転生者が前世の作品の同人を個人的に楽しむようです。   作:スティック/糊

1 / 15
本作はクラスメイトの乾さんを書いている途中でなんか違うな…?となって書き直している途中の作品となっています。


通常投稿するつもりなかったのに知らぬ間に通常投稿になっていたのでチラシ裏に引っ越しました。


告白の作法って何さ

 

 自分とは別の人生で子供に戻れるなら何をしたい?

 

 

 ずっと、ずっと昔、成人した直後に友人たちとの飲み会でそんな話をしたことを思い出す。

 

 その時私は「あんなメンドクサイ資格試験を再度受験しないといけないとかイヤが過ぎる」と答えたと思う。

 

 現実ではそんなことは起きるはずもなく、過ぎ去る時間の中で立派になって行かなければ社会不適合と弾かれるそんな社会を歩いて行かなければならない。

 

 そんな現実も仕事に対する責任も負わずに済んだあの頃は随分と昔のことだ。

 

 すっかりと疎遠になった彼らの顔を思い出すのもちょっと難しい。

 

 自分も薄情な大人になってしまったものだ。

 

 

 すっかりとエリート独身貴族になってしまった日々にそんないつかの質問があったはずだ。

 

 今、それを答えられるならいくらでも言葉が出てきてしまう。

 

 

 高卒じゃなくて勉強をもっとしておきたかった。

 

 やけになって金使いを荒くしてもダメージを食らうのは自分だ。

 

 リボ払いはやべぇ。

 

 見え張ってできもしないことに金を突っ込むな。

 

 

 自身の後悔ばかりが募っていく。

 

 

 決してつまらない人生ではないが、この息苦しさから一歩外に行きたいのだ。

 

 有給とか、休職とか、転職とかそう言うのでもなくて。

 

 

 将来に対する不安なんて何も考えなかったあの頃に戻ってちょっと真面目になっていれば今よりももっと人生は楽しかったんじゃないだろうか。

 

 

 ただ、あの頃に戻りたい。

 

 

 その答えの本質はもっと自分はやれたハズじゃないかという根拠のない歪んだ自己肯定感。

 

 戻ったところで自身の社交性はろくに変わらないだろうし、過去に戻ったところで何かを変えられるなら今すぐにでも何かを変えられるハズなのだ。

 

 その何かは決して周りの人を動かす何かではない。

 

 

 人を変えようなど傲慢だ。

 

 いつか見たアニメで聞いたそれは真理だと思う。

 

 

 だから、変えようと思った時には自分を変えなくてはならないのだ。

 

 

 なんて格好つけた所でな。

 

 何も変わらぬ可もなく不可もない、そしてどうしようもない普通の生活がやってくるだけなのにもしもを考えてしまうのだ。

 

 

 

 そんなことを考えていたはずなのに本当に変わってどうする。

 

 

 しがない社会人は気が付けばショタになっていた。

 

 

 〇 〇

 

 

 気が付けばショタになっていた。

 

 と言うのは直感的にそのように称しただけで、正確には「ショタが変な電波を受信しておっさんの記憶を手に入れた」と言う方が近しいかもしれない。

 

 おっさんがもう一人の僕、みたいな展開の二重人格では断じてない。

 

 ある日、熱出して寝込んで起きたショタが変に精神成熟しているとか親はSAN値チェックを免れない。

 

 少なくとも中二病には早すぎる。それくらいのショタである。

 

 

 そんなショタがおっさんの電波を受信したタイミングは滅多に帰ってこない……ショタ君の記憶にある限りは写真も見たことのない父の訃報を聞いた時だった。

 

 母が自分をぎゅっと抱きしめて静かに泣いていたことを覚えている。

 

 

 タイミングがタイミングであったからか変に思われもしなかった。

 

 会えないなりに父に何かを感じていたのではないかと母はそう解釈したらしかった。

 

 

 それでも変な子供だったのには違いはない。

 

 親はよく気味悪がって捨てなかったものだと心の底から思っている。

 

 

「うちの子天才か????」

 

 

 とあまりにも全肯定してくるおもしれ―シングルマザーの母のお陰で今日この頃までしっかり育った。

 

 学校に旨く馴染めなければ保健室登校だろうと構わない、何か熱中して将来につなげられるならそれでいい。

 

 世間を知らぬショタではなく捻くれたおっさんの入り込んだショタからしてもまぶしいほどに真っすぐな母であったことは間違いはないはずだ。

 

 

 そんな母が高校入学を控えていた頃に病で亡くなった。

 

 

「とりあえず大学卒業するまでのお金は貯めといたからなんか、こう……頑張って」

 

 

 という雑な言葉を残して逝ってしまった。

 

 言葉は雑だが残したものはあまりにも多かった。

 

 1人暮らしには余りにもデカすぎるローン完済一軒家。

 

 相続税等を引いても十分に大学卒業を目指せるだけの貯蓄。

 

 信頼のできる保護者代理の弁護士とのコネクション。

 

 そして、一人で生きていけるだけの地力を教えこんでくれた。

 

 

 ショタの中のおっさんは高校を卒業と共に家を出て10年以上親に会ってもいないタイプのおっさんだった。

 

 家族仲がよろしくなかったらしい。

 

 

 そこに与えられたあまりにも暖かなお手本のような母であったから、その悲しみは計り知れない。

 

「別に好きに生きればいいけど高校は絶対卒業して、私よりも若い年でこっちに来ないこと」

 

 そう母の遺品として残された書き置きだけは守らなければいけない。

 

 

 まるでどこかのラノベの様な境遇だ。

 

 実際にその状況になってみれば多くの困難があることは分かっていた。

 

 心におっさんがいたから耐えられたが、10代も半分しか生きていない少年が受け止めるには中々酷な境遇だ。

 

 

 それでも多くの母の知り合いが助けてくれて、自身のわがままを聞いてくれて一人暮らしが成立している。

 

 

 色々と心配する周囲の大人たちに勧められて家から少し離れた場所で喫茶店のアルバイトをしている。

 

 

 保護者代理をしてくれている弁護士の旦那さんの持ちビルの中にある喫茶店だ。

 

 上の階には弁護士の旦那さんが住んでいる。

 

 何かあればすぐに相談ができるようにと環境が整えられているこの状況は決して不幸とは言わないだろう。

 

 世の中自分よりももっと大変な人は多くいる。

 

 むしろ恵まれている環境とも言えるのだ。

 

 

 そんな環境の中でも日々は進む。

 

 心におっさんが居ても将来何になりたいかを問われると何かと悩むし、困る。

 

 

 何かになりたくても環境次第なところが大きい。

 

 それを「努力の足りない言い訳」と称する人も居るが、環境が違えば履かなければならない靴だって変わる。

 

 どこも同じ真っ平な道ではないのだ。

 

 

 逆になんにでもなれそうな環境を用意されれば言い訳なんてものが出来ない。

 

 

 金銭的にも、学力的にも、土地的にも多くのことに不自由しない。

 

 身体的なハンデもない。

 

 しいて言うなら親なしな所ではあるが、そんなことはどうにでもできそうな法律に強い保護者代理がいる。

 

 

 前世で叶わなかった多くの物を手に入れても、未来を見据えることはできていない。

 

 

 〇 〇

 

 

「人生ノープランでプランプランしているイーブイみたいになんにでもなれる転生者居たら捕まえて夫にする以外選択肢なくない?」

 

「プランプラン言うな。フリーターちゃうねん」

 

「そうピキるなよブラザー」

 

「こんなめんどくさい性格してそうな姉も妹もいた覚えが前世に遡ってもねぇよ」

 

「そうだね。こんなハツラツとしたいい女がいたらもうちょっと性格が真っすぐになってたと思うよ。それと私のサイズはD65だぜブラジャー」

 

「んだてめぇ」

 

「嫁」

 

「もうヤダ、この自己肯定感つよつよ女」

 

「私はクソったれた前世からつよつよ現世を手に入れた女っ!欲しいものは絶対に手に入れるという強い意志があるのだよ!」

 

 

 諸伏万智、15歳。

 

 校内で図書室の姫と呼ばれる少し小柄で優しそうなたれ目が特徴の文学系美少女にダルがらみをされていた。

 

 

 

 乾彩寿歌。

 

 都立高校に通う文学少女。

 

 都会らしく垢ぬけた少女たちの中でも人目を引く容姿をしている。

 

 眼鏡に大きく一つにした三つ編みとシンプルなまとめ方をしているというのに、圧倒的な顔の良さとスタイルの良さがそれを助長させている。

 

 毎日図書室に通うことから各学年の生徒にも目を付けられる程。

 

 なんというか、高嶺の花過ぎずもしかしたら自分にもワンチャンあるんじゃないかと思わせる雰囲気があると言う。

 

 そこそこ告白したという話も聞くし、それをすべてバッサリと切っているとも聞く。

 

 所謂校内のトップカーストに属するような女子が大体彼女の近くにいるため女子に目の敵にされていない程度には立ち回りが上手いらしい。

 

 

 つまりは学校でも有名な美少女。

 

 それが乾彩寿歌という少女だ。

 

 

 高校に進学し、ゴールデンウィークを目前に控えた今日という日まで彼女と何か話をしたような覚えはない。

 

 共通の友人という奴もいない。

 

 決して孤立している訳ではないが積極的に人と関わろうとしないのが万智だ。

 

 

 ならば何故?

 

 

 なんとなしに駅前に置かれたストリートピアノで演奏を開始する万智。

 

 なんか指先あったまって来たなと調子に乗ってメドレー開始。

 

 切りの良い所で彼女が肩ポン。

 

 逃げ出す万智。

 

 彼女が万智にスマホを全力でシュート!

 

 肩にヒット!

 

 文学少女といった容姿とは裏腹の力強い健脚で密室らしいカラオケルームにドナドナ。

 

 

 以上が流れである。

 

 

 

「転生者に隙を見せるということは捕獲されるということだからね?」

 

「何、俺が知らないだけでこの世界そんなに殺伐としてんの???」

 

「ふつーの現代日本。何なら政治環境もちょっと良いまである。裏の世界とかJKが知る訳なくない?」

 

「なんだろう、スッゴイ腹立つ」

 

 

 カラオケルーム代金と飲食費は私が持つからねーと手慣れた手つきでカラオケに引きずり込まれ、目の前に用意されたコーラといかにもなフードメニューである揚げ物セットを目の前に万智は少女と相対していた。

 

 

「それで、お前は一体何が目的だ」

 

「めっちゃ警戒されてて笑う」

 

「逆の立場だったら警察に通報祭りなのは分かんだろうが」

 

「それはそう。美少女に生まれてほんとよかった」

 

「この野郎」

 

「前世は野郎だけど今世は乙女なんだわ」

 

 

 ダメだコイツ。

 

 

「あ、ちょ、何自然とスマホを出しているの?#110はやめよ?」

 

「ふつーに通報案件だろう」

 

「ちょーっと今世の家族に迷惑かけたくないからそれだけは勘弁して?私のお金と体はいくらでも好きにしていいから!」

 

「何でおれが悪者にシフトチェンジする流れになってんだ容疑者」

 

「てへぺろ?」

 

「無駄に可愛いのが腹立つ」

 

 

 話が一向に進まない。

 

 万智は目の前のコーラと少し冷め始めた唐揚げを摘まむ。

 

 一人暮らしだと揚げ物とかまず作らないのでたまに食べるとうまい。

 

 男子高校生は油に飢えている。

 

 

「ふ、それを食べたn―――待って!帰らないで!冗談だから!」

 

「裾を引っ張るな!制服が伸びる!」

 

「なら待って!このまま外に出ればコアラの様にくっ付いて痴話喧嘩のカップルかよと思わせるぞこの野郎!」

 

「ならさっさと本題に入れ」

 

「はぃ」

 

 

「こわぁ、声変わり終わった男子高校生の圧掛けた低めの声こわぁ」

 

 彩寿歌はそうつぶやきながら裾を掴んでいた手を放し、しれっと対面から横に移動して座りなおした。

 

「じゃ、じゃあ本題なんだけどね」

 

 

 少し恥じらう乙女の様にそう絞り出して彩寿歌は続ける。

 

 

「私と契約して旦那さんになってよ!」

 

「帰る」

 

「待って!ちょっとしたウィットにとんだジョーク!」

 

「一遍アメリカに行ってジョーク学んで来い」

 

「どっちかと言うと皮肉のきいたブリカスジョークの方が好き」

 

「帰る」

 

「だから待ってってばぁ!」

 

 

 彩寿歌は必死に万智の腕を掴み、どうにか必死に止めようとした。

 

 そうして話は出会いの冒頭に戻るのだった。

 

 

「先ず一つ。私はあなたと交際がしたい」

 

「お、おん……?」

 

「そう言った考えに至ったのはいくつかあるけど、一番は前世があって、どんな形であれ精神が成熟していそうなところが一つ。話をする内容としても気持ち悪いオタクトークを許容してくれそうな感じがした」

 

「俺、そのカテゴリー系の人間だと思われてる???」

 

「中身がコレだからね?普通の男子高校生相手にしても『クソガキじゃん、親の小遣いでイキってんじゃねぇよ』ってなっちゃうんだよね。前世があるなら累計はどうあがいてもおっさん。ある程度のことなら許容してくれると踏んだ」

 

「人によるとしか言いようがねぇだろ。俺もバイトはしてるけど親の遺産食いつぶして生き延びてるだけだから」

 

 

 要約すれば彼女は万智が前世を有しているからある程度許容してくれる人種なのだと見定めたらしい。

 

 

「そもそもそこらへん許容してくれないタイプはスマホぶつけた時点でブチギレて一発グーだし、そもそもカラオケルームまでおとなしくついてこないと思うの」

 

「……」

 

 

 残念なことに心当たりしかなくて万智は自分の顔を覆うしかなかった。

 

 

「さては流されやすいなあいつ。ってのが第一印象。あ、これからは私が見守るから安心してね♡」

 

「安心できる要素がないんだが」

 

「これでも私外面は良いのよ。少なくとも学校では十分なガードになるでしょう……同じ学校であってるよね?ネクタイのラインの色から同級生であってる?」

 

「そこからか!?」

 

 

 彩寿歌が万智のことを流されやすいタイプと仮定したように、万智も彩寿歌のことを向こう見ずで突っ走るタイプだと仮定した。

 

 コレ、名前言わずに逃走すればワンチャンどうにかなるのではなかろうか。

 

 万智は訝しんだ。

 

 

「逸る気持ちが抑えきれなかったぜ……あ、私乾彩寿歌。彩寿歌ちゃん、あーちゃん、ハニー、マイスウィート好きな風に呼んで」

 

「化け物女」

 

「せめてこう、手加減というか……」

 

 

 ひょっこりと立ち上がると自身の面の良さを分かっているポージングを彼女は決めた。

 

 

「あなたのお名前教えてほしいにゃん♡」

 

「キッツ」

 

「なんだテメェ!可愛いじゃろがい!」

 

「初手スマホぶん投げ女に教える名前なんてないだろ、普通に考えて」

 

「それはそう!」

 

 

 なんだこいつ。

 

 

「おっと立ち上がるのは早いぜブラザー」

 

「だんだん学習してきてるだとッ!?」

 

「なんでそこで驚愕されるの!?流石に悪ふざけが過ぎたと思ってる。というか素面で告白できるほど私は人生経験積んでないんだよ」

 

「こんなひどい照れ隠しある????」

 

 

 スッと立ち上がろうとした万智を制するように彩寿歌は正面に移動し両手を肩に置いて立ち上がれないようにした。

 

 思いのほか彼女は力強いタイプらしい。

 

 

「バキバキの前世童貞、拗らせボッチ!今世は異性に肌をろくに見せたこともない拗らせ処女!今世では女児生活に馴染めず一貫校の女子校から転校して一般公立に入る女ぞ!」

 

「……なんかごめん」

 

「謝るなら彼氏になって!欲を言えば旦那さんになって!」

 

「謙虚なのか強欲なのかどっちかにしてくれ」

 

「じゃ、強欲で」

 

「欲望に素直かよ」

 

「やん、褒めても特に何も出てこないぞ」

 

 

 褒めてる気はないんだけどなぁ……。

 

 万智は根負けし、真面目に話を聞くことにした。

 

 あと、人の口にポテトを無理やり突っ込まないでほしい。

 

 

「で、前世を共有するだけなら他に人はいっぱいいるだろ」

 

「いたとしても私はあなたを選びたい。というか選ぶ。どこぞのエロゲ主人公みたいな長い前髪してるけど普通にイケメンで、高身長で、声がいい。普通にモテる要素だけでもこれだけあるの。他の女に掻っ攫われたら立ち直れない。そもそもまともな人種と付き合える気がしないの」

 

「高評価なようで……?」

 

「自分で言うのはなんだけど見てくれとスペックは良い方だよ?結構ガチ目の料理教室の母に仕込まれているから家事万能、覆面作家をしているので自由にできるお金もいっぱいあります。どう?」

 

「どう、と言われても」

 

「正直転生女体化のおっさんとかスッゴイ色物だって言うのは分かってる。わかってるからこそ、こういう時どう進めていいのか分からない。でも君を諦めるつもりもないの」

 

「どないせいと」

 

「隣に置いておく女としてはいい女だと分からせるから交際してください」

 

「……友達からでも問題なくない?」

 

「そんな流れで前世BSS食らった」

 

「あ、ハイ」

 

「よっしゃ、言質取った!絶対別れてやらないからね!」

 

 

 そう言うと彼女は肩を掴んでいた手を放し、少し開けたスペースで喜びを表すように飛び跳ね始めた。

 

 いや、それは言質になりえないただの相槌……なんてツッコミを入れようとするにも彼女の右手にはいつの間にか握られた黒色の機械があった。

 

 

「おい、待て、何だその右手の物は」

 

「リニアPCMレコーダー」

 

「……詳しく頼む」

 

「音楽練習、コンサートに加え野鳥や電車の走行音、更に近年では動画用の音声など、高音質ステレオ録音を行える万能レコーダー」

 

「一体いつから」

 

「音を感知すると勝手にレコーディングを開始する優れもの」

 

 

 だから言質は取ったって言ったでしょ?

 

 そう言って優しくレコーダーに口づけを落とす姿は少なくとも女子高生が浮かべていい表情ではないほどに妖艶なものであった。

 

 

 〇 〇

 

 

 半分脅されるように交際を始めることになった万智は交際を初めてから数週間が経過していた。

 

 

「……さてはいい女か?」

 

「ちょっとちょろすぎる」

 

「料理が上手すぎるッ!」

 

「いやー真面目に料理覚えておいてこれほどよかったと思ったことはないね」

 

 

 毎日のお弁当と休日にやってきては甲斐甲斐しく料理を作られ、万智の胃は完全に握られていた。

 

 もっともなところを言えば天涯孤独になって人恋しさを感じていた所にグイグイ来る料理のできる面のいい女がやってくればどうなるか、という話だ。

 

 

 会話に関しても特に気取る必要もなければゆるーく大体のことは流れていく。

 

 正直に言えばめっちゃ居心地がよかった。

 

 あの問当は一体なんだったのか。

 

 

「ハイスペック彼女……」

 

「どちらかと言えば想定していた数十倍スペックの高い彼氏に捨てられないか戦々恐々している」

 

「ここまで胃袋握っておいて捨てる気か」

 

「いや、捨てないけど。同じ墓に入るけど」

 

 

 彩寿歌は少し困惑していた。

 

 自身の思惑としてはあまりにも想定通り。想定通りどころかそれ以上。

 

 過度なダメダメ人間であれば見切りをつけていただろうが、なんというかえげつないスパダリであった。

 

 デートに誘えばしっかり身だしなみを整えてきて、逆ナンされるレベルではあるが一途にこちらを見てくれる。

 

 料理を振舞えば心底おいしそうに食べてくれる。偏食の気はなく、しっかりと好みも回答してくれるので献立を組みやすいことこの上ない。

 

 身体的にだらしがないと言うこともなく、着やせするのか服の上からではわからないだけで中々筋肉質のエロい体をしている。

 

 腕はしっかりとしているし、手もデカい。

 

 鎖骨もエロい。

 

 元男だろうとツラのいい男は好きだ。声も良い。

 

 甘えればしっかりとおぎゃらせてくる。

 

 

 性格もびっくりするほど良い。

 

 つんけんしているが一度パーソナルスペースに入れた人間をダメ人間にすると言わんばかりに心地のいい環境を提供してくる。

 

 ダメ人間製造機、メンヘラホイホイ。

 

 なまじ自分自身がそれに該当しているので痛いほどよくわかる。

 

 しっかり彼を捕まえておかねば生涯独身になることは想像に難くない。

 

 

 そして技能面だ。

 

 彩寿歌的には気のいい前世トークできればうれしいな、位のものだったが日々質の高い日常を送っている。

 

 

 Blenderでモデリングが出来て、Unityでゲーム開発ができる。

 

 趣味で前世のゲームを作成しては遊ばせてくれる。

 

 シナリオゲームだろうと2Dアクションゲームだろうと作ってしまう。

 

 3Dゲームは現在練習中とのこと。

 

 

 DTM趣味もあるのか前世の曲をハイクオリティで再現し、時々オリジナルソングも作っている。

 

 絵も描ける。前世好きだった作品にだいぶ寄ってる類の人間だがめっちゃうまい。

 

 デジタルだけじゃなくて水彩画まで行ける。

 

 趣味が何かしら作ることであり、彩寿歌が作家として執筆して放置していても何も文句を言わないどころかサポートまでしてくれる。

 

 

 こんな男が人生ノープランでプランプランしているイーブイみたいな状況でいたのだ。

 

 人権キャラじゃん。

 

 SSR超えてUR、星3ガチャキャラが星5最大強化状態でそこら辺のストレージに転がっていたような状況なのだ。

 

 あまりにも強すぎる。

 

 

 あの日強引にでも彼と交際を結べたことに彩寿歌はガッツポーズを脳内で何度も繰り返している。

 

 あまりにもオタクに理解のある彼氏過ぎる。

 

 

 彩寿歌はそんな彼氏の側にいられるようにますます料理の腕は磨いた。

 

 それに比例するように万智はスパダリ力が上がった。

 

 

 結果としてあまりにも両名にとってWinWinが過ぎる関係となったのであった。




2025/10/07

作中年齢ミスっていたので修正……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。