転生者が前世の作品の同人を個人的に楽しむようです。   作:スティック/糊

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誤字報告、評価ありがとうございます。


何かを始めると別のことも気になる

 

 彼女の母親に会うと言うイベントを熟し、交際を認められたこともあって彩寿歌はいつも以上に堂々と遊びに来るようになった。

 

 それでも頻度が大きく変わると言う訳ではないのだが。

 

 

 そんな大きなイベントが終わったと思ったら期末試験の時期がやってきてサッと流れて、夏休み。

 

 時間が過ぎるのはあっという間だ。

 

 

 赤点回避したから甘やかしてもらうか!と謎にドヤ顔な彩寿歌につつかれて万智は自宅の中庭にビニールプールを引っ張り出していた。

 

 よくある家庭用の小さなビニールプールではなく、外国の動画なんかで見かけるフレームを組むタイプの全身浸かれるサイズのプールだ。

 

 水をためたり排水したりがちょっとめんどくさいので一度使われてからは物置の肥やしになっていたが、軽く点検した限りは劣化らしい劣化もなさそうである。

 

 

 一人で住むには些か広い諸伏家はデザイナーズハウスと言えばいいのか現代的でおしゃれだ。

 

 亡き母が言うには「昔恩を売った人に建築家の人がいてね、少しお安く建てられたのさ」との談だったが、母が30ちょっとでローンを完済したとはにわかには信じられない立派な住宅であることは事実だ。

 

 中庭のテラスでらダラーっとお酒を飲みながらBBQをするのが好きな人だった。

 

 

 久々にバーベキューをしたくなってきた。

 

 今度暇な時に物置を整理してみるのもいいかもしれない。

 

 ホース片手にバシャバシャとゆっくり溜まっていくプールの照り返しに目を細めながらそんなことを考えていた。

 

 

 〇 〇

 

 

 

「彩寿歌ちゃんのエントリー!」

 

「勢い」

 

 

 2000ℓ弱のプールに水を入れ終えた頃、室内から水着の彩寿歌が現れた。

 

 無駄に完成度の高いポージングをする彼女は胸元を隠すようなフリルが付いた黒ビキニをつけ、テラスに上がってきた。

 

 

「ごめんね、ベタにスク水じゃなくて」

 

「別にそこのフェチはねぇよ。と言うかロリコンでもねぇよ」

 

「そしてビキニでもなく、そう!ワンピースタイプ!」

 

 

 そう言ってくるりと後ろを向く彼女の背の多くは布地に隠れていた。

 

 どうやら正面からはビキニっぽく見えるが、背面で上下が繋がっているらしい。

 

 それでもデザイン的に大きく変に思えないので色々な水着があるモノだと素直に感心した。

 

 少し編み込みにも見えるデザインからシミ一つない綺麗な肌が見えるのが少し目に毒だ。

 

 

「ちなみにネット通販で買ったからモノキニタイプなのかワンピースタイプなのかビキニタイプなのか分かっていない」

 

「たまにあるよな、ジャンル迷子」

 

「胸元の体型カバーのフリルが選択の決め手だったね」

 

「そう気にする様な体系でもないだろ」

 

「は?巨乳がフリルを付けることで乳カーテンが出来てエッチじゃろがい!」

 

「妙な所力説しておる……」

 

 

 わからんでもないけど。

 

 彩寿歌の中身が中身だからか絶妙なシチュを探し出してくるのが非常に上手い。

 

 以前聞いてみたら理性的な万智でも襲わずにはいられないのではないかと、やや遠回しに誘ってきていたらしい。

 

 突拍子のない所でハッスルしたら大変でしょうが、と定期的に窘めた結果万智宅ではハッちゃけるようになっていた。

 

 そう言うことじゃない、とは言いだしづらい。

 

 

「そこそこ暑いんだからこれでも被っとけ」

 

「サンクス」

 

 

 近場にあった麦わら帽子を彩寿歌にかぶせる。

 

 

「それで、感想が欲しいんだけど」

 

「中々にスケベで自宅内で済んでいることに感謝してる」

 

「私もその鍛え抜かれたシックスパックが世に散見してなくてうれしいぜ」

 

「はい、おさわりはご遠慮ください」

 

 

 流れるようにセクハラしてくる彩寿歌の攻防を雑に流す。

 

 万智も雑に無地のサーフパンツだ。

 

 

「そんなことを言ってもいいのかな!」

 

「え、何それ厳つい……って地味に勢い強いなオイ!?」

 

 

 一瞬室内に引っ込んだかと思えば水鉄砲にしては厳ついちょっとメカしてる感じのものを取り出してきた。

 

 

「電動ウォーターガン。ちょっと面白そうだから買っちゃった♡」

 

「財力ゥ!」

 

「そう言いつつ原始的な水風船投げるじゃん!」

 

「水風船地味に後片付けめんどくさいけどな」

 

「ちなみに天然ゴム製のものは樫の落ち葉とほぼ同じ速度で分解されるらしいよ」

 

「めっちゃ時間かかるじゃねぇか」

 

「それはそう。ちゃんと掃除しようぜ」

 

「せやなッ」

 

「また自然と投げ――――彩寿歌ちゃんほどになれば飛んでくる水風船をキャッチすることも可能!食らえ!」

 

「さりげなくフィジカル!」

 

 

 

 いくつになっても水風船は結構面白い。

 

 それでも結構疲れるのだと、ぽけーっとプールに浮き輪を浮かべて浮かんでいた。

 

 日焼け対策にスポーツテントを被せているので外気温の厚さと水の冷たさがちょうどいい感じになっている。

 

 

「万智、仕事できるってよく言われない?」

 

「ないな」

 

「うせやん」

 

「ほんとやで」

 

 

 プール脇に置いておいたクーラーボックスからペットボトルのコーラを取り出し、大きな浮き輪にハマりながらぷかぷかと浮かぶ彩寿歌に手渡すと、そんなことを言われる。

 

 少なくとも前世を含めてそんなことを言われたことはない気がする。

 

 今世の母は基本的に肯定力高い母だったのでノーカン。

 

 

「中庭っていいねぇ……」

 

「物理的に四方が囲まれてる分プライバシーが確保できてるのは良いが掃除が面倒、固定資産税割り増しのデメリットはあるけどな」

 

「世知辛い」

 

「うちは断熱窓入れてるから暑さはいくらかマシだけど明るすぎる家、って言うのも中々なものだぞ」

 

「結構カーテンしてるよね」

 

「デザインと機能の両立はどうあがいても金がかかる。世知辛い」

 

 

 明るすぎる家と言うのも案外落ち着かないものだ。

 

 UVカットはしてるが、モノが日焼けしないように少し除け気味にはなってしまう。

 

 それでも人目を気にせずに外の空気を浴びやすいと言うのは利点だろう。

 

 BBQも煙の出にくいタイプのものを選らば結構気軽に行えるのもポイントだ。

 

 

「今度バーベキューしたいんだけどやらないか?」

 

「え、やるやる。骨付き肉とかでっかい肉焼きたい」

 

「思考がワイルド」

 

 

 何気なしに誘えば彩寿歌はノリノリで乗ってくれる。

 

 こういう所フットワークが本当に軽い。

 

 

「コンロとかそこらへんは物置に眠ってると思うから探しておく」

 

「了解~日付決めたら教えて、ちょっと良い肉買っとくから」

 

「はいよ」

 

 

 

「日焼けしてない?大丈夫そ?」

 

「赤くはなってないな」

 

「ならセーフ。最近の日焼け止めすごいわー……あ、日焼け跡フェチとか大丈夫?」

 

「特にないのでお気遣いなく」

 

「いやー私焼けるとすぐヒリヒリする質だからさ。日焼け跡プレイをするんなら褐色系のボディファンデ買ってくるけど」

 

「だからねぇよ。と言うかこのくだり去年もなかったか?」

 

「ほら、性癖って急に目覚めるものだからこまめな確認?」

 

 

 日が暮れたことでチマチマと道具を片付けていると、彩寿歌が日焼けあおりをしに来た。

 

 万智にはそこら辺のフェチズムはないので雑に流した。

 

 

「万智も中々焼けないよねぇ」

 

「これは完全に焼けずらい体質」

 

「なるほど。あ、私は褐色ゴリマッチョよりも色白細マッチョ派だから」

 

「そのカテゴリーはよくわからん」

 

「ビスケットオリバより黒崎一護みたいな?」

 

「たとえの癖」

 

 

 

 〇 〇

 

 

 

「私、昔夏野菜カレーの美味しさが分らなくてさ」

 

「まぁ、煮るのはもちろん素揚げにしてても慣れるまではちょっと戸惑うよな」

 

「素揚げ野菜にハマったのはおっさんになってビールののど越しを覚えてからだったなぁ」

 

「ちょっとわかる」

 

 

 夕食は夏野菜カレー。

 

 バイト先の喫茶店に常連のおばあさんが田舎に嫁いだ娘から野菜を貰ったけど一人じゃ処理しきれなくて、と貰ったものだ。

 

 野菜って自炊で買おうとすると地味に値が張るからつい手が出ずらいから非常にありがたかった。

 

 

「万智好き嫌いないよねぇ」

 

「イギリス飯に比べれば大体うまいからな」

 

「意外な角度で投げてくるじゃん」

 

「紅茶と茶請けは間違いなく旨いがそれ以外がどうにも」

 

 

 そう考えると向こうにいた時は茶をしばきに行く時以外は基本家で飯を食べていた気がする。

 

 

「彩寿歌はカレーは何肉派?」

 

「何でもイケル派。鶏肉はパサつく胸肉以外がいいんだけどね」

 

「胸肉も時間をかければしっとりできるがその手間をかけるならもも肉にしちゃうんだよな」

 

「わかる万智は何派?」

 

「激辛じゃなければ大概は」

 

「私も激辛まで行くと無理」

 

 

 カレーにも様々な派閥が存在するらしい。

 

 辛くなければそれはカレーではない主義であったり、スパイスはこれを使えの強硬派、ルーは自作するモノだろ派、向こうのカレーはさらさらしとるからスープカレー以外認めない派など。

 

 ひとまず二人は激辛じゃなければいいや派である。

 

 

「茄子も昔苦手だったんだよね、皮がやけにしっかりしてるくせに中身が結構柔らかめで味もなんか今一で。おっさんになってから茄子の揚げびたし覚えてからは普通に食べられるようになったけど」

 

「一説によると大人になると子供の時ほどの繊細な味覚機能が衰えてきて受け入れられるようになるらしいな」

 

「個人的にはその考え方よりも苦みの美味さを理解したと思いたいね」

 

「そうだな」

 

 

 大人になって苦手意識を克服するのは酒のつまみと言うのは結構あるあるだと思う。

 

 調理方法にも結構よるのだろうけど。

 

 

「ただ今は無限に肉が食べられることがうれしい。年取ると消化機能雑魚になってエビフライとか一尾で限界になっちゃうし」

 

「それは……食生活と運動に気を付けた方がいいレベルじゃ……?」

 

「御尤もすぎる」

 

 

 大人になって若い頃を振り返らないと今しかできないことって結構思いつかないものなんだな。

 

 

「若い頃にくっ付いて回ると言えば宿題だけどちゃんと進んでるか?」

 

「数学と物理以外は!」

 

「見事に理系科目」

 

「ほんと見てもわかんないんだって、公式とか意味不明すぎ」

 

「それは頑張って覚えような」

 

 

 夏休みの課題と言えば学生が長期休暇中でも継続して勉強をする習慣を付けさせるためのものなので、毎日コツコツが一番いいのだろう。

 

 だが、万智は宿題は最速で終わらせてだらだらと趣味に時間を割くタイプであった。

 

 

「……教えてくれる?」

 

「答えを丸写しにしようとしないあたりがえらい。ちゃんと教えるよ」

 

「じゃ、今度遊びに来るときは宿題持ってくるね」

 

「了解」

 

 

 〇 〇

 

 

 夏休みだからと言って何かが大きく変わる訳ではない。

 

 しいて言うなら学校に行っていた時間分バイトをしているから少しだけ懐が温かくなる。

 

 

 そろそろ盆の時期か。

 

 盆は母の墓参りをする位のもので後はバイトをするか家でだらだらすることになるだろう。

 

 彩寿歌は盆と年末年始は家族旅行であったり祖父母の所に顔を出すのでその期間会うことがないのだ。

 

 

 チマチマと進めていた青王のコスプレ衣装も大まかに形になって来たし、穂群原学園の男子制服も形になった。

 

 割と本格的に手持無沙汰になって、何をするかただただ迷っていた。

 

 久しぶりに自分の趣味に本腰でも入れるか。

 

 そう思い、PCの電源を入れてDAWソフトを立ち上げる。

 

 万智の趣味の一つに前世の曲を思い出して再現すると言う物がある。

 

 記憶の中にあるモノを再現すると言うだけで中々難しく時間はあっという間に溶けていく。

 

 最初はピアノで再現し、だんだん物足りなくなってギターやベースも最低限扱えるようになった。

 

 

 しばらく弾いていなかったので指もなまっているような気がして、壁掛けに置いておいたテレキャスを手に取ってみる。

 

 クリップチューナー付けてチューニングチェック。

 

 ……弦ちょっとさびてるなぁ。

 

 比較的錆びずらいコーティング弦を使っているのだが、ちょっと埃をかぶるくらい放置していたのでそうなっても致し方あるまい。

 

 ネックがそっているとかはないし、ピックアップが壊れている気配もない。

 

 弦交換でもするか。

 

 

 替えのストックあっただろうか。

 

 楽器用品でまとめてるケースを開けばあった。

 

 

 それからいざ始めればギターのメンテついでに色々な所の清掃をしてしまいたくなる。

 

 弦交換の時くらいしかフレット磨かないしな……ステンレスフレットだから錆びるとかはないけど汚れは溜まるし、指板も綺麗にしておかないと、とか。

 

 

 テレキャスの弦を張りかえればベースとアコギもついでにメンテしておくか。

 

 なんて考えが付けばどんどん作業は増えていく。

 

 

「アコギの弦ねぇわ」

 

 

 ベースのメンテを終え最後にアコギに手を出そうとしたら弦のストックが切れていた。

 

 

 ここまでやって途中でやめるのも気分が悪い。

 

 気が付けば時計は頂点を少し過ぎていた。

 

 9時くらいから作業を始めた気がしたから3時間は確実に経っているらしい。

 

 

 自分で昼飯作る気力もなかったので弦を買いに行くついでに昼食を食べに外に出かけることにした。

 

 万智は彩寿歌に連れられている時以外は基本的に家・バイト先・学校・スーパーの限られた範囲しか動かない。

 

 基本的に出不精……と言うよりも海外の治安からか子供があまり外に出歩くのを勧められなかったときの癖が残っているためだ。

 

 そのためバイクもあまりエンジンをかける機会がない。

 

 駐輪場探すのも面倒だけど、こういう機会くらいは使わないと。

 

 

 愛車のエンジンをかけ、ぶらりと適当な楽器屋へ向かった。

 

 

 

「どうしてこうも意志が弱いのか」

 

 

 楽器店から出てきた万智の背中にはセミハードのギターケースと右手にはPositive Gridのマルチアンプ。ギターケースの中には折り畳み式のマイクスタンドとSM58が入っている。

 

 お値段計XX万円。昨年貯めた趣味貯金は豪快に飛んでいった。

 

 それでも中古品なので新品で買うよりはずっと抑えられている。

 

 

 やや哀愁さえ漂うその背中は『ギター二本売りに行ったのにビンテージギター一本買ってるおっさんの図』に近しい。

 

 ……ちゃうねん。

 

 誰に言い訳するでもなく万智は何かに小さく懺悔した。

 

 

 大型のショッピングモールに向かう途中で楽器屋の看板見つけて、吸い込まれて行ってしまったのがきっかけ。個人経営の初見では足を踏み入れるのをちょっと躊躇っちゃう風貌の所だ。

 

 ギターの弦コーナーの近くにギターのショーケースがありまして、その中に変態ギターで有名なヘッドレスギターがあったんですよ。中古の美品で、在庫処分価格になってるやつが。

 

 お値段見ると定価の1/4くらい。

 

 ちょっと傷多めだけど新手のレリック加工だと思えば許容できるくらいの。

 

 コレ限定仕様の奴じゃん。

 

 珍しい配置のピックアップタイプの。デフォが2Hの多弦ヘッドレスで有名なのにSSH。

 

 テレキャス持ってるけどSSH配列はなかったなー、ハムバッカータイプのピックアップついてるギター欲しかったんだよなーって、耳元で悪魔が囁く訳だ。

 

 そのギター見ていると店員さんが囁いてくる訳だ。

 

 色々弄られちゃってるからここまで値下げしてるけどいいパーツ使ってるんだ、試奏したいだろって言いながら防音室に案内されて試奏する訳だ。

 

 試奏のアンプと言えばRolandのJC-120は鉄板じゃないっすかー。

 

 え、MarshallのJCM800の方も使っていいんです?やったー!

 

 あ、フロントシングルかと思ったらハムじゃないっすかーつまりHSH?

 

 あ、ちゃんとスイッチ組み込んでんすねー、あ、ネック、ファンフレットじゃないですか、打ち直してすり合わせもばっちりでステンレスに変えてある?

 

 そこで音痩せカバーにブースター?TS9じゃないっすかーヤダー、EPもある?

 

 楽器屋何でもあるー。これもセットで買うなら安くする?自分のボードあるんで大丈夫っす。

 

 最近のデジタルアンプに興味はないかって?BOSSのMEとかZOOMのコンパクトなら使ったことありますけど……Positive Grid?YamahaのTHRとか、BOSSの刀シリーズと並んでるの見かけますねー。

 

 アプリで操作……今時っすねぇ。

 

 品出しの時にうっかり落としちゃって傷はあるけどしっかり動作確認はした、と。

 

 

 いや、あの自分今日はギター弦買いに来たんすよ。買うならセットと言うことでオマケ????

 

 グイグイ来るやないですか、なんか上客になりそうな気配がした?

 

 クラシック350乗りあんま見かけなくて親近感湧いた?

 

 めっちゃ私情じゃないですかー。店長やってるんだからこれくらいは自由にしてる、と。

 

 わお、店長さんでしたか。

 

 んー、そう言う話ならゴッパーとケーブルの在庫在ります?家にコンデンサーマイクしかないんで、あるんですか。つまりXX万かぁ…。

 

 え、XX万で良い?

 

 いや、それこのギターの定価以下じゃないですか。

 

 ……近いうちに店畳む予定で在庫は抱えたくない?保証してやれない分は安くしておく?

 

 おっふ、そう言われてしまったら買います。

 

 お金下ろしてきますけど本当にその金額でいいんです?

 

 あ、はいわかりました。下ろしてきます。

 

 

 そんな感じのやり取りの末、万智はATMからお金を下ろして店に戻ってくると綺麗に持ち帰りやすい状態でまとまっていた。

 

 クラシック350をまじまじと眺めていたのでそこまで思い入れがあるのかと聞いてみれば、若い頃イギリスへギタリストとして武者修行をしている時にスリにあってそれを助けてくれた人が乗っていたんだと言う。

 

 それは何とも記憶に残るお話だ。

 

 万智に対しても何故、ロイヤルエンフィールドを選んだか聞かれたので母が残してくれたのを直して使っているんです、と答えた。

 

 祖父が大のバイク好きで、その影響で母もバイク乗りに。

 

 向こうで住んでいた時に乗ってたクラシックがどうにも思い出の品らしく、日本まで持ってきたと言う。

 

 母の没後は万智がそれを相続したのでメンテや修理をして乗り続けているのだ。

 

 

 そいつは良い母ちゃんだな、と言われながらバイクリアのキャリアへの積み込みを手伝ってくれた。

 

 アンプが地味にデカい。

 

 店主に礼を言いながら、店を出た。

 

 

 以上がつい大きな買い物をしてしまった理由である。

 

 買うものだけ買って何もやらない人間にはならないようにしなくては…!

 

 万智が一人で出かけない理由の一つに趣味のことになると財布のひもが緩くなってしまうことが今日新たに追加されることになった。

 

 

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