BREAK THE LIMIT   作:心ここにあらず

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Irreversible The New Order(不可逆の新秩序)part3

現在《4:2》でジャバオックがリードしているが試合自体は拮抗している展開が続いている。

 

ラメロが微笑みなからボールを突く。特別速いわけでも何か独特なリズムがあるわけでも無いがナッシュは攻めきれずにいた。

 

その理由の一つがラメロの目にある。ナッシュ自身も特別な眼を所有しているところからラメロの眼を他の選手よりもさらに危険視しておりそれが仇となり中々攻めきれないのだ。

 

 

「それにしても…彼はいいねぇ…うん。"こちら側"に踏み込んできている」

 

「あ?…何を言ってやがる」

 

「まさか同じ世代に僕たちとやり合える人がいるとはね。良い誤算だったよ」

 

「テメェさっきから何言っーー」

 

 

 

ナッシュが言葉を発した瞬間

 

ラメロは急加速しドライブを始める…左から右へそしてさらに左へ…まさに神業に近いハンドリング操作でナッシュを翻弄する

 

 

(なんつぅドリブルしやがるこのガキ!?)

 

 

しかしナッシュがやられてばかりいる筈もなく僅かな隙を窺いスティールを試みる

 

 

「その程度かい?」

 

「ぐっ!」

 

 

しかしこのタイミングのスティールはラメロに完全に読まれており失敗する。そしてそれと同時にラメロは左ライン側にいる男にパスを出すのだった。

 

 

「出過ぎた杭はしっかりと打ち込ませてもらうよ…ねぇマーカス?」

 

 

パスを受け取ったのはチノヒルズが誇るNo. 1シューター・マーカスであった

 

 

「あいよ!」

 

「そう簡単に撃たせると思っているのか?」

 

「はは…お前が強いのはよぉ〜く分かったっての…その上で言わせてもらうぜ?」

 

「??」

 

「お前に俺は止められない」

 

 

そう呟くと同時にマーカスはワンハンドで低く叩いたドリブルが一歩、二歩と床を裂くように走る

 

しかしそのマーカスのマッチアップをしているのは…ミカエルである。そう簡単に抜ける筈もなくしっかりと張り付き警戒を怠らない。を落とし、重心を前に置き、進路を完全に塞ぐように守る…

 

 

「その程度か?」

 

「はは…そう焦んなよ!!」

 

 

そう呟くと同時にシュートモーションに入ろうとしていることにミカエルは気づく。ミカエルは動きを先読みし、完璧なタイミングでシュートコースを塞ごうとする。そして…一対一の空間に、張り詰めた緊張感が漂う。

 

しかしその刹那の攻防

 

マーカスはミカエルのの予測を嘲笑うかのように、信じられない速さでボールを頭上に持ち上げた。ドリブルからシュートモーションへの移行が、ほとんど同時に行われ予期していたミカエルでさえ必死に手を伸ばしたが、ボールが指先をかすめることすらできない。

 

 

「なにっ!?」

 

 

ーーザシュ!!ーー

 

 

放たれたボールは、美しい放物線を描き、ためらいなくネットを揺らした。

 

 

《4:5》

 

 

「な?だから言ったろ?お前じゃ止められないって」

 

 

今俺は完全にスリーを警戒してた筈だ…にもかかわらず俺に触れることすら許さず完璧にシュートを決めて見せた…

 

初めての感覚だ…

 

 

 

「…ふ…ふふ…あははは!…次は必ず止めてやる!!」

 

 

「??……なんだお前…そんな表情(かお)も出来んじゃねぇか!」

 

 

ミカエルにとってここまで完璧に決められたのは久しぶりの感覚だった。…そして心の中でおそらくこのような強者を求めていたのだろうか…

 

ミカエルはやられたばかりだと言うのに獣のような獰猛な笑みを浮かべるのであった

 

 

「おいミカァ!!…」

 

「あ?…なんだよナッシュ」

 

「テメェ分かってるんだろうな?」

 

「あ?あぁ…分かっているさ…マーカスは俺に任せろ。…嘘ついてもしょうがないから正直に言うがまだあのシュートは止めらんねぇ…ありゃあ相当だわ」

 

「…」

 

「ま、でも止められないのは向こうも同じだ。俺のオフェンスもアイツに止められない。点の取り合いなら負けないぜ?」

(まぁ…ゴール下で待ち構えるあの化け物をどれだけシルバーが抑え切れるかにもよるがな)

 

「…ちっ!…」

 

 

そう言うとナッシュ少し不満そうにしながらも納得するしか無いのかそのままボールを突きながら進んでいくのだった

 

 

 

 

そしてそこからは互いの矛が両者の盾を貫くような展開が続いていく

 

 

俺はボールをトップで受けた瞬間クロスオーバーを繰り出し一拍置いて、逆へのチェンジオーバーを繰り出す。そしてそれを高速で繰り返していく。

ボールが床を叩く音だけが残りフィジカル・スピードで劣るマーカスは半歩、完全に遅れる。

 

そしてその一瞬を俺が見逃す筈もなく

 

そのまま踏み込み、

体を流すように後ろに飛ぶ跳ぶ

 

 

「なっ!?」

 

「お返しだ!!」

 

 

俺が選択したのはフェイダウェイのシュート…必ず抜きに来ると考えていたマーカスは俺のシュートに驚き声を上げ、俺のシュートで指先を離れたボールが、

静かにネットを揺らした。

 

 

ーーザシュ!!ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へい!!」

 

 

ラメロからパスを受け取ったマーカスはフェイクを織り交ぜながらミカエル相手に素早いモーションでスリーを放って行く

 

勿論ミカエル自身最大限の警戒を敷いているのだ…それでも止めることが叶わず結果…

 

 

ーーザシュ!!ーー

 

 

「へいへい!そんなんじゃ俺は止められないぜ!?」

 

「…ちっ!…」

(マジでヤベェな…タイミングやシュートモーションの速さ…これまで相対したことないレベルだからか…中々イメージと合わねぇ)

 

 

 

『ピィィィィィィィィィ!! 第一クォーター終了!!』

 

《18:28》チノヒルズリード

 

そうして第一クォーターがチノヒルズリードの展開で終了することとなったのである。

ミカエルとマーカスが互いに互角の得点力を発揮しているにも関わらずなぜこれ程の点差が開いたのか…それは

 

 

 

「…はぁ…はぁ…」

 

 

「…大丈夫かシルバー?」

 

 

第一クォーターが終了しただけにも関わらずなんて量の汗を流してやがる…

 

 

シルバーの額からは試合序盤にしてはあり得ないほどの汗が滴り落ちていた。

というのもこの試合…互いの攻撃の選択権を持つナッシュとラメロはアウトサイドの攻防をミカエルとマーカスに…インサイドの攻防をシルバーとザイオンに託していた。

 

そして試合が始まりここまでの第一クォーター…ミカエルとマーカスは殆ど互角の展開に

逆にインサイドのシルバーとザイオンは…

 

 

 

ーードォォォォォォン!!ーー

 

 

 

「ぐぉ!!!」

 

 

「軽い軽い!!」

 

 

ゴール下の攻防ではシルバーが吹き飛ばされるようなダンクや巨大なフィジカルから想像もできないようなテクニックで翻弄し

シルバーの攻撃時においてもほとんどの攻撃をブロックして見せた。

 

 

そしてそのインサイドの差がこの現時点での得点差に繋がってしまう結果となってしまったのだった

 

 

 

「…はぁ…はぁ…誰の心配してんだよ…テメェはテメェの心配だけしてやがれ」

 

「…シルバー…」

 

「……」

 

 

シルバーのセリフにミカエルは返す言葉が見つからずナッシュは少し考え込むような仕草を見せる

 

 

「ナッシュ!!…まさか俺にパス出さねぇつもりじゃあねぇよな!!」

 

「…」

 

「ふざけんなよ!!…俺様はぜってぇこのままやられたりはしねぇ!!受けた屈辱は絶対に奴に返してやるぜ!!」

 

「…ちっ!…いいかよく聞け…現状あまり展開は良くねぇ…このまま続けてもこの点差が開くか、はたまたこの点差のまま進むだけだ」

 

「…どうするつもりだ?」

 

「…次は俺から仕掛ける…俺があのカスをぶっ潰して野朗どもの勢いを殺してやる」

 

「「「!?」」」

 

「……」

 

 

 

ここにきてナッシュからの提案は第二クォーターでのナッシュとラメロとの一騎打ちだった。…ナッシュとしてはインサイドでウチは押されておりアウトサイドでは互角の展開でこちら側優勢とは言いづらい状況。

その条件を変える策としてアレンやザックでは奴らの3人以外の奴とそこまで差はないと考え残る自らで勝負を仕掛けると言う策を編み出したのだろうな

 

通常は日本だとザイオンにダブルチームやフォーメーションを変えたりと色々と策を打ち出すことはできる

 

別にその作戦を否定する訳じゃあねぇけど

ただ俺たちはそんなんで勝っても嬉しくねぇし何より個人として奴らに負けを認めたことにもなる。…そんなんで満足できるような奴がここにいる訳ねぇからな

 

 

 

「…俺にもパス回せよ。ナッシュ…」

 

「…はっ!…テメェは俺があのカスをぶっ潰すのを指でも咥えて見ておけ」

 

「俺にも寄越せよナッシュ!!」

 

「おいもう始まるぞ!」

 

 

 

俺たちはいつものように軽口を叩きながらコートに再び戻るのであった。

 

そしてここからチノヒルズにジャバオック…

 

互いのチームの心臓を担う男達の直接対決が行われるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二クォーター開始

 

 

《18:28》 チノヒルズリード

 

 

 

ーーダン…ダン…ダンーー

 

 

ボールをゆっくり突きながらコートを突き進もうとするのはチノヒルズが誇る《神童・ラメロ》

 

そしてそれを阻もうとするのがストリートバスケ界の悪童と称される男

《魔術師・ナッシュ》

 

互いにチームの中核を担う男達が再び相対することとなったのだった

 

 

「君たちのチームも中々やるじゃないか!特にあの白髪…気に入ったよ!」

 

「…俺様は眼中にねぇようだな」

 

「ん?あぁ…あまり気にしないでおくれよ。彼と君とじゃあマッチアップしている相手が違うんだから。君が相対しているのこの"僕"なんだからね…」

 

「…はっ…相変わらず気色悪いほどの自信だな」

 

「自信?…違うね。これは根拠のある事実さ。現に現状僕たちが勝っている。これをゲームメイクの差と言わずなんというんだい?…PGという人々を指揮するポジションについておきながらまさか仲間たちのせいにするつもりじゃないだろうね?」

 

「…はっ…いきなり何を言い出すかと思えばゲームメイクの差だと?…まだゲームは始まったばっかなんだよ…」

 

「…勝敗は決まっているのだからあまり関係はないと思うけど?」

 

「…そのカスみてぇな自信を今から俺様が捻り潰してやるぜ」

 

 

 

そう言い残したナッシュは少し息を吐いて集中する。何処となくナッシュの翡翠色の瞳が澄んだように落ち着いていくのがわかる

 

 

「…ほう?…」

 

 

先ほどと空気感が変わったことを瞬時に察したラメロは自らも攻撃を転じることにフルベットし対峙する。

 

 

「試してみようか!!」

 

 

ラメロは低く尚且つ今までより更に数段早くボールを突く。ボールが床に触れる高さは膝下ほどであり音だけが連続して跳ねるように響く。

 

そして…まずインサイドアウトを繰り出し即座にハードクロスに転換する。指先で吸い付かせるようにボールを操り、加速と同時にトップスピードへ入る。

 

ナッシュが反応できないほどのキレを見せる。

そして視界の端で、ナッシュの重心が流れたように見えた

 

 ――抜けると確信し動いた

 

 

(行くよ!)

 

 

次の瞬間

 

 

ーーバシッ!ーー

 

 

ラメロが突いていたはずのボールが切り取られた。

 

 

「ほえ!!」

 

 

ナッシュの手の位置はこちら側に奪いにきたような位置ではなく予めここに来るはずだと…そう確信していたかのようにクロスの頂点、ボールが最も無防備になる一瞬だけを正確に狙っていた。

 

 

驚きつつもラメロはもう一度触れようと指を伸ばすが、すでにボールは相手の支配下であり体を入れ替えられ、視界の前でボールが遠ざかっていく。

 

 

この試合初めて《神童》が刻んだはずのリズムが、

たった一拍で、完全に断ち切られたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

ラメロからボールスティールしたナッシュはそのまま敵陣コートに斬り込みカバーに来た1人を簡単に交わしシルバーがザイオンを抑えていたおかげで簡単に得点を上げることに成功したのだった

 

《20:28》

 

そして去り際…

 

 

「…はっ…ザマァねぇな…」

 

 

上から見下ろすかのようにラメロを睨みつけ戻っていく

 

そしてそれを見たラメロは…

 

 

「…へぇ…君も持っているとはね」

 

 

ナッシュの先ほどのワンプレー…そして瞳を重視しただけで彼が自分に近しい眼を持っていることを暴いたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーダン…ダン…ダンーー

 

 

ラメロが先ほどと似たように一定のリズムでボールを突く。…それはどこか余裕そうな、柔らかな表情を浮かべながら…そして一歩も踏み込まず、重心をわずかに沈める。

 

その一瞬の間に…ナッシュはは距離を詰める。

 

しかしラメロは肩を左に落とし視線も、つま先も、パスコースに一瞬だけ流す

 

次の瞬間――

 

右手のドリブルが、床を叩く音が消える。

ボールは外へ逃げたかと思えば、再び身体の内側へ吸い込まれインアウトしナッシュが踏み込もうとした瞬間今度はショルダーフェイクをしかけ体ごと切り込むと見せかけ、足は出さないようにする

 

ナッシュの左側からドリブルを低く、速く――抜き去ろうとするが

 

 

「見えてんだよ!!」

 

「!?」

 

 

ナッシュはそれすら予期していたかのようにラメロが所持していたボールを横から叩きカットする

カットされたボールはナッシュから見て左前付近に転がろうとしたところ

 

 

「任せろ」

 

 

 

カットされたボールを俺が拾いそのまま攻め込む…マーカスが俺をマークしているが

 

カットされたボールを俺が拾い、そのまま前へ踏み出す。

一瞬の判断だった。ナッシュがラメロを完全に止め、シルバーがインサイドでザイオンを押さえている――今、この一瞬だけ、道が開いている。

 

だが。

 

「……来るか」

 

正面に立ちはだかるのはマーカス。

さっきまでの軽口は消え、目だけが鋭くこちらを捉えている。先ほどとは違い完全に俺を"敵"として…いや…自分を、自分たちを脅かす存在として認識しているような眼をしている

 

 

――いいね。

 

ボールを低く落とし、リズムを刻む。

ワン、ツー。

マーカスの重心がわずかに沈んだのが見えた瞬間、俺は右へ踏み込む――と見せかけて、即座にバックチェンジ。

 

「っ!」

 

身体能力で劣るマーカスが半歩、遅れた。

 

だがマーカスも伊達じゃない。

その遅れを埋めるように、優れた反応速度で身体を寄せてくる。腕が伸び、視界を削る。

 

俺は減速せず、そのまま身体を預けるように踏み込む。

ファウルすれすれ――ギリギリのところで肩と肩がぶつかり、衝撃が走る

 

 

 

「ぐっ……!」

 

それでもマーカスは離れない。

 

――なら。

 

踏み込み足を軸に、上体だけを後方へ逃がす。

視界が一瞬、天井を向く。

 

「……!」

 

先ほどと似たような形のフェイダウェイ。

 

だが、さっきと同じじゃない。

今度は――

 

空中で、ほんの一瞬だけ手首を返す。

 

ボールは高く放たれ、スピンを抑えたまま弧を描く

 

マーカスも追い縋ろうと手を伸ばすが

 

 

「……届かねぇ!」

 

――ザシュ!!

 

ネットが、強く鳴った。

 

《22:28》

 

「……ちっ」

 

着地した瞬間、マーカスが舌打ちをする。

だがその表情は、悔しさよりも――楽しさが勝っているようだった

 

 

 

「やるじゃねぇか……そんなことも出来んのかよ!」

 

「…流れは渡さねぇ」

 

 

 

拮抗した流れが続き両チームともに大体の力量を把握した頃…この均衡を崩すかのように到頭あの男が力を解放させるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナッシュ・ゴールド・Jr.

 

 

彼が持つ眼は、単なる先読みや反射神経の延長ではない。…かと言って誠凛の伊月や秀徳の高尾ような視野が常人より広いと言う個性を持つ《鷲の眼(イーグルアイ)》や《鷹の目(ホークアイ)》とも違う異質の力だった

 

 

それは――

コート上に存在する全選手の“未来”を、同時に把握する能力。

 

一秒後、二秒後。

誰がどこへ動き、誰が誰を助け、誰がフリーになるのか。

ボールがどこへ渡り、どの選択が最も勝率が高いか

 

 

未来は一本の線ではない。

無数に枝分かれした可能性の集合体だ。

 

そしてナッシュは、その“全て”を見渡し、

最も都合の良い未来だけを選び取る。

 

相手が何を考えようと関係ない。

対策を立てようと、意表を突こうと――

その行動すら“未来の一部”として視えている。

 

故に彼は、負けない。

いや――

 

負ける未来を、選ばない。

 

 

故に傲慢不遜とも称される悪魔のような"眼"

 

 

それが

 

 

《魔王の眼(ベリアル・アイ)》

 

この力を駆使しナッシュは如何なる敵をも相手の行動を見抜き、察知し確実な選択肢を選び萎縮した相手を徹底的に葬ってきた。

それこそ…この力を駆使した場合ミカエルでさえタダでは済まないと自負するほどにこの力は強大でありプロでさえない青年が使うには身の丈に合わない力と思われるほどに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――だが。

 

 

 

「……なるほど」

 

ラメロ・ボールは、ナッシュの眼を“視て”理解した。

 

《魔王の眼》が発動した瞬間、

彼の雰囲気が変わりラメロのプレーがまるで何をするのか"分かっていた"かのようにラメロを欺くプレーを見て彼は確かに感じ取っていた。

 

"偶然が消え、全てが必然に置き換えられていく感覚"

 

 

自分と同じような"眼"を持ってる事に確信を得た

 

故に

 

ラメロは、笑った。

 

「……それで“勝ってきた”んだね」

 

 

 

――ダン、ダン、ダン。

 

 

 

ナッシュがボールを突く。

リズムは一定、無駄がない。

視線はラメロだけを捉え、他の選手は見ていない。

 

いや――

 

見ている余裕がない。

 

(右に抜き、左に展開する…そして

 ミカに合わせる未来……全部、見えてる)

 

ナッシュの中で、最適解はすでに決まっていた。

 

――三拍後。

ラメロが半歩下がる。

その瞬間、左ウイングが空く。

 

(……そこだ)

 

踏み込む。

 

――はずだった。

 

 

 

「……?」

 

 

 

ラメロが、下がらない。

 

それどころか、

一切動かない。

 

(……何だ?)

 

未来では、確かにラメロはそこに“いるはずだった”。

だが現実のラメロは、まるで別の未来を歩いている。

 

「――どうしたんだい?」

 

ラメロが、穏やかに告げる。

 

「君の視ている未来……それは

 もう“無効”だよ」

 

 

 

次の瞬間。

 

 

 

――ラメロが、動いた。

 

 

ラメロは半歩左へ動く。

その動きに引き寄せられるように、

ナッシュの視界の中で――

 

“未来”が、書き換わる。

 

(……!?)

 

左ウイングが消える。

代わりに、パスコースが“塞がっている未来”だけが残る。

 

(馬鹿な……!)

 

ナッシュは即座に別の未来を探す。

インサイド。

キックアウト。

ドライブ。

 

――だが。

 

どの未来を見ても、

必ず“ラメロが先にいる”

 

 

 

 

「……君は相手の未来を“見る”事が出来る」

 

ラメロの声が、異様に近く感じられた。

 

「でも僕は――」

 

 

 

――バシィッ!!

 

 

 

ドリブルの頂点を叩き

ボールが、消える。

 

 

 

「僕の思い描いた"未来を作る"事が出来るんだ」

 

 

 

ナッシュの《魔王の眼》が映した未来。

ラメロは、それを“相手に見せたまま”、

別の未来を現実に叩きつけた。

 

 

 

体勢が崩れる。

視界が、追いつかない。

 

ラメロはすでに逆方向へ抜けていた

 

 

 

「……馬鹿な……」

 

 

 

ナッシュの声が、震える。

 

見えている。

確かに未来は見えている。

 

――しかし

 

 

「なっ……!!」

 

 

全ての選択肢が負けている

 

 

ラメロが振り返り、

穏やかな笑みのまま言った。

 

 

 

「君の眼じゃあ僕には勝てないよ」

 

 

 

――ザシュ!!

 

 

 

静かに、ネットが鳴る。

 

 

 

 

 

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