東方煩悩漢   作:タナボルタ

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まさかこんなに遅くなるなんて……(挨拶)

確かにクリスマスや年末など、忙しくなるのは目に見えていた。だが、だからといってここまでずれ込むほど遅れが出てしまうとは……!!

読めなかった! このタナボルタの目をもってしても!!



はい、すみませんでした。
今回遅れた上に短めの内容となっています。いや、正直煩悩日和の方が長くなりすぎてるのでこれくらいが丁度いいのかも……?

それではまたあとがきで。


第六十六話

 

 龍神(チルノ)の身体から圧倒的な神気と凍気が放たれる。それは瞬く間に大地を覆い尽くし、溶ける事のない氷の神域を作り出す。

 倒れた者達、ただ傍観するしかない者達、戦いを挑む者達、例外なくその力を叩きつけられるが、身体が凍りつくということはないようだ。それが何を意図するのかはまだ計りかねるが、それでもその力にはただ圧倒される。

 

「く……っ!? 何て力だよ、まったく!! 私だって神様なんだぞー!?」

 

 諏訪子のぼやきを背景に、ついにチルノから無差別な軌道で弾幕が放たれた。優雅さも美しさもない、ただの弾幕。それだけに避けやすいとも言えるが、威力はただごとではなかった。一発一発に驚異的なまでの神気が込められている。それは同じ神族であっても、今の諏訪子では対抗出来ない程のものである。

 

 そも、この幻想郷で神や妖怪が力を発揮するには何が必要か? 答えは信仰と畏れである。

 諏訪子達は外の世界で信仰を得られなくなったからこの幻想郷へとやって来た。妖怪達は畏れられなければ存在することが出来ない。

 

 ――――では、この幻想郷において最も信仰を集めている存在は何か?

 

 博麗の巫女が祀る神? ――否。

 妖怪の山に住む二柱の神? ――否。

 人里に建立された寺の本尊? ――否。

 幻想郷とは別の異空間に住む仙人達? ――それも否。

 

 この幻想郷において最も多くの者達から信仰される存在。それこそはこの幻想郷の最高神――――龍神である。

 

 幻想郷に住むほぼ全ての人間達が信仰する神。それは意識的にせよ無意識的にせよ、龍神の力を遥か高みへと導いている。龍神の加護があるからこそこの幻想郷は存在出来ているのだと、それが信仰の証となる。

 

 ――――では、この幻想郷において最も畏れられている存在は何か?

 

 霧の湖にある紅い館の主? ――否。

 太陽の花畑に住むという妖怪? ――否。

 妖怪の山を支配する幻想郷最強種族の天狗? ――否。

 旧地獄に居を構える相手の心を見透かす妖怪? ――それも否。

 

 この幻想郷において最も多くの者達から畏れられる存在。それこそはこの幻想郷の最高神――――龍神である。

 

 神の力。それは様々な形を持って人々の前に顕れるものだ。

 落雷、地震、水害、台風、火山の噴火――――それらはいとも容易く人の居場所を奪い、生命をも奪い取る。

 特に、()()()()()()()()()()()()はそれらの災害が一年の内に何度も襲い来るのだ。そしてそれは幻想郷でも例外ではない。

 幻想郷に住む妖怪達はそういった自然災害から人間達を守らなければならない。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 台風も水害も、それは下手をすれば妖怪の命すらも絶ってしまうことがある。人も妖怪も、災害の恐ろしさを知っている。それが何度も自分達を脅かすことを知っている。

 だからこそ、自然を司る神――――龍神を畏れるのだ。それが、龍神の力を絶望的なまでに底上げしている。

 

「……」

 

 ()()()()()、紫は違和感を覚えた。龍神の力はこんなものではないはずなのだ。幻想郷中の信仰と畏れを得た神の力が、この程度であるはずがない。考えられる可能性は――――。

 紫はちらりと倒れ伏す神子達を見やる。そして、確信を得た。

 

「……もう少しだけ、頑張りなさい。――――チルノ」

 

 

 

 

 

 

 

第六十六話

『頂点たる存在』

 

 

 

 

 

 

 

 

 絶え間なく降り注ぐ弾幕。それを何とか避けていくレミリア達は、思うように動かない自身の身体に苛立ちを覚える。

 

「チィッ! ()()()()()とやらは本当にやっかいだな!!」

「流石は幻想郷の最高神って感じー!?」

 

 レミリアの叫びにも似た言葉に返すのは輝夜。おどけたようなその台詞は余裕を感じさせるものだが、その声音は決して余裕を湛えたものではなかった。必死に、ひたすらに攻撃を受けるまいと避け続ける。

 現在の彼女達は本来の実力を発揮できていない。それは彼女達の周囲に張られている十重二十重の結界に秘密があった。

 ありとあらゆる位相を異にする多重結界。結界同士の反発作用によって行動を制限され、その度合いが強い者は動くことも叶わない。現状最強戦力である永琳が何も行動を起こさないのはそれが原因であった。

 

「くっそ、まさか咲夜の能力まで封じられるとは……!!」

 

 妹紅が輝夜に迫った弾幕を炎でかき消しながらも毒づく。

 多重結界に閉じ込められた状態で能力を使用しても、それは結界外に効果を示さなかった。それでも皆のサポートに回ってチルノにナイフを投げ続けていたのだが、喘息がたたって立つことすらままならなくなったパチュリーを美鈴と二人で庇い、撃墜されてしまったのだ。――――そしてその際、龍神が()()()()()()()のは誰も気付かなかった。

 咲夜の時を止める能力が通じなかった以上、輝夜の能力も意味を成さないだろう。結界を破壊出来そうなフランは永琳同様に念入りに結界に閉じ込められ、()()()()()()()()()()()()()()()()()もチルノの圧倒的な強さに怯えてまともな戦闘行動を取れていない。

 多重結界を構成する物の一つに博麗大結界の術式が応用されているのを感じ取った紫は冷や汗を流す。まさかとは思うが、未だにかつてのことを根に持っているのではないのかと疑ってしまったほどだ。実際紫に対する多重結界の縛りはどんどんと重くなっている。もうそろそろ、危ないかもしれない。

 全てにおいて八方塞となりそうなこの状況。しかし、それでもまだ希望は残っている。

 

「……」

 

 紫は倒れ伏す神子達を見やる。彼女達は確かに傷つき倒れているが、それでも死んだわけではない。チルノの強力な弾幕に身を晒されているかと言えば、そうではないのだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()。徐々にではあるが、傷も治ってきているほどだ。

 更に周囲に目を配る。結界の縛りが緩い者。最も強力な結界に()()()()()()()。それはチルノの――――龍神に呑まれたはずの、彼女の意思の表れだ。

 正気を取り戻させねばならない。強まる神気。変質していく肉体。このままでは、チルノは本当に龍神と成ってしまう。

 

「チルノ……!!」

 

 フランの声が響く。それが聞こえたチルノ――――龍神は眉をピクリと上げる。

 

「……、…………っ?」

 

 だが、反応を返すことはなかった。頭痛がしたかのように一瞬眉を顰め、何事もなかったかのように変わらず弾幕を放ち続ける。

 ()()()()()。今までのチルノならばフランの声に応えていたはず。紫は何かの前兆であるかと身構え、そして、いくらか遅れて、チルノは口を開いた。

 

「フラン……フランはいいよね。お兄さんといつも一緒にいられて」

「え……?」

 

 チルノは無表情だ。だが、それとは裏腹に、その言葉には隠しきれない感情がこもっている。嫉妬や羨望――――そういった類のものだ。

 

「アタイは違う。アタイは、いつも一人ぼっち。頭を撫でてくれるおっきな手も、私を包んでくれるあったかい腕も、名前を呼んでくれる優しい声も、アタイの傍にはない。……傍にいてくれない」

「チルノ……?」

 

 それは、今までの言葉とはどこか違った。先のフランの問い掛けに答えた際の茫洋とした言葉ではない。そこには、確固たる意思が込められていたのだ。

 

「アタイに触れると人は凍っちゃう。……冷気を好む動植物はいない。――――どこに行っても、アタイは嫌われ者」

「チル、ノ……」

 

 それはチルノの言葉というには違和感があった。いつか、どこかで誰かに言われた言葉なのかもしれない。その言葉は、確かにチルノの心に刻み込まれていた。

 龍神を介して告げられたその言葉はしかし、確かにチルノの心からの嘆きでもあった。

 

「……」

 

 チルノにまともに触れられる者など存在していなかった。チルノの冷気は妖怪をも凍えさせる。ある程度は冷気を操作できた。そうして友人も出来た。しかし、それでもわざわざ自分から触れてくれる者は一人もいなかった。――――()()()()を除いては。

 

「アタイはお兄さんともっと一緒にいたかった。お兄さんに触れられたかった。でも、アタイが近くにいたらお兄さんの負担になる……」

 

 最早弾幕は撃たず、ただただじっと己の掌を見つめるチルノ。彼女の言葉は、どれもフランの心に突き刺さる。――――それは、かつての自分も同じであったから。

 

「お兄さんに傍にいてほしい。お兄さんに触れてほしい。お兄さんに、お兄さんに、お兄さんに……!! そう思うのは、いけないことなの?」

「チルノ……!!」

 

 チルノは泣いている。()()()()()()()()()()。様々な感情が複雑に混ざり合い、ただ一言では表せられないような感情を形成している。

 

「……私が言えることではないが、少なくとも力尽くで誰かを手にしようとするのはいけないことだな」

「本当に他人のこと言えないけど、まあレミリアの言う通りよね。そもそも横島さんは今のところ妹紅とフランちゃんと美鈴のものなんだけど?」

「いや、別に横島は私達のものってわけじゃ……」

 

 傷を負いながらも気丈に反論するレミリア、それを茶化す輝夜、そして照れて指をつつき合わせる妹紅。

 チルノの言い分は理解した。だが、だからと言ってそれを通すほど彼女達はお人好しではないし、何よりも龍神が気に入らない。

 チルノと繋がったと言うからにはチルノと相性が良かったのだろう。それはいい。だが勝手に表に出てきて、勝手にチルノの身体を奪って、勝手にチルノの内心を語って、横島を氷の彫像にしたことは我慢ならない。或いは何かしらの切っ掛けがあったのだろうが――――そんなものは関係ない。

 奪われたものは取り返す。敵を打ち負かし、我を通す。それも今の幻想郷のルールの一つだ。

 

「……なるべく急ぎなさい。()()()()()()()()()()()。今の私は何も出来ないけれど……あの子を、助けてあげて」

「永琳……?」

 

 多重結界に封じ込まれている永琳が、レミリア達に願いを託す。永琳にここまでさせるほど、二人は親交が深かったのか、と輝夜は意外そうに目を見開く。

 紫は唇を引き結んで見つめてくる永琳にゆっくりと頷き返すと、きっとチルノを見据えた。

 

「あなたの意識が何故チルノに顕れたのかは分かりませんが……()()()()()()()()()()()。横島君とチルノ……二人を、返してもらいますわ」

 

 チルノと紫の視線が絡み合う。既に先程までのチルノとしての言葉はなく、あるのは増大していく神気の波動。チルノは何事か呟くと、天を指差し、くるりと回す。龍神の能力“天候操作”。

 チルノ――――龍神は黒雲を呼び、やがて雨と風を齎す。落ち来る雨は水の雫と、冷気によって凍りつき氷雨となるものに分かれている。

 

「ぬぐ……っ!」

「お姉様……!?」

 

 雨に濡れ、レミリアの身体から煙が吹き上がる。普段であればこのくらいの雨ならば魔力を以ってガード出来るが、現在の状態ではそれも難しい。逆に、フランは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 戦況はどんどんと不利になっていく鈴仙はどうしようもないこの戦いに身体を震わせるばかりだ。彼女の好戦的なはずの仮面(ペルソナ)も、圧倒的な神気に当てられて役立ちそうにない。

 

「どうしよう……どうしたら……!?」

 

 震えは止まらず、目には涙がこみ上げてくる。自分ではどうしようもない。何も出来ない。圧し掛かる重圧は増大を続け、今にも膝から崩れ落ちてしまいそうだ。

 

「――――仙!!」

「あう、う……っ、ああぁ……!?」

「――――鈴仙!!」

「――――はっ、はいっ!!」

 

 遠くから響いてきた声に鈴仙は背筋を伸ばす。声の方に目を向ければ、それは数歩も離れていない場所に立っている永琳がいた。近くの声を遠くからと錯覚するほどに精神は混乱していたらしい。

 そして、永琳から聞かされる言葉により、鈴仙はより深い混乱へと陥っていくことになる。

 

「いい、鈴仙? よく聞きなさい――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうなってんのよ、これは」

 

 空から幻想郷を一望する霊夢は、その目に映る幻想郷の様子に呆然と呟いた。

 いたる所に張り巡らされた多重の結界。妖怪の山、迷いの竹林、魔法の森、太陽の花畑――――特に人里など、数えるのも馬鹿らしくなるほどの数の結界で覆われている。

 霊夢の住む博麗神社も同様に結界が張られていたのだが、霊夢は()()()()()()()()()から何とか結界を抜け出すことが出来た。たまたま一緒にいた萃香も身体を疎にして抜け出そうとしたのだが、見事に弾かれてしまう。改めて霊夢の能力は反則であると萃香は思い知らされる。

 

「萃香の奴はお酒呑んで待ってるとか言って不貞腐れるし……。こんなとんでもない規模の結界、どこの誰が作ったのよ」

 

 結界、という時点で既に嫌な予感をひしひしと感じる霊夢。正直な所萃香と一緒に寝てしまいたい衝動に駆られているのだが、異変が起こってしまっては仕方がない。彼女は博麗の巫女。その自覚が薄いとはいえ、幻想郷への愛は本物なのだ。

 

「誰か――――はともかく、発生源は丸分かりよね」

 

 霊夢が視線を向ける先。そこは霧の湖の程近い魔法の森。そこから圧倒的な神気が放たれている。

 霊夢はあまりの強さの神気に怖気づきながらも、どこか覚えのあるその波動に首を傾げる。しかし、そのままではいられないと気合を入れなおし、霊夢は現場へ向かって空を翔け出した。

 

 

 

 

 

 時は少々遡る。それは幻想郷中に結界が張られる数分前。大妖精は不意に胸に湧き上がった不安を抱え、霧の湖をなんとなしに見回っていた。

 ()()()()()()()()。いつもは夜でもその存在を感じ取れる他の妖精達の気配が一切感じられない。あのどうにも騒がしい妖精達が、いくら夜とはいえこうにも大人しくしているというのは考えにくい。

 

「どうしちゃったんだろ、みんな。チルノちゃんも帰ってないみたいだし、このままっていうのもなんか怖いし……」

 

 湖の畔をとぼとぼと一人歩く姿はどこか物悲しい雰囲気だ。いつも隣にいるチルノがいないのもそれに拍車をかけている。

 

「むぅ……」

 

 何となく満たされない思いを抱えたまま、大妖精は髪を飾るオレンジ色の三角形に触れる。それは横島から贈られた髪留めだ。

 

「……むぅ」

 

 ぷくり、と頬を膨らませる。髪留めに不満があるのではない。髪留めを意識すると、ついつい横島を思い浮かべてしまうからだ。と言っても、横島一人だけが連想されるのならばこうはならない。

 大妖精が横島の姿を思い浮かべる。その時の映像は決まってチルノが横島にくっついている時の姿なのだ。チルノの第一の親友と自負する大妖精にとって、これは由々しき問題であった。

 チルノの隣にはいつも自分がおり、それが当たり前であった。他の誰も割り込んではこないし、周囲もチルノと大妖精はそういうものだと認識していた。

 しかし、そこに割り込む者が現れた。それが紅魔館の執事、横島である。

 横島は今まで大妖精が見たことがなかったなかったチルノの表情を引き出し、彼女に慕われ、懐かれている。大妖精はそんな横島に対して不満を持っているのだ。

 ――――大妖精は客観的かつ論理的に分析出来る。自分は横島に嫉妬しているのだ、と。

 今まで自分こそがチルノの一番だと思っていた。しかし、どうやらその地位が脅かされてきている。心中穏やかでいろというのは大妖精には無理な話であった。

 

「そりゃ横島さんはいい人だけど……チルノちゃん、横島さんのこと好きなのかなぁ?」

 

 親友としては応援すべきなのかもしれない。しかし、それ以上にチルノを渡したくないと思う自分が存在している。

 大妖精はチルノに恋慕の情を抱いているのか、それは定かではない。ただ単純に横島にチルノを任せるのは不安であるという意識があるのかもしれない。

 一つ確かだと言えることは、大妖精はチルノが横島と結ばれるのは気に食わないということ。

 

「何か堂々巡りになっちゃいそう――――ん?」

 

 抜け出せない思考のループに陥りそうになったとき、足に何かを蹴った感覚が走った。チャリ、という軽い音が鳴り、大妖精が蹴飛ばしてしまった何かが地面を滑る。

 

「……何だろ、コインかな?」

 

 その正体が妙に気になった大妖精は蹴り飛ばしたものを拾うために、屈んで手を伸ばす。草に隠れて正体はつかめないが、拾い上げればそれも分かる。しかし、指先が触れたそれは――――。

 

「冷たっ!?」

 

 思わず指を引っ込める。指に触れたそれは、()()()()()()()()()()()()()

 ――――何故か、嫌な予感が胸に走る。ごくりと唾を飲み込み、手で草を分ける。そして、大妖精の目に映ったものは。

 

「――――これ、チルノちゃんの……」

 

 それは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「――――っ!!?」

 

 瞬間、幻想郷中に強烈な神気が満ちた。

 それは大妖精は知らないはずの力。しかし、その初めて感じるはずの力を、大妖精はよく知っている気がした。

 

「これは……!? っ、頭が……っ?」

 

 神気を浴び、大妖精に軽い頭痛が走る。しかし大妖精は頭を軽く振ると、罅割れた髪留めを手に魔法の森へと走り出す。それは彼女の内に発生した、強迫観念にも似た直感故に。

 

 

 

 

 ――――現在、幻想郷のほぼ全ての妖精達は眠りに就いている。それは()()()()()()()()()()()()()が自らの行いの邪魔をされないようにするため。幻想郷中に張られたいくつもの結界も、元をただせばそれが目的だ。

 しかし、大妖精はこうして意識を保ち、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 先程大妖精を襲った頭痛。それこそが龍神の干渉だ。龍神の干渉を受けた妖精達は一切の抵抗を封じられる。それは現在の龍神の依り代である氷精でも、光を操る三妖精でも、あらゆることを器用にこなす紅魔館の妖精メイド三人組でも例外ではない。

 龍神の干渉を撥ね退ける。それは知性と知恵と知識を持ち、そこから確固たる自我を()()()()()()()()が行えること。

 大妖怪に匹敵する力の強さでも、自然を騙す能力でもそれは成し得ない。

 

 ――――故に、彼女こそが()()()。妖精を越えた妖精であり、幻想郷の妖精達の頂点たる存在なのだ。

 

 大妖精は森を走る。何かに巻き込まれたであろうチルノを助ける為の協力者を探しに。

 霊夢は空を翔る。幻想郷を襲う異変、その原因を排除する為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「く――――っ、ぅあああぁぁぁ!!?」

 

 凍り付いていく半身。目の前には強大な力を宿した拳を振りかぶる龍神(チルノ)。周りの助けも間に合わない。

 

「チル、ノ……!!」

「やめろおおおぉぉぉーーーーーーっ!!」

 

 凍りついた半身に、拳が突き刺さり、そして――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その半身は、砕かれた。

 

「紫いいいぃぃぃーーーーーーっ!!!」

 

 

 

 

 

 

第六十六話

『頂点たる存在』

~了~

 




お疲れ様でした。

最後のシーンはほんのちょっとだけ未来の話。

龍神戦は今まであんまり目立たなかったキャラが活躍する予定なので、その辺りを楽しみに待っていてください。

大妖精については……一応台詞の漢字の比率とか理性的な言動を取らせてはいたのですが……
………………煩悩漢ではそういう設定なんです!!(必死)

サブタイも龍神と大妖精の二人のことなのです……。そういう設定なんです!!(しつこい)


どうでもいいことですが、当初横島の様子が描写される際に『キス顔で凍りついた横島』とか『氷の檻に囚われた横島はキス顔のまま』とか『氷の彫像と化したキス顔の横島』とか、そんな風に表すつもりでした。
……ボツにして良かった!!



さて、、思いがけず今回が今年最後の投稿となりました。
また来年も東方煩悩漢、煩悩日和をよろしくお願いいたします。

それでは皆様今年もありがとうございました。

また来年お会いしましょう。

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