青峰がゾーンの扉を強制的に開き今その境地に至った。これまで個人としては明確に白神を抜いて得点を重ねるなんてことはあのキセキの世代"エース"青峰大輝をもってしても叶わなかったが今それが破られたのだった
「…」
「まずはここまでの借りを返さねぇとな」
「伊月先輩…ボール回してください」
俺は大輝がゾーンに入った時点で俺と大輝以外のチームの力量差が開き過ぎておりどっちみち大輝の相手を出来るのが俺しかいないことを理解した上でもう一度確かめようとしていた
_パシッ!
「今まで誰にやられてたのかもう忘れたらしいな大輝…一度抜いただけで調子に乗るなよっ」
「…ふぅ」
体育館に響く足音の密度が変わった。
コート中央――二人のエースの衝突が、試合の“温度”そのものをさらに上げていく。
_ダムッダムッダムッ
センターラインからゆっくりとボール突く白神…
青峰が前で構える。ディフェンスの重心はごく僅かに前――
いつ抜かれても反応できる準備をした状態だ。
そして、白神の左足がほんの少しだけ開いた。
(…来る!)
青峰が理解した瞬間――白神は加速した。
俺はボールを一度ついた後全速で駆け出し大輝が追いついてきてると理解した瞬間右ハンドでの軽い インサイドアウトから急激な インサイドブレイクへ切り替える。
_ダダンッ!
「はっ!あめぇぜミカ!」
それでも抜けないことを理解していた俺は更に大輝が反応した瞬間――
もう体を回転させスピンムーブで抜き去る!
大輝の手が俺の肩をかすめるが、届かない。
「速い……っ!」
――だが。
抜き去ったはずの俺の背後で、ひときわ重い足音が弾けた。
「……は?」
振り返る暇など、一瞬たりともなかった。
もう届かないと思っていたはずの距離を、青峰はすでに詰めていた。
バシュッ!!
「っ……!!?」
手首を根こそぎ持っていかれるような鋭さで、青峰の右手がボールを叩き落とす。
俺のスピンムーブの“出口”を完全に読み切った上で、最短ルートで刈り取ってきた。
(今のを…反応するのかよ!?)
白神の身体がわずかに揺れ、落ちたボールを青峰が拾い上げた瞬間――
体育館の空気が一気に張り詰めた。
「…やっぱ…俺に勝てるのは俺だけだ」
青峰の声は低く、静かで、しかし明確に“圧”があった。“ゾーンに入った”ときのあの研ぎ澄まされた気配…次の瞬間
「青峰ぇ! 行かせねぇ!」
火神が飛び出しブロックに入る。
だが青峰は――まるでそこに“最初から相手にしていない”かのように通り抜けた。
「うおっ!? くそっ!?」
火神の驚愕の声が響く。
次の瞬間、青峰はインサイドに切り込み、俺の前で急停止する。
靴底が床を焼くように鳴り、青峰の上体がわずかに沈んだ。
俺は火神が一瞬足止めをしている隙にゴール下まで駆け抜けゴール下で待ち構える
(来る―――!)
「止められるもんなら止めてみろよ、ミカぁ!!」
ドゴォッ!!
跳んだ瞬間、
今までの跳躍とちがうことに気づいた。大輝はどちらかというとパワープレイを基本にしてる選手ではなくストリート特有のトリッキーなオフェンススタイルで得点を量産しているタイプだった。それが頭に少しでもよぎった俺だったが…
俺のブロックの上から強引にシュートを叩き込んできたのだった
「っぐ……!」
手のひらが衝撃で痺れる。
だが吸い込まれるようにボールはリングへ吸い込まれた。
「……白神くんが…ここまで」
黒子が呟く。
その後もコチラの攻撃は青峰には阻まれ向こうの攻撃の時間が続く
ダムッ……ダムッ……
左右に揺られながらリズムを刻む青峰の手がわずかに動いた瞬間――
「ッ!!」
右へ強烈なクロスオーバー。
俺がその動きに食いつくが、それすら計算のうちだった
俺が体重を右に寄せた瞬間、青峰は急制動。
キイィッ!!
床を擦る音がなり
俺の足が一瞬流れた。
「……ッ!?」
その“重心のズレ”こそが狙いだった。
青峰は左手でボールを包み込むように引き、俺の右脇下――
“最もブロックに移行しにくい死角”へ身体ごとすり抜ける。
そしてそのまま抜き去り、俺と言う障害が消えた瞬間
ドッ!!
青峰が加速し
センターラインを跨ぎその瞬間、火神が対応に飛び出す。
「今度は抜かせねぇぞ、青峰!!」
「お前じゃあ足止めにもなんねぇよ」
言葉より速く、青峰の身体が火神の懐に入り込む。
すれ違う刹那、火神の足が滑って姿勢が崩れた。
「なっ……!?」
「火神でも相手にならないのか……!?」と伊月が吐く
そしてそのまま青峰はゴール下までかけるが
「行かせない!!」「止めてやる!」
黒子と伊月がヘルプに来る。2人が来たことによって残りの選手がフリーになるが青峰にパスを出す空気は一切なく
_ダムッダムッダダン!
左右にフェイントを掛けながらその身体能力のみで抜き去ったのだった。
そしてゴール直前3人がヘルプにきたおかげで生まれた一瞬のタイムロスで俺はゴール下まで戻ってくることができた
「…はぁ…はぁ…」
「やっと底を見せやがったかミカァ?」
「…お前は随分腕を上げたようだな大輝ぃ!」
俺は再び重心をさげ気持ちを落ち着かせる…いつでもどのタイミングどの角度から攻められても対応できるように…
空気がわずかに震えた…次の瞬間!
そして2人はまるで息を合わせたかのように同時に動き出した
_ダンダン!ダム!ダム!
_キュキュ!キュ!
ゾーンに入った相手――大輝の視界は研ぎ澄まされ、まるで世界がスローモーションになり更にスポーツ選手が通常引き出せる本来の力は80%と言われている中大輝はこのシチュエーション…さらに相手があの"ミカエル"ということにバフがかかり120%の出力を引き出すことに成功していた。対する俺はゾーンには入れていない。それでも、体の奥から絞り出すように集中を固め、これまで磨き上げていたそのスキルにキセキの世代すら退けるフィジカルで大輝の正面に据え続けることが出来た
2人の足の音とボールの音が重なり合うように鳴り響く
大輝が一瞬、右足のつま先で床を叩いた。そこから始まる高速シフトチェンジ。左ハンドのインサイドアウト、からのカウンターで外へ弾くようにボールが揺れる。俺は“読む”ことで追いつこうとする。大輝の体重の乗り方、肩の角度、腰の沈み――すべてを視線で追い、右足のスライドステップで横に滑るように寄せた。
だが、ゾーンに入っている大輝は更に一歩先に到達していた
クロスオーバーの瞬間、ボールが床に触れるタイミングを完全に支配し、俺の重心移動の“遅れ”を突いた。俺は足を切り返してついていく。スライドからドロップステップへ切り替え、インサイドを守る。
「……させるかよ!」
俺の右手が大輝のドリブルラインを潰しにいく。しかし大輝はその指先さえ読んでいた。フロートドリブルでボールを一瞬だけ宙に浮かせる。通常ならリスクの高い動作。しかしゾーンに入った大輝にとっては完全な計算内だった。
俺が一歩潜り込むようにして身体を寄せた瞬間、大輝はスプリットステップでその狭い空間をえぐるように突破しようとした
「っ——!」
「くっ……まだだ!」
「流石だなミカァ!…けど!」
俺は最後の角度を潰すため、ゴール下に滑り込む。体をぶつけ、進路を遮断する最終ライン――その瞬間、大輝の目が鋭く細まった。
大輝はスピードを落とさない。
あえて俺の横をすり抜け、リングを――通り過ぎた。
「何を!?」
俺が振り返るより速く、大輝はステップの勢いを利用してバックジャンプ。リング裏の死角へ飛び込む。空中、体をひねりながら、ボールを片手でホールドし直す。
そこは通常“詰んでいる”位置。普通の選手は打たない。否…打てない。
だが、ゾーン状態の極限の心理状態に入った大輝は迷わず"それ"を選択した
_スッ_ザシュ!_
リングの裏側から、ねじり込むように放つ反転ショット。
ボールは大輝の手から離れ、変則的な高い放物線を描き――
カタン、と軽い音を立ててリングに触れ、
ネットが静かに揺れた。
決まった。否…決まってしまった
俺は着地しながら、悔しさに奥歯を噛む。ゾーンに入った大輝だからこそ成立した、まさに“青峰大輝”という存在をまざまざと見せつけられた常識外の一撃。
「…はぁ…はぁ…まぁよくやった方じゃねぇの?お前が来たから俺はここまで更に上がってこれたからな。そこは感謝してるぜ…でも…やっぱ'俺に勝てるの…俺だけだ"」
「……」
俯くミカエルに対し青峰はそう言い残し自軍ゴールに去っていった。
現在の得点【88対86】誠凛がわずかにリードしているがもはや逆転は目の前…ゲーム状況を加味するなら僅差ではないほどの現実が突きつけられる
「大丈夫ですか白神くん…」
「みっくん…」
俯く俺に対して黒子とさつきが心配そうな声をあげる
大輝に決められた後俺は昔…アメリカにいた頃…それもあのスーパースターと対峙した時に似た心理状態に陥っていた
心臓の位置が少し下に落ちたような感覚。
視界の端が暗くなる。
肩が重い。呼吸が浅い。
(……強ぇ。マジで強ぇわ…あぁ…久しぶりだこの感覚、ずっと忘れてたこの気持ち…)
自分で自分を突き放すような言葉が浮かび、胸の奥に冷たい痛みが広がる。それほどまでにゾーンに入った大輝のプレーは異次元だった。技術の話じゃない。判断でもない。“見えている景色の深さ”が違った。
認めたくなかった。しかし――
(あいつは今…明確に俺より……上の次元に突入した)
その事実を飲み込んだ瞬間、胸の奥で何かが爆ぜた。
屈辱でも、悔しさでもない。
もっと原始的な、むき出しの感情。
羨望あるいは歓喜
そして、それを超えたいという"渇望"
俺は項垂れた頭をゆっくり上げた。
泣きそうでも、折れそうでもない。
代わりに――高揚が、喉元まで込み上げてきていた。
(……俺もあそこまで登ってやる。あの景色、俺にも見せろ…)
世界が急に鮮明になる。
床の摩擦音、空気の流れ、大輝の呼吸のリズム――全部まとまって脳に入ってくる。
俺は一度まばたきをし、そして悟った。
——来た
自分の中の「門」が、久しく開く感覚を。
心の奥にあった黒い重りが、音もなく消える。
代わりに体の芯が熱を帯び、視界の中心が黒瀬だけに収束する。
怖さはない。焦りもない。
ただ――
(あぁ…思い出してきたこの感覚。頭の中から雑音が消えクリアになる感覚…。)
気づけば足が前へ出ていた。
そして
俺は伊月先輩からボール受け取り軽くつきながら大輝の前まで来る
「…お前…まさか!?」
大輝は俺がゾーンに突入したことを感じ目を大きく開け驚愕する
「悪かったな大輝。もうお前に“遅れ”を取ることはありえねぇ。」
「はっ!おもしれぇ!」
俺はゆっくりとボールをバウンドさせる。
スピード自体は先ほどとさほど変化はない…が
次の瞬間、俺の身体が弾けた。
「!?」
クロスジャブから一気に縦突破。
大輝が反応するより早く、二歩目で加速が跳ね上がる。
重心が低い。ステップの角度も完璧。
(止められるもんなら止めてみろ。)
大輝が滑り込んでくるが、俺は即座に変化。
右足で強烈に床を蹴り、内側へ切り返す――フェイクではない、本気の方向転換。
大輝の肩がわずかに遅れた。
「……っ!」
俺はその一瞬のズレを逃がさない。
ハイポジションでボールをキープしつつ、低くえぐるようにゴールへ侵入。
再び
大輝が最後の壁として前に立つが
さっきは敗れたこのゴール下の場所…
だが今の俺の胸には、そのような敗北の残滓なんて微塵もない。
_ダダンッ!
ボールをあえて高く持ち上げ、吊るように滞空時間を作る。
大輝のブロックの腕が通り過ぎる。
そこから俺は、空中で体をねじりながら右手をゆっくりと引いた。
彼の中では、時間が伸びている。
(ここ!)
バックボード裏を回り込むような変則レイアップ。
大輝の視界の死角に入る角度――まさに先ほど自分が敗れた位置。
だが今度は逆。
大輝の手は届かない。
ボールがボードに当たり、ネットが揺れた。
「「「うぉぉぉぉ!」」」
「やり返したぞ!」「やっぱ最強はお前だ!」「このまま引き離せ!」
観客は爆発したように歓声をあげ
「ナイスだ白神!」「凄いです白神くん」「…ん」「ちぃ…まぁ今日のところは譲ってやるよ」
味方は称賛の声をあげ
「なんや今の…あり得へんやろ…ゾーンに入った青峰を」
「くそ!」
敵は驚愕と畏怖の表情が離れず
「はっはっはっ…最高だぜミカァ!そうでなきゃ面白くねぇ!」
「上から言ってんじゃねぇよ大輝…ここから更に…飛ばすぜ?」
_ゾワッ
「!?」
白神が発言した瞬間青峰は良いようのないようなプレッシャーを正面から浴び野生の本能でそれを察知し咄嗟に臨戦体制をとる
「??」
「…」
俺は急に構えた大輝を不思議に思いながらも自軍コートに戻っていく。ラスト30秒にして4点差ここがこの試合のキーポイントになることは間違いない
「すいません…俺にボール回してくれないですか?」
「あぁ…初めからそのつもりだよ」
俺はポイントガードを務める伊月先輩に申し出をする。それは暗に大輝との1on1を希望することと同じことだった
「…」
「情けない話ゾーンに入っちまったお前らを前に俺たちが変に動く方がかえって試合を止めてしまいかねない…そうなってしまったら今は勝っているがこの先どうなるかわからないからな」
「それに…監督や日向の許可も貰ってる…おそらく向こうも同じ考えだと思うぞ?」
_チラッ
俺が監督とキャプテンの方に目配せすると2人はこちらを向きながら頷いているのがわかった
(そっか…チームのみんなは俺に託してくれているんだな…なら…答えない訳には行かない…か)
正直にいうとチームの勝利と同じくらい大輝との勝負にこだわっていた俺はこの試合初めてチームの勝利が個人の勝利という気持ちを上回ったのだった
――残り 30 秒。点差は4点差
体育館の空気は限界まで張り詰め、観客のざわめきすら“遠くで揺れる波”のようにしか聞こえない。
俺の瞳は深いゾーンの光を宿したまま、大輝を射抜いていた。
大輝が今吉からボールを受ける。
文字通り東京都…いやもしかしたら全国…最強のエース同士、最後の対峙。
「…ふぅ」
「…」
_ダムッダムッ
緊迫の空間を破ったのは大輝の高速のドリブルだった
ハングドリブルでリズムを外し、インサイドアウト→クロス→スピン。
通常なら追えない速度の連鎖。
ーしかし相手も同じ力量を持つ最強エース
俺の視界はその“未来”まで捉えていた。
大輝が回転する――
回転軌道の外、たった20センチの“死角”に俺は滑り込んでいた。
「くっ!?」
タイミングは完璧。
俺の手が大輝のドリブルに吸い込まれ、
_ガッ!
衝撃とともにボールが弾け飛ぶ。
俺が奪った。
残り 23 秒。
観客席が揺れるほどの歓声をあげ更にボルテージを上げる
(ここで決める。ここで終わらせる!)
俺はそのまま一気に前へ。
大輝が後ろから追う――ゾーン同士の全力勝負。
_ダムッダムッダダン!
俺は高速のクロスオーバードリブルから急停止し、大輝の重心を一瞬浮かせる。
次の瞬間、一気に縦突破をはかる
しかし大輝をギリギリのところで身体能力とバランス能力を駆使し追い縋る
_ダダン!
俺はさらに高速レッグスルーから身体を沈め、一気にトップスピードへ。
コンマ0.1秒の瞬間を見逃さず一瞬で抜き去りゴール下へ跳び込む
大輝が僅かに遅れ後ろからブロックに跳ぶも
俺は空中でボールを大きく振りかぶり、
外側をえぐるように通して――
360°ターンへ移行。
観客が悲鳴のように叫ぶのが分かる
俺は更に宙で一回転しながら、
リングへと右腕を振り下ろした。
ゴウッッ!!!!!
地鳴りのような音とともに、
俺の手はリングを破壊する勢いで叩き込む。
360°ウインドミル・クラッチダンク。
リングが揺れ、体育館の空気が震える。ここにきての最上クラスの大技に観客が大声援をあげる
残り 9 秒
「まだや!まだ諦めへん!頼むで青峰!」
_パシッ
「はぁ…はぁ…」
大輝最後の攻撃を仕掛けるが――
俺がゾーンのまま大輝に張り付き、
残り 2 秒でシュートモーションに入るも
_ピンッ
僅かに触れた俺の指先が掠めゴールリングにあたり外れる
そして
__ピィィィィィィィィ!!
「試合終了!」
こうして誠凛対桐皇…白神と青峰の対決に幕が閉じたのだった