人気のない自然に囲まれた上り坂。そこに土を踏みしめ歩く二人分の足音が響く。
「なかなかきつい道だね」
一人はシャーレの先生。いつものスーツ姿ではなくラフな服装に着替え、少し息を切らしながら前を歩く人を追いかける。
「もう少しで着くので頑張ってください」
前にいるのは生徒の清澄アキラ。こちらもいつもの白いパンツスタイルではなく私服を身に着けてきていた。いつも仮面で隠している顔はさらされており、ピンクがかった長い髪もポニーテールにしてまとめられている。
二人とも動きやすく、そしてそれほど大きくないリュックサックを背負っており、まるで小学生の遠足のような雰囲気を感じる。
事の始まりはアキラから届いた一つのモモトークだった。
内容は『二人でお花見をしませんか?』というアキラからのお誘い。生徒からのお誘いを先生が断るはずもなく、すぐに了承の返事を返した。
そしてそのまま日程や場所などについても話し合って決まった。どうやらアキラがおすすめの穴場があるという提案をし、興味が出た先生はその提案に乗っかった。
「先生、着きましたよ」
そんなことを思い返しているとアキラから声がかかった。
顔を上げた先にはほんの少し開けた空間。そこにたどり着いたとき先生の目に飛び込んできたのは圧巻の景色だった。一本だけ生えた桜の木、そして眼下に広がるキヴォトスの景色。人の営みが舞い散る桜の花びらに彩られる様は美しく言葉を失う。
「――これは、すごいね」
何とか絞り出した言葉も子供が言うような感想。
「こんなきれいな景色は初めて見たよ」
「気に入っていただけたようで安心しました」
舞い散る桜の花びらの中で微笑むアキラに見惚れる。
「――うん、とてもきれいだ」
お互い何も言わず二人より添いながらただ景色を眺めた。
「それじゃあ、お花見を始めようか」
そういって二人で準備を始める。どこにブルーシートを広げるのか話したり、持ってきたものを見せ合ったりとワイワイしながら準備を進める。
大体の準備を終わらせ、二人で持ってきたお弁当を取り出す。先生のお弁当は普通のサイズの二段弁当、アキラのお弁当は三段の重箱だった。
「……結構大きいね?」
「先生にも食べていただきたいと思い、少し張り切りすぎてしまって……」
少し照れながらちらりと上目づかいで先生を見つめるアキラに先生は笑顔を見せた。
「そっか、うれしいな。アキラの手料理食べてみたかったから」
「そんなに期待するほどの出来では……」
「アキラが頑張って作ったんだからぜったい美味しいよ」
先生の言葉に顔を赤くしてふいっと顔をそらす。
「それじゃあ食べようか」
二人で手を合わせ、食事の挨拶をする。
「「いただきます」」
二人がお弁当を開けると色とりどりの料理とあたりに漂う香りが食欲をさそい、くぅとお腹が鳴った。
「おいしそうだね」
アキラのお弁当を見て微笑む先生。その様子を見てアキラはあることを思いつき、実行する。
「はい、先生。どうぞ」
箸で卵焼きをつまみ、先生の口元まで運ぶ。
「ちょっ!? アキラ!?」
「はい、あーん」
少しのけぞった先生に負けじと前かがみになり卵焼きを近づけてくる。先生はどうしようかと困った顔をしたが――。
「……ご迷惑、でしたか?」
「――!」
少し悲しげに眉を下げるアキラの顔を見て勢いよく口を開け、そして食べた。
「……んむ。……うん。おいしいよ」
「よかった。そういっていただけて安心しました。もしお口に合わなかったらと思うと……」
ほっと息を吐くアキラ。その頬は赤く染まっており口元が少しほころんでいた。
その様子を見て先生はあることを思いついた。
「それじゃあ、お返し」
先生は自身のお弁当から唐揚げを一つ箸でつまみ、アキラの口元へと運ぶ。
「!? 先生!?」
「ほら、おいしいよ?」
アキラは顔を真っ赤に染め、目を右へ左へとうろたえる。そんなアキラにずいっと唐揚げを近づけるとうろうろとしていた眼は唐揚げへと向けられる。
ゴクリとアキラの喉が鳴り、意を決したようにアキラから唐揚げへと近づく。
「そ、それでは……いただき、ます」
アキラは口を開き、パクリと唐揚げを食べた。もぐもぐとゆっくりと口元を動かし、時間をかけて飲み込む。
「お、おいしかったです」
「それならよかった」
そうやってお互いに食べさせ合いをしたりしながら二人でゆっくりとお花見を楽しんだ。
なにあの……なに?
なんなの今イベント。
とんでもねぇトンチキイベかと思えば多分次イベのための布石でしょ。
新たな七囚人の名前も出てきたし。
アキラが実装されるのも時間の問題だな!