宵月庵バッセSSまとめ   作:宵月ハインド

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ディスコで書いた短編+αをまとめましたー


宵月庵の小話3つ

●その1 煙が出てくるものをくわえる

ダーザインの所有する敷地内の一角に存在しているユニオンハウス「バッセのアトリエ」。

2Fにあるラウンジの喫煙スペースにて2人の男が煙草を吸っていた。

 

「とっつぁん、

 俺としてはもっとかわいこちゃんにこの喫煙スペースに来てほしいって思うんだ。」

鼻セレブ隊に所属するテツが煙草をくわえながら話しかけていた。

 

「何を言ってるんだ。

 むしろこういう所にはいてほしくない。

 ただでさえ、むさ苦しい男がいる中で受動喫煙されるのは気に入らねぇ。」

やや面倒くさそうにテツに反論したのは祭高戦隊に所属するリッカだ。

 

「いや、そう言っても。

 ここを利用する時点で喫煙者だろ?」

 

「ここが喫煙スペースかー。」

アイヴィーがリッカに言い返すテツの横にいつの間にか現れた。

 

「うおっ!?」

 

「あ、あんたは、確か宵月庵の」

 

「アイヴィーだよー。」

驚くテツを横にリッカにアイヴィーは名乗った。

 

「何しに来たんだ?」

 

「喫煙スペースにちょっと興味があってねー。」

 

「しかし煙いだろ?」

 

「別にー?

 普段から硝煙やら爆薬やらの匂いに慣れてるしー。」

アイヴィーはリッカの質問に答えながら、喫煙スペースをぐるっと回っていた。

 

「ああ、そうだったか?」

リッカがアイヴィーが腰に着けているコンテナから何かをまさぐっている様子を見守っていた。

 

「あ、ライター持ってなかった。

 ここって火炎放射器って使えるー?」

アイヴィーは火炎放射器を取り出しながら2人に見せていた。

 

「「いや、駄目だな。」」

リッカとテツは口を揃えて答えた。

 

「じゃあ、仕方ない。

 テツー火を貸してー。

 ライターでも、その煙草の火でもいいよー。」

アイヴィーは火炎放射器をしまった後、筒状の物体を取り出していた。

 

「お、おおじゃあ!」

テツは若干戸惑いつつも、自分が咥えている煙草をアイヴィーの顔に向けた。

 

「……おいっ!?」

テツの煙草とアイヴィーが咥えていた物体が触れる瞬間、

リッカが慌ててテツの煙草を取り上げた。

 

「何するんだよ、とっつぁん!?」

 

「お前こそ、何をしてるんだ!?」

怒るテツを横にリッカはアイヴィーに問いただそうとした。

 

「えーダイナマイトに火をつけてもらおうとしただけだよー?」

アイヴィーはダイナマイトを口に咥えており、あともう少しで導火線に火が着く所だった。

 

「なっ!?」

テツはようやく事の重大さに気付いた。

 

「ここは喫煙スペース、

 火種を持ち込んでも火薬を持ち込むところじゃねぇ!?」

 

「そうなんだー、てっきり煙が出るものを咥えて楽しむ場所だと思ってた。」

アイヴィーはリッカに言われて素直に納得していたようだった。

 

「いや、ある意味そこは合ってるがな……。」

リッカはもはや煙草を吸う気が失せてしまったのか、煙草を灰皿に押し付けて火を消していた。

 

「それとね、ゴルドーが嫌っていたから。」

 

「煙草をか?」

テツは煙草を吸い続けながらアイヴィーに問いかけた。

 

「ゴルドーがね、

 『タバコ休憩という概念が別の世界であるのは仕方ない。

  だが、他の隊長共がタバコ休憩で作戦に関わる重要な会議をされて、

  後で勝手にそれを議題として取り上げるのは気に入らない。

  隊長の中には太刀花双輪華の太刀花藍を始めとした未成年の隊長や、

  それ以前に煙草吸う事が出来ない種族の隊長だっている以上、

  情報共有の面で問題が出てくるんだ。』

 って苛立ってたから、

 手始めに身近な喫煙所を偵察して、あわよくば吹っ飛ばしておけば、

 ゴルドーの機嫌も少しはよくなるかなーって、思ってた。」

アイヴィーがヘラヘラと動機を語っていると、

 

「………………。」

テツとリッカは引きながら、お互いの顔を見合わせていた。

 

 

後日、2人の元に、

ゴルドーから喫煙スペースでの出来事のお詫びと称して、タバコをカートン単位で送られた。

 

●長く動いている者同士のわずかな語らい

ダーザインの所有する敷地内の一角に存在しているユニオンハウス「バッセのアトリエ」。

1Fにあるカフェにて、宵月庵に所属する汎用アンドロイドのザルトパッチがキッチンの清掃をしていた。

 

ザルトパッチは宵月庵の活動の傍ら、非常勤でダーザインの食堂だけでなく、

このカフェにも、非定期的に顔を出してはカフェでの仕事を実施していた。

 

「これはザルトパッチ様、ご苦労様です。」

「ん、ああ、ノアールか。

 気にするな、清掃も仕事のうちだ。」

声をかけられたザルトパッチは中央のカメラアイのシャッター部分だけを動かし、

相手がアズライトフィズに所属する執事、ノアールである事を確認した。

 

「あなたの仕事は他の方と比べても正確で助かっております。」

「まぁ、汎用アンドロイドだから、何でもできる事を求められる。

 それだけだ。」

ザルトパッチはノアールと会話を続けながらも清掃作業を続けていた。

 

「ザルトパッチ様はアンドロイドと伺っておりましたが、

 同じアンドロイドのアイヴィー様とは、その随分と……。」

「まぁ、あいつは俺の世界の方でもかなり変わっている方だ、

 特に性格という意味でもな。」

ザルトパッチはノアールの考えをおおよそ察したのか、

比較対象になっているアイヴィーとは異なる事を認めた。

 

「あいつは戦闘用アンドロイドという点を除いても、

 量産された俺と違って、

 やつのメーカーが採算性を度外視して、

 技術を詰め込んだデモンストレーションとデータ収集を目的に製造されたやつだ。

 正直、かなり変わっていると言ってもいい。」

ザルトパッチは清掃作業の残タスクを確認しながらアイヴィーの出自を語っていた。

 

「なるほど、アンドロイドというのは目的ありきなのですな。」

 

「お前達からすれば、普段使っている道具と同じだ。

 目的ありきで作られるもので、

 修理が効かなかったり、耐用年数を過ぎればスクラップに行き。

 それがアンドロイドだ。」

ザルトパッチはノアールに自分の世界におけるアンドロイドについて語っていた。

 

「それにしても、汎用アンドロイドというのは、

 ここまで人との会話に融通が利くものでしょうか。」

 

「いや、他の奴らだとここまで会話のやりとりをしないものだ。

 アイヴィーはメーカーがあえて人に近づけるように自己学習機能の高いAIが搭載されているが、

 俺の場合、15年も稼働しているうちに他のアンドロイドよりも多くのパターンを学んでいった。

 普通、汎用アンドロイドだろうが、10年稼働出来れば御の字らしい、

 特に戦闘に駆り出される事もあるタイプはな。」

 

「15年、アンドロイドにとって長いのでしょうか?」

ノアールはザルトパッチの稼働年数を聞いて驚いていた。

 

「正直、ダーザインにスカウトされなかったら、

 博物館で見世物になるか、

 変なコレクターの元で稼働し続けることになってもおかしくはなかった。

 そう意味では、仕事できるのはマシだと思っている。」

ザルトパッチは清掃道具を片付けると、飲み物の在庫確認を始めた。

 

「15歳となると若者として扱おうと思っておりましたが、

 むしろ、私めと同等と扱うべきでしょうか?」

 

「頼むから普通に接してくれ。

 ただでさえ、俺をロートル扱いするアイヴィーが調子に乗りかねない。」

ザルトパッチはノアールの提案を拒否しながら、ポッドのお湯を沸かし始めた。

 

「それは大変失礼いたしました。」

ノアールは笑みを浮かべながら頭を軽く下げていた。

 

「まったく……人間ってのは、面白くも面倒くさいやつらだな。

 ……そういう意味ではアイヴィーも人間に近い存在って事なんだろうか。」

ザルトパッチはノアールと接しながらも、アイヴィーの事について考えていた。

 

「あ、ノアール、それにザルトパッチさんもいるんだ!」

「来てあげたわよ!」

そこにアズライトフィズに所属するスズ、

そして幻想の図書館に所属するたまが現れた。

 

「お二方、ようこそいらっしゃいました。」

ノアールはお辞儀をしながら、2人を迎え入れた。

 

「注文を伺おう。」

ザルトパッチはカウンターに立つと、

 

「じゃあ、ワッフルを。」

「わ、私はパンケーキをちょうだい。」

「了解した。」

ザルトパッチは2人の注文を確認し、それぞれの調理に向かった。

 

「もし、紅茶でよければ私めが淹れさせていただきます。」

 

「え、それくらい。」

「今は俺とノアール、そしてお前達だけだ。

 ちょうど、お湯も沸いた所だ。

 そいつの勝手にさせてやればいいんじゃないか。」

ザルトパッチはパンケーキとワッフルを無駄のない的確な動作で同時進行に調理していた。

 

「あ、あなた、すごいわね。」

たまはザルトパッチの動きに関心を寄せていた。

 

「じゃあ、ノアール。

 私達のお茶も用意してくれる?」

 

「かしこまりました、お嬢様。」

ノアールは2人分の紅茶を淹れるべく、キッチンに入った。

 

●おまけ 問題への向き方

とあるT+/M-に分類される世界、

黄土色の煙が辺りに充満し、

荒れ果てた市街地を二人の男が高台から見下ろすように立っていた。

 

そのうちの一人、鼻セレブ隊に所属するテツは煙草に火をつけていると、

 

「テツ、

 お前の世界では問題が起きた際、

 『だれが責任を取るか』が先に出るか?

 それとも『何が悪かった』が先に出るか?」

 

もう一人、宵月庵に所属するヴィクターが語り掛けてきた。

 

「さぁな、俺はそういうのを気にした事もない。

 ただ、擦り付けようもない明らかな犯人がいりゃ、

 そいつに責任を取らせるか、が多い気がする。」

 

テツは煙を噴かしながら、ヴィクターの問いに答えていた。

 

「……俺の世界では、

 専ら『だれが責任を取るか』が先に出てた。」

 

「過去形か?」

 

「ああ、

 『それでは根本的な解決にならない、最悪繰り返すだけ』

 って、

 ヴィランサー事件が頻発する最初期になって、

 ようやく世界中の……少なくともヒーローと呼ばれる連中から気付きだした。」

 

「そうなのか。」

 

「事件そのものを対処するだけでは足りなかった。

 事件の原因、犯人の動機を知ろうとしないのは、愚の骨頂。

 だからこそ、V.C.Sを立ち上げた際、

 代理ヒーローがヴィランサー事件で時間稼ぎをして被害を食い止める中、

 ヒーローがヴィランサーを止めて、

 その後、V.C.Sと警察が協力して、その原因を探って可能な限り取り除く。

 それが俺の世界でのあり方だ。」

 

「なんかブラックだな。」

 

「もとはと言えば、

 ゴルドーをただ倒すだけで終わった気になってたヒーロー達、

 いや"世界"の怠慢が起こした"必然"とも言える。

 ……それでだ。」

ヴィクターはしかめっ面でテツを睨みつけ、

 

「この"惨状"、

 そちらの部隊はどう対応してくれるのだろうか?」

指さした先には、

ハル、櫂、鬼子、ゴルドー、ドット、ワンダースケア、更には先程まで交戦してた界賊までも全員倒れていた。

 

「あの白い畜生……お宅の隊長は自ら放った……放屁でどこかで飛んでしまったし、

 救援を呼びたくても、この煙が収まるまでお互い身動きも取れない。」

ヴィクターはこの惨状の原因を作ったアザラシに対し、苛立ちを覚えていた。

 

「いやー本当、申し訳ない。

 今度、いい店紹介するからさー。

 今はこれだけで勘弁してくれない?」

テツが手渡したどんぐりにヴィクターの目つきが更に鋭くなったのは言うまでもなかった。

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