す。
試合終了を告げるブザーが会場に鳴り響いた
スコアボードの数字が確定し勝者を明確にした
誠凛高校――勝利
その瞬間体育館が、遅れて揺れた。
「「「うぉぉぉぉぉ!!!」」」
誰かの呟きが、合図だったかのように、ベンチから歓声が弾ける。
椅子が倒れ、タオルが舞い、控え選手たちがコートへ飛び出してくる。
「っしゃああああ!!」
「やったぞお前ら!!」
「か、勝ったのか?」「ええ…うちの勝利です」
伊月がまるで現実で起こったことを受け入れられていないかのように呟くと同時に黒子が相槌をうつ。誠凛サイド皆が歓喜の渦に酔い逸れるなか…そこに立役者である白神の姿は無かった
センターサークル付近。
彼は膝に手をつき、深く息を吐いていた。
「……はぁ……は……」
視界が、まだ完全には戻らない。
ゾーンと呼ばれる超集中状態が途切れた直後特有の、世界が一拍遅れて動く感覚が白神を襲った。
ゾーン自体はこれで2度目の経験となった白神だが前回…アメリカで突入した時はワンプレーのみであり今回とは入った時間がまるで違った。
しかしその中疲労した中でも…仲間の歓声はだけは聞こえておりそれが自チームの勝利を伝える音色であったことを理解することは難しく無かった。
(……勝った、のか)
しかし白神本人は勝利した実感が薄かった。極限の集中状態…余分な意識を全て削ぎ落とした結果…青峰と言う強敵を超えるためだけに集中した結果…が今の状態に繋がっていった
「…負けたぜ…ミカ」
「…大…輝…か」
「ヘトヘトじゃねぇか。…流石のお前でもゾーンに入るってことはそれ相応のリスクを背負うってことか。この調子だとどっちが勝ったか分からねぇな」
「……ふぅ…うるせぇよ…んなことよりコレで俺の二勝だな!」
「はぁ!?てめぇっこの状況でそんな事言ってくるか普通!」
「負けは負けだろ大輝くん?てかなんだっけあれ…『俺に勝てるのは俺だけだ』…だっけ?あれやめた方が良いぞ?外野から見てると中々に厨二発言…」
「て、てめぇ勝ったからって好き放題抜かしてくれるじゃねぇか!コラミカ!」
「ちょ、おい辞めろって!こっちはヘトヘトなんだぞ!」
「うるせぇ!おめぇが余計な事抜かすからだろうが!」
先ほどまでの緊迫した試合の雰囲気が嘘だったかのように戯れ合う2人を見て試合直後にもかかわらず何処か和むような空気感が漂ってきた
「なんや負けて傷心しとるこっちの方がおかしいみたいやんけ」
「今吉…」「キャプテン…」
「…次…次だ!次やったら絶っ対にうちが勝つ!」
「ほんまうるさい奴やのぉお前は…まぁ…ええわ」
今吉はコチラを見つめる日向や伊月の方を向き直し
「今回はワシらの負けや…けど…次…次おうた時はウチが勝つで?首洗ってまっとき…ほんじゃあ!まぁ!そろそろ退散するでぇ〜桃井〜エース様はよ呼んでき〜」
「は、はい!」
負けた直後にも関わらずリベンジという言葉を彷彿とさせる態度で話す今吉に対し日向と伊月は…
「あ〜いうのなんだろうな…名門を束ねる器っていうのは」
「…日向?」
「…いやさ…俺キャプテンのくせに今大会交代出場ばっかじゃん?…たまぁに情けなくなるわけよ…特にあ〜いう強豪のキャプテンとか見ると余計な…」
「…日向は良くやってるよ…それに」
「??」
「ウチにはキセキレベルが2人もいるんだぞ?アイツら纏めるなんて今吉さんどころか全国探してもそう居ないって!」
「…ははは…そうだな!でも!次会う時までにはもっと選手としてもキャプテンとしても渡りあえるようにしとかねぇとな!」
「おう!」
新たな決意を固めた日向を、見て伊月も大きく頷く
そして白神たちは…
「…うっせっ!」「おい!良い加減首外せよ!」
白神に対しなぜかヘッドロックを仕掛ける青峰という誰が見ても半年前まで疎遠だったとは思えない光景が広がっていた
「大ちゃ〜ん!そろそろ次の試合始まるから帰らないと怒られちゃうよ!ってみっくんに何してんの!?」
「おう!さつき!おめぇの彼氏が適当なこと抜かすからよっ」
「このアホ止めてくれよさつき!」
「もう!本当に怒られるよ2人とも!」
「俺も!?」
一見して勝者と敗者という構図だが幼少の時に白神が日本から去った後の青峰を側で見ていた桃井はこの光景すら懐かしさを覚え不思議と起こりながらも笑顔を浮かべる
「…次…インターハイでやる時は俺が勝つからな!」
「はっ!何回やっても負けないさ!」
「ほら行くぞさつき!」
「もう大ちゃん!」
「さつき…また後で連絡するよ」
「うん!待ってる!」
言いたいことだけ言い残し青峰は桃井を連れ添って会場の出入り口へ歩いていく
。…その後白神達誠凛高校の面々も会場を後にし自軍の休憩室がある室内の方向に向かった。
「「「…よっしゃぁぁぁ!!!」」」
「やべぇよやべぇよ!キセキコレで3撃破目だぜ!」「もしかして俺たち全国行っちゃう?」「いやいや!青峰のいる桐皇倒したんだから優勝狙えるだろ!」
勝利した余韻で浮かれる満面を見た監督は
「はしゃぐな!!」
「「「っ!?」」」
「ど、どうしたんだよ監督…」
浮かれていた小金井がリコに問いただす
「…今日の試合…序盤第一クォーターは接戦…ここまではうちの作戦通りであり対策出来てた。…でも第二クォーターから一度青峰くんを中心としたオフェンススタイルに対応できず流れを持ってかれたのは分かっているわね?そしてあたしが1番言いたいのが第三クォーター…青峰くんが抜けた状態にも関わらず第四クォーターで桐皇が逆転出来る得点差に落ち着いてしまった事…これは何故だかわかる?」
「「「…」」」
「そもそも今日の試合…白神くん抜きならウチは負けていたわ!」
「そ、それは向こうも青峰がいたし当然じゃあ!」
「…青峰くんを抜きにして…も…よ」
「「「!?」」」
「今日の試合…向こうのPG4番1人に伊月くんと黒子くんは完封…センター対決でも向こうの若松くんに対して水戸部くんは全てのスタッツで負けているわ。…唯一対抗できていた火神くんでさえそこまでの力の差はなかったからダブルチームを仕掛けられた瞬間に何も出来なくなってしまったわよね?」
「ぐっ…」
明確に指摘された火神は苦い顔をして下を向く
「いやでも!伊月にしても向かうのPGは三年だしっ」
「アホみたいな事抜かすな!…はぁ…勝負事に年齢は関係ないわ…」
「…」
「もう分かってると思うけど…ウチの課題は個々の実力…能力の向上よ!…正直に言うわ。このままもしインターハイに進んだとしても何処かで必ず負ける!…
嫌なら少しでも練習すること!以上!」
「「「はい!」」」
「…あの〜」
「ん?なに黒子くん?」
「…白神くんがいません」
「…いつから?」
「…初めからです」
「…んのクソガキャァァァァ!!」
「うぉぉぉぉい!お前らも止めろ止めろ!」
暴れ出した監督を日向含め仲間がなんとか止めようとしていた頃…
当の本人はというと…
「What the hell is with the sudden phone call?」
(なんだいきなり電話なんてしてきて)
「Hey, come on—don’t be so cold, Mika!」
(おいおい連れねぇじゃねえかよミカ!)
「So… what do you want, Silver? I’m not heading back to the States yet, you know」
(んで…要件はなんだシルバー…まだアメリカには戻らねぇぞ?)
「You’re still saying that crap?! Dealing with monkeys isn’t fun at all, right, Nash?!」
(まだんなこと言ってんのかよ!サルなんて相手してても面白くねぇだろ!なぁナッシュ!)
「Nash is there too… It’s been a while, Nash」
(ナッシュもいるのか…久しぶりじゃないかナッシュ)
「Yo… while you were busy dealing with those lousy monkeys in Japan—a basketball backwater—we became the No. 1 team in Eastern America, you know? Right, Silver?」
(よう…テメェが日本なんてバスケ後進国のクソ猿なんて相手してるうちに、俺たちは東アメリカでNo. 1のチームになっちまったぞ?なぁシルバー)
「What, did you call just to brag? …If you’re gonna talk big, at least wait till you’re No. 1 in the whole country before calling me. I’m busy over here… I’m hanging up.」
(なんだ、ただ自慢したくて電話してきたのか?…どうせなら全米でNo. 1になってから連絡してくるんだな。こっちは忙しいんだよ…もう切るぞ?)
「Heh… hold on a sec… I didn’t call you just for that. …I told you we became No. 1 in Eastern America, didn’t I?」
(くく…まぁ待てよ…何もそんなことのために電話したんじゃねぇ。…さっき東アメリカでNo. 1になったって言っただろ?)
「Yeah… and what does that have to do with anything?」
(あぁ…それと何か関係あるのか?)
「Yeah… turns out the prize for winning was the right to challenge the No. 1 youth team in the country. Our team—and the champs from the West—got those tickets.」
(あぁ…その優勝賞品が全米ユースNo. 1チームへの挑戦権でな。ウチと西のチャンピオンがそのチケットを貰ったってわけだ)
「Heh, good for you. That’s about the best chance you could ask for if you’re aiming to go pro. …So why are you telling me this? …Don’t tell me you’re asking me to come cheer you on.」
(ヘェ〜よかったじゃないか。プロ目指す上でこの上ないチャンスだな。…なんで俺にそんなこと伝えたんだ?…まさか応援しに来いってんじゃないだろうな?)
「Tch! I don’t need some guy cheering for me… just listen. Right now, our team’s got five players. The tournament requires six, counting a sub. …If it were some half-assed opponents, we could just grab any scrub. But this time, the competition’s on a whole different level. …And when it comes to you, well—we’re used to dealing with you.」
(ちっ!野郎に応援されるような趣味なんてねぇよ…まぁ聞け…俺らのチームは現状5人だ…大会には補欠も合わせて6人いんだよ。…生半可な相手ならその辺の雑魚捕まるだけだが今回は相手が相手だ。…テメェに関しては俺らも慣れてるからな)
「Heh… playing with you guys again for the first time in a while doesn’t sound bad… but sorry. I’m at a pretty important stage over here too.」
(はは…久しぶりにお前らとやるのも悪くないかもな…でも悪いな…少しこっちも大事な時期なんだ)
「Tch! I told you to listen, didn’t I… damn it. …The other side’s got some seriously troublesome guys. I’m gonna send you a video—check it right away.」
(ちっ!…聞けっつってんだろ…はぁ…敵に厄介な奴等がいやがる。動画送らせるからすぐ確認しやがれ)
(厄介な奴ら?…こいつがそこまで言う相手なんて…)
そう思いながらスマホに送られてきた動画を確認する。
するとそこには…
「はは…軽く耳に挟んだことはあったが…ここまでだったか」
白神の雰囲気が変わる…まるでキセキの世代と対峙している…いやそれ以上のポテンシャルと緊張感を全身から発する
白神のスマホに送られてきたURLの名前には
【Chino Hills High School――全米ユースチャンピオンの異才集団…名シーン集】
そしてその画像の中心に写っている男
《神童・ラメロ・ラフランス・ボール(LaMelo LaFrance Ball)》
いくつもの圧倒的なスキルを持つこの男の中で特筆すべきなのはその得点力… 1試合92得点という驚異的なプレーを見せるそのオフェンス力
まずはそのシュートレンジの広さ… コートレンジ全てからも簡単にシュートを決める事もでき、その長身と身体能力を武器にしたダンクや他のシュートはブロックすらもろともしないほど…
そして2番目がその身体能力…奴はその身体能力で高校史上最年少でのトリプルダブルを記録している。2メートル越えの身長を使いこなしインサイドもアウトサイドも全てこなす。…おそらく身体能力はシルバーと同等かそれ以上…コイツにインサイドに侵入されて時点で1on1では勝ち目は無いだろう
そして何より奴の1番の武器はその『パスセンス』
そうなのだ…コイツのポジションは【PG】シルバー以上の身体能力に緑間並みのシュートレンジを駆使するコイツはあろうことかゲームの主導権を左右するポイントガードを主戦場とする。
それほどの武器や能力を持つ選手がなぜポイントガードをしているのか…答えは簡単だった。
奴は紹介した以上のプラス要素をポイントガードで発揮するからだ。奴がボールを動かせばそのパスは決して止められることはなく味方が「相手が弱くなった」と過信するほどのパスを送る。そして何より奴がポイントガードとして出た試合…《高校通算無敗》…そう…この男がゲームメイクをした試合では負けたことがないのだ。
そしてそのような実績を引っ提げたラメロ・ボールは文句なしの今年のドラフトNo. 1候補筆頭に上がっている
「Did you see that…? It’s not just him, you know. All the others are monsters too—national team level. Listen… I’ll only say this once. We can’t win without you. Come back—for this match alone… come back to America.」
(見たかよ…奴だけじゃねぇぞ?その他の奴らもみんな代表レベルのバケモンだ…いいか…一度しか言わねぇからな…"お前がいなきゃ勝てねぇ"…この試合のためだけに戻ってこい…この…アメリカに)
「“…Yeah. I get it—this time, the opponent really is dangerous.
Just give me a little time… I’m asking you.」
(…確かに今回ばかりはやばい奴が相手なのはよく分かった…少しだけ時間をくれ…頼む)
「“Tch! Hurry the hell up… You’ve got one week.
The match is on the weekend two weeks from now. We’re in the second game.
Considering what those guys are like, there’s no way we can go in without any coordination.
We’ll need time to get in sync… so get your ass to the States as soon as you can.
Later」
(ちっ!早くしやがれ…期限は一週間…試合は二週間後の週末だ。俺たちは二試合目…奴らのことを考えたら流石に連携なしで行くのはありえねぇ…合わせる期間もいるな…早く渡米することだな…じゃあな」
そう言い残しナッシュは通話を切っていった。
「…ふぅ…」
俺は大きく息を吐きこれから起こることを頭で整理しなおす。
皆さんの反応見ながら書いてますので感想とかこれからもどんどんお願いします!