BREAK THE LIMIT   作:心ここにあらず

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Irreversible The New Order(不可逆の新秩序)part1

ミカがアメリカに入国した日の夕方…練習終わりに久しぶりにジャバオックの面々と夕食に行く流れになった。

 

ニューヨークの空がオレンジから濃紺へと沈みきる頃、

俺たちはいつものコートから少し離れたダイナーに集まっていた。

 

 

「っしゃー!今日はミカの帰還祝いだ!」

 

 

シルバーが無遠慮に声を張り上げ、

テーブルにドン、と巨大なハンバーガーを置く。

 

 

「お前、それ三つ目だぞ……」

 

「細けぇこたぁいいんだよ!」

 

「いや細かくねぇだろ!」

 

 

アレンが呆れたように肩をすくめ、

ニックとザックは既にいつも通りだとスルーしながら黙々と皿を空にしている。

 

 

 

半年ぶりだというのに、

このチームの空気感は何一つ変わっていなかった。

 

 

――変わらないな。昔からコイツらといる時はこんなバカみたいな会話しながら何も考えず飯食ってたっけな。俺がアメリカに行ってからもずっとこんな感じだったんだろうなってのがすぐ分かった。

日本だと俺はさつきとしか基本的にご飯は行かないため男の連れと夕食に行くのは少しだけ考え深くなっていた。

 

 

「……で?おめぇの愛しの女は連れてこなかったのかよ!」

 

 

シルバーがバンバーガーを噛みながら、

俺の方を見て言った。

 

 

「連れてくるわけねぇだろ。そもそも短期間の帰国だし向こうも学校あるからな」

 

「くは!わざわざオメェが自慢するほどの女なんざ見てみたかったのにな!写真ねぇのかよ写真!」

 

「確かに…あんなにスクールに通ってる時に大勢の女に言い寄られても見る気もしなかったミカの女か…」

 

「気になるっちゃ気になるな…」

 

 

 

シルバーが振った俺の彼女についての話題にニック、ザックが思いのほか食いついた。…こいつら人の恋愛なんて微塵も興味なかったくせに

 

 

「あってもオメェらには見せねぇよ」

 

「あ?なんでだよ!」「そうだぞ!シルバーはともかく俺らは良いだろうが!」

 

「俺はなんでダメなんだよ!」

 

「お前絶対好みだったら合わせろとか言い出すだろ…んな危ねぇ奴に合わせるわけねぇだろ」

 

「想像じゃねぇか!」

 

 

 

 

そうして久しぶりの再会となったジャバオックとの夕食は久方ぶりとあって会話も弾み楽しく談笑しながらも過ごしていくのだった

 

そして数時間後ダイナーを出る頃には、

ニューヨークの夜は完全に沈みきっていた。

 

他の連中とは店の前で別れ、俺とナッシュも帰路につく

ネオンに照らされた道路を歩きながら、

俺とナッシュはほとんど言葉を交わさなかった。

 

さっきまでの、

ジャバオックの馬鹿騒ぎみたいな空気が嘘のように、

胸の奥が静かに締まっていく。

 

そして

 

 

「…おそらく…いや…十中八九西の野郎どもはチノヒルズには勝てねぇだろう」

 

 

「ん?あぁ…その話か…」

 

 

ナッシュが切り出した話題に一瞬判断がつかないもののすぐに理解しナッシュが先ほどまで口を開いてなかった理由を考察する。

コイツは普段からそこまで口数が多い方では、ないものの今日はそれを加味してもどこか上の空だったように感じた。…おそらくずっと1人来週の試合のことを考えていたのだろうな

 

 

「アメリカ最強のユースチャンピオン…か…正直動画は見たが想像もつかねぇな…実力は既にプロクラスなのが何人もいやがる」

 

 

短い沈黙が訪れる

 

どこか悲壮感の漂う空気感の中俺の実家に着くと、

俺はすぐに部屋へナッシュを通した。

 

ノートPCを起動し、

動画を再生する。

 

 

 

再生されたのは、

今年の全米ユース決勝戦の映像

 

まず映ったのは――

コートをいやゲームそのものを“支配”する青年

 

 

《神童・ラメロ・ラフランス・ボール》

 

ラメロは、

ただのスコアラーじゃない。

まず目を引くのは、異常な判断速度。

ドライブ中でも、

ディフェンスが“寄る前”に答えを出している。まるで…ラメロが相手選手をコントロールし自らの手足のように動かしてるかのように…

 

 

「…この負けたチームでラメロのマークをしていた奴の証言では…奴…ラメロに操られ自らのプレーが出来なくなるような感覚に陥る…ってな」

 

 

そして更にもう一つコイツのシュートレンジは、

ほぼコート全域確かにそれも驚異なのは間違いない

 

 

 

だが厄介なのは――

 

 

 

過去に奴と対戦した選手が語るには…まるで全てがコイツに支配されているように感じるらしい。具体的な場面で言うとボールを持って攻めているはずが何故かこちら側が追い込まれているような心理状態に陥り、やがてマッチアップしている選手は心が衰退していくそうだ。正直インタビューの言葉だけじゃあ理解できなかった。

 

それがどう言う意味なのか…どう言う原理なのかは分からない

勿論奴の目に見えるスペックだけでも十分化け物じみてはいるがコイツには他に何かあるはずだ。目に見えないほどの…実際に対峙したものにしか分からない真の能力がな…

 

 

 

 

そして2人目が

 

 

 

《Zero Motion・マーカス・レイン》

 

 

コイツはまぁ所謂シューターって感じなんだが…分かりやすく言うと緑間だな。

シュートレンジも緑間とさほど変わらないだろうな。

緑間と同じシュートレンジってだけでもかなり驚異的なものを持っているんだが"あれ"は火神でも攻略した通りかなりの"溜め"を要するため止めるだけならさほど難しくはない。…勿論止める側にも色々条件はつくけどな

 

だがこいつのシュートは…所謂"ワンモーションスリー"

 

映像でもわかる通り

最初は誰も気づかない。

ただ「反応できなかった」と思うだけだろう。

 

 

キャッチからリリースまで、

“溜め”が存在しない。

 

通常のスリーポイントは、

構える → 膝を沈める → 跳ぶ → 放つ

という段階がある。

 

だが、ワンモーションスリーは違う。

 

ボールを受けた瞬間、

肘・手首・体幹が同時に連動し、

一つの流れとして解き放たれる。その結果ディフェンスは本来のタイミングでブロックしようとしてしまう。しかしだがこのシュートは、そのタイミングで構えた時点で、もう遅く指からボールは離れてしまっていると言う訳だ

 

 

「…更に言うとコイツは異常なほどに脚力を鍛え上げているのか己のシュートレンジなら全てのシュートをワンモーションで放ってきやがる」

 

「…その結果…誰もコイツのスリーに触れられていないってことか」

 

「…コイツが現在アメリカ・アマチュアバスケのNo.1シューターとして認められている」

 

「…No. 1のチームにNo. 1のシューター…か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして最後…このチームの3人目のポイントゲッターであるのが

 

 

 

《Monster: ザイオン・カーター》

 

 

 

映像からでもわかるほどの鋼の肉体に天性の跳躍力…

 

 

身長:222cm

体重:128kg

ウイングスパン:246cm

体脂肪率:8%前後

 

上半身は岩盤のように分厚く、

胸囲は200cm近い。

肩から腕にかけての筋肉は、

“盛り上がっている”というより

張り付いた装甲のようだ。

 

下半身は特に異常で、

太腿の断面は常人の胴回りに近い。

その筋肉が、ただ重いだけでなく

爆発的な推進力を生み出す。…だそうだ。

 

 

「同世代では初めて見るな。…シルバーよりデカいやつ」

 

「…コイツは如何にもゴール下…パワープレイヤーって訳なんだが…正直言ってラメロやマーカスみたくふざけた能力を有しているわけじゃねぇ…言ってみりゃあ、ただフィジカルに物言わせて暴れてるだけ…」

 

「…でも」

 

「…あぁ…目に見えて分かる数値だけでもコイツはバケモノだ。…単純なパワーとジャンプ力ってだけだがそれでもコイツの荒々しい"暴力"みてぇな力には誰も敵わなかった」

 

「しかもこいつ…持ってやがるな」

 

「あん?」

 

 

コイツはおそらく大輝・火神・シルバーと同種…

つまり【Primal Aura―《野生》】を持っていやがる 

 

しかもレベル的には…

 

大輝や火神より…いや…シルバーよりも上からも知れない。本質的にはシルバーに最も近い…か

 

 

 

技巧や才能以前に、

コート上で

物理法則を押し通す存在である。

 

 

 

 

 

 

Chino Hillsの主戦力は主にこの3人…他にも優秀な奴ならいるんだがこの3人が別格すぎるのだ。

何しろほとんどの試合はこの3人で得点を叩き出しておりこの3人の攻撃だけで全ての試合を制圧して見せたのだ。…それもアメリカの高校全てだ。

 

アメリカの高校の頂に立つと言うのははっきり言ってレベルが違う破格の難易度だ。俺は日本の高校バスケも知っている。

だからこそ、アメリカの高校の頂に立つということが、どれほど狂った難易度をしているかが分かる。

 

日本の高校バスケは、極めて“完成度”の高い世界だ。

個々の才能はもちろん重要だが、それ以上に――

戦術、連携、理解度、我慢。

それらが勝敗を左右する。

 

全国に行けば、

エース一人で勝てる試合なんてほとんど存在しない。

どんな強豪校でも、

スターター五人が同じ絵を見て、同じリズムで動いてチーム全員で勝ちに行く。

所謂チームプレーに重きを置くスタイルをオーソドックスなスタイルとしている。

 

だから日本では、

「個が強い」だけの選手は、必ずどこかで止まる。

才能があるだけじゃ足りない。

勝ち方を知らなければ、上には行けない。

 

――だが、アメリカは違う。

 

アメリカの高校バスケは、

まず母数が狂っている。

 

一州だけで、日本全国の競技人口に匹敵する。

その中から、

才能があり、フィジカルがあり、環境にも恵まれた連中が

さらに“ふるい”にかけられる。

 

日本で言えば、

全国大会レベルの選手が、

地方大会の一回戦で普通にゴロゴロいる感覚だ。

 

しかもアメリカでは、

“個”が壊れない。

 

日本なら、

どれだけ身体能力が高くても、

組織で潰され、研究され、対策される。

 

だがアメリカでは違う。

個を止める前に、次の個が出てくる。

 

一人を止めた瞬間、

別の怪物が牙を剥く。

 

だから、アメリカの頂点に立つチームというのは――

「一人が突出している」では成立しない。

 

怪物が複数いて、

しかもそれが“同時に噛み合っている”。

 

そんな確率の低い奇跡を、

一年を通して維持し続けたチームだけが、

ようやく“頂点”と呼ばれる。

 

だからこそ――

チノヒルズが“世界最強”と呼ばれる理由も、理解できる

 

 

そして同時に、

俺の胸の奥が、静かに熱を帯びていくのを感じた。

 

(まぁ……だからこそ)

 

(倒しがいがある)

 

 

 

 

 

 

 

 

そして一週間後…俺たちより先に西のストリートのチャンピオンがチノヒルズと戦う日がやってきた。

 

会場はニューヨークにあるNBAのレギュラーシーズンでも使われる

プロ仕様のアリーナ

 

とてもアマチュアで使用される会場とは到底思えない場所だった。

 

巨大な天井。

四方を囲む観客席。

センターに吊るされた、

無駄に鮮明な四面スクリーン。

 

コートに立てば、

足音すら吸い込まれるような空間だ。

 

 

「…本当に俺たちもここでバスケすんのかよ…」

 

 

誰かが呟いたが、

それも無理はない。それほど圧倒される空間が広がっていたのだから

 

 

そして俺は左にいるチームを目視する

 

 

西のストリートチャンピオン――

 

通称《West Crown》

 

公式リーグには属さない。

だが西海岸では、

「プロ未満・アマ最強」と呼ばれる連中だ。情報は断片的だが、

分かっていることは一つ。

 

全員が“個人主義”みたいな…まさに言うなれば中学時代の"キセキの世代"のようなバスケをするチームだった

 

 

注目選手はPGのジェイコブ・ロウ。

身長は190少しだが、

ドリブルは異常に早い。

路地裏仕込みのハンドリングで、

ディフェンスの重心を平然と破壊する。

 

SGのディオン・クロス。

シュートフォームは歪だが、これが良く

入る。

しかもクラッチタイムほど入るのでコイツに渡ったら一瞬も気を抜けないほどでありストバスのスリーの最高成功率とシュート数はコイツが持ってるそうだ。

 

インサイドの要、

Cのレオン・バーカー。体格も2メートルを優に超えまさにインサイド特化型のポストプレイを主義にしているプレイヤーだ。

パワーだけなら、

下手をすればシルバークラス。

 

 

 

俺たちが会場の近くまで来ていることに気づいた向こうのキャプテン…ジェイコブがこちらに向かって話しかけてくる

 

 

「お、来てたのかナッシュ!」

 

「ちっ…」

 

 

話しかけれたナッシュは絡まれウザそうにしながら舌打ちする

 

 

 

「久しぶりだな。

相変わらず、間抜けそうなツラしてやがる」

 

「はっ!相変わらず口の悪りぃ野郎だぜ…まぁいいテメェらはそこで俺たちWest Crownがチノヒルズに勝つところを見てやがれ。…そんで次はテメェらだ。首洗って待っとけ」

 

「…おい…」

 

「…あん?」

 

「…一つ忠告しといてやる」

 

「…」

 

「…テメェのマッチアップする相手…"ラメロ"についてだ。…奴の目は見るなよ」

 

「目??…そりゃあどう言うっーーー」

 

「おいジェイコブ!!コーチのお呼び出しだ!早く行ってこい!」

 

「あぁ!?…ちっ!まぁいい」

 

 

そう言い残しジェイコブは俺たちの前から去っていった。…しかし意外だな。コイツがアドバイスを送るなんて…それに"目"?…俺の知らない何かがアイツにはあるのか?

 

 

 

 

 

 

 

そうして始まろうとしている誰も予想できない西のストバスチャンピオン対全米アマチュアチャンピオンの試合は驚愕の結末を迎えることになる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐはっ!」

 

 

 

ーーバキャァァァンン!!ーー

 

 

 

West Crownのセンター・レオンが吹き飛ばされる。…吹き飛ばしたのはチノヒルズのセンターを担っているMonster・ザイオンだ。

何をしたかと言われれば…単純なゴール下の勝負…ボールを持ったザイオンがゴール下で両手ダンクをぶちかましただけなのだが両者共に2メートルを優に越しており尚且つ破格のフィジカルを持つだけに迫力が段違いである。…なのだが両者似たようなスタイルに似通った体の持ち主であるがこのようにレオンが吹き飛ばされる光景はこの試合…序盤から見せ続けられていたのだった

 

…同じような体格ではあるがまるで勝負にならない。ザイオンが攻めればレオンが立ち塞がろうと全てパワーで押し切られゴールを奪われてしまい逆にレオンの攻撃は全てザイオンにブロックされてしまう。

 

 

West Crownのセンターでありインサイドの要のレオンが勝てない以上インサイドの攻防は絶望的でありこの試合の決め手の"一つ"となってしまった。

 

 

 

…そう決め手の"一つ"と言うのはこの試合ここまで圧倒されるには他にも要因が存在するのである

 

 

二つ目はチノヒルズのシューターZero Motion・マーカス。コイツのここまでのスタッツ…

 

 

得点数:60点

 

シュート本数:20本

 

成功率:100%

 

 

ここまで一本も止められることなくスリーを決め続けているのだ。…勿論西のチームも何もしていないわけもなく

 

 

ーーザシュ!!ーー

 

 

「くそっ!!」「速ぇぇ!!」

 

 

ダブルチームでマークしているにもかかわずそれを歯にもかけずきめつづけているのだ。

 

 

 

…そして最後は

 

 

言うまでもなく、この男だ。

 

《神童・ラメロ・ラフランス・ボール》

 

数字だけを見れば、

この時点でのラメロの得点はそこまで多くない。

 

だが――

それが何を意味するのか。

 

コートに立っている西の連中は、

もう理解していた。

 

理解してしまったが故に、

何も出来なくなっている。

 

 

「……っ、クソ……!」

 

 

ジェイコブが歯噛みする。

 

目の前でラメロが、

何でもないようにドリブルを刻む。

 

特段速くもない。

派手でもない。

 

なのに――

守れない。

 

一歩、

また一歩。

 

 

 

 

 

 

ジェイコブは考える。…なんなら通用するんだ?この化け物に…

 

 

 

「そろそろ飽きちゃったし終わりにしようかな!」

 

 

そうラメロが呟いた瞬間…ラメロの瞳が蒼白く染まる。単なる蒼ではなく、吸い込まれるような深みと透明感を持つ神秘的な色彩に…

 

 

 

 

 

 

 

そして吸い込まれるようにジェイコブの視界に、その眼が入った瞬間

ふと――“違和感”が走った。

 

 

睨まれているわけじゃない。

威圧も、殺気もない。

 

ただ――

見られている。

 

いや、正確には違う。

 

「観測されている」

 

そう理解した瞬間だった。

 

 

 

――あ。

 

 

 

次の瞬間、

ジェイコブの脳裏に、映像が流れ込む。

 

・抜こうとして止められる自分

・パスを選んで潰される自分

・シュートを打たず、時間だけを使う自分

 

まだ起きていないはずの“結果”。

 

なのにそれは、

既に起きた出来事のように確定していた。

 

 

 

(……待て)

 

(まだ何もしてねぇ)

 

(なのに……なんで……)

 

 

 

身体が、前に出ない。

 

違う。

出る意味が“無い”と理解してしまった。

 

この先にある全ての選択肢が、

同じ結末に収束することを

ラメロの瞳が、静かに告げている。

 

《"お前は、この試合に勝てない"》

 

ジェイコブは、

ボールを強く床に叩きつけた。

 

だが、音だけが虚しく響く。

 

 

 

(……クソ……)

 

(これが……)

 

 

「まぁまぁ楽しめたよ!よく頑張ったね!」

 

ラメロが楽しそうに呟く。

 

 

 

その光景を目撃したナッシュが、

観客席で小さく呟いた。

 

 

 

「……あぁ……くそっ……やはり持っていやがったか…」

 

「…あ?…アイツもお前と同じ眼を持っているのか?」

 

「…いや俺の《魔王の眼(ベリアル・アイ》とは違う…」

 

「なに?」

 

「…聞いたことはある。…やつと対戦した奴らが言うには…《創世神の眼(ジェネシス・アイ)》…そう奴が言っていたらしい」

 

「…神だと?随分大それた名前だな」

 

「…能力までは分からねぇがな…」

 

 

 

 

そうして

 

 

 

 

『ピィィィィィィィィィ!!!試合終了!!』

 

 

 

【148:28 勝者 チノヒルズ高校】

 

 

結果だけ見れば圧勝…それも底がまるで見えなかった。これがアイツらの全力とは到底思えない。

…勿論西の奴らが弱いなんてことは決してなかった。一人一人がキセキの世代とまでは言わないが注目の3人だけはキセキと同格か近しい力はあったからな。

 

それでもまるでプロと高校生が戦っていると思わされるほどの力の差が存在した。…特にチノヒルズのポイントゲッターの3人…どれもがこれまで対戦したことのないレベルなのは間違いない。

 

 

"世界最強のチーム"に偽りなしって訳か…

 

 

 

「…ちっ!…ずらかるぞ」

 

「…いや待てナッシュ」

 

「あ?…」

 

「…どうやらお呼びらしいぞ?」

 

「…ちっ!…テメェが行ってこい」

 

「…いやこのチームのキャプテンはお前だ…ナッシュ…な?」

 

「「「おう!!」」」

 

「クソどもめっ!」

 

 

悪態をつきながらもポケットに手を突っ込んだままナッシュは階段を降りていく。

 

そして1番前の席付近まで行ったところで止まる。

 

相対するは…"世界最強の選手"と評される男

 

 

《神童・ラメロ》

 

 

「君たちが明日ウチと対戦する東のチャンピオンなのかい?」

 

 

 

ラメロの蒼白い瞳が、静かにナッシュを捉える。

対するナッシュも

 

 

「はっ!ウォーミングアップは済んだか最強?」

 

「ウォーミングアップ?…あぁ…はは…面白いことを言うねぇ」

 

「…」

 

「あの程度ではウォーミングアップにすらならないよ。…聞けば彼らはストリートの西アメリカンのチャンピオンらしいね。彼らも決して弱くはないが相手が僕達だからね。かわいそうに」

 

「…何がいいてぇ」

 

「君たちはそのストリートの東アメリカンのチャンピオンだそうだね。はっきり言ってあげよう。君たちじゃ役不足だ。…僕たちを相手にするならそれこそプロを引っ張ってきなよ。」

 

「テメェッ!」

 

「ああ…勘違いしないでね。僕は君たちのことを思って言ってるんだ。何せ僕と対戦した選手たちは皆バスケを辞めていくからね。…ほんと弱いやつに気を使うのは疲れるよ」

 

「…」

 

ナッシュはラメロの瞳を見つめた後脳内で理解したのだった。…こいつはマジでこれを言ってやがる。1ミリの悪意もなく純粋な疑問と慈悲の気持ちを持って…

 

 

「弱いやつに気を使うだと?…テメェ誰に向かって上からモノを言ってやがる」

 

「…??何をそんなに怒っているんだい?」

 

「テメェのそのなんでも見透かしたかのような態度が気に入らねぇ!…いいか楽しみにしていやがれ」

 

「…」

 

「テメェの王朝は明日で終わりだ。」

 

 

「??」

 

 

ナッシュは、右手をポケットから出し、

中指を立てる。そして

 

そのまま――

 

首元を横一文字に、なぞる。

 

 

 

「テメェは明日俺様直々に処刑してやる」

 

 

 

そして後ろを振り返り歩き出すナッシュ

 

ラメロは数秒の沈黙の末

 

 

「…はは…」

 

 

ラメロは、その言葉を反芻するように瞬きをし、

やがて、ほんの僅かに笑った。

 

その笑みは、興味。

初めて向けられた“個人”への関心。

 

 

 

「君は……面白いことを言うね」

 

 

ナッシュはもう、振り返らない。

 

 

「…行くぞ…」

 

「…あぁ」

 

「「「おう!」」」

 

 

 

そうしてその背中が観客席の出入り口へと消えていく。

 

 

 

ラメロはしばらく、その方向を見つめたまま動かなかった。

 

 

 

蒼白い瞳が、わずかに細められる。

 

 

 

(未来が、少しだけ――見えなかった)

 

 

 

生まれて初めての“空白”。

 

 

 

ラメロは無意識に、胸に手を当てていた。

 

 

 

「……明日が、少し楽しみだ」

 

 

 

それは初めて、

対等な存在に向けて発せられた言葉だった。




ラメロは考える中で最強の選手として生み出しました!

マーカスは緑間とDear Boysに出てくる天童寺高校の本田 裕太のハイブリットみたいな感じです!

ザイオンは単純にシルバーと紫原でも勝てないと思わされる選手を思い浮かべながら…
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