BREAK THE LIMIT   作:心ここにあらず

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再会と成長

インターハイ予選・桐皇戦から1日後…白神は1人誠凛高校バスケ部の部室に向かい歩き出していた

扉の前まで来ると中から日向と相田リコの話声が聞こえてくるのがわかる

 

 

ーーコンコンーー

 

 

「はぁ〜いってあれ?白神くん?どうしたの?」

 

「ん?どうしたんだ?今日は練習は軽い調整だけだからもう帰っていいぞ?」

 

 

ノックを掛けると数秒後相田リコと日向が目の前に現れた

 

 

「…いや今日は別件でお伺いさせていただきました。少し時間いいですか?」

 

「「??」」

 

「い、いいけど」

 

 

いつもと違う雰囲気の白神を前にリコと日向は思わず顔を見合わせ戸惑いながらも入室を許可するのだった

 

 

 

「んで…どうしたんだ?こんないきなり」

 

「いきなりって言うか昨日の帰りから暗かったわね?なんかあった?」

 

「…ええまぁ…とりあえずコレ見てくれませんか?」

 

「「??」」

 

 

 

俺は昨日ナッシュから送られてきたChino Hills High Schoolのハイライト動画をそのまま見せることにした

 

 

「…んだこりゃ本当に高校生か?バケモンじゃねえか」

 

「…ええ…噂には聞いたことあるけど…これはちょっと…噂以上かも」

 

「まさか同世代でキセキ以上の奴等がこんなにいるとはな…世界怖っ!」

 

「…それで?この動画を見せてくれた理由は何?」

 

 

 

リコと日向は少し困惑したような表情で白神に尋ねる

 

 

 

「…実は…昨日試合が終わってすぐアメリカにいる幼馴染から連絡があったんです」

 

「「アメリカ…」」

 

「そいつもバスケやってるんですけど幼少期の頃は一緒にチーム組んでストバスの大会に出たりしてました。…俺が日本に行くためにチームを抜けるって話をした時もそいつらは嫌なこと一つせずに送り出してくれました。あ、多少は嫌味言ってくるような奴も居ましたけどね」

 

 

白神は当時を振り返りながら少し微笑んで話し出す

 

 

「そいつら… Jabberwock(ジャバオック)って言うストリートのチーム組んでるんですけどつい先日東アメリカのチャンピオンにまでなったらしいんです」

 

「凄いわね!」

 

「ヘェ〜アメリカで半州とはいえ優勝するなんてお前の友達も大概バケモンなんだな」

 

「ええ。問題はその後なんです。…その大会の優勝賞品は全米ユースチャンピオンへの挑戦権だったんです。…まさにその動画に映っているのがそのチャンピオンです」

 

「…マジかよ…これとやんの?」

 

「…」

 

「…そしてそのチームでキャプテンをしている幼馴染からこの試合にメンバーとして出場する招待を受けました」

 

「「…」」

 

 

つい先日からの白神から発せられる空気感とこれまでの会話を総評して2人はこれから白神が何を言い出すのかを予期するのだった

 

 

 

「すいません…正直に言います…俺をアメリカに行かせてください。…今チームがどんな状況か理解しています。それを承知の上で今回これをお二人に伝えています。…お願いします」

 

「…いいよ。行ってきな。」

 

「え!日向くん!?」

 

「…」

 

「…今回の大会…一年…いやお前に頼りすぎてたからな俺たち…この前監督が言った通り、桐皇戦なんてそれが顕著に出過ぎていた。このまま勝ち進んだとしてもし…仮にお前すら止めるような奴が出てきたら…ウチはあっという間にやられるだろう。…せめてキセキの世代がいないチームくらいは俺らで勝たねぇと…」

 

「…日向くん」

 

「…それに…別にインターハイに間に合わねえってわけでもねぇんだろ?これ1日だけだし」

 

「はい。インターハイは開催は来月ですよね?…なら帰国してると思います」

 

「…よし。なら行ってこい。…あ、怪我だけは勘弁な…ほら監督」

 

「…はぁ…もう!…今年の一年生はほんと…本当に凄い奴らだわ。…本当はね今回の白神くんの前に火神くんにもアメリカでの修行を提案されてたのよ」

 

「火神が?」

 

「ええ。なんでも向こうにバスケの師匠がいるんだとか。…一年生がここまで積極的に強くなろうとしてるのに止めれるわけないじゃない?どのみちインターハイ予選くらい私たちで勝てなきゃ上では戦えないと思うしね。…良いわよ?存分に暴れてきなさい。あ、お土産宜しくね?」

 

「…ありがとうございます」

 

 

白神は再び深々と頭を下げるのだった。この時期にこんな急なお願いに対して優しく対応してくれる先輩たちに白神は心からの敬意を抱いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜

俺はさつきと一緒にルナを公園で散歩していた。親や先輩やチームメイトにはそれぞれアメリカに帰国することは伝えており後はさつきだけだった。

 

 

「さつき…」

 

「ん?どうしたのみっくん?」

 

「さつきに言わなきゃならないことがあるんだ」

 

「…?」

 

「俺アメリカに帰るんだ」

 

「え!?なんで!?いつ!?」

 

「あ、いや、落ち着いて!ね?」

 

「彼氏が急にアメリカに帰るって言うのに落ち着いてられないよ!」

 

「それについてはごめん!…昨日急に決まったことだったから…色々整理できたから説明するね」

 

「……はぁ……」

 

さつきは深く息を吐き、ルナのリードを握る手に力を込めたまま立ち止まった。

街灯の下、夜の公園は静かで、虫の声だけがやけに大きく聞こえる。

 

「……説明して。ちゃんと全部」

 

「うん」

 

俺は一歩だけ前に出て、正面からさつきを見た。

 

 

「昨日、桐皇戦が終わった後に……アメリカにいる幼馴染から連絡が来たんだ。

そいつ、ナッシュって言うんだけど昔一緒にバスケやってたアメリカの幼馴染でさ……今も向こうでストリートのチーム組んで大会とか出たりしてるんだ」

 

 

「……それは前に聞いたことあるかも」

 

「それでね、そのチームが先日東アメリカの大会で優勝してその優勝賞品として……全米ユースの高校チャンピオンに挑むことになったんだ」

 

「…それとみっくんになんの関係があるの?」

 

「…その相手ね俺でも見たことないレベルの奴らなんだ」

 

「そんなに?」

 

「…うん。さつきにもわかりやすい例えで言うと…俺はキセキの世代は3人しか見たことないけど…仮にあの3人と残りの2人がそこまで力量差がないと仮定して進めると…キセキの世代が奴らに挑んでも…絶対勝てないと断言できるレベルの奴らなんだ」

 

「!?」

 

 

さつきにとってキセキの世代というのはバスケを語る上で強さの象徴であり…今は白神という存在がいるためキセキの敗北という言葉もチラホラ聞こえるが少し前まではキセキが1人いるだけでそのチームは優勝候補に上り詰めるほどの傑出度を誇っていた天才集団だったのだ。

 

それを間近で見た白神が"負ける"とはっきり答えたのだ。

それは身近で青峰や他のキセキを3年間見てきたさつきにはすんなり受け入れることができない言葉だった

 

そしてそこまで考えついた瞬間さつきの表情が強張る。

 

「……まさか」

 

「…うん…その試合に、メンバーとして出てくれって言われたよ」

 

「……出るつもりなの?」

 

「あぁ…誠凛のみんなには許可は貰った。…さつき…俺は将来NBA選手に必ずなるつもりだ。…今回はその前問みたいなもんだと思ってる。相手の1人はNBA入り確実とされる天才らしいしな」

 

「…」

 

「試してみたいんだ。…今の俺がどこまで通用するのかを…それこそ本当の世界一位との差をね」

 

 

さつきは何も言わず、ただ白神を見つめていた。

怒っているわけでも、泣いているわけでもない。…ただ数年ぶりに会えた恋人と再び離れることになることが頭から離れられなかった。

 

沈黙が落ちた。

 

ルナがくん、と小さく鳴いて、さつきの足元をぐるりと回る。

 

 

「期間は二週間…すぐ戻ってくるさ。…帰ってきたら1番に会いに行く」

 

さつきの肩が、小さく震えた。

 

「……みっくんはさ」

 

「?」

 

「……本当にズルいよ」

 

「……え?」

 

さつきは顔を上げ、少し潤んだ目で俺を睨む。

 

「そんな顔でそんなこと言われたら……止められるわけないじゃん……!」

 

「さつき……」

 

「心配するなって言われても無理だし……寂しいし……

でも……」

 

ぎゅっと唇を噛み締めてから、さつきは一歩近づいてきた。

 

「怪我だけは絶対ダメ。

……帰ってきたら、ちゃんと連絡して。

それで……」

 

 

さつきは少し照れたように目をコチラに向けぼそっと呟くようにはなった

 

 

「……ちゃんと、私のところに戻ってきて」

 

 

そう言い残すと目を閉じ上を向く。

俺は何も言わずただその合図に応えるようにさつきの頬に左手を当て優しく包み込むように唇を重ねた

 

数秒重ねただけの接吻だが…白神と桃井の心は先程までの不安が無かったかのように消えていくのが分かった

 

 

ーークゥ〜ンーー

 

 

足元のルナがコチラを見つめながら泣いたのをきっかけにお互い顔を見合わせて微笑む

 

 

「そろそろお家帰りたいって言ってるみたいだね」

 

「そうだね。…そろそろ帰るか」

 

「うん!」

 

「今日どーする?泊まってく?」

 

「うん!ママにもそう言ってきたんだ!」

 

 

 

そう言い残しながら2人は仲良く手を繋ぎながら自宅へと帰って行ったのだった。

 

そしてその3日後俺はアメリカへ渡米するための飛行機に乗っていたのだった。

両親との再会、ジャバオックの面々との再会、来週に控えてるユースチャンピオンとの試合…これから起こることを色々と想像すると興奮が抑えられないのが自分でもよく分かった。

 

 

そうして片道14時間かけて降り立ったアメリカ・ニューヨークの地…俺が改札出入り口を抜けるとそこには

 

 

「「ミカ!」」

 

「久しぶり…父さん、母さん」

 

 

俺を見つけて抱擁をしてくれる半年ぶりの両親の姿…そしてその背後には…

 

 

「…よう…待ちくたびれたぜ」

 

「それは悪かったな」

 

 

そう言いながらナッシュと笑い合った俺は両親の車の元一度実家に荷物を預け俺はそのままナッシュとジャバオックが普段使っているコートに足を運ぶことになった。

 

その道を歩いている時

 

 

「んで…どうだったんだよ…クソ猿どもとのゲームは」

 

 

あんだけ行く前とこの前の電話の時に日本人のことを馬鹿にしていたくせに少しは興味を抱いていたナッシュに驚くも

 

 

「3…4人か…面白いのがいたぞ?レベル的には3人はそれこそお前らジャバオックにいても遜色ないレベルの奴がな」

 

「なにっ!?あんなクソ後進国の猿どもと俺らが並ぶってのか!」

 

「いや明確にお前とシルバークラスなのは1人だけだ…が…ポテンシャルは他の3人とも同じくらい良いの持ってたよ」

 

「…テメェまさか…負けたんじゃねぇだろうな?」

 

「んなわけねぇだろ…俺が負けるかよ」

(大輝の時は結構競ってたのは黙っとこ…めんどくさそうだし)

 

「ちっ!日本なんて行きやがって弱くなったんじゃねぇだろうな」

 

「それはねぇよ…それなりに収穫はあったしな。それよかお前らはどうなんだよ。半州とはいえチャンピオンになったんだろ?流石だな」

 

「…あぁ…俺らが負けるわけねぇだろ」

 

「んで…その賞品があの怪物たちってわけか」

 

「…テメェはどうみる」

 

「…そうだな。俺が入ることを加味しても五分…いやもしかしたら負けてるかもしれない。…そんくらいのものを持ってるよアイツらは」

 

「ちっ!…俺らが有利な点があるとすれば俺らとやる前に先に西の雑魚どもが先に戦るってことか」

 

「…そうだな」

 

 

一抹の不安を抱きながら俺たちはコートに辿り着くのだった。

コートの中にはすでにジャバオックの面々が揃っており

俺たちを見つけると…

 

 

「よぉ!久しぶりじゃねぇかぁ!ミカァ!」

 

「痛いって!お前また筋肉増えてるじゃねぇかシルバー!」

 

「元気そうだな」

 

「お前らもなアレン、ニック、ザック」

 

「んで…わざわざ迎えにまで行った彼女はなんでそんな不貞腐れてんだよ」

 

「誰が彼女だシルバー!ちっ!」

 

「…試合のこと考えててな…ちょっと不安がってんだよこいつ」

 

「テメェも適当なこと言ったんじゃねぇぞ!…まぁいい。とりあえず…ニックッ!」

 

「お、おう!」

 

 

旧友との再会も束の間にナッシュはニックを呼びかけニックからボールを受け取る

 

 

「テメェが本当に訛ってねぇのか見極めてやる。試合のことはそれからだ」

 

「…面白い…お前こそ高々アメリカの半分制したくらいで調子乗ってるみたいだから叩き直してやるよ」

 

「おいおい!俺も混ぜろよミカァ!」

 

「お前は後だシルバー…とりあえず3点先取りで良いだろ?」

 

「…あぁテメェに先行は譲ってやるよ」

 

 

そうして急遽始まった俺とナッシュの1on1は3点勝負の先取りという形で行われることになった。

先行は俺…一度ナッシュにボールを回してからもう一度受け取り、ボールを突きながら重心を少し落とす…

コンクリートに響く低いドリブル音

目の前ではナッシュが半身、一歩目を完全に潰す構えを取っている

 

 

「…来いよ」

 

 

ーーダムッーダムッーダムッーー

 

 

俺は左手で低く二回、

三回目でわざとリズムを変えるドリブルを突く。左から右へクロスオーバーを行う。するとナッシュの前足が、ほんの数センチ動いたのが見えた瞬間… 俺は右足を軸に、背中で距離を作りボディシールドを行いながらインサイドアウト…レッグスルーと繋げ重心を下げたまま、一気に左へ切る。

 

「甘ぇ!」

 

 

ナッシュがすかさず反応する

腕が伸び、進路を塞ぎに来る。

 

――だが

 

ナッシュならば必ず止めにくると分かっていた俺はドリブルを一瞬止める。

止めた“間”で、

半歩だけ下がるステップバック。

 

ーーダダン!ーー

 

着地と同時に

ワンツーでジャンプしミドルレンジからシュートを放つ

 

 

ーーザシュ!ーー

 

 

ナッシュは小さく舌打ちした。おそらく1点目は派手にインサイドで勝負を仕掛けてくると予想していたため半歩反応が遅れてしまったのが今回の敗因だと理解していた

 

「次はお前の番だナッシュ」

 

「ちぃ!いい気になってんじゃねぇぞ…」

 

「あぁ…勝負はこれからだ。俺に見せてくれ」

 

 

ナッシュは無言でボールを受け取ると、口元に獰猛な笑みを浮かべた。

 

「……1点で調子に乗るなよ、田舎帰りがっ」

 

ナッシュは一切フェイントを挟まない。

右手で高く、強く、地面を叩くようなドリブル。

 

――ダンッ!!

 

コート全体にボールを突く音が響きわたる

そしてそのドリブルから繰り出される一歩目は異常なほど速い。

 

(来る…)

 

俺は腰を落とし、進路を限定する。

だがナッシュはそれを読んだ上で、さらに踏み込んでくる。

 

「邪魔だ!」

 

肩がぶつかる。ぶつかっただけで分かる…俺の知っているナッシュよりも数段フィジカルが鍛えられている。…この半年間ウェイトにも力を入れやがったか…

成長したフィジカルを見せ付けるようなドライブを繰り出す

 

 

――だが

 

俺は吹き飛ばされない。俺も生半可な練習をしてきた訳じゃないし元々俺の方がこいつよりもフィジカルは強い。

足裏で地面を噛み、半身で受け流す。

 

「……っ!バケモンがっ!」

 

ナッシュの目が僅かに見開かれた。

(止まる……!)

 

その瞬間、ナッシュはボールを一度引き戻し、俺の肩口越しに――

ノールックで背面に回すようなドリブルチェンジを行う

 

「なっ――」

 

反応が一瞬遅れ

ナッシュはそのままインサイドへ突破ふる

 

そして大きく跳躍し

 

――ドンッ!!ーー

 

リングに直接叩き込むようなワンハンドダンクをたたき込み

その衝撃に思わずリングが揺れる

 

「「Foooo!!」」

 

周囲から歓声とも野次とも取れない声が上がる。

シルバーが腕を組みながらニヤついた。

 

 

「おいおい!俺にも早くやらせろよ!」

 

「うるせぇぞシルバー!もうちょっと待て」

 

「…はは…こうでなくちゃなナッシュ」

 

 

俺はボールを拾いながら、ナッシュを見る。

そうしてこのゲーム…結果だけ見ればその後俺が決めナッシュの攻撃を止めることに成功し3:1で勝利することになるのだがこれで勝ったとは俺も思ってはいなかった。お互いフルパワーでは無かったし今回の場合は少し力を証明したに過ぎなかったからだ。

ただ…お互いの力量を計るには十分でありこのゲームを機に俺は再びジャバオックというチームに再加入したような気持ちになるのだった。

 

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