ギルド長が過保護すぎる   作:ピロリ菌ex

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なんちゃってクトゥルフ要素を含みます。

ニワカなのでご容赦ください。





7.深淵より

 

 デミウルゴスとアルベドによる、“侵入者撃退計画”。

 

 ナザリックへ侵入してくる者たちを迎え撃つために組まれた作戦であり、同時に様々な実験も兼ねている。送られてきた台本は、難癖のつけようがないほど完成されていた。

 

 どこを読んでも完璧で“うわぁ、ナザリックこわ……”とトンヌラが遠い目になる程度には恐ろしい(直訳)完成度だった。また今回の実験には、トンヌラ自身も含まれている。

 

 そんな計画の待機場所へ、現在向かっている最中なのだが──

 

「あ、あの〜シズさん?」

 

「………なに、トンヌラ様」

 

 返ってきたのは抑揚の薄い機械的な声。彼女はプレアデスの一人──CZ2128・Δ、通称シズ・デルタ。無表情気味の戦闘メイドだ。

 

「僕、自分で歩けるよ?」

 

「………知ってる」

 

「そ、そっか……」

 

 現在、彼はシズに抱えられていた。

 それは彼が子供だからなのか、単にシズの可愛いものリストに見事入ったためなのかは分からないが。

 

(いやでも恥ずかしいってぇ……!)

 

 精神は成人男性である。まだまだ慣れるものではない。

 しかも周囲のNPCたちは、トンヌラが抱えられている姿を見ても誰も違和感を抱いていない。むしろ「護衛対象として大切に扱われている」と認識している節すらある。

 

 羞恥心だけが一方的に削られていく。

 

 シズは無表情気味のまま廊下を歩き続けているが、その腕は妙に安定していた。揺れも少なく、運ばれている側としてはかなり快適なのがまた複雑だった。

 

「……下ろしてくれない?」

 

「………許可できない」

 

「さいですか」

 

 トンヌラは素直に諦めた。というより、この短いやり取りで理解してしまったのだ。

 この状態のシズは、何を言っても譲らないだろう。

 

「……シズ」

 

「………なに」

 

「なんで抱えてるの?」

 

 トンヌラが半ば諦め気味に尋ねると、シズはほんの少しだけ視線を下げた。

 

「………転倒防止」

 

「僕そんな転ぶイメージある?」

 

「………ある」

 

「あるんだ……」

 

 地味にショックだった。

 

「………トンヌラ様は小柄。加えて現在は精神が不安定と聞く、言わば特殊状態。安全性を最優先するべき」

 

「特殊状態って言い方……」

 

「………それに」

 

「それに?」

 

「………かわいいから問題ない」

 

「今なんて?」

 

「………機密事項」

 

 トンヌラはゆっくり天井を見上げた。

 

(プレアデス、思ったより距離感近いなぁ……)

 

 そんなことを考えている間も、シズは極めて真面目な顔でトンヌラを抱えたまま歩き続けるのだった。

 

「シズちゃんばっか、ズルいっす!」

 

 横からひょこっと顔を出してきたのは、プレアデスの一人──ルプスレギナ・ベータだった。

 

 茶色がかった髪を揺らしながら、にこにこと楽しそうに笑っている。

 見た目だけなら愛想の良い少女そのものだが、その正体は人狼系種族。さらにプレアデスの中でもかなり“危ない側”の性格をしている人物である。一応、プレアデスの次女にあたる存在だ。

 

「ほらほらシズちゃん、交代するっす!」

 

 しかし、シズは一歩滑るように横へ動き、ルプスレギナの手を綺麗に回避した。

 無駄のない動きで抱えられているトンヌラもほとんど揺れない。

 

「………トンヌラ様は私がいいと言ってる」

 

 シズが淡々と告げる。

 

(言ってない)

 

 トンヌラは心の中で即座に否定した。だが口を挟む前に、ルプスレギナが頬を膨らませる。

 

「え〜、ずるいっす!あたしもトンヌラ様抱っこしたいっす!」

 

「………順番を待つ」

 

「順番制だったの!?」

 

 トンヌラも我慢できずにツッコミを入れるが、二人は聞こえてないのか言い合いを続ける。

 

「一分!一分だけでいいっすから!」

 

「………ダメ」

 

「ケチ!」

 

「………当然」

 

 まるでお気に入りのぬいぐるみを取り合う子供同士のような会話だった。

 トンヌラは遠い目をしながら、小さく呟いた。

 

「………僕のことは無視ですか」

 

 もちろん、誰も下ろしはくれない。

 駄々をこね続けるルプスレギナの頭へ、突然ごつんと拳骨が落ちた。

 

「ふぎゃぁ!?」

 

 涙目になりながら頭を押さえるルプスレギナ。その背後には、いつの間にかユリ・アルファが立っていた。

 

「いい加減にしなさい」

 

 ユリは呆れたようにため息を吐きながら、眼鏡をくいっと押し上げる。

 

「だ、だってぇ〜」

 

「だってではありません。廊下で騒がない」

 

 ぴしゃりと言い切られ、ルプスレギナはしゅんと肩を落とした。そんな彼女を一瞥したあと、ユリは今度はシズへ視線を向ける。

 

「ほら、シズも不敬よ。トンヌラ様を下ろしなさい」

 

 ルプスレギナの時と違い、こちらには諭すような優しい口調だった。

 ユリとしても、シズが悪気なくやっていることは分かっているのだろうだから穏やかに言い聞かせる。

 

「………いくらユリ姉でも承認できない」

 

「え?」

 

 ユリが固まった。

 普段のシズは非常に聞き分けがいい。プレアデス内でも特に真面目で、ユリの指示には基本的に従う。そんな末妹が、真正面から拒否したのである。

 

「………ユリ姉はいつもトンヌラ様といる」

 

「そ、それは補佐役だから」

 

「………ずるい」

 

 ぽつりと呟かれたその言葉に、今度はユリが完全に沈黙した。

 

 横ではルプスレギナが「うわっシズちゃん反抗期っす!」と楽しそうにしている。しかし当のシズは至って真面目だった。

 

「………それに」

 

 シズは振り返って後ろから黙って着いてきていた──ナーベラル・ガンマとソリュシャン・イプシロンを指差す。

 

「………みんなアインズ様から重要任務を与えられてる、私はまだない」

 

 相変わらず抑揚の薄い声だった。けれど、その言葉にはどこか寂しさのようなものが滲んでいた。

 

 トンヌラは思わずシズを見上げる。

 プレアデスたちは皆、至高の御方からの命令を誇りにしている。特にシズは真面目な性格だ。だからこそ、自分だけ特別な任務がないことを気にしていたのだろう。

 

 ユリもそれに気づいたのか、困ったようにトンヌラへ視線を向けてくる、どうしましょうか、と。そんな意味が込められている気がした。

 

 だがトンヌラは小さく首を横に振る。

 

「じゃあシズに僕が正式に命令するよ」

 

「………トンヌラ様?」

 

「このまま僕を抱っこして安全に運んで、いい?」

 

 ほんの少しだけ考えるような間。

 それからシズは、トンヌラを抱える腕に力を込めると、真っ直ぐ前を向いた。

 

「………承知した」

 

 その返答は短かった。

 けれど先程までより、ほんの少しだけ嬉しそうに聞こえた。

 

「末っ子って感じっすねぇ。あれ?でもシズちゃんの理論だとエンちゃんはどうなるっすか?」

 

 ルプスレギナは特別な任務がまだ与えられてないという点で──エントマ・ヴァシリッサ・ベータに視線を向ける。

 

 エントマが今まで沈黙を決め込んでいたのは訳がある。

 とある戦いで口唇蟲を失ったため、自身が嫌っている本来の声を出したくないから黙っていたのだ。

 

 しかし、みんなに見つめられるなか、ゆっくりと喋り出す。

 

「我慢スルワァ……私ノ方ガァ"オ姉チャン"ダカラネェ」

 

 その一言でシズの動きが止まる。

 

「………その発言は見過ごせない」

 

 いつものように始まった“どちらの方が姉か”という論争に、ユリは額へ手を当てた。

 

 エントマは「私ノ方ガ落チ着イテルワァ」と主張し、それに対してシズは「………エントマはすぐ感情的になる」と淡々と反論する。

 

 しかもどちらも割と本気だ。そしてその横ではルプスレギナが面白がって笑っていた。

 

「ルプー」

 

 低い声でユリが名前を呼ぶとルプスレギナはびくっと肩を跳ねさせた。

 

「貴女、わざとじゃないわよね?」

 

「え?なんすか?」

 

 わざとらしく首を傾げるルプスレギナ。

 その態度を見て、ユリは深々とため息を吐いた。

 

「……はぁ」

 

 ユリとしては頭が痛い問題だったが、抱えられているトンヌラとしては、そのやり取りがどこか微笑ましくもあった。

 

 そんな騒がしい移動を続けるうちに、一行は目的地へと到着した。

 

 そこはナザリックの地表、中央霊廟だった。冷たい空気が肌を撫で、地下とは違う開放感が広がっている。

 

 シズはようやくトンヌラを床へ下ろす。

 久々に自分の足で立ったトンヌラは、なんとなく開放感を覚えながら軽く服を整えた。

 

「ここでトンヌラ様が魔法の実験を行われるのですか?」

 

「そうだよ、ユリ」

 

 彼がこの世界へ転移してから、未だ本格的に魔法を使用したことはない。しかし今回、侵入者という実験対象が現れた。

 

(人間を実験に使う……あんまり抵抗感がないんだよなぁ)

 

 心も異形になったということか、とトンヌラは内心苦笑いする。

 

 しかし同時に、少しだけ高揚している自分もいた。

 ユグドラシル時代、自分が作り上げた支援特化ビルド。それがこの世界でどこまで通用するのか、自分でも少し興味があったのだ。

 

「基本みんなは何もしなくていいよ、何かあった時のサポートはお願い」

 

 トンヌラがそう告げると、プレアデスたちは一斉に姿勢を正した。

 

『はっ!』

 

 返ってきた声は綺麗に揃っている。

 さすがはナザリックが誇る戦闘メイド隊といったところだろう。先程まで“どちらが姉か”で揉めていた集団とは思えない統率力だった。

 

「じゃあ、せんp……アインズさんから連絡が来るまで待機しとこう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────

 ────

 ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 "緑葉(グリーンリーフ)"経験豊富な老人──パラパトラが率いるワーカーチームは、墳墓の中へと侵入する者たちと別れて霊廟の階段を降りる。

 

「老公、勿体ないじゃないですか?」

 

「明日の優先捜索権を得たんしゃ、損ばっかりしゃねーぞ」

 

 軽い口調のパラパトラだが、確かな確信があった。

 

「大体、謎の遺跡に最初に侵入するのはちと危険が高すぎしゃよ」

 

 ニヤリと笑う老人。

 

「彼らはわしらのカナリアしゃ」

 

 パルパトラという老人は非常に注意深い男なのだ。用心に用心を重ね、石橋を叩いてから渡るような男。だからこそ、今回のような不確定要素の多い依頼は好まない、それが彼が今まで生き残ってきた理由なのだが……。

 

「冷静な判断ですね」

 

 突然、静かな女の声がした。

 

 即座に武器を構えつつ、振り返る。

 しかし、その場にいた全員の動きは次の瞬間わずかに止まった。

 

 先ほど自分たちが降りてきた階段の上。霊廟の入り口に、五人の女が並んで立っていた。

 

 全員がメイド服を身に纏っている。だが、ただのメイドではない。

 誰もが異様なほど整った容姿をしている。それこそ人形のように。だが同時に、その美しさは人間離れしており異様さを際立てていた。

 

「……主ら、何者しゃ」

 

 警戒を解かず問いかける。

 急襲ではなく、声を掛けて正面から姿を見せた。つまりそれは"こちらに勝てる"という自信があるということ。

 

 一見すると平静を保っているパラパトラだったが、スピアを握る手にはじっとりと汗が滲んでいた。

 

「……メイド?」

 

 仲間の一人が呆然と呟く。

 

 と同時にメイドたちが一斉に動いた。

 無駄のない統制された動きで左右へ分かれ、中央に一本の道を作る。その動作はまるで王の通る道を開ける騎士のようだった。

 

 そして、その奥から小さな影がゆっくりと姿を現す。

 

 それは小さな少女だった。

 フリルの付いた可愛い服、片手には()()()のぬいぐるみを抱えている。ただ少女の頭部からは黄緑色の触手の髪が生えており、ゆらゆらとうねっている。瞳は黄金に輝き、その瞳孔は羊のように横に割れている。

 

 可愛らしい外見と、人ならざる異形。その二つが混ざり合った姿は、言いようのない不快感と恐怖を周囲へ与えていた。

 

「な、なんだっ、あの気色悪いガキは?」

 

 若いワーカーの一人が、思わず嫌悪を隠せない声を漏らす。

 

 その瞬間だった。

 

 メイドたちの視線が、一斉にその男へ向けられる。

 

 それまで無機質だった瞳に、はっきりとした殺意が宿ったことで、空気が一変する。

 パラパトラは背筋に冷たいものが走るのを感じた。目の前の異形の少女も異様だが、それ以上に、その少女へ向けられた侮辱へ瞬時に反応したメイドたちの方が異常だったのだ。

 

「殺す」

 

 最初に動いたのはナーベラルだった。

 低く吐き捨てるように呟くと同時に、右手をゆっくりと掲げる。その指先にはすでに魔力が収束し始めており、空気がびりびりと震えていた。

 

 パラパトラは息を呑む。

 詳細な術式など理解できなくとも、目の前の女が放とうとしているものが、自分たちを容易く消し飛ばせる類の力であることだけは本能で察せられた。

 

 だが、恐ろしいのはナーベラルだけではなかった。

 ルプスレギナは笑みを浮かべながら斧へ手を掛け、ソリュシャンは目を細めながら獲物を見るようにワーカーたちを眺めている。シズは無言のまま銃口をワーカーへ向けており、エントマに至っては仮面の奥からガチガチと不気味な音を鳴らしていた。

 

 そしてあのユリですら、理性を失っていた。

 

 普段ならまず冷静に状況を整理し、無駄な殺生を避ける彼女が、今は完全に殺意を剥き出しにしている。

 

「不敬にも程があります」

 

 静かな声だった。だがそこに込められた怒気は凄まじい。

 

 パラパトラは理解した、自分たちは地雷を踏み抜いたのだと。目の前の異形の少女は、単なる子供でも奇妙な魔物でもない、この化け物たちにとって絶対に傷つけてはならない存在だったのだ。

 

 そして、そんな空気をぶち壊すように慌てた声が響く。

 

「ま、まって!みんなステイ!」

 

 トンヌラは慌てた様子で両手をぶんぶん振り回しながら、プレアデスたちの前へ飛び出した。その必死さは、むしろコミカルですらある。

 

 だが、それだけで十分だった。

 

 プレアデスたちの動きがぴたりと止まる。

 

 ナーベラルの指先に集まっていた魔力が霧散し、シズも静かに銃口を下ろす。ルプスレギナは不満げに口を尖らせながらも武器から手を離し、ソリュシャンとエントマも獲物を前にした肉食獣のような圧は消えた。

 

 完全に殺意が消えたわけではない。

 

 侮辱された怒りも消えていない。

 

 だが、“トンヌラの命令だから従う”。

 

 それだけで彼女たちは攻撃を止めたのだ。

 

 その光景を見たパラパトラは、背筋に別種の寒気を覚える。

 先程まであれほど危険な殺気を放っていた化け物たちが、この小さな少女の一言だけで制御されている。

 

 つまり、この場で最も恐ろしい存在は、間違いなく目の前の少女なのだ。

 

「はぁ……」

 

 トンヌラは一仕事終えたように息を吐く。

 

「……んん”っ、改めてはじめまして。僕はトンヌラ。短い間だけどよろしくね」

 

 にこり、と笑う。

 その姿だけを見れば愛嬌のある少女だった。だが、周囲に並ぶ化け物じみたメイドたちと、先程の殺気を目の当たりにした後では、その笑顔すら不気味にしか見えない。

 

 パラパトラは乾いた喉を無理やり動かしながら、必死に思考を巡らせていた。

 

「えっと、まずは……」

 

 トンヌラが手を叩くとワーカーたちの後方の地面から鎧を身に付けたスケルトンが複数出現した。

 

「なっ!?」

 

「みなさんにはこのアンデットと戦ってもらいます。必死に抵抗してくれると助かります!」

 

 その言葉を聞いた瞬間、パラパトラは頭を殴られたような感覚を覚えた。

 

 実験だ。

 

 自分たちは完全に実験対象として扱われている。しかも恐ろしいのは、この少女がそれを残酷なことだとほとんど認識していない点だった。

 

 まるで「訓練に付き合ってください」くらいの軽さで言っている。

 

 背筋を冷たい汗が流れる。だが、次の瞬間にはそんな思考をする余裕すらなくなった。

 

 複数のスケルトンが、一斉に武器を構えて向かってきている。

 

「なんしゃ、コイツらは!?」

 

「お、おそらく骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)の亜種かと!」

 

「クソっ」

 

 ワーカーたちは即座に陣形を組み、迫りくるアンデッドを迎え撃った。金属同士がぶつかる甲高い音が霊廟へ響き渡り、火花が散る。

 

 本来なら勝負にすらならない。

 一般的なワーカーでは太刀打ちできないレベルと装備の差があった。

 

 しかし今回は違う、持たせている武器は魔法付与のない下級品で鎧も性能を落としてある。

 

 一方的に蹂躙してしまっては、トンヌラの魔法効果を正確に測定できない。だからこそ、あえてギリギリ戦える程度まで戦力を落としているのである。

 

「よし、そろそろだね」

 

 戦況を眺めていたトンヌラが、静かに右手を掲げる。

 

 プレアデスたちは黙ってその姿を見守っていた。

 

 ユグドラシル時代、魔法やスキルは浮かび上がるアイコンをクリックすることで発動できた。しかし、この世界にそんな便利なものは存在しない。

 

 だがトンヌラは感覚として理解した。魔法の効果範囲、次の発動まで必要な再詠唱時間(リキャストタイム)、そしてMPの量も。それらが、まるで自分の身体の一部のように自然と頭へ流れ込んでくる。

 

 不思議と迷いはなかった。

 

 トンヌラはただ、頭の中へ浮かび上がった魔法名を口にする。

 

 

 

 

Gh’ath yok r’luhhor(魂に海底の恐怖を)[ルルホルの囁き]」

 

 

 

 

 空気が変わった。

 

 それを真っ先に感じ取ったのは、すぐ近くで待機していたプレアデスたちだった。

 

 目に見えて何かが起きたわけではない。

 膨大な魔力が噴き出したわけでもなければ、派手な光や爆音が生じたわけでもない。

 

 ただ、理解不能な感覚が背筋を這い上がっていた。

 

 そして、アンデッドと交戦していたワーカーたちは、それ以上に恐ろしい体験を味わっていた。

 

 最初に聞こえたのは、脳に響く水滴の音だった。

 

「……な、なんだ?」

 

 ワーカーの一人が顔を歪める。

 

 次に耳元でナニカが囁いた。

 

 意味の分からない言葉。人の声にも聞こえるし、獣の唸り声にも聞こえる。男なのか女なのかも分からない。ただ、その音を聞いているだけで脳の奥を指で掻き回されるような不快感があった。

 

 

 さらに、全員が同時に感じていた。

 

 

 

 

 ナニカに見られている。

 

 

 

 

 

 

 そんな感覚を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 視線だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深いとこ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 巨大な。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゐ&xょョlる2ホgぱユiネ$ふェcをダ8むィ+ろサnケwぁビ5テ`のグJひ?めツvラ=ぷオ1せハyリ@どュPえ,ナじソ6ぎヌたEモしヴKゆ!かチDぼォ4ぉマuぃフ7ゲ「」ロzわキ^ヘぺLむコ9ぬアvシ%てミQ ヂぺ7ァgユ?ろP4みォ]ケてゼツwしラAぉソ9ヴ&まコxるホ$eだぷサvヘ2ぬリ「」チぱミuタ!グNqぎオkュ1ぼョセ^モァイ+ぃワ5ネcづロmをテ%バyぉフDエ;わjどめゲ8ぁク=むビZりレ@ハnぽEふラ/ヨ3ゐシ:せチぺXガiぬオ7まユ$kりホ?ぷヴァMぎろcタ4ネみヂ]ェ+しソuワゼ8Aへぱロ!ぉメvだトqフ「」ぼjケ2ラxミgヨ^テeづサPぃオ%るヨ「」フりツァ%ぉゼmホタuぱコ=ヘ5ろヴ!オyメcぬソXわテ;ミkぎラ@ぼDエ4ぁぷリNせォ^ネヴ7ぺチxモjりホ?ユ+タqみワeグ2しゼPぬバAぉフ$ガmレ8ソ=ヘuづコ!ァヨcぱロ3テりZむオ]ぎkツわDぃヂ@メぷセ9ホ:ろヴミjチeネ%ァぉラ?モXqふタyゲ1ユ+ぼリ「」しワNぱづヘuゼガ4ソkぬレ!オcまョテ^りヴAぷバxみコ2ぃホ;チ8ヌeラ@メぎフqむァ$ヨろZぺタjしワ?ネmゼグDぼPォ+ツりヘ6ソ]オうkミcぱエ!セヴァ4ぬラ%モyづホNレ=チqぉゲXふワuりロ@タメ7しコ^ぃゼAぷバjヨ:ネmぎテォ2ヴ?ぱリxむフ$ガヘcぬソ!ラPぼユ8りチ]ァわDホeづメ;オqゼkぉツmしワ+レ@モyぎタNぺヴ「」コ4ふミuネ=ぷァろZセxりホ?ガAぬjヨ%テぼqしラ!ワeチ2づヘkメcぃオ8ソ@ぱユヴ^りモmゼフDネ+ぉタxぎレPわ;グ7しホAぼォ]ぬyチ?ラuセ4ァぷコqりメ$ヴゼNツeぱソjホ!みレkづワ@ネcぉモxガ=タしヨ8ぃヘフPラ2むォ^チmぼゼ+ユDりテ?ヴAぬqセ;オjぎロyわメ4ぱホ]ネcしァ!ぷレuソXぉタkヨ@モりヂ7ヘ=グxワeゼフ?ラ8むヴPぼぃコ$チmづセAネjぱォ+りホqしメ!ユyテZぬソcガ]ろレ4ツァ^モuぎワ;ヘkオぷDラNぉゼxバNァ1ほリュ=むコwチ9ゲ@イぱモ;わZぁヘDぬォや:ほバrぎイ6れヵN ぬAょ7ヴ&み]ラqぽ3ネ/ぎォセu4ァ$めホxりヂ!ケ8ぱZろJュ2サ=ぃグwタ?へ6むオk:ぼリ5ヵ@だチエ%ぷてNわ1ミ^じソgぉバ;ユ9ぁPフ`ゼるモcゲ>しロ7やィDぺ8ト+ふレiまコ#づeナ0ホ*むヨvぱラ「」ぬジ3キ~りガsめェ?をチAゅテ6オ/ぼネXぃハ$せrク9だワ=ぺツmうヂ!ロ4ほBぎ@アcけメ:ユqゼ7リ5ぷヌ%まォKてサ&ぇjイxむ]ラ2どフPぎ?チnゲ8ぉヘ+よミEセ^ぱwづモ1ァ;しコuタ/ぬヴZろそプ~まホXにェ2づヨcぁセ8るジqヱ;みタfぅガメoぱレ3ト¥いワHくュgべサ4のヂpモ/けアBひゼ=をヴゥ7ラjほオ!りムCだチ8かィuグ:えケWぺょタ5フnソ2づリ@ぱユmぎロ?しヘ1まァkずホにセEわぉ

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

 

 振り返っても、何もいない。

 

 一人のワーカーが短い悲鳴を漏らした。その顔からは血の気が失せ、瞳は怯えで揺れている。

 戦っている相手は目の前のアンデッドのはずだった。なのに今、彼らの恐怖は完全に別の方向へ向いていた。

 

 たった一つの魔法。

 

 それだけで戦線は崩壊し、簡単にワーカーたちは惨殺された。

 

 パラパトラは殺される寸前、思う。

 

 "理解できない"

 

 それ故に、恐ろしいと。

 

 辺りには血と死体が転がり、先程まで響いていた金属音も消えている。

 静まり返った霊廟の中で、トンヌラはきょとんとした顔でその光景を見つめていた

 

「あれ、ちょっとこわくしただけなんだけど………」

 

 自分の指先を見下ろし、不思議そうに首を傾げる。

 

「しんじゃった」

 

 その声音には、残酷さも悪意もなかった。

 ただ、思っていた結果と違ったことに戸惑っているだけの子供だった。

 

 一連の流れを後方より見守っていたプレアデスたちは改めて理解した、目の前にある存在は、紛れもなく"至高の存在"なのだと。

 

 崇拝。

 

 そして、畏怖。

 

 アインズと同じ領域に立つ存在の力を目の当たりにしたことで、本能的な震えが背筋を走っていた。

 

「と、トンヌラ様。今の魔法は……?」

 

 ナーベラルが恐る恐る問いかける。

 

「ん?さっきのはねぇ、精神耐性低下と発狂耐性低下、あと恐怖付与に、それと能力値ダウンのデバフ魔法だよ」

 

「さ、左様でございますか。………一点お聞きしても?」

 

「いいよ?」

 

「魔法を発動する際に唱えられてた、あの言語は一体?」

 

 あの瞬間。

 

 トンヌラが口にした異様な言葉。

 

 意味は分からない。だが聞いているだけで、本能が不安を訴えてくるような響きだった。

 

 ナーベラルだけではない、他のプレアデスたちも気になっていた。

 

 しかし。

 

 トンヌラはきょとんとした顔で首を傾げる。

 

「なにそれ?」

 

「え?」

 

 冗談を言っているようには見えない。

 本気で分かっていない顔だった。

 

 トンヌラもプレアデスたちも固まるなか、トンヌラに伝言(メッセージ)が入る。

 

『トンヌラ君、そっちは終わったな?』

 

「あっ、はい!問題なく」

 

『よし。そろそろこっちも始める』

 

「わかりました、すぐに向かいます!」

 

 通話を切ると、トンヌラはプレアデスたちへ振り返る。

 

「僕、次の現場に向かうから、この話はまた後で!」

 

 そう言い残した直後、転移の光が淡く広がる。

 次の瞬間には、トンヌラの姿はその場から綺麗に掻き消えていた。

 

 あとに残されたプレアデスたちは、しばらく誰も口を開かなかった。

 

 そして。

 

「……やはり、至高の御方は凄まじいですね」

 

 ユリが静かに呟く。

 

 その言葉に、誰も異論を挟まなかった。

 

 

 

 






アルシェちゃんごめん!
出番は次までまっててね!


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