安いMGのガンプラ3個~4個分だし……買うしかないじゃないか!!


第五十一話

 

 横島達の前に現れた風見幽香はにこやかに笑っている。

 その綺麗な微笑みは彼女の実力を知っている大妖精やはたての警戒心すらも薄れさせるほどのものであり、彼女の恐怖に引きつっていた大妖精もその緊張を解していく。……しかし、大妖精はそうなってしまうことに恐怖を感じた。

 自らの感情を一瞬で変化させていくかのような幽香の放つ雰囲気に、大妖精はこれでもかと“格”の違いを見せ付けられる結果となったのだ。

 

「いやー、どーも。俺は横島忠夫。紅魔館で執事やってます。幽香さん、どうぞよろしく!」

「ええ、よろしく。……貴方が最近人里で噂になっている紅魔館の執事だったのね」

 

 横島は大妖精が抱いている恐怖心に気付かず、幽香と握手などして挨拶を交わしている。幽香の力の程を察したのか、さん付けだ。幽香もそれに何か言うことはないようで、変わらずの笑顔だ。しかし、彼女の口からは少々……いや、かなり気になる単語が出てきた。

 

「え、噂……っすか?」

「あら、知らなかったのかしら? 人里では結構有名な話なのだけど……」

 

 幽香は横島が噂の存在を知らなかったことが意外なようで、頬に手を当てて軽い驚きを顕にしている。

 自分に関する噂。根がネガティブな横島は嫌な顔を浮かべてしまうが、一体どんな噂なのかと気になることもまた事実。恐る恐るではあるが、横島は幽香にどのような噂が広まっているのかを聞いてみることにする。

 

「……それで、一体どのような噂が広まっているので?」

「そうねぇ……。いくつかあるけれど、特に広まっているのが……」

 

 腰が引け、何故か揉み手をしながら話を聞き出す横島に幽香は反応せず、ただ淡々と噂話を列挙していく。

 

 曰く、紅魔館のメイド長の旦那さん。

 曰く、メイド長との間に3人の子供がいる。

 曰く、最近浮気現場を目撃した人がいる。

 曰く、仲間と共に赤い髪の少女と黒髪の少女を誘拐した。

 曰く、紅魔館は彼が支配するハーレムである……エトセトラエトセトラ。

 

「――こんな感じかしらね」

「なんてこったぁ……っ!!!」

 

 これには横島も頭を抱えるしかない。

 

 メイド長……咲夜の旦那様という噂は別に問題ない。(問題しかない)

 咲夜との間に3人の子供……これは恐らく一号達のことだろう。買い物の時によく『親子みたいですね』と言われたことがある。これもそう大した問題ではない。(普通は大問題だと思われる)

 問題は誘拐だとか紅魔館が自分のハーレムであるといった部分だ。

 確かに赤蛮奇と影狼を紅魔館へと連れて行ったが、あれは本人達の意思だ。無理矢理など強制したわけではない。……慧音の家に連れて行く際、思い切り拉致と勘違いされるような状態だったことは覚えていない。

 そして紅魔館について。確かに横島は紅魔館の主の妹、門番と恋仲になった。もう1人の恋人である妹紅も最近は紅魔館に入り浸っている。更に言えば輝夜ははっきりと横島に告げてはいないが嫁入りする気はあるようだし、てゐは言わずもがなだ。小悪魔は少々思い悩んでいるようだが横島への好意は消えていないし、付け加えれば彼を慕う妖精メイドはとても多い。ハーレムじゃないか。

 

「こんな噂が流れていると知られたら、俺はお嬢様とパチュリー様に殺されるのでは……!!?」

「あら、それは大変ね」

 

 苦悩する横島を見る幽香の笑みは、先程よりもずっと深まっている。懊悩する彼の姿がお気に召したようだ。

 

「うわー、文に聞いてた通りの性格っぽいわね」

「ちょっと意地悪さんなのかな」

 

 2人の様子を眺めていたはたてとフランはそれぞれぽつりと感想を述べる。幽香のキャラクターを掴んできたようだ。

 

「あら、貴女達は……天狗と、フランちゃんね。久しぶり、フランちゃん」

「え!?」

 

 はたて達へと向き直った幽香が、親しげにフランへと声を掛ける。それはまるで旧知の間柄のようであり、フランは驚いてしまう。

 

「……あー、覚えてないかしら? 博麗神社での宴会で何回か顔を合わせてるはずなのだけれど」

「ご、ごごごめんなさいっ!! 全然覚えてないですっ!!」

「あ、ああ、そう。そうなの……」

 

 ここに来て初めて幽香の笑顔が曇る。流石に全然覚えてないと言われるのはショックなようだ。謝るフランの頭を幽香は優しく撫でる。その時に浮かべた笑みはとても慈愛に満ちており、それを見た横島は思わず見惚れてしまう。

 

「私は姫海棠はたて。あんたのことは文からあることないこと色々聞いてるわー。ま、文のことだからないことばっかなんでしょうけどね。……よろしく」

「ええ、よろしく。……あの天狗から何を聞いたのかは知らないけれど、もしかしたらないことばかりじゃないかもね……?」

「うわぁ……っ」

 

 中々にニコヤカに挨拶を交わすはたてと幽香だが、最後に見せた幽香の笑顔にはたては背筋をぶるりと震わせる。これは、確かにないことばかりではなさそうだ。

 

「あら……?」

「……っ!?」

 

 幽香が大人しく皆が挨拶を終えるのを待っていたチルノに眼を向けると、チルノの背後に隠れていた大妖精に気が付いた。彼女の表情は恐怖に歪んでおり、眼が合った瞬間更に身体を縮こまらせて必死に隠れようとする。その様子にチルノや横島達は何があったのかと首を傾げるばかりだが、思い当たる節がありまくる幽香は悲しげで、それでいて申し訳なさそうな表情を浮かべる。

 

「……何か、前にあったんすか、幽香さん?」

「……ええ。ちょっと、脅かしすぎたというか……」

 

 大妖精の様子を見て、横島は非難がましい眼を向け、幽香はその視線から逃れるように眼を逸らす。

 一体何があったのか。それは今からひと月以上前のこと――――。

 

 

 

 

 

 

 

第五十一話

『笑顔のままで』

 

 

 

 

 

 

 

「物凄く簡単に言えば、()()()()()()()()()()のよ」

「ちゃんと説明してくださいよ」

 

 どうにも幽香の歯切れが悪い。チラチラとチルノやフランを見ているし、もしかしたら嫌われたくないという思いがあるのかもしれない。……まあ、チルノは当事者であるので今更なのだが。

 

「……実は」

 

 ようやく観念したのか、幽香は重い溜め息を吐いた後、ゆっくりと語りだした。

 

 今からひと月以上前、この太陽の畑でチルノ・大妖精・ルーミア・リグル・ミスティアの5人は仲良く遊んでいた。この地は土や草花の生命力が強く、自然と関係の深い彼女達にとって、とても過ごしやすい土地でもある。この花畑は彼女達のお気に入りの場所だった。

 この花畑の主であるという最強の妖怪、幽香も噂のように怖い人物ではなく、いつもにこにこと見守ってくれており、時々おやつとしてパンを焼いてくれていたりと、世話を焼いてくれていた。

 しかし、事件が起こった。食いしん坊であるルーミアが、生命力に溢れる花……とりわけ“太陽の畑”の象徴である向日葵を摘み、食べだしたのだ。

 これには大妖精達も、彼女達を眺めていた幽香も驚いたのだが、幽香はまだ怒らなかった。流石に何の許可もなく、新芽などの柔らかい時期ではなく、花や種子をつけた茎も葉も固くなった、食用に向かない時期の向日葵を食べ始めたのには眉を顰めたが、軽い注意で済ませるつもりだった。問題は、その後だ。

 ルーミアは「不味い」と言い、花の半分程を失った向日葵をぽいと捨てたのだ。

 全てを食べるのならば良い。幽香は花から採れる蜜や油など、それらが人間の生活に欠かせない物になってきていることを知っている。紫や永琳などから色々と花に関して聞いたこともある。植物から衣服を作れるとも聞いた。全てを使ってくれるのならと、幽香もそれについては割り切っているのだ。

 しかし、花の半分程を食し、それを不味いからと捨てるのは見逃せなかった。

 

 途端始まる恐怖劇場。ルーミアは地面から伸びた植物の蔦に拘束され、「ルーミアに何をするー!!」と突っかかったチルノは一瞬で蹴散らされ、暴力と言っても過言ではないほどの怒気を滲ませた幽香から、5人は説教を受けた。

 幽香は優しいお姉さんである。しかし、普段優しい人を怒らせると、とても怖いのだ。

 

「……その後、チルノちゃんの頭が“パァンッ”ってなったり、ルーミアが捨てられた向日葵を残らず食べたりと、そんなことがありました……」

「おおう……」

 

 ガタガタと震えながらの大妖精の補足に、何とも形容し難い空気が流れる。自業自得と言えることではあるが、流石に頭が“パァンッ”はやり過ぎだ。

 

「……何でチルノの頭を“パァンッ”させたんです?」

「……チルノが“決闘だー!”って向かってきて、それでイイのが入っちゃって……」

「あー……」

 

 その時の光景が眼に浮かぶようだ。妖精は死んでも自然がある限りはすぐに復活出来るそうだ。恐らくだが、妖精という不滅の存在だったが故に、無意識に“死んでも大丈夫”という認識を持っていたのかもしれない。

 

「まあ、チルノやルーミアも悪いっすけど、幽香さんもやりすぎは良くないっすね」

「ええ。反省しているわ……」

 

 しょんぼりと項垂れる幽香を前に、横島は苦笑を浮かべる。段々と理解出来てきたが、どうやら幽香は子供好きらしい。それ故に大妖精やフランといった子達に怖がられるのはかなり堪えるようだ。ちらりと大妖精に眼を向ければ、幽香の落ち込む姿に驚いているのが見て取れる。

 幽香は屈み、大妖精と視線を合わせる。大妖精は驚き身体を跳ねさせたものの、真っ直ぐに幽香の眼を見つめている。

 

「あの時は随分と怖がらせてしまって、ごめんなさいね。私も早くに謝りに行きたかったのだけど……貴女達の反応が、怖くて」

 

 そう言って眼を伏せる幽香に、大妖精は“自分達と同じだ”と思う。

 自分もルーミア達も、幽香にちゃんと謝ろうと思っていた。でも幽香のことを考えると怖くなり、ずるずると何も出来ないまま今まで時間が過ぎていったのだ。

 お互いに足りなかったのは勇気ということだろう。幽香は勇気を出して歩み寄ってくれたのだ。ならば、次は自分の番だ。

 

「……いえ、私達も、あのまま謝りもせずに、すいませんでした。ずっと良くしてくれたのに、1度怒られただけで幽香さんを避けるようになってしまって……今まで、ごめんなさい!!」

 

 大妖精は幽香に頭を下げる。幽香は大妖精を抱き締め、「こちらこそ今までごめんなさい」と謝罪した。大妖精も強く幽香に抱きつく。ここに、2人の仲直りは成ったのである。

 

「……ちなみにだけど、チルノはそれからもここによく来てたんだっけ?」

「うん、そうだよ。幽香にあの時はごめんなさいってされた。幽香って優しいのに、変に怖がられるよねー」

 

 チルノもチルノでどこかずれている。ちなみにだが、幻想郷の住人は妖精達の生死について、妖精自身も含めてとても無頓着だと言える。先も述べたが、自然がある限り不滅であるが故に、“死んでも大丈夫”という意識が根付いているのだ。

 

 ――ある意味妹紅や輝夜様と似たような考え方なのかね?

 

 思いつくのは妹紅と輝夜の2人。今はもう見なくなっているが、2人は昔よく()()()()()()()()()()()()らしい。今では想像もつかないが、自分達の生死感については似たようなものだろう。

 

 ――俺もいつか、そうなるのかな?

 

 痛いのも苦しいのも大嫌いな横島。いつか、彼がそのような考えに至るのかは……あまり、想像は出来ない。

 

「今度はルーミア達とも仲直りしたいわね」

「はい。私もまたみんなと一緒にここに来たいです」

 

 幽香達の方に視線を戻せば、そこには笑い合う2人の姿が。もう大丈夫だろう。横島としては機を見て仲直りのお手伝いをしたいところだ。

 

「変なことに巻き込んでごめんなさいね。お詫びと言ってはなんだけど……」

 

 幽香はフランとはたてに対し、色とりどりの花で作り上げたネックレスをプレゼントした。フランには赤や黄色を中心に、はたてには青と紫を中心とした花輪は、色合いも鮮やかで2人をより可憐に綾なす。

 

「わあぁ……!!」

「い、良いの? こんな綺麗なの貰っちゃってー……?」

 

 フランは純粋に喜び、はたては遠慮しながらも花から眼を離そうとしない。2人に是と答える幽香の微笑みは初めて見た時よりもずっと魅力的だ。特に自分を怖がらないフランに対する幽香の安堵したような表情が、横島にとって1番魅力的だったのだが。

 

「フランとはたてだけずるいー!! あたいにもー!! 大ちゃんにもー!!」

「ちょ、ちょっとチルノちゃん……!!」

「はいはい、分かってるわよ」

 

 綺麗な花畑で戯れる美少女達。横島は思わずニヤニヤとしてしまう。それだけ眼前の光景が素晴らしいのだ。

 やがてチルノがフランと大妖精を連れて花畑の奥へと突撃し、はたてがその様子を写真に収めるべく後を追う。幽香はそんな彼女達を柔らかな微笑みで見送り、横島と対面する。

 

「貴方もごめんなさいね。あの子達ばっかり構ってしまって」

「いやあ、そんな。お気になさらず。……子供、好きなんすね」

 

 横島は幽香を見ていて思ったことをそのまま述べた。幽香は少々頬を赤らめさせたが、別に否定することでもない。ただ、初対面の人間に見抜かれたのは少しだけ恥ずかしいが。

 

「……丁度、あの子達ぐらいなのよ。純粋に、本当にただ純粋に花を綺麗だと思ってくれるのは。……勿論、例外もあるけれどね」

「あー、確かにそうっすね。俺も花は綺麗だと思いますけど、色々と余計なこと考えますしね」

 

 特にナンパに使えるかな、とか。そう正直に述べる横島に幽香は苦笑を浮かべる。

 

「私は花が好きだから……純粋に花を好きでいてくれるあの子達が好きなのよ。繊維だ油だー……って、草花を必要としてくれるのもそれはそれで嬉しいのだけど……やっぱり、ね」

 

 そう言ってチルノ達を見つめる幽香の眼は、優しさに満ちている。横島にも彼女の言うことは理解出来る。純粋に、ただ純粋に花を好きでいられること。それは、簡単なことであるが、きっととても難しいことなのだ。特に、自分のような純粋とは言えないような男が思うには。

 

「……今度、紅魔館にも来てくださいよ」

「……紅魔館に?」

「ええ。美鈴……あ、紅魔館の門番をしている子なんですけど、その子が庭にある花畑の管理もしてましてね。そこがまた綺麗なんすよ。きっと、幽香さんも驚くと思いますよ?」

「へえ……それは楽しみね」

 

 横島の語りには、何か誇らしさが滲んでいるように思える。それほどまでに綺麗な花畑なのか、それとも何かしらの欲目があるのか。とにかく、花に関係することだ。幽香は俄然興味が湧いて来る。

 

「おーーーい!! 幽香ーーー!! お兄さーーーん!! 2人もこっちで遊ぼうよーーー!!」

 

 チルノが頭に花の冠を4つ程乗せて手を振っている。その微笑ましい様子に横島と幽香は思わず顔を見合わせ、同時に噴き出した。

 

「おー、今行くよー!」

「ちょっと待ってなさい」

 

 そうして2人は歩き出す。変わらず、笑顔を浮かべながら。

 無意識なのだろう。チルノは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。その冷気から草花を守るため、幽香は絶えず自らの力を太陽の畑一帯に供給している。

 それでも、変わらず。隣にいる男のように、気を張り続ける。変わらず、笑顔のままで。

 

 

 

 

 

第五十一話

『笑顔のままで』

~了~

 

 

 




お疲れ様でした。

個人的に幽香さんは穏やかで優しいお姉さんなイメージ。(ただし外見年齢は15歳程)
次回は別の場所へ移動します。

次回も不穏なフラグをサービスサービスゥ!!

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