宵月庵バッセSSまとめ   作:宵月ハインド

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猟犬のひと時の語り

ヴィクターが宵月庵に設置された電話ボックスのような通信ブースの中に入って、

中にあるコンソールを操作し通信を繋げた。

 

しばしの待機音の後、

「お久しぶりです、ヴィクターさん。」

コンソールの画面には黒を基調としつつ、

緑のラインが入った制服を着用する緑髪の男性が映っていた。

 

「弾道、わざわざ悪いな。」

ヴィクターは少しだけ笑みを浮かべていた。

 

「いいんですよ、他でもない同期であるあなたからの通信ですから。」

「やめろ、下手なやつが聞けば誤解を招く。」

ヴィクターは目を伏せながら弾道と呼んだ男に対し、苦言を呈していた。

 

「H.O.U.N.D.Sの方はどうだ?」

通信相手は緑崎 弾道(みどりざき だんどう)、

ヴィクターの古巣であるH.O.U.N.D.Sの付属機関である猟犬戦隊ハウンドバスターズのリーダーを務めている。

 

「最近はほとんどヴィランサー事件ばかりです、

 稀に"ノーヴァ・ストラタ"や"アイアン・ソヴィエ"の残党と戦う事もありますが、

 幸いにもハウンズマシンを使う事態にならずに済んでます。」

 

「なるほど、お前達が戦ってた連中か。

 しかし、俺が"最初"に抜けた後はいろんな連中と戦ってたんだな。」

 

「特にワイバー団なんかがそうですが、

 我々が戦った連中の裏にはいつも、"宵闇"がいましたけどね。」

 

「……そうだな。」

 

「ヴィクターさんはV.C.Sでの特殊任務を受けていると聞いておりましたが、

 そちらはどうでしょうか?」

 

「前にも言ったが、

 宵闇で唯一で最も危険な男、"サイコ"を追っているが、

 それ以外は"よそのヒーロー"の手伝いや交流をしている日々だ。

 まぁ、極秘性もあって、V.C.Sに問い合わせても記録はないぞ。」

 

「わかってます、

 しかしあなたが他の方と交流を深める様子は想像もつかないですね。」

弾道はヴィクターの様子を想像しながら苦笑いしていた。

 

「長官から聞いていたが、

 俺が"最初"に抜けた後に出来たハウンドバスターズを、

 まとめるのに苦労していたんだろう?」

 

「ええ、否定はしません。

 "彼"がいなければ、こうしてあなたとゆっくり通信する事もなかったでしょう。」

 

「"あいつ"か……俺の後釜以上の存在になっているみたいだが、

 今はもういないんだろう?」

 

「ええ、彼は世界の為に出来る事を増やす為にとかで、

 旅に出ました。

 今でもたまに画像付きでメッセージをくれます。

 ……しかし、ヴィランサー事件は代理ヒーローのおかげで、

 大分こちらの負担は減り、

 "ノーヴァ・ストラタ"残党等への対応に専念出来るのはありがたいですが、

 正直、考えてしまいます。」

 

「……。」

ヴィクターは次第に口数が減っていった。

 

「"宵闇"の標的はほとんど不正をしている政治家や企業ばかりでした。

 ハウンドバスターズとして活動していくにあたって、

 その事実を何度も目の当たりにしていました。

 そして、宵闇竜事件の後、

 ヴィランサーシステムが世界中に拡散されました。」

 

「ゴルドーを倒すべきではなかった、と?」

 

「いえ、ゴルドーを倒すべきだったのは間違いありません。

 ただ、やつが……狙ってなかったにせよ、

 ヴィランサーシステムが拡散されたこの状況を見て、

 やつはきっと我々を試しているんだと思っております。」

 

「なるほど……確かにヴィランサーシステムが、

 人々の手に渡りやすくなって、

 俺達……世界は否が応でも人の闇と向き合わないといけなくなったのは、確かだな。」

ヴィクターは弾道の言葉を嚙み締めるかのように答えていた。

 

「すいません、愚痴を聞いてもらってしまって。」

 

「構わないさ、任務は機密の塊だから話せないが、

 お互いがこうして世間話を出来る貴重なひと時だからな。」

 

「たまにはV.C.Sの方でもいいので、顔を見せてください。

 彼だけでなく、

 ハウンドバスターズのみんなもそれぞれの道に戻ってこそいますが、

 あなたの事を気にかけていますよ。」

 

「ああ、また通信させてもらおう。」

 

「了解しました、ではこれで。」

「ああ、またな。」

 

 

通信を終えたヴィクターは一息を突きながらブースを出ると、

 

「仲間との通信は終わったか?」

ゴルドーが立っていた。

 

「………………。」

ヴィクターは無言でゴルドーの横を通り過ぎた。

 

ゴルドーはヴィクターを見送って、背中を向けると

 

「お前は……秘密結社宵闇の首領としてした事は全部、正しいと思った事はあるのか?」

ヴィクターが剣を向けていた。

 

「……正直に言えば、全部正しいとは思ってない。

 そして、知りたいんだ。」

ゴルドーは一切動じず、ヴィクターの問いかけに淡々と答えた。

 

「何を?」

 

「"俺が死んだ"事になっている世界で、

 俺がやった事が全部間違っていたかどうか……を。」

ゴルドーは背を向けると、いつの間にかヴィクターがいなくなっていた。

 

「まぁ、俺が生きているうちにそうそう答えは来ないだろうな……。」

ゴルドーは何事もなかったかのように自分のデスクに戻っていった。

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