転生者が前世の作品の同人を個人的に楽しむようです。 作:スティック/糊
「へいダーリン」
「なんだいハニー」
「この世界の女児アニメを前世視点で見るとクッソカオスって話してもいい?」
「ヒーローものも女児アニメも今世は摂取してないから聞かせてもらおうか」
万智と彩寿歌の交際が一年を経過した。
半年過ぎたあたりから休日に限り万智の自宅に居座るようになり始め、冬休みを機にたまにお泊りするような関係値になって来た。
彼女がこちらに止まる時はクラスの友人である魚塚さんに偽装を頼んでいるらしい。
逆もしかりなのだとかなんとか。
春休みが明け、クラス替えの結果別々のクラスになりその反動と言わんばかりに彼女は放課後も執筆業の余裕があれば万智の自宅にいるようになってきている。
何なら合鍵を手にして買い物袋片手にやってきては通い妻の様に晩飯を作り始めるほど。
校内では未だに交際していることは露見していない。
万智も彩寿歌も下種な勘繰りをしてくる類いの人間と絡むのは疲れてしまう質だ。
今日もバイトから家に帰り、エプロン姿にお玉片手の彩寿歌に出迎えられてだいぶキュンと来たのは万智だけの秘密である。
「『フラワープリンセス烈!!』のカオスっぷりを話したいのよ」
「ふらわーぷりんせす」
「フラプリとか烈!!とか略されてる」
「テニプリみたいな略し方」
「プリンセヌにはなってないから」
彩寿歌曰く、
キャラクターの人間関係は『CCさくら』
心が濁って闇落ちする『魔法少女まどか☆マギカ』
魔法少女なのにわりと肉弾戦なところが『初代プリキュア』
後は『おジャ魔女どれみ』感のある部分もあれば『美少女戦士セーラームーン』を感じる所があると言う。
平成初期の女児アニメを全部ぶち込んだ感を強く感じたとか。
「……なんというか平成一桁後期を殴ってくる感じのラインナップ」
「それな」
「一致してるからと言って別作品と見れなけば楽しめないのは分からんでもない……こう、変なところで脳裏を掠って『これって○○の○○ですよね‥…てなって楽しめない、みたいな」
「普通の作品だったらセーフ!セーフ!そんな理論で言ったら悪役令嬢物もチー転も何も見れなくなるから!でもこれは数々の名作の要素がごった煮になりすぎているせいで色々な作品が脳裏に集中して落ち着かないんだよ。せめて文字違いくらいのパチモンであってくれッ!」
「名前のパチモンだと質の悪い海外のパクリアニメ感がしてそれはそれでイラっと来ないか」
「めっちゃなるわ」
転生者だからそう、と言訳ではなく年を取ったら否応なくやってくるようなところがあるだろう。
ミステリー読めば○○で似た流れ見たな、みたいな。
そこで出てくるのはキャラの濃さ、ってところなんだけど。
「でもキャラは可愛いの」
「性格が破綻していない一貫性のあるキャラであれば割と許せてしまう不思議」
「でも主人公のCVがだいぶ丹〇さん」
「あー、致命的」
「さくらちゃんじゃないし、キャラクターの方向性も微妙に違うから別キャラと認知出来はする、するんだけど!声豚はCVで別キャラがチラつくッ!」
「CVでもキャラの方向性が似てるとどうしてもな……」
「声優さんもプロだから演じ分け的に違うとはわかってる演技をしているはず、なんて言いたいけどこっちが汚染されてるのは圧倒的前世なの。声優さん悪くない、汚染されている私が悪いってわかってるんだけどさぁ!」
「とりあえず主人公がだいぶ肉弾戦のお陰でかろうじて正気を保っている」
「化け物かな?」
「中身はだいぶ化け物と言っていいでしょ」
特に主人公キャラの人間関係がだいぶCCさくらだから否応なくチラつくのが厄介オタク的にはキツイポイントだと言う。
「いい作品、すっごくいい作品。魔法少女スキーな私の双子の姉が愛しているのもよくわかるいい作品なんだけど絶妙に楽しめないのよ」
「俺にはあまり分からないな…?」
「ちなみにライバルキャラの姉のCVは桑〇」
「ガンダム脳的に死にそう……」
「闇落ちはするよ」
「CV桑〇の伝統芸能」
「偏見が過ぎる。でも闇落ち率が高い気がするのは確か」
万智の脳内でそのCVで印象に残ったのはやはりCLANNADの坂上智代だろうか。
智代アフターホント好き。やはりクラナドは人生。
「でもぷいきゅあ声優だからそっちチラつくしさぁ!」
「桑〇で女児アニメだとぷいきゅあよりも先に神風怪盗ジャンヌが先に来るんだよな……」
「そう言われると確かにそう!くっ、また脳裏に別作品がちらついてやがるッ!」
こればっかりは前世の業。
受け入れるしかない。
「万智は何かそう言う系統の前世を感じることなかったの?」
「んー、タイトルから色々ちらついたことはあったかな。『生徒会長はNo.1ホスト』ってわかる?」
「名前だけ知ってる」
「タイトル的にイケメンハーレム系の皮を被った濃厚な百合と言う視点が見れる良作」
「なるほど……?」
「ヅカ系男装女子が素朴なヒロインとイチャイチャします」
「見ます」
オタク君……。
万智は彩寿歌のあまりにも欲望に忠実なところが嫌いではないが、それはそれとしてどんな感情を持てばいいのか分からない。
「まぁ、タイトルから『桜蘭高校ホスト部』が真っ先にやってきて、生徒会長が学園に隠れてバイトをしている所とタイトルの微妙な被り具合から『会長はメイド様!』がちらついたな。系統は違うから普通に見たけど」
「なるほど……?」
「キャラの癖の濃さは『花より男子』を思い出したな。ホストらしいクズ具合で」
「……あの、彼ピくんもしかして少女漫画に詳しい?」
あまりにもよどみなくタイトルを万智が挙げ始めるので彩寿歌は遠慮がちに聞いた。
「人生の萌えは『彼氏彼女の事情』で摂取した」
「つおい」
「親が二人とも重度のマンガ好きで部屋のワンフロアは本棚だったから少し古めの少女漫画とか気軽に読み始めるような環境があっただけだぞ?」
「なるほど、もしかしたら性別逆転現象が自分の対の状態になっているのではなかろうかと疑いかけちゃったよ」
「今世も前世も性別は変動ないタイプだ」
前世は実家と人間性方面で反りは合わなかったが趣味に関する理解はある家庭だったのは救いなのかもしれない。
次第に世間を知ることによって実家って特殊だったんだと気が付いて家を出たパターンの人間だ。
「『会長はメイド様!』で思い出したんだが彩寿歌のメイド服萌えは何処から?俺は『会長はメイド様!』のOPの美咲ちゃそから」
万智はメイド服とバニーが嫌いな男はいないと思っているタイプの人種である。
メイド服といえば中々数が多いが、万智的に一番好みのメイド服は間違いなく『会長はメイド様!』に登場するメイド・ラテのメイド服である。
「んー強いてあげるならアウトブレイク・カンパニーのミュセルちゃんかなぁ。後は緋弾のアリアのリサちゃそ」
「結構メイド服も千差万別だよなぁ……」
「わかる。わかるけれどもそこで自分の記憶に残しておくだけでいいのかい?」
「どういうことだ」
「ないなら作る。オタクの基本」
「とんでもねぇ理論来たな」
「いや、普段からやってるじゃん。ジャンル違うだけで」
万智と彩寿歌の二人は普段から前世を思い出しては何かしらの形で残している。
彩寿歌は文字で、万智はゲームで。
「たし、かに……?」
「そして目の前にはあなたの作った服を着てくれるアニメから飛び出てきたと言わんばかりの体型の彩寿歌ちゃんがいます。どうする?」
「つくり、ます……」
「その言葉が聞きたかった―――よし、必要な道具揃えに行こ!」
「行動力ゥ!」
「ぶっちゃけ私が着たい」
「素直で大変よろしい!」
こうしてなぜか前世に登場したメイド服を作ると言う話が始まった。
なお、彩寿歌の本心的には彼氏の癖の把握は最重要と言う理由である。
そのためなら衣装を作るための投資だって躊躇わない。
それが乾彩寿歌なのだ。
〇 〇
翌週末、家にミシンが到着した。
万智の住まう諸伏家はそこそこ広い一軒家で、多少物が増えた所で困ることはない。
一人暮らしなので騒音に気を使う必要もない。
服を作るための知識はオタクらしく『ランウェイで笑って』あたりを参考にしたいところだが、鮮明に思い出せるわけでもない。
オタクとして特に好きなことは覚えているが、それ以外は……と言うやつだ。
趣味人は変なところに特化しているものだ。
「生地は好きなものを選ぶと良い」
結果的には私が着る服になるのだからと彩寿歌にそっと現ナマ入りの封筒を渡されている。
さも当然の様にミシン代も彼女の財布から出ている。
日頃から食事を作ってもらっているためバイトで稼いだ金にもある程度の余裕はあると言うのに、彼女が何か物事に巻き込むときには大体彼女が金銭的負担を負っている。
万智的には渋い顔をしたいところなのだが「愛は金で買えないけど、金で愛を伝えることはできるから」と言う何とも言い難い発言で反論は封殺されている。
何なら将来的には同じ財布になるんだから誤差誤差、とのこと。
現在覆面作家をしている彩寿歌は高校生離れしている収入を誇る。
下手なサラリーマンよりはよほど稼いでいるのだ。
万智は現状金銭的に彼女に勝ることはできないので、それ以外の所は力になれればと多少の無茶は受け入れている。
乾家の方針としても自分で稼いだお金は好きにすればいい。
ただし、高校生の範疇を越えない程度に。とのこと。
なので半分金銭を使ったことの隠ぺいの様に万智宅に荷物が置かれるのだ。
衣装制作初心者らしく教本を読んでみる。
『オタク君でも作れる初めてのコスプレ衣装。~え、俺があの美少女の衣装を作ることに?!~』
タイトルからして非常に癖の強い一冊である。
ネット上で入門の鉄板として紹介されていたので購入した形だ。
一つトラップであったのがオタク君が女装をすると言う展開であることだ。
まぁ、突然男子高校生が美少女の服を作るような展開はやってこないよな……と。
でもビックリするほど内容は分かりやすいのが少し腹立つ。
体格にあったコスプレ衣装の考え方や既製品サイズをベースにした作り方、体格を考えた時のアレンジに、一人でできる撮影のテクニックまで。
ミシンを縫う時はチャコペン等で下書きをした縫い代や針に注目せず、針板のグリッドを布の端部に合わせて縫うのが線を真っすぐ縫うコツだぞ!とか、生地の切断部の処理方法や綺麗に生地を切るためのコツや、生地の違いで衣装を安っぽくない仕上がりにしよう、なんてところまで載っているのだ。
くっそわかりやすい……。
初心者にもわかりやすすぎる。
これはオタク君でも作れそう。
なお続編に『ブンドド大好きなキミが輝く!コスプレ造形入門』が存在するらしい。
巻末の宣伝ページに乗ってた。
プラモの造形技術を応用したコスプレの衣装についている装備の作り方なのだとか。
ターゲットにしている層がニッチ過ぎない???
万智は『オタク君でも作れる初めてのコスプレ衣装。~え、俺があの美少女の衣装を作ることに?!~』をしっかりと読破した後に、彩寿歌から女装願望持ちなのかと勘繰られたくはないので処分したい気分になったが、あまりにも有用過ぎたのでもうしばらくは取っておくことにした。
アニメのRGBから選びたいい生地簡易見本とか有用過ぎる。
と言うか監修しているのが生地メーカーらしく材料の選定に優しい。
中身の展開がニッチなこと以外はあまりにも神過ぎる一冊だ。
読んだ結果、トルソーが欲しくなった。
所謂マネキンだ。
衣装を作る際に実際に型紙をトルソーに張り付けて実際のデザインとのギャップが発生しに食い様に行うものだ。
毎度毎度彩寿歌に着て貰って、となると作業は中々進まないだろう。
これくらいは自分で買うことにしよう。
と言うか彩寿歌の目が離れている時でなければ彼女が買ってしまうのだ。
そうなると……トルソーを買う時の参考までに彼女のサイズを知りたい。
トルソーにも色々とサイズがあるらしいのだ。
「彩寿歌、採寸するから脱いで」
「どこまで脱げばいい?」
「下着は脱がんでいい。あまりにも脱ぎっぷりが良すぎる……」
「私の隅から隅まで知ってるくせに」
「まだ昼間やぞ」
「夜ならいいんだ」
「学生の内は節度を持つって言いましたよね???」
まぁ、年頃の男女が二人きりでいて何も起きないはずはなく、という奴だ。
万智は親の遺言通り中退せずに高校は卒業しておきたいので避妊はしっかりとしているが……まぁ、体は男子高校生と言う話である。
サッと服を脱ぐ彩寿歌を見て思わずツッコミを入れてしまう。
「結構細かく測るんだね…?」
「細かく作るつもりだからな。と言うかであったころからあまりにも体型管理がされておる…」
「だらしないと思われたくないからねぇ。あ、今は目立ちにくいブラしてるだけでパイは成長中」
「彩寿歌」
「ごめんて」
男としてだいぶ突っ込みずらい。
だが、こうして下ネタを発し始めるとき大体彼女は緊張している時だ。
自他ともに認めるインドア派の彩寿歌は色白であるため結構顔色に出やすい事が付き合っている中で気づいたことだ。
「とりあえず、メジャーでの計測は終了」
「細か……体重とかぱっと見デブってないかは気にしていたけどこう…数値で見ると私のスタイルえげつないなぁ」
「本当にそう」
「万智もだいぶスタイルえげつないからね????スカイツリーまたぐ気????」
「そこまで足が長い訳じゃねえよ」
首周りの長さや、頭部のウィッグのサイズを考えるときの長さであったりとコスプレ衣装を作る時に図る部位は多い。
多いが故に測り忘れがあると申し訳ない。
「足を肩幅に開いて少し腕を広げて貰えるか」
「え、うん。いいけど」
「スキャンします」
最近の某林檎マークのProグレードにはLiDARと言うスキャン機能が搭載されている。
光がうんぬんかんぬん、詳しい技術は分からないが手軽にスキャンして3Dでものが記録できると考えればいいだろう。
林檎マークの携帯でここからここまで、と画面をタッチするだけで距離が測れる機能の延長線上にあるモノだ。
「す、スキャン?ちょっと肌のケアがおろそかになっているところがあるから手加減してもらえると」
「データに残されるのは構わんのかい」
「そこはほら、信用してますので」
「オフラインのPCでしか使わないつもりだ」
それと、色味が欲しい訳ではない、ただ後から寸法を測りたい時用の記録だ。
後は3Dで残しておけばBlenderなりのオブジェクトツールでデジタル上で衣装のデザインがしやすい。
まぁ、スマホでとっただけのデータだと精度がお粗末なので実際の数字を図ってデータ上で整える必要があるんだけど。
そこに関しては昔からゲーム作るうえでモデリングに慣れていたことに感謝している。
何か一つ覚えておくとふとした時に応用が利く。
「3Dで衣装のモデリングをする時に使わせて頂きます」
「承知。あと一人寂しい時用に動画取っておく?」
「寂しい時は寂しいと彩寿歌に言うので要りません」
「ぐぅ」
「どこでぐうの音出してんだよ」
〇 〇
モデリングをして、欲しい色合いの選定もザックリと行ったし、縫い代を忘れずに考えた型紙を用意して、注文したトルソーにくっ付けて問題はないかも確かめた。
なので実際に生地を買おう。
そう考えて深く考えずにバイト先から一駅ほど離れた所にある手芸店にやって来た。
16を過ぎてからは移動の足にバイクを買っているので近くに駐輪場があるかも確認したいポイントである。
駅近くなら大体どうにかなるのが都会のいい所。
実際にこういった手芸店に足を踏み入れるのは初めての経験である。
生地が色々とm単位で売っていたりする。
別珍、ベルベット、ツイル、オックス、本当に色々な生地がある。
実際に見てみると結構違うものだ。
個人的に衣装を作るうえで避けたいのは変にテカったり、過度に薄すぎないタイプのものを選びたい。
あらかじめ想定していたのはブロード生地。
一般的にYシャツなんかで良く用いられているような生地だ。
少し太めの糸を用いて作られているタイプなら見栄えもするしいいのではないだろうか。
裏地を考えるくらいの厚みになるかどうかは試してみるしかないだろう。
特徴的な肩やひじがちら見えするその袖部分もわざとらしくないボリュームが欲しい。
……初手装飾多めのメイド服は難易度が高い気もするが万智の中では完全に仕上げるまで止まらないテンション感になっていた。
サテンは……なんというか触り心地はいいんだけど光沢が強すぎる。マットでもありかもしれないがなんというか求めてるカテゴリーとして違う。
こう、柔らかすぎるとでも言えばいいのだろうか。
シーチング、元はシーツに使われていたようなタイプの生地もあるのか。
とりあえず、T/Cブロードをメインに据えたい。
メイド服らしい白と黒もこういった時に王道の色合いだから大体在庫があるのもうれしい所だ。
後はエプロン部分に厚手のレーヨン、薄手のレーヨン。
フリル部分にポリエステルギャバ。
色々な生地を混合していると仕上がった時に事故りそう……不安だ。
あ、サテンにしては結構いい感じのものもある……いや高いな。
万智は完全に色々な生地を確認するのが楽しくなってきた。
オタクはたくさん種類があるモノを見るとコンプ欲が刺激されてしまうと言うのは聞く。
その一遍を感じたような気がした。
私メイド服萌えに目覚めさせたのは間違いなく『会長はメイド様!』のオープニングでした(隙あらば時語り)
サビ入りののとこのターン、アレめっちゃ可愛くて定期的にループしてしまうんですよね……
アニメは15年前……?うせやろ……?
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