転生者が前世の作品の同人を個人的に楽しむようです。 作:スティック/糊
着せ恋の作中劇に登場する作品『スペースアイドルコスモラバーズ』に対する勝手な解釈が存在します。
9月下旬。
万智は東京ドームにやってきていた。
万智の中身は地方出身であるため、前世と今世合わせても初めての東京ドームだ。
これがよく広さに例えられる東京ドーム一個分……。
そんなアホなことを考えてしまうが、万智の今日の目的はライブだ。
万智が楽曲提供しているソシャゲ『スペースアイドルコスモラバーズ』と言う育成シミュレーションゲームのリアルライブだ。
参加した時点で既に作品は3周年を迎えていたご長寿作品で運営会社のデカさを象徴するかの様にこうしたリアルライブも盛んな模様。
今回万智の楽曲がセットリスト入りしたと言うことで運営会社からライブチケットが送られてきていた。
昨今は電子チケット制なのは便利であるモノの、手続きが地味にめんどくさいと言う欠点も。
それに紙のチケットってなんか特別感を感じるのでその文化が廃れるのは少し寂しい。
だが転売ぶっころのためなので致し方ない。ライブが楽しめるのが一番なのだ。
本日の参加に当たり、『お連れ様がいらっしゃるようでしたら一名まで同伴可能ですよ』とのお声があったのだが、『あ、9月の第3土曜ライブに行ってくるねー』と先に報告されていたので誘う前に振られてしまった。
つまり万智はボッチ参加である。
こういう時フラスタを送ってみたいと言うのもオタクの嗜み。
前世でそう言うファンの活動見てうらやましかったんだよなぁ……と前世出来なかったことを一つ叶えてみることにした。
万智は運営に問い合わせてフラワースタンドを送ることを決めた。
全体楽曲やイベントストリー楽曲など色々を経験させてもらっていたのだが、やはり思い入れがあるのは九星波の3rdシングル『志そのまま往くままに』。
この楽曲で万智自身のクリエイターとしての知名度が上がったようにも思える。
なのでちょっと頑張った。
会場外に設置してあるフラスタが飾られてるエリアに向かうと結構目立つ位置に万智が送らせてもらったフラスタがあった。
……ちょっと絵がデカすぎたか?
度々フラスタに突き刺さっているイラストのパネルを含めてレギュレーションの8割サイズに収めていた筈なのだが……デケェ。
スラスタは撮影可能エリアだったのでパシャリと一枚写真を撮らせてもらい邪魔にならないように色々なフラスタを眺め、度々写真を撮ってはエリアを出た。
フラスタ、ライブの醍醐味だな!
万智は謎の達成感を感じながら会場までの時間を確認しつつ、周辺の散策を続けることにした。
実の所関係者としてライブのリハも見ていきませんかーなんて話もあったが万智はライブに関して無知に近いのでお任せと言う形で実際のライブを見るだけに留める気でいた。
それでも注文させて頂いた差し入れに対するお礼の連絡等が来ていたので無事に届いたようで何よりだと安心していた。
徐々にライブ開始時間が迫ってくると多くの人でにぎわっているのが見て取れた。
入場開始一時間前だと言うのに入場待機列はかなりの長蛇の列。
関係者席の列もだいぶこんでいるようだ。
……これだけデカいライブだと色々な人が関わってるんだろうなぁ。
道行く服装も様々で、自分の関わったトンチキソングのデフォルメキャラクターのシャツを着ている人も居れば、九星波のソロ曲のSSR衣装のイラストのシャツを着ている人も見かける。
人気コンテンツなんだなぁ、コスラバ。
今からでも物販って行けるのだろうか……?
こういう時は事前通販を活用しろと言う話であって、などと小さくブツクサ心の中で呟く。
面倒だと避けたものがまた再び自分の所にやってくるときには以前よりも大きな面倒ごとになっているとはよく言ったものだ。
どこかでケミカルライトを買うか……?
だが単純に移動がめんどくさい。
物販の流れに乗って行こう。
今世で初めての行列かもしれないと思いながら最後尾の札を持ったスタッフの元へ向かっていった。
長い長い物販を抜け、開場時間を少し過ぎたあたりで万智はどうにかお目当てのものを購入することができた。
キャラ別仕様のペンラはギリギリの在庫の所入手に成功し、九星波のペンラを確保できた。
せっかくここまで並んだのだからと当初の目的とは別のものも買ってしまう。
目的のもの以外にも買ってしまうから散財オタクと言われるのだ。
こういう時の言い訳は大体『ライブに来ることなんてめったにないし!』である。
もしくは『日頃頑張った自分へのご褒美』『運営に金を落とすことはコンテンツ存続に大事な事』
ランダム商法はやっぱ嫌いだ。
たしかに人気のないキャラでもグッズとして生産するのであればこれが一番安定的に供給できるものだとはわかっている。
それでも1/8程度の確率を外すとちょっと残念な気持ちになる。ちくせう。
ランダム商法のランダム率もうちょい減らしてくれないかな……食玩でももうちょっと優しいぞ。
九星波のピンバッチ目的で買ったが見事に外れて初瀬川昴が出てきた。缶バッジも初瀬川昴……。
この子自分の提供楽曲に見事に被ってないんだよなぁ……。
正直思い入れがない。
でもライブの記念だ、後で他のグッズと一緒に棚に飾ろう。
そう思い、バックを開いてた所でとあるモノが目に入った。
万智が現在荷物を整理しているのは物販会場から少し離れたスペースで、多くのオタクたちが荷物の整理をしていた。
そこでは当然の様に万智と同じようにランダムグッズに泣くオタクたちの姿が目に入る。
ちょうどお隣さん……と言うにはちょっと距離があり、3m程離れた所で荷物を整理していたと思われる人が万智の目的物を手にして肩を落としていた。
……自分が言えた義理ではないけれど、人には人の推しがいるが自分の好きなものや押しを見て肩を落とす光景を見ることがあるからランダム商法は嫌いだ。
「すみません、よろしければ――」
なので万智はバックに入れかけていたそれを相手が求めているかは分からないが問いかけてみることにしたのだ。
〇 〇
『ランダム商法はクソ』
その意見で万智は近くに居た小柄な男性と盛り上がり、無事に交換に成功した。
一期一会、こんなこともある。
『今日の総選挙結果発表推しの上位入賞を祈りましょう』
そう言って別れた。
バックに九星波のモチーフピンバッチを付け、缶バッジは鞄の中に。
こう、さりげない程度のキャラの主張をしたいと言うオタクもニッコリ。
モチーフピンバッチほんとすこ。
別に九星波推しを恥じている訳ではない。
これは缶バッジ傷つけたくないな、と言うめんどくさいオタク心の表れである。
そう思いながらだんだんと列が短くなってきた関係者の入場口へ向かって行く。
その際にこの会場限定の缶バッチで痛バを構築している猛者を見つけ、2,3度見してしまった。
……これが推しの力か。
今日のライブは5周年記念のキャラ人気投票の結果発表も兼ねているのでその力の入れようが見て取れた。
推すものを手に入れたオタクは強い()
関係者入り口で運営から送られてきた電子チケットを掲示するとこちらへ、なんて言われながらドナドナ。
……別に違法性のある物を使った覚えはないんですけど、何事?????
なんて思いながら素直について行くと控室と思われる部屋に通された。
「淡竹Pさん!お忙しい所ご来場頂きありがとうございます」
「こちらこそお呼びいただきありがとうございます」
その中でも打ち合わせでも聞いた覚えのある人―――動画投稿サイトのチャンネルDMで熱く勧誘してきた音楽総括の人であった。
―――いや、こういう場に連れてこられても何話せばいいかとかわかんなくない?????
万智はカチカチに固まりながらどうにかこの場を乗り越えようと愛想笑いを浮かべながら、話しを聞く。
楽曲も人気でキャラクターの総選挙とは別に楽曲総選挙もあってそれの上位5曲リミックスでアルバムを作る企画が…?え、私がリミックスですか。
来年の春ごろのイベントで、また私に書かせて頂けると……。
有難いです、本当に。
それまでコンテンツが飲み込まれないかってアハハ……。
フラスタですか。はい送らせて頂きました。
規格サイズに対して気合を入れ過ぎましたすみません。
Twitterでもすごい反響でこの絵師を探している……?
良ければ紹介を……?
描いたのは私ですけd―――すごい声。
あ、いえ、絵で何か飯を食べていこうと言う気はないんですが――――え、この時点で総括Pが使いたいとテンション上がってる?
え、あ、ちょっとドナドナしないで、ちょっと待ってください!
……運営に通され、なんか仕事貰った。
そのままガチの運営側からライブを見ていくことも可能ですよ、なんて言われたが素直に会場で見たいとお断りさせて頂いた。
……仕事貰えるのはうれしいんですけど胃が持たない。
このまま運営ブースにいると胃が荒れそうな気がしたのでそそくさと退散するように席を外し、会場に向かって行った。
よろしければ持って行ってください????
あ、色紙にサインと引き換えですか。4th開催おめでとうございますとかで良いですか?
絵も……あ、はい。書きます。うわ、しっかりとコピックペンまで揃ってる…。
SNSに色紙を投稿していいか?どうぞどうぞ。
結局万智はサイン色紙をかき上げることと引き換えにライブグッズ一式を手に入れた。
……いや物販並んだ意味!!!!!
万智はライブに向かうまでにだいぶ疲労した気がした。
結局楽曲始まればそこまでの疲労はどっか飛ぶよね。
万智はめっちゃペンライト振ってた。
音響が残念だと女性声優の声がめっちゃハイトーンに聞こえたりするものだが、流石歴戦の有名企業のライブ……強い。
運営から貰ったペンライト一式、全種揃ってた。本当に貰ってええんかとなりながらめっちゃ楽しんだ。
ライブ終わりにも再び運営にドナドナされて行き、ライブに出演していた演者と挨拶することになったり、なんかあっという間に話しが広がったようで、九星波の声優さんにひたすら礼を言われ、彼女が持参したらしいCDにひたすらサインして、ペンライトにサイン貰った。
……なんだこの時間。
その後に生演奏していた方々と話す機会が生まれ、書いた楽曲に関しての色々な話をしたり、プロのアドリブの解釈についてもお話を頂いた。
その後の打ち上げにもぜひ、なんて話も合ったのだが未成年、未成年なので……と断り帰路に着く。
……話の言い分的に成人した後この業界で生き残ってたら半場強制の様に連れて行かれそうな構図が見えた。
どうにか無事帰路に着いた万智はライブのマナーとして電源を切っていたスマホの電源を入れる。
すると通知が一件来てた。
万智は自分から情報発信するようなSNSは2828動画程度なので、青い鳥とかの通知ではないことは確か。
となれば連絡が来る相手何て一人だけ。
『貴様の家にて待つ』
彩寿歌のポツンとそんなコメントが残されていた。
……素直に帰ろう。
うん。
その言葉に妙に圧を感じた万智は真っすぐ家に向かった。
〇 〇
帰宅後、リビングで極めて正しい姿勢で椅子に座っていた彩寿歌の元に行くと、スッとタブレットを差し出された。
「これは?」
「俺が出したフラスタ……ですね」
テーブルに出されたタブレットにはまごうことなき本日ライブ会場に展示されていた万智が出したフラワースタンドが映し出されていた。
「ねぇ、何で言ってくれなかったの?」
「すまn―――」
「どうして九星波ちゃんが癖ってもっと早く言ってくれなかったの!!!!」
「??????」
おっと?
万智は自身が考えていた追及とは全く違う方向からの言葉に思わず首をかしげる。
そんな万智の姿はお構いなしと言わんばかりに彩寿歌は続ける。
「万智に推しが居るなら私もしっかり調べた!ちゃんと推したかった!そしてキャラに寄せたりキャラクター像の分析して雰囲気寄せることだってしたよ!どうして教えてくれなかったの!」
??????
「うん、九星波ちゃん可愛いよ。ふんわりヘアにどことない負けヒロインを連想させるグリーンに籠欲を引き立てるグリーンカラー!古き良きインテーク感のある髪型に少し幅広めのカチューシャ付けてあげたい!一昨年の夏イベの水着SSR御清楚キュートでエッチだった!……もしかしてアイマスだと四条貴音推しだった?そっちだったら寄せるの容易だよ」
「貴音推しではない。一つ……いや、いくつか訂正をさせてくれ」
「え、うん。次フラスタ出すときは私もちゃんとお金出すからね」
「違うそうじゃない」
……どうやら彩寿歌がキレているのは万智が推しを隠していたことに対することらしい。
「一つ。俺が好きなのは二次元キャラではなくお前だ」
「ひゃえぁ」
一番重要なことを先に潰しておく。
そう思って万智はストレートにそう告げた。
「二つ。九星波に関しては特段推しと言う訳ではない」
「ちょっと待って、いきなりドストレートに愛を告げられて頭が追い付かない」
「なんでお前自分で攻める割に攻められるとクソ雑魚になるんだよ」
「防御がクソ雑魚なの!」
「……まぁ、防御力雑魚か」
「何を思い出したの!何を!」
「数日前の死んだカエル」
「~~~~ッ!それは万智が絶倫マジカル〇ンポが悪い!私は早漏じゃないもん!」
「んなもん搭載してねぇよ。そしてなんも言ってねぇだろうが」
「誰がイワシクジラじゃい!」
「なんも言ってねぇよ」
先ほどの取り乱しから別の方向への取り乱しに移行したので万智は一息ついて、うにゃうにゃ言っている彩寿歌を尻目に手に持っていた袋から本日の成果物を並べていく。
と言ってもペンライト各種に未開封のモチーフピンバッチ一箱程度。
「……まさかの箱推し!?」
「違うって。こちらをご覧下さい」
そう言って最後に自分で物販に並んだサイリウムを取り出した。
「え、サイン????ってそのカラーやっぱり九星波じゃん!推しじゃん!」
「話は最後まで聞け」
「アダッ」
万智は彩寿歌のデコに一発てデコピンを入れた。
最後に出したのはCD各種にサインしまくったら書いてもらえた九星波の声優さんのサイン入りのペンライトである。
……まぁ、九星波の声優さん以外にも楽曲で関わった声優さん数名のサインもそこに並んでるペンライトにあるんだけどね?見えない角度で置いてあるだけで。
「んで、最後にこれ」
そう言って万智は自身のスマホを少し操作してコスラバの運営公式SNSで目的の投稿を表示した。
「えっと『淡竹Pに応援のメッセージを頂きました』?」
「はい、このイラストは」
「さっきのフラスタと同じCLAMP風味のナナリー感を少し感じる九星波のイラ……すt―――――――いやちょっと待てぇ!」
「はい、待とう」
「待って待って待って!」
「待ってるって」
万智はコスラバ運営公式SNSに投稿させて頂きますねーと送られたページを見る。
なんかバズリ散らかしてやがる。
コメントは細かく見るとなんかめんどくさい事に気が付きそうなので見ないことにした。
「えっと……?つまり……?」
「ちょっとコスラバの関係でお仕事したのでそのギリフラスタを送らせてもらった……みたいな感じだ」
「あqwせdrftgyふじこlp」
「あ、壊れた」
万智は並べたペンライトの内のいくつかをくるりと回し、ながらそう告げると彩寿歌は言語にならない声を上げて机に突っ伏した。
……その発音ゆるキャン△のしまリン位しか思いつかないぞ……?
「あの、あの、淡竹Pってなんですか」
「作家で言う所のペンネームみたいなもん。ほら、彩寿歌は菌糸類だから俺はタケノコ系にしてみるかな、と」
「聞いてない!!!!!」
「言ってないから」
「CD出てるの!?」
「……一応?」
「初回生産ロット買いたかった!!!!!!」
ここまで彩寿歌は机に突っ伏しながらそう吠えた。
なんだよぉ、私のPNに寄せてくるとか可愛いが過ぎる子ちゃんかよぉ……。
シレっと彼氏が明かした芸名?の由来に彩寿歌は恥ずかしくなって顔が挙げられなかった。
色んな意味で聞いてないぞ彼氏ィ……。
「耳が赤くなるほど怒らんでも」
「違うし!シレっと可愛い事言う万智の顔見れないだけだし!」
「かわ?????」
万智は頭にやっぱりはてなを浮かべながら初回限定生産盤は一応サンプル貰ってるから、と言ったが『ちゃうねん、運営に金落とさないといけないだろーがYO』と謎の口調になりながら拗ねかけながら続けた。
「言っとくけど課金するにしても周年イベントで御特用の石購入くらいしかしないリーズナブルな遊び方してるからね!安心してね!」
「ビックリするほど健全……」
「私リズムゲー下手くそだから!」
「理由が思ったより切実だった……」
リズムゲームが下手くそすぎてイベントを走れないのが主な要因、と言えるだろう。
ゲームの規約的にも未成年は月の課金額が制限されるし、そこを誤魔化して課金するのは健全なゲーム運営をしようとする公式に迷惑がかかる。
それに執筆と彼氏とのイチャイチャでそんな時間はないのだ。
ゲームは心の♂が起動したときに持ち石と相談して。
コスラバは周年記念のスカウトチケットでSSRが獲得ができるええゲーム。
メインストーリーとイベントストーリーを読む程度の彩寿歌にとってライトな楽しみ方である。
もっともな所で言えば彩寿歌にとってゲームに課金するよりも万智や将来のために遊ぶことや貯金することが楽しくなってしまったからである。
いわば結婚実装までがガチャ禁、でもマンスリーパスは買う……そんな状態だ。
変な身の持ち崩し方をしそうにないと安心した万智がその積もり積もった火力に頭を抱えるのはまた別のお話である。
主人公が缶バッチとモチーフピンバッチを交換してくれたのは一体何野あまね君なんだ…