ブルアカ二次短編集   作:朱汰清家

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キキョウ
同棲しているキキョウとのとある一日


 とある日の夜、街灯に照らされた道路をひとつの影が横切る。

 その正体は息を切らしながら全力で走るシャーレの先生だった。汗をたらし、服は乱れ、髪は逆立つ。

 手にしているスマホの画面にはモモトークが開かれていた。そこにはいくつもの不在着信と先生自らが送った『ごめんいまからかえる』。そしてそのあと間髪入れずに送られてきた『はやく』の一言。

 仕事でトラブルが起きてしまい、連絡すら取れない状況になってしまっていたとはいえ、今は夜の11時。家で待っている彼女が怒るのも無理はない。

 そんな思いから一分一秒でも早く帰るために全力疾走する先生。

 普段ならこの帰り道もトラブルが起きていたりするが、さすがにこの時間だと人の気配すらない。

 帰路に響いたドタバタとした足音がとまり、荒い吐息だけが夜道に溶ける。

 先生は軽く息を整え、目の前の扉を開けた。

「遅い」

 開口一番先生を叱責する声。

 玄関にはキキョウが仁王立ちしながら待ち構えていた。

「言い訳を聞かせてくれる?」

 少ししどろもどろになりながら遅くなった経緯を話す。話している間キキョウは距離を詰めてきて、最終的にはほぼゼロ距離の状態になっていた。

 先生は説明に必死になって気がつかなかったが、キキョウは近づいた状況でさりげなく先生のにおいをかいでいた。

 ひと通りの言い訳が終わると「早くお風呂に入ってきて。晩御飯温めるから」と言い残しキキョウはキッチンに向かう。

 先生はキキョウが遅くなったことを許してくれたのかどうかわからず、困惑しながらもお風呂に向かう。

 さっと汗を流し体を洗い、疲れた体をお風呂で癒す。途中、キキョウが着替えを洗面所まで持ってきてくれたが

「いくら何でも着替えを忘れるなんてさすがに慌てすぎじゃない?」

 と一言言い残して去ってしまった。

 お風呂から出てリビングに入ると湯気がほくほくと出ている料理に目がとまる。さらには唐揚げの香ばしい香りも漂ってきて鼻腔を突き向ける。脳が刺激され、おいしそうな料理にゴクリと自然とつばを飲み込む。

 ちょうどその時、キッチンからご飯が盛られたお椀を二つ持ってくるキキョウ。そのままテーブルに置くが、先生はその位置に違和感を覚えた。

 テーブルが小さいためいつもなら対面に置かれるはずのご飯だが、今日は隣に置かれている。

 そのまま当然のように隣同士にいすを置いて先に座る。「どうしたの?」と先生が恐る恐る問うとキキョウは素知らぬ顔で「……何が?」と返してくる。困惑しながらキキョウの顔を見るとまるで『早くしなさい』と言わんばかりの顔で先生を見つめていた。

 戸惑いながらも席に着く先生。やっぱりというべきか机が小さいせいでお互いの肩がぶつかるほどの距離だった。

 二人で「いただきます」と挨拶をし、食事を始める。最初に唐揚げをつまみ口に運ぶ。口に入れた瞬間、予想以上の熱に口の中がやけどしそうになる。ハフハフと熱さに耐え冷めるのを待ち、落ち着いてからゆっくりと咀嚼する。

 ようやく食べ終え水でも飲もうとするが突如横から「はい、先生。あーん」とキキョウが唐揚げをつまみ、先生の口元へと近づけてくる。

「冷める前に、ほらはやく。あーん」

 さっさと食べろと言わんばかりの圧にまけ、覚悟を決めて口を開く。待ってましたと言わんばかりに口の中に唐揚げが侵入してくる。そのまま唐揚げを噛み殺すように歯で切り裂く。瞬間、じゅわりと出てくるアツアツの肉汁が口内で飛び散り、焼き尽くしていく。

 痛みに耐えるよう上を向き、涙をこらえながらも味わって食べる。その横では顔をそらし声を押し殺しながら笑みを漏らすキキョウ。

 先生が食べ終わり「おいしかったよ」とキキョウに言うと「そう」とスンとした表情で答え、そしてまた新たに唐揚げをつまんであーんをしてくる。

 そうやって何度か繰り返した後、さすがに冷めて反応しなくなった先生を見てキキョウ自身も食べ始める。

 

 食後のかたずけをし、やることをすべて終わらせてあとは寝るだけになった二人。

 ダブルベッドに二人で寝転ぶが、キキョウとの距離がいつもより近い。気になって訊ねてみるが「なに、イヤなの?」と冷たく問いかけられてしまったため「そういうわけじゃないんだけど……」と答える。キキョウは「なら別にいいじゃない」と言ってさらに距離を詰め足を絡めて密着してくる。

 先生がいつもと違うキキョウの様子にドギマギとしているといつの間にかキキョウのヘイローは消えていた。

 結局あれから遅くなったことについては何も言われないし、様子も変だしで先生の頭の中には困惑の二文字でいっぱいだった。

 すー、すー、と穏やかな寝息が寝室に響く。キキョウの顔は穏やかで、安心して寝入っているようだった。

 その寝様を見ていると先生の抱えていた疑問は霧散し、穏やかな笑みを浮かべる。左手でキキョウの頬を一撫でし、そのまま目を閉じる。

 今夜はキキョウに翻弄されっぱなしだったが、どこか楽しげな思いを抱えながら寝におちる。

 

 翌日、起きるのが遅いとしこたま怒られる先生だった。

 

 




今日は待ちに待ったブルアカフェスですね!
こういったリアルイベントは初めて参加するんですが、もう楽しみすぎてドキドキしています。
現地に参加する人も、参加できずライブ配信を視聴する人もみんなで楽しみましょう!
ってことで行ってきます!
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