転生者が前世の作品の同人を個人的に楽しむようです。   作:スティック/糊

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誤字報告ありがとうございます。

だいぶ乾母視点多め。


わからねぇんだ、異性の家に挨拶する時の服装

 

「これを10分間くらい煮るのに落し蓋するんだけど、途中で1.2回くらい軽く混ぜるのが大事でね―――」

 

「確かその後煮詰めていくんですよね」

 

「そうなの。煮詰める水分の量で見極める、って手法もあるんだけど結局は自分の好みの味付けになるがどうかで、乾家では大体―――」

 

 

 万智は彼女の母と筑前煮を作っていた。

 

 なんでこうなっているのかは分からない。

 

 

 いや、なんとなく理解はしている。

 

 しているからこそ何故こんな状況になっているのかが分からない。

 

 

 主犯であろう彩寿歌に目線を向けると柔らかな笑みを浮かべ、豚汁の味見をさせてくる。

 

 ……違うそうじゃない。

 

 うん、美味しいんだけどね?豚汁寄越せって意味合いじゃないことは分かるよな?

 

 

 万智は半分意識を飛ばしながらこんな状況に陥っているのかを再度整理し始めた。

 

 

 

 始まりはそう、乾母から彩寿歌に当てられたメッセージに由来する。

 

[彼氏くんを紹介してほしいので来週か再来週の土日あたり、都合のいい日を確認してください]

 

 その言葉から連想される中で最短の日付である次の土曜が邂逅の日となった。

 

 

 土曜が来るまで万智はだいぶ動揺していた。

 

 少なくともバイト先でも少しボケっとしてしまい常連のおっちゃん(保護者代理の弁護士の旦那)に気になる子でもできたのか、と弄られ「交際して1年ほど経過する彼女が居て、その彼女の母親に会うことになったがどうすればいいのか分からない」と素直に言ってしまい、彼を横転させてしまったり、アドバイスを貰ったり……それを聞いていたらしい店主にも弄られる始末。

 

 人の親目線からのアドバイスを貰えたのは有難い、有難いがバイトのシフトを融通してほしいとかは特にないのでそこまで気を回されなくても大丈夫です、はい。

 

 

 そうして迎えた土曜日。

 

 この気持ちを何と形容したらいいのだろうか。

 

 しいて言うなら、案ずるよりも生むが易し?

 

 それとも、旅行の計画をして家を出る一歩手前がめちゃくちゃだるいけどいったらそんなこと気にならないくらいには楽しかった……様な感じだろうか。

 

 

 端的に言うならめっちゃ杞憂だった。

 

 

 

 彩寿歌経由で知らされた呼び出し場所は普通の一軒家にも見える建物。

 

 かと言って乾家と言う訳ではなく、乾母が有するレンタルスタジオ。

 

 レンタルスタジオと言っても撮影をする様な場所ではなく、お料理教室を行う場所であり学校の家庭科室とかが一番雰囲気が近しいかもしれない。

 

 主に乾母がお料理教室を行う際に使用しているのだが、その使用日以外は基本的にレンタルスタジオとして貸し出しを行っているとのこと。

 

 そのスタジオがたまたま土曜日開いていたので予定が決まった訳だ。

 

 

 いきなり異性の家に行くことにハードルを高く感じていたのでありがたいにはありがたいが警戒されているようにも思えた。

 

 それでも謝罪の一つを行える機会を頂けたのだと気合を入れて万智はその場に一歩足を踏み入れた。

 

 

 前述のとおり大体杞憂であった。

 

 

 だらしないと思われない程度に髪型を整え、服装もシンプルで清潔感のあるモノを選び、手土産に喫茶店の常連さんおすすめの店で買って来た洋菓子をもって入れば玄関先で待っていたらしい彩寿歌が顔を出す。

 

 

「うわ、久々にキメてる格好見た」

 

「開口一番に喧嘩売ってるのかお前」

 

「違う違う。カッコいいなって」

 

「さようで」

 

「眼鏡外して髪整えるだけでイケメン爆誕とかバグでしょ……どっちも好きなんだけどね?」

 

「謎のフォローありがとう」

 

「眼鏡いる?」

 

「自分の眼鏡を寄越すのをやめなさい」

 

 

 万智は普段から眼鏡をかけている。

 

 主にUVカットとブルーライトカットの目の保護を目的としたものだ。

 

 視力的には全然問題はない。むしろ平均値よりも高いまである。

 

 

 そしてシレっと彩寿歌のかけていた眼鏡を押し付けられる。

 

 彼女自身も眼鏡をしているのだが、これもまたファッション眼鏡。

 

 つけている理由も“文学少女感があるから”と言う極めて雑な理由なのだが不思議と絵になっている。

 

 

「なに、そのイケメンっぷりを振りまいてここまでやって来たの?」

 

「振りまくってなんやねん」

 

「変な虫付けてこなかった?こう、お店の店員にナンパされるみたいな」

 

「ナイナイ」

 

 

 実際の所は会計時に女性店員にレシート裏にSNSアカウントらしきIDを書かれたのだが、レシートはいりませんと断ったのでセーフなハズ。

 

 

「本当にナンパされなかった?」

 

「そのセリフがもはや過保護な彼氏なんだ」

 

「ここは万智に習ってぎゅっと抱きしめるしか」

 

 

 不思議と多少マシな格好をするだけで声をかけられたりするのは高身長の利点とでも言えばいいのだろうか。

 

 それでも昨今便利なBluetoothのイヤホン付けてスルーを決め込めばめちゃくちゃ強引な人以外はスルー出来るので便利。

 

 雑な万智の回避が気に入らなかったのか彩寿歌に抱き着かれる。

 

 玄関の土間と框である高低差のお陰かいつもよりも身長差は感じない。

 

 真っすぐに抱き着いてくるものだからつむじくらいが万智の鼻先にやってくる。

 

 スンスンと抱き着いて匂いを嗅いでいるのでいつもと違う髪型のポニーテールが揺れ、なおのこと犬に見えてくる。

 

 

「ふぅ、他の女の匂いはないね」

 

「犬か」

 

「いっそマーキングしておくか」

 

「犬か」

 

 

 一体いつになったら俺は上がれるんだとふっと息を吐くと自然と目線は玄関先に向ってしまう。

 

 

 その玄関先のリビング(?)と思しき部屋の引き戸からちらりと顔を出す妙齢の女性と目が合った。

 

 向こうもこちらと目が合ったのを気が付いたのかスッとA3くらいのサイズ感のホワイトボードを出してその文字を見せた。

 

 

[ごゆっくりどうぞ]

 

 

 その文字を認識した瞬間に万智はブンブンと手で大きくNOのジェスチャーをした。

 

 と言うかどこから出てきたそのホワイトボード。

 

 

「万智、どうしたの」

 

「明らかにお前の親御さんと思しき人と目が合った」

 

「……マジ?」

 

「マジ」

 

 

 そんな大きなジェスチャーをしていることに疑問を思ったのか満足気に首筋に顔を埋めていた彩寿歌がちょこっと離れて上目遣いをしてくる。

 

 そんな彼女に事実を伝えると背に回していた手をパッと放し、振り返って背後に視線を向けると彼女も視線が合ったのか小さく肩を驚かせた。

 

 それを誤魔化すように彩寿歌はスッとラックに置かれていたスリッパを差し出してきた。

 

 

「上がって」

 

「よくここからリカバリー効くと思ったな」

 

「……言わないで」

 

 

 白い肌の影響か赤くなるのがよくわかる彼女の頭を雑に撫でまわしながら上がらせてもらった。

 

 

 〇 〇

 

 

 時は少し遡る。

 

 七日前、彩寿歌がお泊りをして帰って来た後、夜の乾家。

 

 

 いつもとそう変わらない夕食を終え、家族団欒から各々が自分の部屋に戻っていく中で彩寿歌は居た堪れない気持ちのままリビングで母、祝織と対面していた。

 

 

「色々と説明してなくて、ごめんなさい」

 

「色々って?」

 

「友達の所に泊まると嘘ついて、彼氏の所に行ってたり……彼氏ができたことを言わなかったり」

 

「それに関してはちょっと寂しいけどお母さんも昔やった覚えがあるから強く言いません」

 

「はい」

 

 

 祝織はシュンとして縮こまる娘に、怒っている訳ではないんだけどな、なんて思ってしまう。

 

 たしかにショックにはショックではあったものの、それは娘に対する失望ではない。

 

 どちらかと言えば娘にそう言った方面でガミガミと言うような親だと思われていたのかもしれないと言う自分自身への少しの悲しみだ。

 

 

 娘たちは皆基本的に物事を素直に話してくれる質ではあるものの、思春期であるなら親に話したくないことの一つや二つあることくらいは分かっている。

 

 若かりし頃の自分を思い返せばむしろここまで素直に育ってくれたことをうれしく思うし、こんなことが起きるのも順当な成長の結果だと思っている。

 

 

「とりあえず一つ聞かせて。金銭的トラブルに巻き込まれてたり、無理やり……とかそう言うことはないのね」

 

「ない」

 

「ならお母さんからとやかく言うことはないわ」

 

 

 親バカと言われても構わないが3人娘は皆可愛い。

 

 小柄な小動物の様に可愛い長女、全体的に大きく育った純朴な末っ子。

 

 そして喜怒哀楽が薄く見えてしまうもどこか儚げな雰囲気すら感じてしまう次女。

 

 

 無情に手籠めにされたとか、学生ならざる収入からのトラブルに巻き込まれるようなことがないのなら……子供だけで解決できないようなことになっていなければ大きく口出しをすることはないだろう。

 

 小さな衝突だの、本人が立ち直れない何かにぶつかったりしたのであれば親として立ち向かうつもりではあるモノの、娘の考えは娘だけのものなのだからそこを干渉するのは筋が違う。

 

 

「でも一つ言わせてもらうなら、その……避妊はしなさい?」

 

「そこは徹底してるし、すごく気を使ってもらってる」

 

「理解のある子で良かった」

 

「うん。妊娠におけるリスクの大半は女性が負うものであり、金銭的には必死こいて働けばどうにかなるかもしれないがそれ以外のキャリアとかはどうにもならないし、社会的にも責任のとれる年齢ではないから控えるくらいで良いとさえ言われてる。彼から誘ってくることはない。むしろ私が襲ってる」

 

「そ、そうなの」

 

 

 おっと?思春期男児に有るまじきレベルの紳士で真摯な男の子の様だ。

 

 それに社会的に責任のとれる年齢云々と言っているからお相手は未成年?

 

 結構小まめにお泊りをする位なのだから社会人……とまではいかないものの大学生位を想定していた祝織の想定とはどうやら違うらしい。

 

 そして娘は割と肉食らしいと言う一面が開示された。

 

 

「その、お相手はどれくらいの年齢の……」

 

「同じ学校の同級生」

 

 

 身元はしっかりわかっているのならいい。

 

 高校生でお付き合いとなれば同じ学校の生徒くらいが普通だろう。

 

 むしろ高校教師とか言われたら事実を受け止めるのに時間がかかってすごい渋い顔になっていたかもしれない。

 

 

「結構頻繁にお泊りしてるけど、向こうの親御さんとかにご挨拶させて頂いた方が……」

 

 

 そう言うと娘は軽く横に首を振るう。

 

 気恥ずかしいのかな?と思うも一親としてそこらへんはしっかりとしておきたい。

 

 

「シングルマザーだったお母さんが高校入学前に亡くなってて今は一人暮らし」

 

 

 想像の斜め上を行った。

 

 うん、それは首を横に振っても仕方ない。

 

 

「でも金銭的に集られてるとかはないよ。夕食作りに通い妻してるけど食費はきっちりと渡されるし、人件費を払えないを申し訳ないとまで言われる」

 

 

 まとも!

 

 察するだけでも結構な身の上なのにすっごいまとも!

 

 一瞬『え、本当に金銭的に大丈夫なの?』そんなことを考えてしまった自分が居るのが恥ずかしい。

 

 

 でも金銭的には自分に余裕があるので受け取りはしてるけどデート費に回している?

 

 デート費に回してもちゃんと折半してこようとしてくるので溜まっていく?

 

 

「それで余剰金が発生するので彼を着飾るのが最近のブーム」

 

「厳密には余剰金ではないんじゃないかな……」

 

 

 娘が自分で稼いでる金銭についてとやかく言うつもりはないが思いのほか平和でまともだ。

 

 それよりも娘がファッション関係に興味を持っていることの方に驚きを覚えてしまう。

 

 祝織が知る限り、基本的に無地でシンプルな服装を好み、滅多にスカートも履かない娘が彼氏を着飾ることにハマっている事実に、だ。

 

 ……夫に伝えれば『娘に服を選んで貰いたかった』と言うのではなかろうか。

 

 それでもファッションに目覚めていることには驚くほかない。

 

 恋ってすごい。

 

 

「私の仕事にも理解がある」

 

 

 曰く、急にアイデアが浮かんで執筆を初めても特に何も言われず、適宜お茶をいれたり、間食を用意してくれたりする?

 

 それでその間は家事をしたり、自身の趣味や勉強に時間を当てて、執筆が終われば甘やかしてくれる????

 

 理解があるってレベルじゃないんじゃないかな。もはや当たり前の夫婦の距離感なんよ。

 

 ……あ、お母さんが翻訳家で執筆している人の扱いに慣れていた?……それは理解があるなぁ。

 

 

「テストの校内順位ではいつも一桁の順位取ってるし、運動も得意みたい」

 

 

 文武両道…?なんならいつも定期テストの理系科目でお世話になってる?

 

 明確に成績で勝てるのは現文と古典くらいで英語は同点か負けてる???

 

 

 

 その後も彩寿歌の口から語られる惚気にも似た彼氏情報をしばらく聞いた祝織は思った。

 

 

 うちの娘よくそんないい子を捕まえることができたな?????

 

 

 え、決め手は胃袋を掴めたこと?

 

 お母さんに料理習っててよかった?

 

 

 ……これからもしっかり教えてあげるからね!

 

 

 祝織は自身がしっかりと娘の役に立つことを教えられていたのだと嬉しくなっていた。

 

 やはり胃袋を掴むのは有効!

 

 

 それと同時に三人娘の中で一番に連れてくる彼氏像の影響で、他娘の相手に無意識のうちに求めるハードルがシレっと上がっていた事実に気が付くのは少しばかり先のお話。

 

 

 〇 〇

 

 

 祝織が娘の彼氏を見た第一印象は「あ、これ逃がしたら娘結婚できないのでは?」である。

 

 娘の彼氏、諸伏くんを招いたのは自身の運営するレンタルキッチンスタジオ。

 

 思春期の男児が彼女の母に会うと言うだけでハードルが高いと言うのに、いきなり家は緊張するのではないかと思っての選択だ。

 

 時間になり、インターホンが鳴って娘が迎えに向ったのに一向にやってこないのでちらりと覗けば抱き着かれてなすがままにされている青年の姿が玄関先にあった。

 

 娘の話から上背があるとは聞いていたが、土間と框、靴を脱ぐところから家に上がるまでの小さな段をおいてもなお娘より頭半分は大きい。

 

 娘の身長が160と少しだから少なく見積もっても180は超えているだろう。

 

 娘に抱き着かれながらぐりぐりと頭を押し付けられても優しいまなざしをしている姿を見て「あ、これはいい子だ」と察した。

 

 そして覗いていたことがバレたのか目がバッチリと合う。

 

 数度瞬きをすると祝織と娘の間を視線を数度往復しているのが見て取れた。

 

 彼女の母にこの光景を見られるのは気まずいと思うのは当然だろう。

 

 少し困ったようにしていたので、普段料理の説明でちょこっとしたポイントの説明に使うA3のホワイトボードに[ごゆっくりどうぞ]と書いて見せてみる。

 

 更に困惑したような表情を向けられたが、母としてここまで感情むき出しにしている娘の姿が新鮮に映ってしまうのだ。どうぞ満足するまで続けて。

 

 そんな願いとは裏腹にぼそりと何かを告げると彩寿歌はばっと離れてこちらを視認した。

 

 ごめんね、邪魔をするつもりはなかったのよ。

 

 そう思い手を合わせるが彩寿歌は誤魔化すように来客用のスリッパを差し出していた。

 

 うん、そこからのリカバリーは無理があるわ。

 

 

 

 赤くした顔を伏せた娘に手を引かれながら諸伏くんはやって来た。

 

 

「初めまして、ご挨拶が遅くなってしまい申し訳ありません。彩寿歌さんとお付き合いをさせて頂いています、諸伏万智と申します。こちらつまらないものですが」

 

「あら、気を使わせてしまってごめんなさいね」

 

 

 しっかりと目を合わせて挨拶のできるいい子だ。

 

 事前の娘の話から大まかな人物像は出来ていたが、それに違いない好青年だ。

 

 ……いや、ほんとうちの子よく捕まえられたな????

 

 そう思って仕方なし。

 

 娘曰くカッコいい人とは聞いていたが主観だけでなく客観的にもわかりやすいほど美形であることがあるのだろうか。

 

 それで中身がビックリするほど真摯な訳でしょ?

 

 もはやうちの娘でいいのかと聞いてしまいたいほどだ。

 

 あれ、コレお料理教室に通ってくるママさんたちの間でも話題になっていた所の洋菓子の詰め合わせ。いいセンスしてるなぁ‥‥。

 

 

 それから、彩寿歌の外泊の件の謝罪であったりなどがありつつ……気が付けば並んで料理をしていた。

 

 祝織の子は3人とも女の子だからこういう時男の子にどうすればわからず戸惑った末の行動である。

 

 

 それでも料理の道に進んだからこそいくつか分かったことだあった。

 

 非常に料理は手慣れている。

 

 食材を綺麗に切り分けられるのはもちろんだし、手際がいい。

 

 各工程の器やバットの洗う流れもスムーズ。

 

 母の負担を減らせないかと料理は昔からしている?いい子過ぎない?????

 

 

 男の子らしく茶色い料理は好きだが、それ以上に落ち着いた和食とか結構好みが渋い。

 

 うんうん、一人暮らしで和食ってハードル高いよね。

 

 

 そして母を前にしても流れるように娘といちゃついてる。

 

 これに関して料理は関係ない?

 

 それはそう。

 

 

 恋人と言うより熟年夫婦のそれじゃない?

 

 そう思ってしまうのは仕方がないんじゃないだろうか。

 

 

 すごい自然に味見と言わんばかりに小皿に掬われた豚汁を口元に運ばれても恥じる様子もなく飲んで「どう?」「おいしい」とするやり取りを目にしてしまうと普段からこれか????

 

 夫ですら娘にそんなことされてないぞ????

 

 仲睦まじい様子を見せつつもしっかりと手元での作業もおろそかにしていない。

 

 ……できる子だ。

 

 

 言葉遣いであったり、細かな所作なんかもつい見てしまうがどこも荒がない。

 

 これで今まで彼女が居なかった?

 

 うそでしょ……?

 

 

 その後作った料理を一緒に食べたりしたが、祝織から言えるのは「これからも娘をよろしくね」の言葉だけだった。

 

 それに対して諸伏君は「彩寿歌さんに飽きられない限りは」なんて言っていたが、明らかに娘は墓まで一緒に行く勢いだ。

 

 

 陽が暮れるころには少し多めに作った料理の粗熱を取ってタッパーに詰めておすそ分けした。

 

 

 帰って行く彼を途中まで送っていくとついて行った娘の姿を見て思う。

 

 娘が良縁に恵まれたことにただ、うれしいと。

 

 

 

 

 え、紗寿叶ちゃんや心寿ちゃんにもまだ言ってないの?

 

 心寿ちゃんはともかく紗寿叶ちゃんはなんで黙ってたのかっていうと思うわよ…?

 

 

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