「もう一回だ!もっかいやらせろ!」
「えぇ〜やだよ、絶対終わんないやつだろそれ」
「うるせぇ!もっかいったらもっかいだ!」
「しようがねぇな。これで終わりだぞ」
明らかに自分より格上の選手になって戻ってきた親友にまかされて凹んでるのかと思いきや目を輝かせて挑んできやがった。昔に戻ったみたいで懐かしい気がする。ふと隣に視線をやるとさつきも涙を浮かべてやがる。それを見てしまったら断るものも、断れないだろう。しょうがなくもう1ゲームだけやったが結果は
_ _ _バキャャャャン!!
「レーンアップ!?」 「すごい!!」
俺の10対0の完勝である。しかも最後は大技までつけてあげた。まぁ追いつかれてたら普通に止められてたけどドリブルで完璧に抜いてきた俺を止める術はないだろう。何はともあれ昔のあいつに戻って良かったよ。正直あのままだったら日本に戻ってきた理由が半減するしあのままのあいつと同格のキセキの世代の実力もたかが知れてるからな。
「まじでつえぇわ。おい!」 「ん?」
「アメリカでお前は一番つえぇのか?」
「な訳ねぇだろ。詳しくはしらねぇが今の俺と同格のやつが少なくとも2人はいる」
本当は同格どころか二人で挑んでもこの怪物を止められなかったのだが諦めずに挑み続けた友人たちをミカは高く評価しているのである。
「そうか... フッハッハッハ!」
「なんだよいきなり」 「いや何も。ほんと何してたんだろうな俺は」
そういうと大輝は何か考え出したように下を向き始めた。それを見た俺はもう大丈夫だろうと考えベンチに座っているさつきの方に歩き始めた。
「どうだ?強くなっただろ俺」
「うん!強くなりすぎだよ!」
「まぁな!死ぬほど練習したからな」
さつきは思った。元々大輝はミカに勝ったことすらなかったのである。その状態から方やバスケの母国アメリカの猛者たちに揉まれひたむきに前だけ向き続けた者と方や日本という小さな国で威張って怠けていた者とでは勝負にすらならないのは当たり前である。
さつきと話しているとさっきまで俯いていた大輝が立ち上がりこちらに歩いてきた。晴れ晴れとした表情である。
「あ〜腹減った!もう暗ぇし飯でも食いに行こうぜ!」
「いいな!おすすめ教えてくれよ!」
「行きたい!行きたい!」
大輝の提案で久しぶりに幼馴染3人で飯を食いに行くことになったのである。
俺たちは歩いて俺の家から近い焼肉屋に入った。食卓について肉でも焼こうかと考えていると大輝が
「んでお前高校はどこ行くんだ?」
「あぁ、なんだっけな。確か誠凛って名前だった気がするな」
「えぇ!!桐皇じゃないの!?」「どこだそこ」
「マジでごめん!!どうしてもキセキの世代と違う高校に行きたくてさ」
そうである。この男、自分の彼女に進学先を伝えていなかったのである。聞かれなかったといえばそれまでだが本人は普通に彼女に「一緒に行こ!」と言われれば断れないのが目に見えていたからである。
「ほんとにごめんね。さつきん家近いから毎日うちきてよその為に鍵渡したんだし」
「もう!それだけだと許さないんだからね!」ニヤニヤッ
怒っているふうだが合鍵を貰ったのを思い出して一人でニヤニヤしているさつきである。
「なぁキセキの世代ってどんな奴がいるんだ?」
「あぁ〜そうだな〜」
そこから語った選手たちはどれもこれも一芸に秀でたやつばかりである。相手の技を瞬時にコピーする「模倣(コピー)」能力。コート全域から3Pシュートを正確に決める驚異のシューター。圧倒的な身長とパワー、守備範囲でゴール下を制圧するセンター。天才的な司令塔であり、圧倒的な支配力を持つキャプテン。
一人ひとりが高校でエース級の実力を持つ天才。その才能ゆえに「チームワークではなく、個の力で勝つ」というスタイルになり、他校を寄せつけなかった。
要するに「常人には理解できないレベルの天才プレイヤー軍団」であるということか。てか
「お前、地味じゃね?なんか」
「あははは!」 「うるせぇ!笑ってんじゃねぇさつき!」
「いやだってお前の武器ってスピードとアジリティ、ストリートスタイルのプレーだろ?そんなのアメリカにゴロゴロいるって」
「お前ほんとに口悪くなったな」 「だいちゃんがそれ言う?」
「まぁなんにせよ退屈はしなくてよさそうだな!」
その後も俺たちは食事をしながら俺のアメリカでの出来事や大輝やさつきの中学での話を色々語り合った。それに興味深いことを聞いた。なんでも大輝の元相棒で相手の注意をそらすことで、自分の存在を隠し見えない位置からの速攻パス、ノールックパスでチームメイトを活かすプレーをする選手がいるそうだ。俺は自分で点を取る方が性に合ってるしそのプレーも出来なくは無いが俺には合わなそうだなと思った。ちなみに名前は黒子テツヤくんね。
ちなみに中学時代そのシックスマンとさつきが仲良かったことを聞いた俺はハラワタが煮えるくらい腹が立った。いつかあったらしばき回そうと思うくらいには。冗談であるがなかなか面白い選手がいるもんだな。そいつと対戦するのが楽しみだ。
「あ!そういえば、テツくん誠凛だよ!」
「なに!!」 「そういやそんな名前だったな」
そうなのだ。実はこのシックスマンは俺と同じ誠凛なのだ。全く変な縁もあったものである。まぁ経験としてそいつのパスを受けてみるのも悪く無いと考えてる俺である。
「お、そろそろ9時だな。帰るか」
「もうそんな時間か」 「帰ろっか」
そう言いお会計を済ませみんなで家の方向に向かって歩き始めた時大輝が
「悪りぃ俺これから行くとこあるわ」
「あ、こんな時間に?」 「…」
「先帰ってくれ」
「おう。じゃあな」ヒラヒラ
そう言い俺は手を振りながらさつきと二人で歩き始め大輝は反対方向に歩き始めた。
「みっくん。だいちゃんどうしたんだろ?」
「さぁな。でも俺との再会で色々思うこともあるんだろう」
おそらくだが今頃あいつは後悔の念でいっぱいだろうな。昔から俺と大輝は1on1をしてきたが正直ここまでの差はなかったはずだ。周りを見下し勝手に失望して自分は天才だと過信しバスケを投げ出した奴が俺に勝てるはずないのだが簡単には受けられないのだろう。でもあいつはここから這い上がってくるはずだ。その為に俺は徹底的に今回叩き潰した。
大輝 本番は高校で戦う時だ!
そう心に誓い俺はさつきと手を繋ぎながらさつきの家までさつきを送って行った。
青峰大輝サイド
「くそ!くそ!くそ! なんでだ!いつからだ!こんなに差がついちまったのは」
俺は今日のことを思い出して昼までいたバスケコートの前で一人立っていた。何も出来なかった。小手先でなんとかなるレベルじゃなかった。今まで俺のスピードに着いてきた奴はいなかった。俺より強いやつはいなかったはずだ。俺は何故ここまで差がついちまったのかを考えていた。
おそらくミカはアメリカでも昔みたいにずっとバスケに打ち込んでいたはずだ。でも俺だってガキの頃(小学生まで)はマジでやっていた。でも中学に入ってから周りが急に弱く感じるようになった。
「いつからだろうな……試合の日に欠伸(あくび)をするようになったのは」
自分に匹敵する相手がいなくなり、試合前でも緊張やワクワクを感じなくなった。俺は中学時代、「キセキの世代」の中でも最強のスコアラーと呼ばれていたし自信もあった。どんなディフェンスも通用せず、1人で試合を支配できるほどの圧倒的な実力を持っていた。
しかしその反面その圧倒的すぎる力が、逆に俺から「競い合う楽しさ」や「チームで戦う意味」を奪っていった。「自分を止められる奴はいない」と本気で思うようになり、相手にも仲間にも興味を失った。
「何をしてたんだろうな。俺は」
「なんで時間を無駄にした!」 「あいつは約束を守った!」
「俺は親友との約束すら忘れていた!」
【大輝!もっとバスケ上手くなれよ!俺はアメリカでもっと上手くなる!じゃないと置いてくぞ!】
大輝は涙が止まらなかった。それが負けた悔しさなのか親友との約束を守れなかったからなのかはわからない。しかし間違いないことがある。
今日この日負けたことが青峰大輝という男にとって財産になり更に強くするだろう。
「覚悟しろよ!ミカ!絶対這い上がって俺が最強になってやる!」