「おや先生、こんな朝早くからどうしたのですか?」
シャーレの前で肌に刺さるような冷たい風を感じながら準備体操をしているとき、聞き覚えのある声が先生の耳に届いた。振り返った先には朝日に照らされ、ほのかに桃色が混じった白髪、白を基調とした服、ほんのわずかに赤みがかった白い肌。それらすべてが煌めき、それ以上に鋭く光っている紅い瞳の持ち主、清澄アキラがいた。
「おはよう、アキラ」
「はい、おはようございます。それで、まだ日が出て間もないというのになぜ?」
「ランニングをしようと思って」
「ランニングですか。健康に気を遣うのはいいことですね。ですが今まではしていなかったのに急にどうしたのですか?」
「あー、ちょっと恥ずかしい話なんだけどね、クリスマスにお正月、それに大規模イベントとここ最近いろんなイベントが目白押しだったじゃん?」
「確かにそうですね」
「それでちょっと、ね。正月太りをしちゃって」
先生は視線を下に落とし、右手でお腹をさする。そこには触ってわかる程度に膨らんだお腹があった。
「おや、本当ですか?」
先生のそばまで近づき、両手で先生のお腹を触るアキラ。
「ちょっ! アキラ!?」
「確かに、ほんの少し膨らんでいますね」
そういいながらさわさわと両手を動かす。先生は妙なくすぐったさをおぼえながら声を漏らす。
「そこはっ、ちょっと……っ!」
ただ触っていた手はつついたり、つまんだりと様相を変え様々な刺激を与える。先生は形を変えながら襲ってくる刺激にこらえながら静止の声をかける。
「まっ、まって! そこは本当にだめ――ひゃうっ!」
わき腹を襲う強い刺激に先生は声をこらえきれず嬌声を上げる。その声に驚いたのかアキラは後ろに軽く飛びのく。
「す、すみません先生。つい……」
「う、うん。大丈夫だよ」
どことなく気まずい空気が流れる。お互いに目をそらし、ゆっくりと相手の方をうかがうように目を向けるとばっちりと目が合ってしまい、共にまた目をそらす。
そんなことを数度繰り返し、先生は空気をかえるように話し出す。
「そ、それじゃあ私は走ってくるからっ」
「わ、わかりました。では私はシャーレで先生の帰りをお待ちしています」
お互いどこか急いだように言葉を交わし、話を終える。
急いで走り出した先生を見送り、ふと、気がついたように声をかける。
「周りにお気をつけてっ!」
アキラの声は空気をつたって先生の元まで届き、先生は振り返って返事をする。
「気遣ってくれてありがとう! 行ってきます!」
その顔は赤く染まりながらアキラに笑顔を送る。そしてすぐに前を向き走り去っていった。
先生の姿が見えなくなるまでその場に立ち尽くしていたアキラは唐突にふいた冬の風に体を震わせ、シャーレへと急ぐ。
シャーレに入るときに映ったガラスには自身の瞳に負けないぐらい赤く染まった顔が映っていた。
デカグラ編読んだ一言感想
テメェらは一生踊っとけ!!!!