実は資格試験の勉強や、職場の同僚がコロナに感染したり謎の高熱に罹ったりなんだりして残業がたんまり発生したので時間が取れなくなってしまいました。
なので一月は投稿が出来ません……という内容の活動報告を投稿したと思ったら投稿出来てませんでした。
二月に入ってから気付いたのでちょっとマジでショックでした。多分本文だけ書いてそのままブラウザを消したのか、単純に書いた気になってただけなのか……注意力ぅ……。
申し訳ありませんでした。
なので今回は短めですね。前回の半分くらいです。
横島の精神世界の話の続きでちょっとしたネタも挟まってますよ。
それではまたあとがきで。
誰もがその場を動けないでいた。目の前の光景に理解が追い付いていないのだ。
総身から霊力を立ち昇らせ、レミリア達の前に立っているのは『
その顔に表情と呼べる物はなく、その目にも感情の色は宿っていない。
――――
あの『横島』はてゐに攻撃を仕掛け、迎撃に出た美鈴をも打ち破っている。
理由は全くもって不明だが、明確に敵対の姿勢を取っているのだ。
レミリアですら混乱し、動くに動けない中で、妹紅は。妹紅はただ、じっと。じっと、その『横島』を見つめていた。
第八十九話
『目的』
一歩、『横島』が動いた。瞬間、何とか意識を切り替え、レミリアが美鈴をその場に『横島』へと駆ける。
同じタイミングで飛び出したのか、『横島』との距離は一瞬にも満たない内にゼロとなった。
レミリアも『横島』も、共に右腕を繰り出す。ただし、その目的は正反対のものだ。
『横島』の右腕は攻撃の為に。対してレミリアの右腕は防御の為に振るわれた。
「……っ!!」
ドゴン、と。素手同士のぶつかり合いとは思えない衝撃音が響く。互いの右腕に伝わる衝撃もその音に負けてはいない。
ギシギシと自らの骨が軋む音を聞き、レミリアは顔をしかめ、舌打ちをする。
「――――ちっ!」
「……」
この程度で『横島』は動きを止めない。そのまま次の攻撃、そのまた次の攻撃と身体を駆動させる。
「う、お、おおぉ……!?」
その流れる様な套路、まるで舞の様に一つ一つの動作が繋がっている体捌き、虚実が入り混じった複雑極まる拳撃、蹴撃の嵐。翡翠に輝くグローブ状の籠手が光の線を描く。
その悉くを持ち前の動体視力、身体能力、反射神経、そして勘で躱し、防いでいくレミリア。
――――だが、その内心は驚愕と焦りで満たされようとしていた。
――――この動き、この速さ、この重さ……!! まさか、これは美鈴の……!?
「――――でぇいっ!」
「……」
レミリアは『横島』の腕を大きく弾き、仕切り直しをすべく大きく後退する。
ちら、と眠っている横島、それを守るフラン達の様子を横目で探る。目まぐるしい攻防で立ち位置も大きく変化したが、未だ距離が離れている事を確認する。
その確認が終わり、視線を『横島』へと戻すまでにおおよそ一秒程度。その時には既に『横島』はレミリアとの間合いを詰めつつあった。
「……っ!」
驚きに目を見開くが、レミリアにはまだ少し余裕があった。僅かであるが、先程までより間合いが遠い。誤差とも言えるわずかな距離だが、その違いが命運を分けるのだ。
――――そう、
「……!?」
先の攻防よりわずかに開いた距離。当然超接近戦闘で狭まっていた視界も相応に広くなる。
故に、レミリアは気付く事が出来た。
拳が届かぬ距離、高く振り上げられた右腕、それに添えられた左腕――――。
レミリアの危機感知能力が全力で警鐘を鳴らす。
「――――ちいぃっ!!」
爪を長く展開し、盾の様に掲げ、身をよじる。次の瞬間には『横島』の腕は振り抜かれ、それと同時にレミリアの爪は半ばから両断されて宙を舞う。
咄嗟に身をよじらなければその肉体をも斬られていただろう。それを目の当たりにした驚愕よりも先に、レミリアの戦闘本能は自らの魔力を前方に“圧”として放射する事で『横島』を吹き飛ばす事に成功した。
「……今のは」
レミリアのこめかみに冷汗が浮かぶ。
翡翠に輝くグローブは光の剣へと変化していた。間合いが変わって当然だ。拳と剣では明らかに異なる。
「……さっきの事を考えると、今のは妖夢の剣術かしら。向こうの世界の小竜姫の剣術は今の横島でも負担が大きいみたいだし……いや、精神世界だし考えるだけ無駄かな?」
目の前の『
分かっているのは『横島』が厄介な相手だという事だけだ。
「お姉様、大丈夫!?」
「さっきはダメだったけど、今度こそ援護を――――」
フランとてゐが
「やめなさい」
――――だが、それを許す訳にはいかない。
「な、なんでさ!?」
「お姉様!?」
またも出鼻をくじかれたてゐは叫ぶ。フランも同様に声を荒げ、その理由を目で問うた。
「単純にアンタ達じゃ『
「むむむ……!」
てゐもフランも何も言い返せない。確かに二人は永くを生きる妖怪――――神格すら獲得した因幡の素兎と、強大無比なる破壊の力を持つ吸血鬼であるのだが、その実、この二人は戦闘が苦手なのである。
てゐは神格と信仰から木っ端妖怪よりは強い力を持つが、それでもその程度でしかなく、永きに渡る経験から独自の戦闘術を有しているが、基本的には敵から逃げる為の技術であると言ってもいい。
対するフランは大妖怪にも匹敵する強大な魔力と、あらゆる物を破壊出来る能力から戦闘が得手だと思われがちであるが、実際はその永い生で戦いに身を置いた事はほとんど無いのである。
数百年規模の引きこもりは伊達ではないのだ。
――――それに。何よりもあの子達を
それがレミリアの偽らざる本心だ。
眼前の『横島』は姿が似ていただけの『男』とは違う。正真正銘、『横島忠夫』本人なのだ。
だからこそレミリアは戦っている。横島の主として、フランの姉として、両者の心を守る為に力を振るうのだ。
「――――さて、横島。お前が私の知っている横島なのか、それとも心の奥底で抑圧されてきた本心だか何だかは知らないが……」
拳と拳がぶつかり合い、その反動で互いに間合いから大きく弾かれたところでレミリアが口を開く。
「
『横島』の一挙手一投足を見逃さぬ様に気を張りながらもレミリアは問う。
「お前はルシオラの姿を取り、私達の前に現われた。その姿を取っていた理由は何となく予想が付いてるからいいとして……問題はその後の行動だ」
何故か『横島』は動こうとしない。静かにレミリアの言葉に耳を傾けている。
「何故、私達を
「え?」
今まで状況の推移について来れなかった小悪魔が思わず声を出してしまう。
「考えてもみなさい。私達を騙し討ちするならもっと良いタイミングなんていくらでもあったでしょう。確かに横島を発見して気が緩んでいたのはある。でも、わざわざ妹紅がまた横島とパスを繋ぎ直すまで待つ必要がある?」
「……」
そう言葉を返され、小悪魔は咄嗟に反論が出来なかった。言われてみれば、馬鹿正直に横島の元まで案内しなくても良いし、指摘通りパスを繋ぎ直すまで待つ必要はない。むしろ繋ぎ直している途中の方が効果的なのではないかと思える。
「そもそも私達を害そうってんなら姿を現す必要もないしね」
「……そっか、ここは執事さんの精神世界。この世界の支配者なんだからこうして姿を現さなくても色々と私達に攻撃出来るのか」
「まあ、本当はそんな事出来ないかもしれないけどね」
「私が肯定したそばから自分で否定すんのやめてくんない?」
それはまぁ置いといて、とレミリアはてゐを無視して思考に入る。横島が自分達を本気で害そうというのなら、わざわざサイキック・ソーサーや
だというのにそれをしないのは何故か。必殺のタイミングを窺っている? ならば最初に使えばそれでよかったはず。
レミリアは口元に手を当てて考えを口に出す。
「……私達を殺す気はない。しかし、ある程度痛めつけはする」
横島の指がぴくりと動く。
「横島にとって私達が邪魔である……という事はなさそうね。あるいは、その逆……? むしろ
ず……、と。横島からの圧力が強くなる。
「んー?」
どういう反応だろうか、とレミリアは首を傾げる。先の自分の発言が図星であったのだろうか。それともお喋りの時間は終了になったのだろうか。
どちらにせよ、最初に感じた様な無意識無感情な姿とは些か印象が違って見える。
「……最初は以前パチュリーから聞いた事のある
人の無意識には恐ろしい力が宿る。何らかの行動を起こすにしても、意識的に思考を挟んだ結果としての行動と無意識による行動とでは特に速さが段違いだ。更には自意識が働いていない分、手加減というものがかかりにくい状態でもある。
魂にまで刻み込まれた技術と、それを繰り出す為の力。余計な思考に労力を割かず、最短最速でただ結果だけを抽出する。
――――即ち、“
「ま、アンタの目的が何かは知らないけど……こっちはアンタの企みに乗ってやる理由は今の所ないのよね。そもそもこっちと会話をしようともしないし」
横島からの圧に押されていたレミリアの魔力が、徐々にその勢いを増していく。どこか金属が擦れ合うような音を響かせながら、二人の身体から発せられる霊力と魔力は拮抗する。
レミリアは両手に魔力球を作りだし、それを握り潰す。右の手には強大にして長大な赤い槍が握られ、左の手からは禍々しい紅色の十字架型の光が迸る。
「とりあえず、その顔で私達の前に立ちはだかるのは気分が悪い。
レミリアの脳裏に過ぎるのは、横島とよく似た外見の『男』の姿。怒りという燃料がくべられ、レミリアの魔力がその勢いを増した。彼女の怒りは当然の物。何せ、妹のフランは横島とよく似たその『男』に殺されかけたのだ。その時の事をフランが思い出し、その顔が恐怖に染まってしまったとしたら……。
「懺悔する時間くらいはくれてやる。――――
激情を露にし、レミリアは『横島』へと襲い掛かる。表面上は正反対の二人の激突。激情と、無情と。真紅と翡翠の軌跡は幾度も交わり、闇の世界に絢爛たる火花を散らす。
「お姉様……ただお兄様……」
フランは自分の為に戦うレミリアの姿を眺める事しか出来ない。そしてそれはフランだけでなく、てゐも小悪魔も、美鈴とて同じだった。
例え何があろうとも横島を助ける覚悟を決めていた。しかし、その為に横島と戦う覚悟は持ち合わせていなかった。
殺気や殺意といったものは感じない。しかし、“横島”が“自分達”を“攻撃する”。その事実に心が追い付かない。何故そんな事をするのか。何か理由があるのか。いくつもの『なぜ』が頭を巡り、思考を停滞させる。
ここで止まっている場合ではない。動かなければならない。それでも自らの身体は動いてはくれない。先のレミリアの言葉に甘え切ってしまっている。そんな事が許されていいはずがないのは分かり切っているというのに。
それでも、フランは動けなかった。
「く……っ」
美鈴が悔し気に呻きを漏らす。自分が上手く立ち回れなかったせいで主たるレミリアに辛い役目を押し付けている。その事実に胸が張り裂けそうなほどに痛む。
「……っ」
小悪魔は横島を抱えつつ、何も出来ない自分に歯噛みするばかり。つい先日、似た様な思いを味わったばかりだというのに、また同じ事の繰り返しだ。
自分は弱い。弱者には弱者に相応しい戦い方がある。まずは、頭を働かせる。深呼吸を一つ、二つ。レミリアと『横島』の戦いに意識を割きつつも、自分が、そして自分達がどう動くべきなのかを必死に考える。膝の上に感じる横島の重さ、温かさを心の支えにして。
「……?」
違和感を覚えた。てゐは目の前で繰り広げられる『横島』とレミリアの戦いを見ながら、その違和感の正体を探ろうと、ぐちゃぐちゃに乱れゆく頭で考える。
まず、違和感を覚えたのはレミリアではない。自分にとって、もっと近い存在に対する違和感がその正体だろう。
次に『横島』でもない。いや、『横島』にも大きな違和感を抱いてはいるが、自分が感じた違和感とは種別が違う。もっと身近で、昔から当たり前の様に存在した何かなのだ。
ふと、
彼女はただ『横島』をじっと見つめるだけ。まるで呼吸すら忘れてしまっているかのように静かに、ただ『横島』を見つめている。
「――――
妹紅は動かない。じっと、ただじっと、『横島』を見つめている。――――いや?
妹紅が見つめているのは、本当に『横島』なのか――――?
流れ込んでくる。彼女と交わした言葉が、彼女と過ごした時間が、彼女を想う気持ちが、彼女と交わした温もりが、圧倒的なリアルを伴って心に直接流れ込んでくる。
――――うぅぅううぅぁあああぁぁあああぁ!!? ああああぁぁぁああぁあぁあぁぁぁあああぁ!!?
それはまるで洪水の様に、ちっぽけな己の心を蹂躙し、遥か彼方へと押し流そうとする。
それは、“記憶”だ。横島とルシオラと。二人が過ごしたほんの僅かな蜜月の記憶。もしかしたら、自分と横島が過ごした日々の方がまだ多いと言えるようなそれに、妹紅は打ちのめされていた。
いつまでも続くと思われたその小さくも幸せな日々。やがて訪れるだろう幸福な未来。それを奪われた。無慈悲に、理不尽に、奪われてしまった。
形は違えど幸せに出来る可能性は残っていた。しかし、それも奪われてしまった。
どれだけ自分が酷い事をしてしまったのかまざまざと見せつけられ、妹紅の心は砕け散りそうになる程の衝撃を受ける。
かつては蓬莱の薬を奪い、自らが得るはずの幸せな未来を棒に振り。今回は愛する人が手に出来る未来を奪い尽くした。
自分は奪うだけの存在である。かつての自分と愛する人と、幸せな未来の可能性を根こそぎ奪い尽くし、完全に消滅させるだけの醜悪な悪魔だったのだ。
ここは妹紅の精神世界。横島とのパスが再び繋がった為、
頭を抱え、地面をのた打ち回り、時には頭を何度も地面に叩き付け、血を吐く様な絶叫を繰り返す妹紅の傍らに、ゆらりと小さな光の粒が舞い降りた。それは少しずつ大きくなり、やがて
一つ、また一つと蛍火が交わり、遂には人型のシルエットを作りだす。
「――――」
それは、女性の姿をしていた。儚げな雰囲気の、蛍火の女性。
――――『ルシオラ』が、冷たい瞳で妹紅を見下ろしていた。
第八十九話
『目的』
~了~
お疲れ様でした。
妹紅は前回またパスが繋がったので喜んでいたらとんだ地獄を見せつけられてしまいました。
はたして『横島』と『ルシオラ』は何がしたいのでしょうか……?
ちなみに初期プロットと比べると横島の設定はかなりマイルドになってます。
例えるならば
初期プロ:L○E ビーフカレー 辛さ×30倍
現在:クク○カレー 甘口
……いや流石に誇張が過ぎますね。初期プロは精々ジャ○カレーの辛口くらいでしょうか。
それではまた次回。