偽りの贖罪者、野蛮な騎士に拾われた呪いの子   作:RichArrow

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やっぱり、アヴァロンは反則ですよ。
そりゃモルガンにナーフ(強奪)されますね。




9.ベイリン VS アルトリア

<Side:アルトリア>

 

 

 リエンス王たちとの戦の準備が進む城内は、毎日が慌ただしい。

 彼らとの小競り合いだけでなく、サクソン人の賊による襲撃、害獣の被害にも対応しなければならない。

 

 騎士たちの訓練による大きな音、従者たちの給仕の小さな音――そのすべてが、私を王と認めてくれた者たちが鳴らす音だと思えば、どれも誇らしいものだと感じる。

 

 王の道を歩むと決めた、あの選定の剣を抜いた日から、どんな困難にも立ち向かうと誓った。だが、それだけではない。この道には喜びも多くあるのだ。

 

 

 ……が、机の上に積まれた紙の束が、高鳴る胸を現実へと引き戻す。

 

 

「王、こちらの書類へ署名をお願いします」

「こちら、一昨日集まった騎士と装備についてのまとめです。ご確認を」

「ペリノア王の呼びかけに応じた諸侯から手紙が届いております。ご返答をお願いします」

 

 

 正直、ペンが剣より重い。

 

 

 署名? 私の命令でなければ反発する騎士もいるでしょう。

 確認? 毎日更新される敵味方の情報は把握しておくべきでしょう。

 返答? 味方になる者には礼を尽くした文面で答えるべきでしょう。

 

 

 どれも必要なことだとと分かっています。分かってはいますが――

 

 やることが…やることが多い!!

 

 

 旅の騎士をしていた頃に比べて、忙しさは桁違いだ。

 しかも味方が増えるほど、仕事も増えていく!

 

 周囲の文官が気の毒そうな顔でこちらを見ている。

 

 いえ、私は別に辛いわけではないのです。

 王としての仕事も、エクターに教わらずとも夢の中でマーリンが指南してくれていたので、そうそう間違えることはありません。

 

 ただ……私の体はひとつ。どうしても量に追いつかないだけなのです。

 優秀な騎士は集まってきていますが、文官はまだまだ足りません。

 

 まぁ睡眠時間を削ればいいだけです。徹夜の参考になる義兄もいますしね。

 蝋燭がもったいないと愚痴りながらも、手伝ってくれている――

 

 

「入るぞ」

 

 

 ちょうどやってきた。

 

 ぶっきらぼうな声と共に、遠慮なく扉を開け、面倒くさそうな顔でこちらへ歩いてくる。

 よく見ると目の隈が深くなっている。また夜通し仕事をしていたのだろう。

 

 ……これで何日目です?

 最大で9日間はいけると豪語していましたが――

 

「に……如何した、ケイ卿」

 

 少し疲れていたのか、昔の呼び方が出そうになった。

 

 

 ケイ卿。

 王に、騎士になる前から私を支えてくれた義兄。

 口は悪いが、必ず成果を出す信頼できる騎士。

 特に文官の少ない今、もっとも頼りになる存在だ。

 

 

「城への通り道で、騎士に決闘を吹っ掛けまくる馬鹿な連中がいる」

 

「……決闘騒ぎなど、よくあることでは?」

 

 

 そしてその後始末をするのも王である私なのですが……

 騎士というものは、どうしてこうも決闘を好むのでしょう。

 

 ん? ケイ卿、何でしょうその目は?

 「お前も少し前まで同じだっただろ」と言いたげですね。

 

 ……ペリノア王との一件を持ち出されると勝てないので、この話は置きましょう。

 

 

「その騎士、100回近く戦っても一度も負けてないと聞いてもか?」

 

「! それはすごいですね。ぜひ味方に引き入れたいですが……」

 

「中には、従騎士のガキにまで負けて帰った連中もいる」

 

「今すぐ止めさせましょう!!」

 

 

 こちら側に付く騎士が減ってしまうじゃないですか!

 もっと早く教えてくれてもよかったのでは!?

 

 とはいえ、その騎士を味方にできれば心強い。

 どんな人物か調べさせ――

 

 

「彼らはノーサンバランドのベイリン、ベイラン、シンの三兄弟さ。

 アルトリア、彼らは味方に引き入れた方がいいよ」

 

「げっ」

 

「マーリン、あなたがそう言うほどの騎士なのですか?」

 

 

 突然部屋に現れた魔術師マーリンが、いつになく真面目な顔で助言をする。

 彼の助言にはいつも助けられているが、今回は特に重要らしい。

 

 ケイ卿、苦手なのは分かりますが、抑えて下さい。

 

 

「ベイリン……“野蛮なベイリン”という噂は聞いたことがあります」

 

「そう、そのベイリンさ。彼は()()()()()は大変貢献してくれるさ」

 

「おいコラ、ずいぶん含みのある言い方じゃねぇか」

 

「まぁね……彼は運と間が悪いらしくてね……。

 そう遠くない未来、彼とその周囲には悲劇をもたらすだろうね」

 

「ダメじゃねぇか!!!」

 

 

 ケイ卿の声が部屋に響く。

 私は机上の紙束を軽く押さえ、考えを巡らせた。

 

 あのマーリンが推す騎士だ。私に必要なのだろう。

 どのみち、決闘の申し込みは止めさせねばならない。

 

 

「分かりました……城へ呼びましょう」

 

「あ、ちょっと待った」

 

 

 マーリンがいつもの微笑みを顔に貼り付ける。

 ケイ卿はそれを見て、「また巻き込まれる」と悟ったような顔になった。

 

 

「その騎士は、勝たないと話を聞いてくれないと思うよ。

 だからアルトリア、君が通りすがりの騎士として挑まれてみるといい。書類仕事も大事だけど、たまには体を動かさないとね。

 ……それに彼なら、聖剣の調整になる。これからに備えて慣れておかないと」

 

 

 マーリンに差し出された聖剣。

 

 確かに手に入れて間もなく、まだ十分に使い慣れていない。

 しかも最近は王としての仕事ばかりで、剣を握る機会も減っていた。

 それに、前の剣を折ったペリノア王ほどでもなければ、使うまでもない。

 

 

 ……自然と胸が高鳴る。立派な王であろうと努めていても、私はまだ騎士なのだろう。

 

 

「ケイ卿、少し出かけます。あなたも準備を」

 

 


 

 

<道端の騎士>

 

 

「……飽きてきたな」

 

 

 新王の城へ続く道すがら、大柄な騎士がぼやいた。

 

 

「弱い。本当に弱い。エカル卿のような奴はいないのかよ」

 

 

 連戦連勝。輝かしい戦績を積んでいながら、ベイリンの表情に楽しげな色はない。

 

 

「なあラン兄、ひとつ聞いていいか?」

 

「どうしました、シン」

 

「もしかして兄ちゃんたちって、めちゃくちゃ強い方なの? いつも『ブリテンの騎士ならこれくらいできる』って言われてるけど……俺より弱い騎士もいるじゃん!」

 

「……きっと久しぶりに体を動かしたのでしょう。調子の悪そうな相手を代わりに任されているのです」

 

 

 共にいる弟たちもあまり楽しそうではなかった。

 

 

 三兄弟は精霊の手掛かりを求め、アーサー王に会うため城を目指していた。

 だが「早く王に会うため」と称して、道中で決闘を繰り返していたのだ。

 

 最初のうち、末弟シンは従騎士の自分でも本物の騎士と戦えることに興奮していた。

 二人の兄から弱めな騎士を押し付けられながらも、兄以外の騎士との決闘は初めてだったからだった。

 

 

 しかし二日と経たずに違和感を覚える。

 

 格下にしか通用しないハズの蛇の眼が通じたり、派手に啖呵を切っていた相手が蹴り一発で気絶したり、果ては「魔剣で斬られると傷が治らない」と逃げ出す者までいた。

 

 魔剣に関しては仕方ない。呪いに弱い人もいるだろうと納得していた。

 しかし、普通の剣を使うまでもない相手がいるとは少年は思ってもいなかった……

 

 彼にとって、兄たちとの訓練では考えられない出来事ばかりである。

 少年は喜びではなく、困惑が胸に積もっていった。

 

 

「せっかく『赤帽子の手斧』とか『犬精の短剣』とか用意したのに……」

 

(マズイですよ兄上! このままではシンが騎士に憧れなくなります!)

(スマン……最近は妖精相手ばっかで感覚が鈍ってた……)

 

「もう、城に入った方が良くない? そこの騎士に相手してもらえ――」

 

 

 シンは途中で言葉を止める。

 

 彼の知覚が強者の気配を捉えた。

 兄たちは既に武器に手をかけている。

 

 

「次の相手は俺でいいな」

 

 

 長兄ベイリンが不敵に笑いながらも、闘志を燃やす。

 当初の目的を忘れ、戦いに興じていた彼は、久々に退屈しなさそうな相手だと期待する。

 

 次兄ベイランはそんな兄に呆れながらも席を譲る。

 ようやく城の騎士が出て来たのではと思案し、観察すること選んだ。

 

 末弟シンは素直に兄の言う事を聞く。

 これから起こる戦いを自分の糧にするように心がける。

 

 

 やがて姿を現したのは二人の騎士。

 ひとりは不機嫌そうな青年、もうひとりは小柄で兜に顔を隠した少年(?)。

 

 王城を抜け出したケイと、新王アルトリアである。

 

 

(小せぇ方が強いな)

(少年の方が怖いですね)

(何か親近感が?)

 

「アーサー王に仕える騎士とお見受けする。

 大王に仕えるにふさわしい実力、ぜひ見せてもらいたい」

 

 

 ベイリンが言いなれた挑発を二人に告げる。

 

 ケイとアルトリアは立ち止まり、想定通りに釣れた思い。

 まずはケイが文句を言おうと前に出ようとするがーー

 

 

「あなたではない、そこの兜をした方だ」

 

「あぁん? てめぇ…… ッ!?」

 

「では兄上の代わりに私が相手いたしましょう」

 

「ラン兄ズルイ!」

 

「シン、殺し合いじゃなきゃ難しい相手だぞソイツ」

 

 

 ベイリンとベイランから圧が叩きつけられ、わずかにケイの動きが止まる。

 

 

 ケイは決して弱くはない。むしろアルトリアの旅に付いていけるほど強く。膨大な魔力の圧にも慣れ切っている。

 

 それでも尚、動きを止めてしまった。相手の方が実力も経験も勝っていると理解させられた。

 

 

(なるほどね、あのクソ野郎が推すわけだ。正直、舐めてた)

 

「……いいでしょう。私が立ち会います。アーサー王に仕える騎士の実力をお見せしましょう」

 

「俺は見学とするぜ。……両方ともやりすぎんなよ?」

 

「善処します」「善処しよう」

 

 

………………………………

 

 

 ベイリンは円盾と両手剣を、それぞれ片手に持ち構える。

 対するアルトリアは、剣の柄ようなものを抜き放ったが――刃は見えない。

 

 

「なんだそりゃ? 剣か? 斧か?」

 

「さて……何でしょうか。その身にて確かめるといい」

 

 

 不可視の剣にベイリンは眉をひそめる。

 だが、これまでの経験から即座に冷静さを取り戻した。

 

 

(妖精共の魔術と思えばいい。風の刃、ガラスの刃、音の矢、極細の糸……どれも斬り抜けてきた。問題は――間合いと使い手の技量だ)

 

「来ないなら……こちらから行きます!」

 

 

 思考を断ち切るようにアルトリアが踏み込む。

 ベイリンに考えさせる時間を与えない。間合いが見切られない内に倒そうとする。

 

 ベイリンは目と体の動きから剣筋を予測する。

 盾で弾いて、切り返そうと考えたが――

 

 ギンッ!

 

 盾が震えた。

 

 

「ぐ……! 小せぇのに、随分と重い一撃じゃねえか」

 

「褒め言葉として受け取りましょう!」

 

 

 ガンッ! ギンッ! ガガンッ!

 

 

 ベイリンへと次々と襲い来る剣撃。

 横薙ぎ、兜割、逆袈裟――体格からは想像できないほど重く鋭い。

 

 反撃させない。いや、させてはならない。

 アルトリアは直感で悟っていた。ベイリンに攻撃させれば流れを握られると。

 

 

 しかし、攻め続けてもまだ、決定打は入らない。

 ベイリンの防御はまるで山。びくともせず、揺るぎない。

 

 強靭な体幹、衝撃を逃す技、恐れを知らぬ精神――

 それら全てを備えてる在野のバグ騎士、それこそがベイリンである。

 

 

 このまま受け続ければ盾が先に壊れ、ベイリンは負ける。

 

 だがベイリンは戦闘の経験は、まだ全盛期でないアルトリアを上回る。彼は既に反撃の糸口をつかんでいた。

 

 

「おらぁッ!」

 

 

 ベイリンが吠え、盾を構えたまま突撃してきた。

 

 全身全霊のシールドチャージ。

 ただ速く、ただ重い――それだけの一撃が魔獣のごとき迫力で迫る。

 

 

「……っ!」

 

 

 驚きはしたが、旅の最中に魔獣の突進を幾度も凌いできたアルトリアだ。

 体勢が崩れていても、最低限の動きで横に逸れ、がら空きの背へ斬撃を――

 

 

 バキィッ! 

 

「がぁッ!?」

 

 

 できなかった。

 

 アルトリアが避けたと思った瞬間、ベイリンの盾に隠された右拳が、振り上げたアルトリアの肘を殴りつけたのだ。

 

 

(馬鹿な……! 決闘の最中に己の剣を手放すなんて!?)

 

 

 アルトリアが咄嗟に距離を取ろうとすると、ベイリンの左手のシールドバッシュが襲ってくる。

 両手で柄を構えて防いだが――その足を、ベイリンが思い切り踏みつけた。

 

「……!」

 

 動きを封じられ、次の瞬間には右拳が肩に叩き込まれる。関節を砕かれ握力が揺らぐ。

 

 

(不可視の剣……間合いが測れねぇなら――間合いなんざ意味なくしてやりゃいい!)

 

 

 ベイリンの経験と直感が導いた答え。

 

 それは「超接近戦」。剣筋も矜持も封じ、ただ殴り勝つ。

 

 

「綺麗な剣筋ばっか振り回してんじゃねえ! お坊ちゃん騎士様よォ!

 せっかく強えんだから、変な剣や矜持なんぞに甘えてんじゃねえッ!」

 

 

 十数合の剣戟の末、ベイリンはアルトリアの戦い方を見切りつつあった。

 騎士の正しさに縛られ、泥臭い戦いができない――それがこの騎士の弱点。

 

 事実、アルトリアは騎士であり、王として育てられた。

 幼少からマーリンに多様な戦闘術を叩き込まれたが、王たる者の剣術を優先してきた。

 ブリテンの騎士を率いるには、不意打ちも騙し討ちも、見栄えの悪い戦いも許されない。

 

 対してベイリンは真逆である。

 騎士でありながら戦士。誇りある勝利ではなく、勝利そのものを誇りとする。

 呪いも毒も罠も――勝つためなら何でも使えと弟たちに叩き込んできた。

 

 

「~~ッ!」

 

 

 アルトリアは剣に両腕を使用している不利を悟り、片手を離す。

 痺れる左手でベイリンの追撃の拳を受け止めた。

 

 魔力を巡らせた彼女の肉体は、ベイリンとも力比べができる。

 

 全力を出せば押し勝つことさえ可能。

 痛めた関節を魔力で補い、無理やり動かそうとする。

 

 

 ゴーーーン

 

 

 しかし、二人の力が拮抗した時、鈍い鐘のような音が辺りに響く。

 その音の中心で、互いの兜が砕けた。

 

 ベイリンの渾身の頭突きが、アルトリアの頭を打ち据えたのだ。

 

 

「っ……!」

 

 

 脳が揺れ、視界が霞むアルトリア。

 ベイリンは左手の盾を振り上げ、鈍器のごとく構えた。

 

 

「終わりだ」

 

 

 その一撃が振り下ろされる直前――

 

 轟音と共に竜巻が巻き起こり、ベイリンの巨体を吹き飛ばした。

 

 

………………………………

 

 

「うわぁ……リン兄、容赦ないなぁ……。あのパンチかなり痛いんだよ」

 

「ふん……新しい剣を手に入れ調子に乗っているからだ」

 

「義兄とは言え、厳しいですねぇ」

 

 

 一方、観戦に回った三人は普通に会話し、互いに戦っている相手が兄弟だと打ち明けていた。

 そもそも本気で敵対するつもりもないからであった。

 

 

「にしても、頑丈ですねぇ。肘と肩に兄上の強打を受けても腕を動かせるとは」

 

「あいつ、無駄に頑丈だからな」

 

「あっ……頭突きが来るよ」

 

 

 響く衝撃音を聞きながらも、ベイランとシンは兄の勝利を確信する。

 ただケイだけは、ここからが本番だろうと考えていた。

 

 

「うわっぷ!! 砂が!」

 

「あの馬鹿、俺を巻き込むなよ」

 

「あの剣、風の力があったのですか。……おや?」

 

 

 突然起きた竜巻に巻き込まれ、その中心へと三人は目を向ける。

 そこには不可視の剣ではなく、黄金に輝く剣があった。

 

 

「「……!」」

 

「舐めてかからずに、最初から本気でやれっての」

 

 

 離れた場所でも分かるほどの強烈な圧を放つ剣に、ベイランとシンが息を呑む。

 ケイは呆れながらも、僅かな笑みをアルトリアへと向けていた。

 

 

「フフフ……色々と悪態を付きながらも兄として弟の勝利を信じていたのですね」

 

「はぁっ!?」

 

「恥じなくてもいいでしょう。兄が弟を信じるのは当然の事です」

 

「あ~~、ラン兄はいつもこんなのなので、無視していいです」

 

 

………………………………

 

 

「おいおい! なんだよそりゃ!?」

 

 

 ベイリンは吹き飛ばされながら、手放した自分の剣を回収する。

 そして、光り輝くアルトリアの剣を見て驚いていた。

 

 剣が見えるようになり有利になったか? そんなことはない。

 放出される魔力の奔流が、決して見掛け倒しでないことを示していた。

 

 

「スゥ……」

 

 

 間合いを離したアルトリアは一度深呼吸をする。

 

 それだけで竜の心臓が膨大な魔力を生み出し、聖剣の鞘の力を通して傷ついた体を癒す。

 また冷静さを取り戻すことで、己に驕りがあったことを認め、全力で挑むことを改めて意識していった。

 

 

「……いきます」

 

 

 踏み込みで地面が爆発した。そのままベイリンへと斬りかかる。

 

 ベイリンは盾で弾こうとするが――

 

 

 ザシュッ

 

「マジかよッ!?」

 

 

 剣筋を逸らすまではできたが、刃に触れた部分の盾が切り取られた。

 

 

 光り輝く剣――聖剣エクスカリバーは最強と呼ばれる武器の一つである。

 ただ魔力を溜めてビームを放つだけの道具ではない。

 魔力を込めた刀身は鋼すら切り裂く切れ味を誇り、宝具でもない防具ではまともに防げない。

 

 その聖剣の追撃が来る前に、ベイリンは地面を蹴り上げて土の塊をアルトリアの顔へとぶつけた。目潰しが成功した隙に、残った片足も浮かしてドロップキックを繰り出して突き飛ばす。

 

 互いに受け身を取った直後、ベイリンは自分の身を隠すようにして残った盾を投げつける。

 

 

(また盾に隠れた一撃が来る! ならば……盾ごと切り捨てる! いや待て……この騎士ならば、私のすることを読んでいるはず)

 

 

 一瞬の逡巡。アルトリアは剣を振りかぶるのではなく、中段に構えて防御を意識した。

 

 その判断は正しかった。

 

 

「ぜぇぇあぁぁ!!!」

 

 

 盾がぶつかる前――アルトリアの予想よりも速くベイリンの咆哮が響き、

 盾をも切り裂く刃が()()()()()()()を襲った。

 

 

「がぁッ!?」

 

 

 振り下ろしへの防御は間に合った。

 それでも感じたことのない重さが剣を通して伝わり、両足が地面にめり込む。

 

 

「片手で振るよりも、両手振った方が速いし重いだろぉ!」

 

 

 当然の理屈を並べて、湖面すら割く一撃を繰り出すベイリンは笑う。

 

 実のところ、ただ両手で振ったのではない。

 彼は己の剣へと魔力を無理やり流し込み、斬撃をさらに強化していたのだ。

 

 アルトリアの膨大な魔力を剣に纏わせる攻撃は、彼にとって初見ではない。

 末弟シンが怒り狂った時にも同じような攻撃をしていたのを知っている。

 

 いくらベイリンがバグのような騎士でも、竜の因子を持つ二人ほどの魔力は到底持ち合わせていない。

 

 それでも模倣した上で足りない魔力を技術でまとめ上げる。

 それにより、一時的とは言え聖剣と打ち合える状態を作り出していた。

 

 ――やはり、ベイリンは“戦いの天才”であった。

 

 

キィィィィイィィィィ――

 

 

 だが、その剣の方はそうではなかった。

 妖精を斬り続け、魔剣に近づきつつあるそれは、悲鳴を上げていた。

 

 

「! だぁぁあぁぁあぁぁ!!!」

 

 

 それに気づいたアルトリアが全身からさらに魔力を放出し、ベイリンを押し返す。

 勝機はまだどちらにもある。

 

 両者が距離を取る。

 互いに「防御すれば負ける」と悟り、攻撃的な構えを取る。

 

 そして、そのまま――打ち合った。

 

 

 一合目――二人を中心に空気が震え、爆音が鳴る。

 

 二合目――地面が揺れ、草木がざわめく。

 

 三合目――殴られた関節の傷が再発し、アルトリアの腕が震える。

 

 四合目――アルトリアが強く押される。だが彼女の瞳は決して諦めていない。

 

 五合目――ついに、ベイリンの剣が折れた。

 

 

 こうして、蛮人と王との戦いは王の勝利で終わった。

 

 

………………………………

 

 

「だあぁぁぁ! 負けた負けた!」

 

「…………」

 

「おいおい、勝ったんだから嬉しそうにしろよ」

 

「前にアンタと同じ負け方したから色々あんだよ。

 それよりも……やりすぎんなって言ったよなぁ、オイ」

 

 

 観戦に回っていた者たちが合流し始め、早速ケイが悪態をつく。

 

 周囲の草木は荒れ果て、地面のあちこちが抉れている。

 まるで戦場の跡のようで、とても王城へ向かう道中とは思えなかった。

 

 ケイとしては、この修復の手配も仕事になりうる。

 だからこそ腹を立てるのも当然だった。

 

 

「あ~、倒れた木はどかしとくわ。ベイラン、シン、地面直すの手伝ってくれ」

 

「それだけじゃなくて、今後ここでの決闘騒ぎはやめさせろ。

 それと……王様、こいつらに言うことがあんだろ」

 

「「「王様!?」」」

 

 

(ヤバイよリン兄! 俺らメッチャ無礼なことしたんじゃない!?)

(知るか! 何で王がアッサリ決闘受けてんだよ!)

(とりあえず……何を要求されるか聞きましょう!)

 

 

 三兄弟は慌てて片膝をつき、跪く。

 この状況で精霊の手掛かりを尋ねるほど非常識ではなかった。

 

 知らなかったとはいえ、一介の騎士が王を挑発して決闘に持ち込んだのだ。

 あまりの無礼さを自覚し、三兄弟は押し黙るしかなかった。

 

 

「あなたの優れた武勇、この身をもって体感させてもらいました。

 ベイリン卿、どうか私に力を貸してもらえないだろうか?」

 

「は?」

 

(リン兄! 返事!)

 

「……畏まりました。このベイリン、あなたの剣としてお仕えいたしましょう」

 

(剣、さっき折れちゃったけど)

(シン、それは言っちゃダメですよ)

 

 

 ――この日、ベイリン兄弟はアルトリアに仕えることとなった。

 

 


 

 

〇アルトリア

 まだ全盛期でないので、かなり苦戦した。今回の決闘でかなり経験値を得た。

 「国王牧歌」だとベイリンにアッサリ勝っている。

 

〇ケイ

 何だかんだでアルトリアの世話を焼く苦労人。

 「マビノギオン」だと滅茶苦茶な能力が複数ある。

 Fate世界でも九徹する能力はありそう。社畜かな?

 

〇ベイリン

 魔力C+くらいある想定。一介の騎士にしては十分多い。

 

〇シン

 ようやく一般の騎士の実力が分かってきた。

 魔剣と血の毒で癒えない傷を与えるので決闘に向いてない。

 

〇エクスカリバー

 鞘が本体なビーム発射装置。

 普通に剣として使っても滅茶苦茶強い。

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