転生者が前世の作品の同人を個人的に楽しむようです。   作:スティック/糊

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誤字報告ありがとうございます。

ここすき、ここすきありがとうございます。

評価ありがとうございます。


無意味な癖語りしてる時ってなんか楽しい

 

 

 万智の誕生日に「後365日だね♡」と言う圧をかけられたかと思えばアッと今に9月。

 

 新学期がやって来たが万智と彩寿歌の通う高校は比較的校風は緩いのだが、高校デビューをしているような生徒は見かけなかった。

 

 ……と言うか今時の高校生って夏休みデビューとかするのだろうか。

 

 なんて考えても高校では基本的にボッチしてる万智には関係のない話だ。

 

 

 転校生がやってくるなんてイベントもある訳もなく、ゆるっと2学期は始まった。

 

 10月上旬に修学旅行で沖縄、10月下旬に文化祭と結構学生らしい行事は揃っている。

 

 

 前世でも修学旅行で沖縄に行ったけど水族館とアニ〇イト行った覚えしかねぇ……。

 

 と言うか修学旅行と言えばグループ分けだがさりげなく詰んでない…???

 

 一応修学旅行用の費用はしっかり引き落としされているから行くんだけど。

 

 

 こういう時ぼっちって不便だと小さく愚痴った。

 

 

 

 〇 〇

 

 

 

「万智って別にコミュ障ではないと思うんだよね」

 

「コミュ障だぞ」

 

「真のコミュ障は接客業しない定期」

 

「社会人歴それなりにあれば最低限の会話くらいできる定期」

 

 

 家に帰れば当然の様に彩寿歌。

 

 10月の衣替えはまだ先のため、制服にエプロンと言う一部のフェチに効く姿のまま家事をしていた。

 

 万智は調理中に出る洗い物。

 

 

「それを言うなら彩寿歌も別にコミュ障では無いだろ」

 

「ふ、社会人経験あってもまともに女の子と会話できるわけ無いでしょ」

 

 

 故によしよししてくれる和花ちゃんくらいしか会話が出来ていないと言う。

 

 

「怖いからね、女子社会ほんとに怖いんだからね!コミュ障拗らせてる私とか体のいいサンドバック、陰口のポスト、団結するのにちょうどいい敵くらいのアレだからね?」

 

「こわ、女子社会コワ」

 

「ツラがいいのにコミュ鍛えてないとこうなる。覚えておいて」

 

 

 それでも今はコミュ力つよつよ和花ちゃんが助けてくれているので……と彼女は言う。

 

 ……いつか礼を言った方がいい気がして来た。

 

 それでも女子校よりはだいぶ男子の目を気にしているのか共学の方がマイルドだと言う。

 

 

「そもそも根本的に私は社会不適合者なの」

 

「胸張って言うことじゃねえと思うんだ」

 

「私の根底はそこら辺の岩の影に隠れ住むダンゴムシみたいなものだから、奇跡的に容姿に優れてるからどうにかなってるように見えてるだけだから」

 

「悲しい事実」

 

「男子とレズ相手には受けがいいんだけどね……」

 

「悲しい事実を陳列するな。それを言ったら俺もタッパがあるからどうにかなってる説あるからな?」

 

「……悲しくなるからやめよ」

 

「せやな」

 

 

 今世ではそこそこ色々な方面に恵まれているとは思うが根っこが根っこだ。

 

 三つ子の魂百までとはよく言ったものだ。

 

 転生程度で性格が改善してれば苦労はしない。

 

 

「……ちゃんと時計してくれてるんだ」

 

「貰ったからにはちゃんとつけるさ」

 

「やっぱもうちょっとグレード上げた方が」

 

「流石に高校生でこれ以上はアカンからな?????」

 

 

 並んで作業をしているせいか、彩寿歌はちらりと万智の腕に視線を向ける。

 

 2週間ほど前にあった万智の誕生日に彩寿歌が送った腕時計がそこにはあった。

 

 

 昨今の流れで行けば林檎マークのデジタルウォッチがベターなのかもしれないが、高校で多用するには電子機器として好まれないから、と選んだものだ。

 

 価格帯的には親御さんがちょっと頑張って用意した入学祝の時計、みたいな規模観。

 

 予約札、マーキング、と称して彩寿歌にその腕時計を着けられてからは風呂と寝る時以外は万智の腕に巻かれている。

 

 

「彩寿歌はすぐに隙あらばちょっとした財産になりそうなものを送り付けようとするの改めて????」

 

「大丈夫、贈与税に引っ掛からないくらいの規模観だから」

 

「それ上限ギリギリ攻めようとしてない???」

 

「そりゃ……そうよ」

 

「節度ォ!」

 

「だから今回は高校生が付けててもセーフなラインにしたじゃんG-sh〇ck!」

 

 

 ただしその中でもMTGから始まる上位グレードって枕詞が付くんだけどね????

 

 これ以上のグレードとなるとシンプルに日常生活で付けてるの怖くなるからな????

 

 二言目に「え、後数年で同じ財布になるからセーフ」ではないのだ…!

 

 

 万智はこれを送られた瞬間に「あ、来年の誕生日気合を入れないとアカン。今年のクリスマスも」となったのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 〇 〇

 

 

 

 その日彩寿歌は友人の魚塚和花とショッピングに出かけ、ちょっと休憩で喫茶店。

 

 

 和花との付き合いは高校入学してすぐ。

 

『うぉ、野生のCV.桐谷〇』

 

『そう言うあなたはCV.車の人……』

 

 それだけですぐに握手して仲良くなった。

 

 実際の所彩寿歌は万智に出会うよりも先に前世を知る人間には遭遇していたのだ。

 

 遭遇はしていたのだが、それ以上に交際を速攻求めていた理由としては『やべぇ私の上位互換いる、はよ捕まえなきゃ』である。

 

 結果としては彩寿歌の取越し苦労であり、彼女に彼氏できた報告をしたら『……ワイも実はおるねん彼ピ』と彼女も彼女で彩寿歌に彼ピの心を持って行かれるのではないかと警戒していた事実が明るみとなった事件も存在する。

 

 

 それ以上に仲良くなったきっかけと言えば『共に前世がおっさん』であることが挙げられた。

 

 おっさん同士が何、年頃の男子捕まえて取られるだのなんだのに焦ってたんだと二人で反省会をしたこともある。

 

 仕方ないのだ。元おっさんには結婚どころか交際自体ハードルがゲロ高いのだから。

 

 スケベな事には理解はある、理解があるからこそ年頃のサルよりは落ち着いた人物を選びたい。

 

 明らか狙い目のフリープランでプランプランのイーブイは捕まえるしかないのだ。

 

 責任はしっかりとって幸せにする。

 

 子だくさん、孫に囲まれ老衰して同じ墓に入る。逃がさん。

 

 

 

 魚塚和花の彼氏も前世持ちであることが明かされた。

 

 共通点があまりにも多いお陰でめちゃくちゃ素直に心の友と呼べ、楽しくお話が出来ているのだ。

 

 和花にはお世話に成りっぱなしなのだが『いや、そのCVには前世でお世話になったっていうか‥…』とまぁ、彼女もまた声豚だったのだ。

 

 ……転生する時に声豚だと女体化する法則でもあるんか?????

 

 彩寿歌は訝しんだ。

 

 

「で、どうなのさ彼ピ殿との具合は」

 

「それはもうラブラブですとも。そちらは?」

 

「年下にオギャってるダメ人間になってる」

 

「……ああ、彼氏くんまだ中学生なんだっけ」

 

「そうだよ、中学生だよ!手を出したら捕まるんだよ!」

 

 

 そう言いつつ、和花は亜麻色の髪を広げながら机に突っ伏した。

 

 

「ギャルJKがショタに迫る図……同人がかけそうだよね」

 

「描いて、買うよ」

 

「くっそ猛者だったッ」

 

 

 魚塚和花と言う少女は昨今の女子高校生らしい女子高生。

 

 派手にはしては居ないが垢ぬけており、コミュニケーション能力が高く学級委員もしている優等生だ。

 

 正直に彩寿歌は彼女の怖いもの知らずと言わんばかりのコミュ力が羨ましい。

 

 

 そんな彼女の交際相手は3歳年下の中学生。

 

 包容力がやべぇとは和花の談。

 

 男の娘と言わんばかりの女顔で可愛いのだとか。

 

 ……それを聞いたときは正直に「うわぁ……」と声を出してしまったのは仕方がないと彩寿歌は思うのだが、和花もまた彼氏の腹筋をなでなでするのにハマっていると言われた時は「うわぁ……」と声を出した。

 

 ある種似た者同士のためオタク特有のリアクションなだけで嫌悪はないため平和に長続きしているのだ。

 

 

「私だって、私だってショタ彼ピにワンピース着せてスカート捲りしたいよ!」

 

「うわぁ……」

 

「おい、彼氏にソックスガーター付けさせてそこに札ツッコミたい女、引くな」

 

「めんご。どちらかと言うと公共の場で叫んでいることに対してのドン引きね」

 

 

 なんて言ったが、立ち寄った喫茶店は個室があるタイプのちょっとお高めのいい所なのでファミレスとかよりは幾分かマシだろう。

 

 

「―――くっころ」

 

「はいはい、くっころくっころ」

 

 

 彩寿歌も大概欲望に素直だが和花はその上を行く。

 

 

「で、最近女装をさせてくれないんだけどどうすればいいと思う」

 

「ひん剝いて賢者にしてその隙に着替えさせればいいんじゃない?」

 

「それだ……と言いたい気持ちもあるけど家に連れ込むにも中学生はキツイって」

 

「どんまい」

 

 

 深刻そうな顔をしてこの女は一体何を言っているのだ、となる前に彩寿歌は慣れた。

 

 見た目は大変美少女であるのに中身は大変残念なロリショタコンであるのだ。

 

 小っちゃいものスキーである。

 

 お陰で彼女が乾家にお泊りに来た時は取り繕いと解放の暴走が本当にやばかった。

 

 彼女の癖的に紗寿叶はドストライクだったらしい。

 

 それ以外は基本的に良い子なのだが。

 

 

「いいよね、特に大きな障害もなくいちゃいちゃチュッチュできるのはさ」

 

「大概和花もやってんでしょ」

 

「上のお口はもうべっちょべっちょのズルズルですけど下のお口は未使用品だからな????」

 

「律儀と言うか、なんというか」

 

「彼ピ温厚だけどそこらへん厳しくてさぁ……何度逆レしてやろうと思ったか」

 

「事案じゃん」

 

「やってないから、まだやってないから!」

 

 

 曰く『ガキがガキ作ったら不味いでしょ』と言ってせめて避妊具を自分のバイトした金で買えるくらいの時まではお預けだそうだ。

 

 

「それに逆に考えてみてよ、これは一種のポリネシアンセッッだと」

 

「何言ってんのこいつ」

 

「大切にされていると考えればこれは一種の優しい愛の愛撫だと思える訳」

 

「自分の指で満足できずにやってんじゃあるまいな」

 

「は?入れるの怖いし、膜は年下彼氏の剛直で貫いてもらうつもりだから検診以外では未通ですけど???」

 

「……なんかごめんね?」

 

「み、操立ててるだけですけど、恥ずかしい事じゃないんですけど!」

 

「私も操は立ててるよ?貞操帯プレイだってできる」

 

「くっ、経験者め」

 

 

 なお彩寿歌は過去に一度提案したことがあるのだが、その時すんごい目で万智に見られてからは自重している。

 

 

「女装、女装かぁ……」

 

「え、彩寿歌の彼氏くんそっちに目覚めたの?」

 

「ちゃうちゃう、私と出会う前のDCだった頃にプロのメイクで女装を経験していた事実が判明しましてね?それを接種できないことがたまらなく悔しい」

 

「私は彼くんが幼稚園の時からの記録あるから」

 

「そう言う時幼馴染ってズルいよ!」

 

「こればっかりはね」

 

 

 彩寿歌は少しばかり前に知った彼氏の過去の素敵写真が存在しないことに深くショックを受けていた。

 

 ないならさせればいいじゃない、って言うのはまた違う。

 

 必死に頼み込めば着てはくれるだろう。だがそうじゃないのだ。

 

 正直彩寿歌的に細マッチョの美形がする女装はこう、腐敗の香りがしてくるので手が出せないのだ。

 

 たのしい、絶対楽しいんだけど、それの影響でそっちの道に走り出したらと思うと…!

 

 ただでさえ精神的な方面でのハードルは彩寿歌の影響で一歩下がっている説すら存在するのだ。

 

 万智をそちらの道に踏み外させる気はない。

 

 万智が聞けば何言ってんだこいつと言われること間違いなしの極めて的外れの心配を彩寿歌はしていた。

 

 どうしてオタクと言う生き物は当たることのほとんどない心配をしがちなのか。

 

 

「まぁ、お義母様が写真残してくれる人だったから定期的に接種できてるんだけどね?」

 

「ならいいじゃん」

 

「馬鹿野郎!ライブ会場とライブビューイングは別物だろうが!」

 

「それはそう」

 

 

 幼い頃の万智に出会ってその頃から性癖を壊しておきたかった。

 

 

「あ、ライブで思い出した。チケット取れた」

 

「さす彩寿歌」

 

 

 そう言いながら彩寿歌は二枚のチケットを懐から取り出した。

 

 とあるアイドル系ソシャゲのリアルライブのチケットである。

 

 ドームライブでキャパがあるお陰か席は奇跡的に取れたのだ。

 

 ファーストライブから落ち続けて早4th。

 

 彩寿歌は前世のアイマス関係のライブで落ち続けたことをちょっと思い出して泣きそうになったが、今回は奇跡的にご用意されたのだ。

 

 

「って、前列!超前列じゃん!」

 

「今世何かとラッキーガールだから」

 

「その割には落ちまくってたじゃん」

 

「それは和花もおなじやろがい」

 

 

 チケットに視線を移せばそれはモノの見事に前列。

 

 ステージの少し端の方ではあるが前から3列目の優良席である。

 

 

「とりあえず電子マネーで送っとく」

 

「うい」

 

 

 彩寿歌がスッとチケットを差し出せば和花はスマホの画面に軽快に指を走らせる。

 

 一般的に広く流通している送金簡単でお馴染みの電子マネーである。

 

 

「多くない…?」

 

「手間賃」

 

「ういうい」

 

 

 和花から送られてきたのはチケット代には少し多い切りのいい金額であった。

 

 

「いつも彩寿歌だって何かあれば少し多めの手間賃として払ってくれてるじゃん」

 

「お金はあるから」

 

「私も同性と遊ぶことに限って言えばお父さんが無制限でお金くれるから」

 

「……和花ん家癖強いよねぇ…」

 

「まぁ、片親なりに気にしてるみたいなんだよねぇ。お陰で私もちょっと贅沢に生きる分には苦はないんだよ」

 

 

 和花の家は少しばかり特殊だ。

 

 その特殊の行きつく先が一人暮らしと多めの生活費なのだとか。

 

 他人の家にどうこう首を突っ込むのは無粋なので彩寿歌はほんのり流す程度にしている。

 

 

「ま、ライブがあるから活力湧いて来たわ」

 

「夏コミ終わり溶けてたもんねぇ…」

 

「創作はHPとMPを同時に消費する行為だからね」

 

 

 魚塚和花は同人作家だ。

 

 主におねショタ本を生産しまくるモンスターである。

 

 昨年もそうだがコミケの前後は干物になっている様子を見かける。

 

 

「くっ、絵が描けるって羨ましい!」

 

「私には話の展開を無限に広げられる彩寿歌がうらやましいんだけどね」

 

「いや、あんたはおねショタに限って言えば無限にキャパあるでしょ」

 

「まぁ、癖ですから」

 

 

 和花はおねショタ、ショタおね、おにロリ、ロリおに何でもイケる質である。

 

 シンプルに年齢差が癖の人間なのだ。

 

 

「コミケ……行ってみたい気持ちはあるんだけどあの暑さに耐えられる気がしない」

 

「弊サークルはいつでも売り子を募集しているよ」

 

「え、シンプルに濃くてキモイオタクいっぱいだろうからヤ」

 

「……彩寿歌って時々同族に厳しいよね」

 

 

 彩寿歌は前世の自分を棚に上げ、端的に拒否した。

 

 いや、前世ではそれなりに身だしなみは気を使っていたし、毎日風呂に入っていたからあのジャンルとは違うカテゴリーだと強く主張したい。

 

 

「ほら、今の彩寿歌ちゃん美少女だから。飢えた免疫のない男の前に出たら大変なことになるから」

 

「すんごい自信で草……まぁ、オタク受けは抜群の容姿だよね」

 

「セクシー彩寿歌ですまない」

 

「……その乳捥いでやろうか」

 

「ドンタッチミー」

 

「おのれ巨乳め!」

 

 

 何のことかは分からないが彩寿歌はFだし、和花はBである。何のことかはわからないが。

 

 青筋を浮かべた和花の気を誤魔化そうと彩寿歌は強引に話題を転換することにした。

 

 

「そう言えばこの前コスしたんだよ」

 

「ドスケベナース?」

 

「それは別件」

 

「したのかよ」

 

「夜の回診プレイはテンション上がった……じゃなくて青王のコス。これこれ」

 

「………ファ!?」

 

「声がデカい声が」

 

 

 彩寿歌は自身のスマホを操作すると一枚の写真を出した。

 

 あれからどうこう頑張って撮影した運命の構図の写真である。

 

 あまりにも声がデカいのでパーが出そうになるが、直ぐに目を白黒と点滅させた。

 

 

 

「え、え、え?????爆誕????この世界にTypeMoonあるとか何それ知らないんだけど?????」

 

「創作じゃ創作。彼ピが作ってくれた」

 

「クオリティたっか、もはや前世の記憶とかだいぶ薄味なのに一気によみがえって来た。完全にセイバーじゃんアゼルバイジャン」

 

「ねー。彼ピ記憶能力ヤバいんだよねー」

 

「とんでもねぇ……いや、本当に青王と士郎の運命の構図のそれじゃん……」

 

「流石にガチ蔵で取れそうなところなかったからグリーンバックで撮って背景はCG」

 

「彩寿歌の彼氏万能とは聞いていたけどここまでか」

 

「せやろがい」

 

 

 彩寿歌はなんやかんやで彼氏は秘匿しまくる質なのだが、度々遠回しに自慢している。

 

 その倍は和花から惚気が返ってくるのはお約束なのだが。

 

 数少ない……と言うか唯一心置きなく自慢できる相手なのでここぞとばかりに彩寿歌はドヤ顔をした。

 

 

「これ、ほんとに背景CG?実写にしか見えないんだけど」

 

「私もよく知らんがBlenderで原型作ってillustratorでぺたぺたしたって言ってた」

 

「ひぇ…」

 

 

 うむ、彼氏が褒められるのは大変に気分がいい。

 

 彩寿歌はドヤ顔をかまして満足するとその画像をしまい込む。

 

 

「と言うかコスプレ趣味あったんだ……ってジュジュ様が姉だもんね」

 

「人の姉に様付しないでもろて」

 

「ジュジュ様はジュジュ様だから」

 

「あ、はい」

 

 

 和花は不意に見せられた彩寿歌のコスプレ写真に驚きを覚えるが、そう言えばこいつの姉はフォロワー20万人越えの超人気美少女コスプレイヤーであったことを思い出す。

 

 当然の様に和花もジュジュ様のフォロワーの一人だ。

 

 決して敬称は外さない。推しになれなれしく話すとか無理なタイプの人間である。

 

 

「姉は一ミリも関係ないよ?」

 

「え、そうなの」

 

「私がカプに関わるものを原作しらない状態で摂取させる訳無いじゃん」

 

「そうだったこの子めんどくさいカプ厨だった…」

 

 

 彩寿歌は一つの信じているものがある。

 

[オタクは最初に摂取したカプを正カプだと認識してしまうものである]

 

 そう信じているのだ。

 

 故にカップリングの一つとして士剣カプをいきなり摂取させることはない。

 

 しっかり学んでから出ないと、と言うめんどくさいオタクなのだ。

 

 少なくとも姉にそれを見せる時が来るとすれば履修後である。

 

 

「コスプレしようとした起因は彼ピの性癖調査とか姉に言える妹がいるとでも???」

 

「そりゃいないね」

 

 

 明け透けにそんなことを言えば和花は珈琲を一口飲みこんで、私もするかなぁ……なんて零すのであった。

 

 

「って、そうじゃないよ!Fate!なんで運命の夜が爆誕してるの!?」

 

「爆誕はしてないよ?」

 

「いやあるじゃん!ここまで忠実に作るとか絶対資料あるじゃん!」

 

「私と彼ピの脳内にあるだけで現実には生成してないから」

 

「……え、無いの?彩寿歌のことだから布教用に同人ノベルの一冊でも作ってるんじゃないの?」

 

 

 和花は改めて前世の作品がシレっと今世で再現されていることにツッコミを入れた。

 

 彩寿歌は誤魔化されなかったかと少し視線を外したまま会話を続ける。

 

 

「今世で月型ないの?え、前世刺激するだけ刺激して存在してないの????作ってよ、役目でしょ」

 

「ほら、Grand Orderな登場人物の歴史ファンタジーは世に出してるじゃん」

 

「あくまでそれはサイドストーリーみたいなもんでしょ!?今の状態って最高のおでんの具材が用意されてるだけでそれを煮込むおでんの出汁入った鍋が無いみたいな状況!」

 

「……それ始めると10年は飛ぶじゃん?」

 

「それはそう!」

 

 

 彩寿歌は誤魔化すようにアイスコーヒーのグラスに刺さったストローで氷をクルクルと回しながら弁解を続ける。

 

 たしかに彼女の言わんことは分かるわかるが、自身との生活とかそこら辺のバランスを考えると無理して書こうと思うものでは無いのだ。

 

 

「もちろん地道に続けていくつもりではあるよ?でも世に出す順番ミスったていうかさぁ……」

 

「まぁ、本家のゲームヒットからのメディアミックスと言う展開とは違うよねぇ」

 

「それにおでん鍋用意しても火が付かなきゃ実際問題続けていくのはゲロむずい訳ですよ」

 

「……ヤなところで現実的だぁ」

 

「生活ってものがるからねぇ……だから今後も同人規模程度だったら続けていくけどガチの本家に近づけようとしたら会社規模にしてかないといけないし、そもそもそこまではやるか問題もあるし、私に運営とか無理ぽ問題が出てくるんだよ」

 

 

 ストローで音を立てながら珈琲をすすると氷だけになって少し残念な音が響く。

 

 それはそれとしてある程度書ききったらFateな本編の執筆を行いたいとは思っている。

 

 それが受け入れられるか、とかそもそも題材がニッチ過ぎるとか色々な問題はある。

 

 そもそもが転生者を吊り上げるために用意したものであるため、釣りあげた現在はそこまで熱を入れていないのが現状だ。

 

 

「と言うか現在一次創作が結構売れてて、そっち手を付けるとか無理ぽ」

 

「くっ、人気作家様め!」

 

「人気作家ですまない」

 

「そっかぁ……でも可能性が出てきたのはうれしい。これからも生きていけるわー」

 

「可能性だけだけどね。って、和花も作る人なんだから自分で前世の好きな作品再現なりすればいいじゃん」

 

「採算」

 

「あ、はい」

 

 

 趣味的に定期的に小ロット自費出版してる彩寿歌が頭おかしいだけで、現物として前世の再現品を用意しようとすると実際問題めっちゃカネがかかる。

 

 形だけそろえようとしてもオタクの凝り性がそれをどうしても邪魔をするのだ。

 

 

 転生者が前世の作品の再現をすると言うのは金の掛かる趣味とも言える。

 

 

「私の脳内には幾重もの前世の作品が存在すると言うのにこの世界に出力できないのが憎いッ!」

 

「創作オタクの全般がみんな思ってるよそれは」

 

「私にできるのは細々とおねショタ本を作ることだけッ!」

 

「……おねショタ本から離れれば?」

 

「死ねと申すか!?」

 

「あ、うん。ごめん」

 

 

 オタクに癖から距離を取らせようとするのは重罪だったな、と彩寿歌は素直に謝ることにした。

 

 

「くっそ、エロゲ……前世でお世話になったエロゲがしたい……声だけならいくらでも提供できるのに……」

 

「ASMRネットで出せば?」

 

「解釈違い起こすからイヤ」

 

 

 ……めんどくせぇ。

 

 だが、だいぶ空になったグラスに映る自分を見るとそう口に出すことはできなかった。

 

 オタクとは、そしてクリエイターとはきわめてめんどくさい生き物なのだから。

 

 

 

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