ちなみにナズナとヨルネはまだ加入してない頃の話になります。
ある日のダーザインカノニカル本部が管理する一室、
その部屋は本部付の独立特務部隊である宵月庵が執務室として借りている。
そこには宵月庵の隊長を含む9名が集まっていた。
「急な呼び出しを受けましたけど、どうかしましたか?」
部隊の最古参であり人助けが生きがいのお人好しなマリィが開口一番に声を上げた。
「もしかして、『サイコ』でも見つかったー?」
その次に加入したアンドロイド、アイヴィーもマリィに続いた。
ちなみにサイコとは、宵月庵が追跡・調査対象としている通称『邪神狩り』と呼ばれる界賊であり、邪神を復活させてその見返りに力を得るもしくは強引に奪う事を目的としており、その結果いくつもの世界を滅ぼした実績を持つ危険な存在だ。
「……先に隊長から聞いたが、
残念ながら今回は『サイコ』に関する話ではない。」
2人を制止させるかのように発言したのは、
元秘密結社宵闇の首領であり、現在宵月庵の隊長代理を任されているゴルドーだった。
「じゃあ、何だってんだ?
大した用事じゃないなら、俺様は帰るぞ。」
悪態付きながらもゴルドーに絡む着ぐるみは迷惑系ヒーローのワンダースケア。
「……こうやって集めさせたんだ。
要件次第ではただでは済まさないぞ。」
赤いトレンチコートを着た男、ヴィクターはゴルドーと最奥にいる男にそれぞれ鋭い視線を向けていた。
「ふ、二人とも落ち着いてよ……任務じゃないなら、
部隊に関わる話とかじゃないの?」
ワンダースケアとヴィクターを落ち着かせようとするのは代理ヒーローのドット。
「じゃあ、話そうかな?」
最奥に座っていたダーザインの制服を着用し、赤い怪獣みたいなお面をつけた男性とその隣に赤い怪獣みたいな生き物が立っていた。
彼こそが宵月庵隊長のハインドであり、隣にいるのは普段他の部隊への応援等で派遣する怪獣みたいなものは隊長の能力で生み出された分身だ。
「要件というのはドットの言う通り、
部隊運営に関する話なんだ……ユニオンって知ってるかな?」
「食堂で聞いたことがある。
確か
『部隊が集まって、交流や意見交換等の部隊同士の活動をしよう』
という内容だったな。」
アイヴィーと同じ世界で顔見知りのアンドロイド、ザルトパッチは非常勤で食堂で働いており、
そこで聞いた話を思い出していた。
「……傭兵ギルドみたいなものか。」
最後に口を開いたのはマリィと同じ世界の傭兵ガルドスだった。
「大体あってるよ、
それで宵月庵もこの度ユニオンへの加入を決定する事になったんだ。」
「……どこのだ?」
「えっと……アトリエだね!」
ヴィクターの問いにハインドは慌てて書類を取り出しながら答えた。
「正式名称は『バッセのアトリエ』、
ユニオンの中心に立っているのは、
アズライトフィズ、
そしてヴァイオレットフィズと呼ばれる感染対策課の部隊で、
特に所属に制限をかけずに幅広く募集しているみたいだ。」
ゴルドーがハインドの説明を補足していた。
「……一つ聞きたいが、
なぜユニオンに所属しようと?」
「確かに俺様としても気になる所だ。」
ヴィクターの疑問にワンダースケアも乗っかった。
「弊部隊は特定の界賊の追跡という目的があるけど、
神出鬼没だから、
普段からよその部隊のお手伝いで点数稼ぎしてる現状だよね?
ちょうど入ろうと思っていたユニオンの中には、
感染対策課だけでなく、災厄対策本部、開拓調査課が所属しているから、
これまでの活動よりも情報を得やすくなるだろうし、
リソースもお互いに提供しやすい。
ってのが、大きな理由かな?」
ハインドが語ると、全員が一旦黙っていた。
「……わかった、そういう事なら任せる。」
ヴィクターは目を閉じながら、賛成の意志を示していた。
「いいぜ、そこで俺様が活躍すればさらにちやほやされるってわけだしな!」
ワンダースケアも隊長の考えを理解した上で、意欲を高めていた。
「隊長には加入の手続きを進めてもらおう……。
ユニオンには顔見せとして、とりあえず誰を行かせる?」
「ドットとゴルドー、君達がかなり宵月庵の顔になってるからよろしく!」
「……だろうと思った。」
「……えっ、私!?」
隊長にあっさりと押し付けられたゴルドーはため息を漏らし、ドットは困惑していた。