転生者が前世の作品の同人を個人的に楽しむようです。   作:スティック/糊

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サブタイはその場のノリだけで付けてるので深い意味は一切ないです。

24話の旭さんのきったねぇ叫びよかったねので実質初投稿。


ペンを持ったオタクは強いがコミュは雑魚

 

 万智と彩寿歌は“かく”オタクだ。

 

 彩寿歌は物語を書くオタクで、万智は絵を描くオタクだ。

 

 ふらっと彩寿歌が万智の家に遊びに来た時に家主が作業に集中している、なんて言うことはよくあることだ。

 

 

「……いつから居たんだ」

 

「ちょっと前~、コーラ買って来たよ」

 

「ありがとよ」

 

 

 互いに創作に向き合っている相手には緊急の用がない限り極力邪魔をしないと言うのが暗黙の了解となっている。

 

 理由は単純で、作業に集中している相手の顔を眺めているのが好きとかそんなものだ。

 

 

「本当に何でもできるよね」

 

「何でもは出来ねぇよ。それこそ彩寿歌みたいに話を書くのは苦手だ。登場人物3人の場面とかごっちゃになる」

 

「あるあるだね。そこはキャラの統一性持たせて、似たような口調のキャラを同時に置かないとか……」

 

「それが出来れば苦労はしない。何分俺が作れるものは殆ど前世の再現ばっか。絵はだいぶ手癖で色々書けるようにはなったけどさ」

 

「なん十年も前に見ただけの作品を作れる記憶力よ……」

 

「そりゃ、オタクですから?ほら、今でもポケモン1000匹くらい言えるだろ」

 

「それは無理」

 

「なん……だと…!」

 

 

 冷静に考えれば1000匹以上いるポケモンを暗記している方が中々の異常だ。

 

 何故ポケモンは1000匹以上覚えられてカントー図鑑より少ない歴代の天皇を覚えられないのか問題は永遠のオタクの謎である。

 

 

「よし、ミリしらをしよう」

 

「急にどうした」

 

「描けるオタクに許された高度な遊びってやつだよワトソン君」

 

「描けなくても楽しめるだろミリしらは」

 

「それはそうなんだけど、分かりやすい解像度ってやつ?」

 

 

 そして唐突に謎の遊びが始まるのはいつものこと。

 

 今日は彩寿歌が短い物語を書くのでその作中の人物のイメージを万智が描き、彩寿歌は万智が描いたキャラクターの名前と性格とかそこら辺を当てると言うお遊びだ。

 

 

「カテゴリーは縛ろう。無作為だとマジでわからんくなる」

 

「それな」

 

 

 色々と話し合った結果2010-2020の間のアイドル系作品縛りと言う条件になった。

 

 

「デレマスがある時点でかなり無法だぞ……?」

 

「あ、ポケモンは言えないけどアイマスキャラは基本全員言えるから」

 

「俺にそれは無理だ……」

 

「ラブライブ系は一切わからん」

 

「そこは何とも……」

 

 

 なお、万智もアイマスはなんとなく知っている。

 

 ラブライブに関しては初期の初期の方の曲を友人らのカラオケの合いの手を覚えるのに履修した程度の知識しかない。

 

 

 ……ここはネタに走ろう。

 

 そうして二人はPCデスクに座り込んだ。

 

 

 

 

「はい」

 

「はい!」

 

 

 二人は同時に先ほどまで自分が座っていたPCデスクを交代するように入れ替わった。

 

 

「これ!タイトルとCV.〇山奈央氏がアイドルやって他作品ってことだけは知ってる!」

 

「ちょうどいい感じになったな……だがすまん。これは分かる。S.E.Mだ」

 

「え、SideM履修者?!」

 

 

 彩寿歌が出してきたのはS.E.M。

 

 アイドルマスターSIDE:Mの元教師3人組のユニットでScience、English、Mathematics、とそれぞれ教えていた科目の頭文字を取ったユニットの名称をしている。

 

 平均年齢28歳の大人組と言うやつだ。

 

 銀色を基調とした宇宙人風の全身タイツ衣装と言う特徴的なステージ衣装とダンスは結構有名かもしれない。

 

 そんな彼らのショートショート……あ、ユニットシングルに入ってるドラマCDの一節じゃね…?

 

 彩寿歌の記憶力も大概なモノだ。

 

 

「内田弟のネームバリューで思わず見た」

 

 

 当時、内田姉の方楽曲にハマっていた時期があり、それ経由で知ったように思う。

 

 万智はアニメから知った新参ものである。

 

 内田姉弟の家でやれ案件ほんとスコ。

 

 

「知ってるならそれはそれでいいの。万智イラストでS.E.Mが見たい」

 

「……描くけどさぁ」

 

 

 万智は一つ頬を掻く。

 

 万智の絵柄は昔ドハマりしていた作品群の同人を書きまくっていた時期があり、その絵柄にだいぶ染まっている。

 

 オタクは最初にドはまりした作品が親だと思う習性があるから致し方ないんや……。

 

 

 端的に言ってしまえば万智がドハマりしていたのはCLAMP作品である。

 

 お陰で何か原作再現してイラストを描こうとしても手癖が出るとそっち方面の風味に寄ってしまう。

 

 

「タイトルで察しよう、こう……CV.〇村みたいな雰囲気があるのは分かる」

 

「月間少女野崎くんではないからな?高身長で目つきの感じはそれっぽくあるけど」

 

「流石に野崎くんだったら面白キャラでクズとはカテゴリーが違うから」

 

 

 逆に万智が描いたのは『神クズ☆アイドル』のZINGS+最上アサヒ。

 

 うっすらとした記憶のためだいぶ怪しいがそれっぽくはなっているはずだ。

 

 さりげなく声優が豪華なおもしれ―アニメなのだが今世で紹介できないのが残念で仕方がない。

 

 主人公陣営はともかくとして、その主人公らを追ってるアイドルオタクたちもCV豪華で情緒のおかしいオタクっぷりが面白い。

 

 こう、推しに狂っている人物を見てるのって面白いよね。

 

 

「はい、解釈!」

 

 

 そんなことを考えている内に彩寿歌はミリしらの回答を用意し終えたらしい。

 

 

「多分主人公の目が死んでる人、葛川裕二。人生舐め腐ってるダウナー……と言うより極度のめんどくさがりで女のヒモにすらなれないタイプ」

 

「性格はおおむね正解……」

 

「次、光の陽キャ、大前ヒカル。実家で声が低そうだけど苦労人」

 

「まぁ、苦労人はあってるか」

 

「次、CV.〇山奈央のアイドル!天道天音。天性のアイドル、アイドルしたくてアイドルになったタイプのアイドルオタク!」

 

「概ね正解…?」

 

「点数は!」

 

「55……くらい?」

 

 

 掠ってる。

 

 かなりかすってる。

 

 

「主人公が仁淀ユウヤ。「かっこいいだけで金が稼げる」という甘言に釣られてアイドル活動をしているが余りにもやる気が無くて観客に歌わせるわ色々と忘れるわの問題児」

 

「なんかそう言われるとそれっぽい」

 

「で、その仁淀に交通事故で亡くなってしまったCV.〇山奈央のアイドルの最上アサヒが憑いてしまい、仁淀がファンサマシマシになってファンの情緒がぶっ壊れたり、次第に真面目にアイドルを目指していく感じの割と王道路線の作品。相方が光の吉野カズキ。仁淀に振り回される苦労人。実家で声は低くはない。善人って感じが回答かな」

 

「ファン、おいたわしや……」

 

「そこか」

 

「そこだねぇ……私は古のネット民だから未だにCV.〇山奈央のピンク髪アイドルと聞くとかのんちゃんが印象的で…」

 

「懐かしいな、神のみぞ知る世界」

 

「ねー」

 

「その頃からCV.〇山奈央の負けヒロインの法則が」

 

「あー、それは言ってはいけないお約束と言うやつだよ」

 

 

 神のみの最終的なカップリングは意外だったことはうっすら覚えている。

 

 本当に古すぎる……。

 

 

 〇 〇

 

 

「この世界の住民が一ミリも知らない作品をさも有名作品の様に装ってコスプレして怖がらせたい」

 

「どうした急に」

 

 

 おっと何か始まった。

 

 だらだらとティータイムを送っていたら彩寿歌が唐突なことを良い始めた。

 

 いつものことではあるが今回はちょっぴりカテゴリーが違うらしい。

 

 唐突にそんなことを言い出したが、何が巡り巡って身バレに繋がるか分からないので実際に集団の前でやる訳ではなく、あくまで“その体裁を装っている風”で遊びたいだけとのこと。

 

 

「ほら、こないだメイド服コスをしたじゃん?」

 

「せやな」

 

「その後、私に何か着たい服って聞かれて色々考えたの」

 

「ほう」

 

「そしたらやっぱりFateシリーズに行きつくなって」

 

「まぁ、書いてるもんな」

 

「菌糸類の端くれになったからね」

 

 

 彩寿歌は現役の作家である。

 

 主に歴史ファンタジーと称される類いの作品を執筆している。

 

 オタク的に分りやすく伝えるとするならばFateシリーズに登場する英雄の物語に焦点を当てた作品群だ。

 

 アーサー王伝説であったり、ケルト神話であったり、新選組であったり……。

 

 元は作品を知った他の転生者が接触を図ってくるのではないかと言う撒き餌の意味合いがあったらしいが、そんな接触がある前にそこら辺で前世の曲メドレーを弾いていた万智を彩寿歌が見つけてしまったので無用の賜物。

 

 今現在は歴史ファンタジーに一区切りをつけたので完全に彩寿歌の世界観の話を現代の恋愛ものを書いていると言うが中々の好評っぷりらしい。

 

 ちなみに彼女のPNは戌井シメジ。前世のFate作品群の生みの親である菌糸類から連想して付けたとのこと。

 

 

「コスプレを覚えたらやりたくなるじゃん、運命の構図」

 

「わからんでもない」

 

 

 

 そんな作家な彼女はFate/stay nightで主人公とそのサーバントが出会った瞬間の構図をやりたいらしい。

 

 

 

「運命の構図だけでも色々なパターンがあって、何パターンも用意できるわけですよ」

 

「まぁ、固定構図だから三脚用意しておけば撮れるしな……?」

 

「と言う訳で私が青セイバーやるから万智は士郎ね」

 

「え、俺もやるの」

 

「がっつりキャラものを一人ではやりたくないでござる」

 

「まぁ、付き合うよ」

 

「ありがとう!好き!」

 

 

 わかりやすい男女でコスプレ撮影をするなら良い入門、なのだろうか。

 

 彩寿歌が楽しそうなのでそれで良いとしよう。

 

 

「……と、言い始めたのは良いけど青王のビジュ覚えてる?」

 

「一応?監修はしてくれ過激派」

 

「か、過激派ってレベルではないけど!?」

 

 

 ここで真っ先にぶち当たるのが前世から記憶を引っ張り出す作業なのだから何とも。

 

 ちなみに戌井シメジの作品は挿絵とかそう言うものはないとのこと。

 

 Fate過激派の彼女が解釈違いを起こすと非常に渋い顔になるからとかなんとか。

 

 

 

 それはそうと2人はあまりコスプレのことを知らない。

 

 衣装を作るまで行っていると言うのに何を言っているのだと言わんばかりではあるが、本当にコスプレ界隈のことをあまり知らないのだ。

 

 個人間でコスプレをして遊ぼうぜ、なんて話にはなっているがやると決めたからにはバックグラウンドの情報までしっかり調べたくなってしまうのがオタクと言う生き物。

 

 彩寿歌の双子の姉である紗寿叶にコスプレ趣味があるらしいがそこに聞きに行くと言うのは彩寿歌的には解釈違い。

 

 転生してから作り上げてきた“乾彩寿歌像”を崩したくないと言う小さな抵抗。

 

 そもそも家族にこう言ったことをしていることを知られたくないと思っている人種であるためだ。

 

 

 そんな時、ちょうどいい時期、6月の末ごろに池袋でコスプレのイベントがあると言うので2人はそこ向かってみることにした。

 

 

 〇 〇

 

 

「カメラはパッパから借りてきた」

 

「……厳ついな」

 

「万智のも厳ついんだけど」

 

「これは母さんが何かと写真で成長記録を残したがる人だったからな」

 

 

 イベント当日。

 

 二人はコスプレイベントと言う物を実地で調査するため、カメラをぶら下げてイベント会場へとやってきていた。

 

 二人の手首には撮影参加者を表すリストバンドと、首からは厳つい一眼カメラ。

 

 曰く、彼女の物は正確にはデジカメに分類されるらしいがそこらへんに疎い万智はあまり気にしなかった。

 

 

 曰く彩寿歌の父の趣味がカメラで鳥や風景を取るのが好きだと言う。

 

 そう言っているだけで一番は娘らの成長を記録するのが好きなタイプじゃないか、とのこと。

 

 万智の母も似たようなもの……と言うには結構ドストレートに物を申すタイプだったのでカメラは万智の成長を取るためだけに使われていたのだろう。

 

 

「え、幼少期のアルバムあるの?見たい」

 

「データならパソコン漁ればあるかな……現物は火葬の時にいくつか突っ込んだから探さないと分からん」

 

「お、おう。いきなり重い所ぶち込まんでもろて……そう言うことなら、これからの万智を私が撮って墓前に供えるよ」

 

 

 彩寿歌はシレっとそう言うことを言う女だ。

 

 お前、そう言う所だぞ。万智は声には出さなかったがそうツッコミを入れたい衝動には駆られた。

 

 

 

 二人はイベント会場まで来て何を調べたいのか。

 

 昨今多くのことがインターネット上で調べることができるが何故。

 

 こういったイベントの空気感を知りたかっただけである。

 

 現地に行ってみないと分からないその場のものって言う物が存在すると思ったからだ。

 

 

「当たり前だけどレイヤーいっぱいですごいね」

 

「長年オタクをやっているがコスプレに触れてこなかったからこそ感じる圧倒的異文化」

 

「やー、イベント参加費で学割効くの便利過ぎだね」

 

「それな」

 

 

 二人がカメラを持ち込んで参加したイベントはACOSTA!と言うイベント。

 

 全国各地の色々な所で開催されているイベントで、合法的にコスプレをしながらイベント範囲内の町を歩けるイベントだ。

 

 参加者は事前にインターネットで電子チケットを購入し、会場で掲示し入場と言う流れ。

 

 そのチケット代には中高生なんかのための学割と言う物が存在しており、こういった文化に気軽に触れることができるのも良いポイントだ。

 

 その代わり未成年者は夜に開催されているようなイベントからはきっちり締め出されるのも文化を守るうえでいい文明だ。

 

 

「コスプレ=コミケ、みたいな構図が頭の中で出来上がっていたからこんなイベントがあることも知らなかった」

 

「わかるマン」

 

 

 圧倒的な先入観ではあるが、コスプレ=コミケで行うもの。そんなイメージがあった。

 

 後は小規模な即売会とかそう言う所でやるイメージ。

 

 ここまで大きな環境であるとか中々ビックリしたものだ。

 

 

「いざ来ても、コミュ障にはキツイ空間だね」

 

「わかるマン」

 

 

 そもそもレイヤーさんに声掛けとかできなくない?

 

 いざ会場に来てみてもコミュ障二人にはおとなしくそこら辺のベンチで会場の空気を味わい、屋内での即売イベントの会場の空気を感じ、このチケットだとカメラマンがカメラマンを取る構図も撮れねぇことに気が付き、ひたすら散策するだけにとどまり、会場エリアの街中にレイヤーがおる……と言う非現実的な状況を楽しみ、そそくさと帰ることにした。

 

 唯一の救いはイベント参加のリストバンド掲示で飲食店や手芸店の一部アイテムの割引を受けることができたこと、だろうか。

 

 現実なんてそんなものである。

 

 

「紗寿叶が完全個人でコスしてる意味を理解したわ」

 

「俺たちはおとなしく在宅コスとかスタジオ貸し切りとかそっち方面に行こうな…」

 

 

『この世界の住民が一ミリも知らない作品をさも有名作品の様に装ってコスプレして怖がらせたい』などと言う物は完全に生意気言っていたな、彩寿歌は完全に理解した。

 

 そもそも見ず知らずの人間に撮影されるとか無理じゃね?と。

 

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