海常高校との練習試合を制した日の帰り道でのこと。
俺たちは新チーム初戦の練習試合を快勝したと言うこともあって皆で気分よく帰っていた。
「帰りどっかで買って行こうぜ」
「あぁ〜何にする?」
「安いもんで俺金ねぇ」
「俺も」
「あ、すんません。俺この後予定あるんでこの辺で失礼します。」
「おん?なんか予定あんの?白神」
「ええ。ちょっと彼女とご飯に…」
「「「えぇ!」」」 「お前彼女居たのかよ!」「顔もよくてバスケ上手くて彼女いるとか何だよ!」
先輩たちと火神と黒子以外の奴らがみな理不尽にキレてくる。
「なんで言わなかったんだよ!」
「いや、火神と黒子は会ったことありますよ?」
「美人なのか?美人なのか?」
「それは俺に聞かれても?」クィッ
俺は黒子の方に顔を向けた。彼氏の俺に聞かれても困る質問であるからだ。
「黒子は中学同じだよね」
「そうなのか?」
「えぇ。バスケ部のマネージャーしてましたし男の子たちにも人気だったので美人だと思いますよ」
「マジかよ」「何の繋がりなんだよ」
「まぁとりあえず俺はここら辺で!お疲れ様です!」
俺はこのままでは質問攻めにあい帰れないと判断して逃げるようにその場を立ち去った。
その後俺は自宅近くの飲食店でさつきと落ち合った。
「きぃくんどうだった?」
「あぁ強かったよ。思ったよりずっと。いや強くなったって感じかな」
「なった?」
「そうだね。試合中盤までとか昨日までは結構力の差もあって勝負にならなかったんだけど…」
「第三クォーター終盤にあいつは俺をコピーした。更に俺があいつを舐めていることを予測して俺を嵌めた」
「そーなんだ。みっくん相手に得点出来るくらいまで伸びてるんだね」
「中学時代ね。きぃくんはバスケを始めたのが中2からだからキセキの世代の中でも力の差は存在したんだ。けど今のを聞く限りはもうほとんどないと思って良さそうだね」
「…そうだな。今日のを見る限り黄瀬は大輝と確実に迫る実力を有していると思っても良いと思うぞ」
「大輝はどうだ最近?」
「んーだいちゃんは練習は出るようなったしサボらないけどまだチームメイトを信じきれてないかな?」
「…まぁあいつの気持ちも分からなくない。あいつはスコアラーだしな」
その後も俺たちは最近のことを報告しあったり他愛もない会話で盛り上がりその日の夜が過ぎていった。
そしていつものようにインターハイに向けて練習を再開ようと考えていた日の午後のこと。
監督の相田リコはノートを取りながら。
「あ、そう言えばあれ今日ね」
俺たち一年生は2年の教室前に集められ
「なんすか用って」
「ちょっとパン買ってきて?」 「は?」 「パン?」
「売店で数量限定で特別なパンが売られるんだ」
「それを食べれば恋愛も部活も成功が約束される!噂の幻のパン!2850円!」
「「「たけぇ!」」」
「海常にも勝ったし新戦力も馴染んできてるついでに幻のパンもゲットして弾みをつけるぞって訳だ」
「けど狙ってるのは私たちだけじゃないわ」
その後俺たちは先輩たちからお金を貰って
「ただし失敗したら?…釣りはいらねぇよ?筋トレと練習が3倍になるだけだ」
キャプテンはそう言い残し立ち去っていった。
そして売店前そこには
「おばちゃん!カレーパン!」「俺焼きそばパン!」「あ、私クリーム!」
溢れんばかりの生徒が押し寄せていた。あんなの東京の駅でも見たことないぞ。
そして
「よし!まず俺がいく!」
同じ一年の河原がまず挑戦したが呆気なく飛ばされた
「おい見ろ!ラグビー部にレスリング!他にも運動部のエースクラスがわんさかいやがる!」
「おんもしろれぇ!」ダッ!
火神が全力で駆け出した。
が
_ _ _バッ!
「This is japanese lunch time rush!?」(これが日本のお昼のラッシュ!?)
「You’ve got a long way to go, Kagami」(まだまだだな火神)
「お前らこんな時だけアメリカかぶれかよ!」「かがみぃ!」
「I’ll go next」(次は俺がいく!)ダッ!
_ _ _グッ!
「お!いけるぞ!」
「いや?押し戻されてる!」
_ _ _バッ!
「Damn… the bread god has forsaken me!」(くっ!パンの神には見放されたか!)
「お前もそう言う時だけアメリカかぶれかよ!」
「しかもこいつパンの神様とか言ってなかったか?!」
「くそ!全員で行くしかねぇ!」「おう!」
残りの2人が懸命に挑戦するが悉く跳ね返されていく。くそこんなのどうすれば良いんだ。まさか日本でぶつかる一つ目の壁が売店とはな。
「あの〜買えましたけど?」
「は?」「お前どうやって?」
「人混みに流されてたら先頭に出たんでパンとってお金置いてきました」
「…これがシックスマンの実力か」
「絶対ちげぇだろ白神」
そして屋上
「買ってきました」
「お疲れ!ありがと!ジュースあるよ」
「これ例の!」
「いいってお前らで食べな」
結局なんでこれが行われたのかは分からなかったが確実に一年の仲は深まったのであった。
「キャプテン!予選トーナメント表コピーしてきました!」
「インターハイ予選はまずトーナメント選からだ!気を抜いて良い試合は一つもない。東京都はAからDまでやったあり勝ち残った1校が決勝リーグ進出さらにその決勝リーグで上位3チームに入ってインターハイ出場。300校以上の高校から選ばれるのはたったの3校だ」
「選ばれた高校のみが立てるそれがインターハイだ」
ふーん。まぁこの程度なら余程のことがない限りうちはいけるだろうな。アメリカなら俺のいた州なら2000以上はあった。この程度なんでもない。蹴散らしてやる。
「ふーん。ま、わかったけど一つ間違えてるっすよ」
「選ばれるんじゃなくて勝ち取るんだよ!…です」
そのインターハイ予選まであと三週間か。去年は本戦まで行ってインターハイには出場出来なかったらしい。
「強豪がひしめき合っているがその中でも最大最強が秀徳高校。去年は全国ベスト8しかも今年は海常と同じようにキセキの世代が1人入ってる。この超強豪校に勝てなければ全国への切符は得られない」
その秀徳高校とやるには決勝までいかないと行けない訳か。
「黒子!お前どんなやつか知ってんだろ?」
「口で言っても信じないですよ。ただ黄瀬くんが言ってたように他の4人は格が違います。それが更に進化してたら想像もつかないです」
「秀徳に挑むためにもまずは初戦!勝つぞ!」
「「「おう!」」」
そう言えば監督がいないな。
「あの監督は?」
「あぁ一回戦で当たる高校の偵察に行ってるよ」
_ _ _バン!
「ただいま」
「お、噂をすれば」
なんかいつもとテンション感違うな。どうやら一回戦の相手が原因のようだな。
相手は留学生を用いてるチームらしい。
2メートルか。向こうじゃザラだったしこんなヒョロガリなら相手にならんが監督が警戒するのも無理はない。日本には中々居ない体格だからな。2センチとはいえ俺よりデカいやつか。日本では初めて見たな。
ちなみにあだ名はお父さんだ。
名前からもじっただけなんだが中々傑作だな。
俺たちはその日まで練習するしかない。
そして始まったインターハイ予選当日コートに集合し選手たちはアップを開始する。
「てか、お父さん居なくてね?」
「そう言えば」
_ _ _バンッ!
「ん?」チラッ
「ニッポンひくいなんでも」
「でけぇ!ながぇ!」
日向先輩が転ばしたボールを取りに行く。
「そういやオタクら海常に勝ったってマジ?」
「あ、いや、練習試合っすけど」
「なぁんだ思ったよか大したことないんだ。キセキの世代って」
「キセキノセダイ?マケ?ソイツラニカツタメニヨバレタノニガッカリダヨ」
そう良い留学生は歩いていく。
_ _ _ドンッ!
「ングッ!」バタッ
「あ?悪いね見てなくて気づかなかったよ。てか君長いね電柱の柱かと思ったよ。細長いだけで存在感ゼロなところとか?」
「ナニ!」スッ
立ち上がり凄んでくる留学生に対して俺は一歩も引かない。
「クッ!」
留学生の心境としては日本に来て初めて恐怖を抱いていた。日本人は基本的に自分より背の高いヤツ相手にはビビる相手が多かったがコイツは自分とそう変わらない体格に自分を軽く吹っ飛ばしたフィジカル。それにこの目だ。自分をその辺に落ちてるゴミのような目で見てくる。
「フン!キミキライネ!」クルッ!
「あらら。逃げられちゃった」
「おいおい、マジで喧嘩始まるのかと思ったぜ。勘弁してくれよ白神」
「大丈夫ですよ。キャプテン。あいつにそんな度胸はない」
そう言い残し俺も練習に戻る。なぜかキセキの世代をバカにしたあいつが気に入らなかった。
正直この試合は中々乗れなかったがキセキの世代がいる高校までの準備運動くらいにはなるかもな。
「それではこれより誠凛高校対新協学園の試合を始めます」
「「「お願いします!」」」
_ _ _ピピィィィィィ!
_ _ _バシッ!
「おりゃ!」
ジャンプボールを火神が叩く。やっぱあいつ伸びてるな。最高到達点が前より高くなってる。
それを伊月先輩が掴みボールを運んでいく。
_ _ _ダムッダムッダムッパシッ!
パスが回ってきたな。まずは1人目を高速のクロスオーバーで抜き去る。そして日向先輩についていた奴がヘルプに来るがそれを体を翻してスピンで振り切る。
そしてラストのゴール前に立っている留学生の前まで来たところで跳躍する。
_ _ _ダダッ!
留学生が最後の壁のように立ちはだかる――だが真正面からぶつかり、力で押し切った瞬間。
_ _ _バキャァァァァン!
その勢いのままゴールへ一直線。
跳び上がった身体が空気を裂き、リングへ叩き込む――轟音と共に会場の空気が爆ぜる。
「止めたいなら――もっと人数を揃えることだな。ま、この程度なら何人来ても無駄だがな」
「グッ!ナンダオマエハ!」
「バケモンじゃねぇか。なんなんだあいつは」
向こうの留学生とキャプテンが何か言ってるが無視する。
「火神。次からはお前が決めろ」
「あ?おう!」
向こうは明らかなワンマンチーム。留学生にボールを集めゴール下のシュートで点を稼ぐ。ただのチームならそれが通じるが。
_ _ _バシッ!
「ナンデ!ナンデ!」
OFを火神に任せた以上俺はDFに専念するとしよう。
狙うは0点ゲームだ。
こちらは火神のダンクと日向先輩のスリーで得点を量産し向こうは俺と水戸部先輩の前にいまだに得点を重ねられない。
_ _ _ピピィィィ! 第一クォーター終了 28:0 誠凛リード
向こうはすでに戦意が喪失している。所詮身長に任せた雑なプレイしか出来ないあいつは底が知れている。
「火神お前今からダンク以外でシュートを決めろ」
「あ、なんでだ?」
「前から言っていたがオマエはダンクに拘る傾向が強い。今のレベルなら通用するが俺、キセキの世代相手にはそれは通用しない」
「…」コクッ
火神が頷いたのを確認して俺たちはコートに戻って行った。
ここからは更に一方的だ。火神は始めこそ普通のシュートに苦戦を強いられ中々決められない展開が続いたがやはりあいつもキセキの世代クラスのセンスの持ち主。
第二クォーター終盤にはコツを掴みシュートを量産していた。更に第三クォーターからは黒子も投入しパスで試合を決めにいく。
向こうは留学生がゴール下で決められないことを理解すると博打のようなスリーを連発したりするが精神が乱れろくに練習していないであろうシュートが入るわけもない。
_ _ _ピピィィィィィ! 試合終了! 128:0 誠凛勝利
「「「ありがとうございます!」」」
「ツギハマケナイ!シロガミ!」
「…」フイッ
「ムシスルナ!」
色々言ってくる留学生を無視して俺たちは体育館を後にした。
その後も誠凛高校の快進撃は止まらなかった。
次の2回戦実善高校こちらも俺と火神の攻撃を止められるものはいなく136:22で圧勝。そして3回戦対金賀高校。昨年ベスト16の攻守共にバランスの取れた強豪であるが火神の攻撃に俺の防御を貫くことは出来ず108:0で圧勝。
そして4回戦
「今日は苦戦するかもな」 「おいおい今日の相手は誠凛だろ?余裕だぜ」「去年はマグレだろ」
「あぁ!」「…」
なんだこなら柄の悪い奴らは。
イキがいいのは初めだけだった。なぜか終始火神と黒子に怯えた相手を一蹴。136:12で完勝。
「調子いいっすよね。このまま決勝リーグ行けんじゃないっすか!」
「甘い甘い」 「若いねぇ」
「決勝リーグを経て選ばれる代表はここ10年同じ」
「東の王者秀徳・西の王者泉真館・北の王者正邦力が拮抗してるから一位は毎年変わるが4位以下は寄せ付けない。東京不動の三大王者だ」
「そして次を勝てば決勝でぶつかるのはおそらく…キセキの世代緑間真太郎が加入した東の王者秀徳高校」
「けど先輩たちも去年決勝リーグまで行ったんですよね?」
「…ま、手も足も出なかったけどな」
うちの先輩たちは決して弱くはないがそれでも歯が立たなかったと言うことはそれほど差があったと言うことなんだろう。3大王者ね。
「とくに一年よく見ておきなさい。東京都三大王者の一角秀徳高校」
きたな。
「ちょっと挨拶に行ってくるっす」ガタッ
「へ?」
「おい!」
火神が立ち上がり秀徳…ってか緑間に向かって歩き始めた。
「よお!お前が緑間真太郎だろ?」
「そうだが?誰なのだよ?君は」
そして火神が左手を差し出した。
「ん?握手か?」
キュッキュッキュ
「んな!」
あいつ緑間の手になんか書きやがったな。
「普通に名乗ってもいかにも覚えてないとかいいそうなツラしてるからなお前。先輩たちのリベンジにゃあきっちり覚えてもらわないとな」
「ふん!リベンジ?随分と無謀なことを言うのだな」
すると隣にいた黒髪の男が
「誠凛さんでしょ?てか先輩から何も聞いてないの?誠凛は去年三大王者全てにトリプルスコアでズタボロにされたんだぜ?」
「息巻くのは勝手だが力の差は圧倒的なのだよ」
その言葉を聞いて俺は歩き出す。
_ _ _カツカツカツ
「随分と上から言ってくれるな」
「ん?な!?」
_ ズゥゥン…
登場した瞬間、体育館全体が「支配」されたかのように静まる。強者特有の余裕と風格、動かなくても感じる圧。思わず緑間と隣の黒髪の男・高尾が後ずさる。
凡人には立っているだけで「勝てない」と錯覚させる存在感
「力の差?理解していないようだな。挑むのはこちら側じゃない。お前たちが挑戦者だ」
「…お前みたいな化け物がいるなら黄瀬が負けたのにも納得なのだよ」
「何だ、知ってんじゃん」
「…確かにお前がいるならそっちの赤髪がイキがるのも分かるか。黒子よお前が新しく見つけた相棒はコイツか」
「…いえ」
「なに?まさか?やはりお前は気に食わんな。色々いいたいことあるが決勝で会おう」クルッ
そう言い残しアップの練習をするために戻っていき俺たちはコートを後にした。