「ごめんね、手伝ってもらっちゃって」
「いえいえ、この程度なんてことありませんよ」
年末、街中を歩いていたアキラは買い物袋を手に下げたシャーレの先生と出会う。
話をするとどうやら家の大掃除をしていて、足りないものがあったから買い出しのため外にいたようだ。話の流れからアキラは手伝いを申し出る。もちろん先生は渋ったが無理やりにでも説き伏せ、今現在に至る。
「ですが不思議ですね。先生の家の大掃除、手伝おうとする生徒も多いはずでは?」
「あぁ、それはね。ほぼ毎日シャーレで寝泊まりしているから家があることを知らない生徒が多いんだ。というか知っているのはほんとに数人だからね」
「おや、そうなのですか」
思いがけずに出た先生の情報。数多の生徒たちに好かれている中、数人しか知らないという先生の家を仕入れたというアドバンテージにアキラは思わず笑みを浮かべる。
「それにほぼ家に帰っていないからそんなに散らかってないし、軽く掃除すれば終わるからわざわざ手伝ってもらうほどのことじゃないんだよね」
実際、片づけるものなんかはなく、ゴミもほとんど出ていない。確かにこれなら一人ですぐ終わってしまいそうだった。
「少々おせっかいでしたかね」
「え? いやいやっ! そんなことないよ! アキラが手伝ってくれたおかげで予定より早く終わりそうだし。本当に助かったよ」
「それならよかったです」
先生とともに掃除を進めていくと一つの部屋の扉が気にかかった。その扉、というよりその部屋の周辺だけは妙に小綺麗だったから。
「先生、あそこの部屋は……?」
「あっ、その部屋? 大丈夫。そこの部屋は大丈夫だから」
アキラが指さした部屋を見て先生は一瞬うろたえたがそれを悟られないよう態度には出さなかった。けれど、アキラはその一瞬を見逃さなかった。
その小さな反応が気になり、この部屋の中に何があるのか無性に気になった。
とはいえ今態度に示して警戒されるわけにはいかない。今夜先生が寝静まったら侵入しようと心に決め、掃除を続けた。
誰もが寝静まった深夜、カチャカチャと小さく音を立てながらアキラは部屋の鍵をピッキングしていた。いったいこの部屋には何があるのか。ダメなことというのは分かっていても好奇心を止められなかった。
「……これで、よしっ」
ガチャリと鍵が開く音が静かな廊下に響く。普段なら絶対に鳴らさない音だが、今回は小さいながらも静寂を壊した。何故音を出したのか、先生への甘えからなのかアキラ自身もよくわからなかった。
「失礼します。先生」
扉をゆっくり開け、閉ざされていた部屋の中に足を踏み入れ、ゆっくり扉を閉める。
部屋の電気をつけ、アキラは息をのんだ。
てらされた部屋の雰囲気はまるで博物館そのもの。棚に、机に、壁に飾られている品々は個で見れば大したことのないものだろう。本であったり、手袋であったり、首輪だったり、手折り鶴だったり……。
ブランド品だとか、宝石類だとかそういったものはなく、見わたせば日常の中にあるものばかり。それなのにこの部屋は神聖をまとっていた。
アキラはすぐに理解した。この部屋が先生にとっての宝庫なのだと。ここにある品物はすべて生徒との大切な思い出が詰まったものなのだ。
圧倒された。ここにあるものすべてが最高の芸術品だった。けれど、どれもこれもがこの部屋から持ち出したらただの物に変わる。これらの品物はここにあるからこそ輝く。そしてこの品物の価値を十分に理解しているのは先生だけ。
アキラも同じような部屋を持っているがこれほどのものは作れていない、いや作ることができない。そう直感し、同時に嫉妬と羨望が湧き上がった。
もうしばらくみていたいと思ったが場違いであることもわかっていたため、音を出さずに鍵をかけなおし、部屋を後にする。
あの部屋が脳に焼き付いて思考ができないなか、ふと思いついた。いずれ、あそこに私との思い出の品が飾られるのだろうか、と。
いや、あの先生のことだからきっと飾られるだろう。
それはとても、とても光栄で。
……そして、とても残念だ。
うーんデカグラストーリーやばすぎ。
これはしばらく引きずるな。
アインちゃん、ソフちゃん、オウルちゃんと一緒にミレニアムに帰りてぇ。
帰りてえよみんなで。
これもしかしてデカグラと和解して三人復活ある?
もしそうなったらデカグラは死者蘇生の代償で消えそうだけど。