転生者が前世の作品の同人を個人的に楽しむようです。   作:スティック/糊

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おひさしブリーフ

そろそろ誰も見ておらんやろと思いながらも投稿

DOUBLE SCRATCHに関する捏造と独自解釈要素が含まれます。


文化が出来ている所に参入するのって難しい

 やかましいオタクの会議(?)から時は流れ12月上旬。

 

 最速採寸をし、しっかりとしたところで作られた執事服の試着だの、ちょっとモデルにならないかだのの話があったりしつつも時は着々と過ぎていた。

 

 黒執事合わせまで後1週間と言った所で万智は何時ぞやの敗北の地、池袋へ来ていた。

 

 

「諸伏君ごめんね、うちのが無茶言ったみたいで」

 

「気にしないでくれ」

 

 

 この場には万智と和花がいた。

 

 二人の手首には撮影とコスプレイヤーの両方を示すリストバンドが巻かれている。

 

 

「……で、コスプレまでする必要あった?」

 

「諸伏君知らない人に声かけられる?」

 

「無理ぽ」

 

「でしょ?」

 

 

 そして二人はコスプレをしていた。

 

 流石にこの時ばかりは何時ぞや彩寿歌が口にしていた『この世界の住民が一ミリも知らない作品をさも有名作品の様に装ってコスプレして怖がらせたい』とは別で、この世界産の少年漫画作品のコスプレである。

 

『DOUBLE CLUTCH』

 

 アニメは見たかな程度ではあるが表紙が何ともBLEACHを連想させる色合いのバスケット漫画だ。

 

 万智はその作中に出てくる主人公たちのライバル高校の不動高校に出てくる優男(やさお)の帳と言う男のコスプレを。

 

 和花はその帳のマネージャー役の函慈と言うキャラのコスプレをしていた。

 

 ビジュで言えば何が近しいだろうか。

 

 

「彩寿歌のオーダーである肌見せ無しで良し!」

 

「うちの彼女の許可基準が分らん」

 

 

 和花にグッとサムズアップをされながら万智は12月の寒さを感じながらジャージをちょいと伸ばした。

 

 一応、一応だからとジャージの上下の内側にはしっかりとユニフォームも着こんでいるのだが、この寒さではまず脱ぎたくはない。

 

 

「とりあえず筋肉晒すなって言われた」

 

「あそこまでフェチ拗らせてるのアイツだけだろ」

 

「チッチッチ、いい感じの筋肉はなんとなくボディタッチで触りたくなってしまうものさ」

 

「んなばかな」

 

「あ、ちなみにこれは函慈ちゃんの原作セリフ」

 

「どんなセリフやねん」

 

 

 なんてセリフを吐きながら万智は今日ここに来た経緯を思い返してみた。

 

 初めは和花が「黒執事の合わせ前にちょっと練習がてら撮影しに行こ!」と言い出したが、天が「くっ、その日は対局がッ!」となりボディーガード兼お目付け役として懇願される形で万智が派遣された形だ。

 

 天のオタク特有の心配し過ぎを拗らせて「変な奴に絡まれたらドドドドドどうしよう」と言う心配は分からないでもないが、そこまで治安は終わっていないはずだ。

 

 それでも一定数変人が湧いてしまうのも事実と言うやつだ。

 

 黒執事コス終わりの打ち上げは天のおごりで焼肉と言う報酬の元、万智はボディーガードと言うか付添人をしにやって来た。

 

 彩寿歌は家族と年末の家族旅行に向けての買い物である。

 

 少なくとも相手が和花でなければ可愛く「断って♡」と言っていただろうが、気心の知れた親友でありぞっこんの相手がいることも相まって後日写真提供を要求することで彩寿歌もそれを飲んでいた。

 

 

「でもそのおっきい手はエッチだと思うよ」

 

「何でもスケベを見出すのかお前らは」

 

「客観的評価ってやつ。私は正直自分の手で包めるくらいのサイズがいい」

 

「……極まってんなぁ」

 

 

 なんとなく察していたり、話しをしていると彼女の癖はそれなりに察することは出来ていたがここまで照れの一つもなく言ってのけられると一周回って感心してしまう。

 

 

「って、それはええねん。さっそく撮影しよ、先に私ね」

 

「はいよ」

 

「ビシバシ指定いてくからヨロ―」

 

「無茶振りやめてクレメンス」

 

 

 この誘いはしっかりと撮影をしようとしても人に声をかけられないド陰キャな万智としてもありがたいもので、交互に撮影し合うならそれもありかと乗った訳だ。

 

 ………彩寿歌に頼めば何時間でも付き合ってくれるのだろうけれども。

 

 

 

 〇 〇

 

 

 

 池袋サンシャインシティにて行われているコスプレイベントアコスタ。

 

 会場入りから数時間。

 

 その会場の隅でぐったりとうなだれる万智と和花がいた。

 

 

「いやー、大変だったね」

 

「しばくぞ」

 

「いやん、勘弁して?ほら、デカビタあげちゃう」

 

 

 目立つエリアから少し離れた所で互いに撮影し合っていたのだが、途中で『すみませーん』とカメラ片手の女性に声を掛けられ、これも一つのそう言う機会かと撮影に応じた訳だ。

 

 初対面相手に素面だとやってらんない事に気が付いた万智は帳と言うキャラクターに成り切る勢いでその場の時をどうにかすることにした。

 

 ……それが良くなかったのか気が付けばだんだんと列は伸びていく。

 

 万智の扮した帳や和花の扮した函慈と言うキャラクターは原作内でもそれなりにカプ扱いがされているらしく、色々なポーズを取らされていた。

 

 中には帳のリアコの夢女、少年スポーツ漫画に登場するやけにビジュのいい函慈にあれやこれやと注文してくるカメコなんかも現れてそう言った人は流れるように運営にドナドナして貰ったりと中々疲れた。

 

 

「まさか中に原作者いるとか思わないよね」

 

「偏見だけど原作者ってコスプレにあんまりいい顔しないと思ってたんだがな」

 

「そりゃぁ万智のロールが良かったからでしょ」

 

「2.5な舞台に原作者自ら誘われるとか思わんて」

 

 

 基本対人性能カスな万智はそれっぽいガワ貼り付けることで人と対応していることが多い。

 

 そのガワの演技がツボったらしく、やけに具体的に構図を指定してシャッターを切る人がいた。

 

 撮影が終わりその撮影した写真をSNSに投稿していいかの可否を聞いてこられたので、写真を確認したのだ。

 

 それがまぁいい写真を撮るものだから、和花とサンドして撮影に関して質問攻めにしてしまった。

 

 熱中し、その撮影者を解放する頃には別の人を待たせていた模様。

 

 アラサー手前くらいの女性と、40前後くらいの男性であった。

 

 すみません、何て言いながらどう撮るのかと聞いてみればサッと名刺を手渡された。

 

 女性からは〇英社の編集書かれた名刺。

 

 男性からは『僕、一応漫画家……二人が現実に現れたのかと思ってびっくりしちゃった』とのセリフ。

 

 そう、大量にさばいていった人たちの中にDOUBLE CLUTCHの原作者先生が混ざり込んでいるという珍事が発生した。

 

 

「いやー宝ですわ」

 

「シレっとバスケットボール持って来てたのに驚きだよ」

 

 

 で、『撮影じゃなくて今度舞台かの企画が上がっていて~』何て言う女性編集さんにぜひ舞台出てみませんかとオファーを食らうことになったのだ。

 

 当然万智はお断りさせてもらったのだが、原作者さん的には舞台などのコスプレや衣装に関して前向きなイメージを持てたと言われつつ、万智は来ていたジャージにイラスト入りでサインを貰い、和花はいつの間にか手に持ってたバスケットボールにサインを貰っていた。

 

 その際にあまりの準備の良さにツッコミを入れてしまったのだが、それもまたなんかツボったらしく原作者は笑っていた。

 

 最後まで女性編集は『ぐぅ、惜しいい、ほんと気が変わったらご連絡ください。怪しければ集英社の本社の方に掛けて頂ければ対応させて頂きますので!』と粘り強く誘ってきていた。

 

 こういったスカウトって演技畑の人間からくるもんなんじゃ……?と首を傾げたが断った以上気にしても無駄だと忘れることにしたが。

 

 

 とまぁ、こんなエピソードもあって万智たちは原作者とか言う大物を機にちょっと休憩をとっていたのである。

 

 

「……さて、さっき聞いた情報元に撮ってみるか」

 

「そう言う所クリエイターだよねぇ」

 

「自分の中に落とし込めるもんがあったら試したくなっちまうのはしゃーないだろ」

 

 

 手渡されたデカビタで喉を潤す……には些か糖分の重さを感じながら、万智は立ち上がりカメラを構えた。

 

 ISO感度、シャッタスピード、ようはレイヤーの調整みたいなもんだと頭に入れた万智は試すべくZfcのダイヤルをコロコロと回す。

 

 レトロな見た目が気に入って購入したが、物理的にダイヤルで分りやすいのはなんかうれしいポイントである。

 

 

「それはそう、何だけどちょっと化粧直しタイムもらえる?」

 

「……気が回らんかった」

 

「ええんやで」

 

 

 そう言われ色々と化粧直しを始めた和花を尻目に万智も慣れない化粧を少し確認しておくことにした。

 

 厚めな化粧をしている訳ではないがいつもの癖で額を拭ったりもしたので崩れているかもしれない。

 

 

「化粧って自分の顔面色塗りしてるみたいで面白くない?」

 

「わからんでもない」

 

 

 パーツを際立たせたり、印象を変える作業は線画に色を乗せていく工程にも少し似ているような気もする。

 

 

「個人的にはどっちかと言うと美プラに塗装してる時の感覚かな」

 

「お、そっちも行けちゃう感じ?」

 

「欲しいプラモが発売日に瞬殺して買えないが、ちょっとお高めの美プラは高確率で買えるからな」

 

 

 なお財団Bの美プラはコラボものは一定数出るがオプションパーツなどは出荷数が少ないので買えない模様。

 

 万智が美プラを買うとするなら専らKOT〇BUKI屋である。

 

 この世界でも美プラがあったのは大変ありがたい。

 

 

「お高めってことはブキヤの方か。創?女神?FAG?」

 

「全部」

 

「つ よ い」

 

「お前は?」

 

「フルスクラッチのフィギュア派」

 

「つよい(確信)」

 

 

 まさかのフルスクラッチ勢。

 

 

「フルスクラッチはいいぞ、既存のエッチなフィギュアに合わせてショタ君を用意するだけで楽しい」

 

「そこか」

 

「それ以外あるの?」

 

「なんて純粋な目をッ」

 

 

 なんとなく聞いていたが、彼女は本当におねショタに魂を売っているらしい。

 

 ……え、Z〇rushでモデリングしたのを3Dプリンターで……?

 

 ぜひ教えてほしい。

 

 

 

 〇 〇

 

 

 

「あの~すみませんお写真良いですか?」

 

 

 色々と撮影を試し、そろそろ撤収し始めるか更衣室に向かっていると声がかかった。

 

 

「わ、リンドウくんだ。クオリティたっか」

 

「ありがとうございます」

 

 

 その声掛けに反応したのは和花。

 

 声掛けの万智たちと同じくDOUBLE CLUTCHのメインキャラの竜胆司のコスプレをした方とその相方?さんであった。

 

 そしてすぐ近くには金髪のギャルとコスラバの諸星北斗のコスをした方。

 

 

「な、なななな生トバリ―じゃん」

 

「俺は鳥刺しかなんかなん」

 

 

 プルプルとしながら謎の感動を覚えている金髪で派手めな柄の上着を着たギャルに万智はツッコミを入れてしまう。

 

 ………どこかで見たな?

 

 

「あきれ顔ありがとうございます!」

 

「こんなんで喜ぶんかい」

 

 

 キャッキャと喜ぶ謎のハイテンションギャル……ああ、思い出した。

 

 紗寿叶さんの知り合いのコスプレするタイプのギャルだ。

 

 

「……で、そちらの方々は何故拝んでいらっしゃるん?」

 

 

 脳裏に浮かんだ謎のデジャブが解決したのでどんなポーズ取ればいいのかと聞こうと声掛けした方に顔を向けた。

 

 ショートコントにも満たないリアクションに竜胆司コスのひととボブカットの女性が拝んでリアクションして来た。

 

 

「こんなにクオリティの高いトバリ―のコス見れるとは……ありがてぇ……」

 

「助かる命がある……」

 

 

 あ、只のオタクであった。

 

 

「それでお姉さん方はどう撮りたいんです?カプ?それとも単品?」

 

「はっ、すみませんちょっと感謝の念が。その、よかったらなんですが……」

 

 

 こんなコッテコテのリアクションするオタク彩寿歌以外で初めて見た気がした万智を尻目に和花が切り出した。

 

 

「――黄州戦の時のアイアンクロー再現したいんです」

 

「あーあれですか」

 

 

 所謂原作シーン再現の要望であった。

 

 原作内でもベストバウンドと名高い鳴神高校と黄州高校の戦いの後にラスボス的チームの一角として出てくる帳が主人公チームに喧嘩を売るシーンである。

 

 

「がっつりやってもらえると」

 

「アイメイク大丈夫です?」

 

「この後化粧落として帰るんで大丈夫です!」

 

 

 万智ではなく和花が仕切っているが、対人……特に熱量を持った人間とのやり取りにどんな距離感で挑んだらいいんだという面があるためこれに関しては助かっている。

 

 要望されたシーンはアイアンクローと言うだけあってこめかみあたりをがっつりと掴むやつだ。

 

 コスプレしていると結構顔面作ったりするものなのでふと触れたりすると崩れそうで申し訳なさが勝つのだが、本人はこれで上がるらしいのでそこまで気を追わずにアイアンクローが出来そう。

 

 

「場所はどうします?原作っぽく少し陰ってる壁際とか?」

 

「あ、はい!ありがとうございます!」

 

 

 そんなこんなでドナドナ。

 

 

「気ぃ付けますけどなんかあったらゆうてくださいね」

 

「ひぇ、手がでっかい」

 

「角ばった手がエッチ……」

 

 

 エッチな要素あった?

 

 ぼそりと諸星北斗のコスがつぶやいたのを万智も心の中で同意した。

 

 万智は髪が少しクシャリとなる様に少し力を入れる。

 

 

「軽くですが大丈夫ですか」

 

「大変助かります」

 

「ツカサ君顔ちっこいから掴みやすくて助かるわ」

 

「―――ふぐぅ」

 

 

 一度始めてしまえば何のその。

 

 万智はなんやかんやで適応力とアドリブ力が高い為か、ちょっとノった言葉を口にしてしまう。

 

 対面の司コスの人と他数名から小さく声がこぼれたが余り気にしないことにした。

 

 シャッターが切られる音を聞きながら、暫らくその状態で静止しておくことにする。

 

 

「サインが異物すぎて草」

 

「おーい今そこ突っ込むポイントやないでー」

 

 

 万智の羽織っているジャージに割とガッツリサインが入っているため、そのシーンがちょっとシュールだとツッコミを入れる和花のお陰でだいぶグタった。

 

 

 

 〇 〇

 

 

 

 大変満足そうにありがとうございました、何て撮影が終わり万智たちも帰路に着ため着替えることにした。

 

 ……男女で分れるはずの更衣室で諸星北斗コスの人がシレっと男子更衣室に来たところで久方ぶりにとんでもなく驚いた訳だが。

 

 『リアル男の娘キタ――(゚∀゚)――!!』と子声で叫ぶという器用な真似をしていた和花は見なかったことした。

 

 化粧を落とし、着替えると諸星北斗コスの人……あまねさんと言うらしいが『以前ライブ会場でバッジ交換した方ですよね』と思わぬ遭遇でもあったらしい。

 

 それから他愛のない事を駄弁りつつ、更衣室から出て互いに待ち人を待つ。

 

 彼曰く、金髪ギャルのコスプレ友達でそれ以外の成人済みの方々とは初対面だったらしい。

 

 それでこの後打ち上げと言うかアフターでちょっとワイワイする予定なのでそれ待ちとのこと。

 

 彼女さん?なんて言われたが違うのでそれは当然否定しておく。

 

 彼女の親友であり、彼女の彼氏から突拍子もない事をしないか見張っていて欲しいと頼まれていたと答えた。

 

 年の近そうな男性コスプレイヤーと話しをする機会がなかったからちょっと話すのが楽しくなって変なところまで踏み込んでごめんね、何て言われた。

 

 別にそれは構わない。

 

 構わないのだが『函慈ちゃんだっけあのコスプレの子、なんかものすごく海夢ちゃん……ああ、あの金髪の子なんだけどすっごくウマが合いそう』とか不穏なことを言わないでほしい。

 

 万智とてオタクだ。

 

 コミュ力つよつよギャルとクラスカースト上位の女の子が同じ話題で盛り上がり始めたら……流れは察する。

 

 

「この後アフター行こうぜ!」

 

「勢い」

 

 

 なんというか案の定…?

 

 万智は彼女と解散してタクシーにぶち込むところまで任されているので一緒にそのアフターに混ざることとなった。

 

 

 

 

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