偽りの贖罪者、野蛮な騎士に拾われた呪いの子   作:RichArrow

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また未実装キャラが出ます。
多分、べディヴィエールと色々被ってるので実装されなさそうな人たちです。

今回は少し短めです。



12.若き騎士たち③ 従者騎士

<Side:シン ー従者騎士たちー>

 

 

「シン様、おはようございます」

 

「おはようございます、ルーカン卿。……毎回のことですけど、俺に“様”はいりませんよ」

 

「あなたは従騎士といえど、既に数々の活躍をなさっている。敬意を払うのは当然です」

 

 

 朝、着替えて指定された場所へ行くと、すでにルーカン卿が待っていた。

 ワインや果実水のほのかな香り、そして規則正しい足音が印象的な人物だ。

 

 ルーカン卿は、かつて諸王との戦いで名を馳せた騎士にして、アーサー王の従者。

 さらに城の従者長まで務める多忙な人である。

 

 俺は彼が管理しているワイン樽を左手で触って毒にしてしまわないよう避けていが……

 「従騎士一人をもてなせぬ従者など、従者を名乗る資格はありません!」と気にせず世話を焼いてくれるのだった。

 

 

 今日はそんなルーカン卿の頼みで、彼の弟子たちの訓練を手伝うのだが――

 

 

「今日は不出来な弟子共々、世話になります。遠慮せず鍛えてやってください」

 

「本当にやるんですか? リン兄たちがやってる、()()()()を使った精神鍛錬を……」

 

「もちろんです。狂気や欲望に負けぬ精神こそ、私たちが求めている在り方なのです」

 

 

 俺自身の鍛錬ではなく、今回は他人を鍛える側として呼ばれたわけだ。

 

 

 

 騎士の鍛錬といえば、身体能力や技術、仲間同士の連携強化が主だ。

 この城には様々な騎士が集まり、互いに教え合い切磋琢磨している。

 

 俺も体の使い方をガウェイン卿に、馬の乗り方をラモラック卿に教わることがある。

 リン兄とラン兄なら模擬戦ばかりで、その経験を実戦に活かせと叩き込んでくる。

 

 

 だが「精神鍛錬」については、ほとんど聞いたことがない。

 

 多くの騎士は技量で負けることは認めても、「信念や誇りで劣っている」とは絶対に認めないのだろう。

 ……もし他人からそれを指摘されたら、決闘騒ぎになりかねない。

 

 その点、ルーカン卿は従者として冷静さを重んじ、弟子にもそれを求めていた。

 そこでリン兄が精霊とも戦えるように行っている精神鍛錬に目をつけ、その方法を取り入れるべく、俺に声をかけてきたのだった。

 

 

「着きました。ここなら多少声を上げても大丈夫です」

 

「よろしくな! シン!」

「よろしくお願いします、シン」

 

「はい。グリフレット卿、べディヴィエール」

 

 

 ルーカン卿に案内された部屋には、彼の弟子であり親族でもある二人がいた。

 

 グリフレット卿はルーカン卿の従弟で、アーサー王と同じ年の若き騎士。

 一年前の戦いで致命的な傷を負い、まだ癒えきっていないのか血の匂いを漂わせていた。

 長く戦えなくなってしまったが彼は「従者としてアーサー王を支えたい」と改めて考えているそうだ。

 

 そしてべディヴィエールはルーカン卿の弟。俺より少し年上の従騎士。

 隻腕で義手をつけており、鉄と木の匂いがする。

 ……名前を言い間違えそうになるのは内緒だ。

 

 彼は二人とは違う理由でアーサー王に仕えようとしているようだが、その理由までは聞いたことがない。

 それでも三人とも血縁だけあって顔立ちが似ているし、揃って同じ王を支えようとしているあたり、考え方も似ているのだろう。

 

 

「グリフレット、あなたは特に励みなさい。またあんな事があれば……」

 

「何度も言われなくてもわかってる! もう二度とアーサー王に尻拭いさせたりしねぇ!!」

 

「アハハ……ルーカン兄様は心配しているのです。あの時一命を取り留めたときなど、見たことないくらい――」

 

「べディヴィエール!!!」

 

 

 ……兄弟のやり取りについていけない。

 グリフレット卿は恥ずかしさから言葉にできず、代わりにべディヴィエールが教えてくれた。

 

 

 

 約一年前。

 

 焦ったグリフレット卿が早く騎士になりたいと嘆願し、アーサー王が折れて認めた。その最初の任務が「近くで陣を張っている決闘騒ぎの相手を調べよ」だったらしい。

 

 心配したアーサー王は「戦っても一度だけ打ち合え」と何度も念を押した。

 

 だが相手は――よりによってペリノア王。

 

 うん。そりゃ無理だわ。

 

 ペリノア王まで「若いんだから止めておけ」と忠告したのに、突っ走った結果――たった一合で槍を砕かれ、腹を貫かれた。

 さすがに気の毒に思ったのか、ペリノア王はそのまま馬に乗せて送り返したらしい。

 

 よく生きてるな、ほんと。

 

 その後、アーサー王がグリフレット卿の仇討ちに挑み、選定の剣を折られた……と。

 

 

「焦らずに行動していれば、戦わずに済んだ可能性もあったでしょう」

 

 

 いや、どのみちリン兄の次くらいに強いペリノア王相手じゃ無理じゃない?

 

 でも、これが彼らの求める冷静さの鍛錬につながっているらしい。

 べディヴィエールも隻腕のハンデを少しでも減らすために、やれることは全部やりたいと……。

 

 二人とも本気で取り組む気なのは伝わってくる。

 

 

「この二人が目指すのは、ただの騎士ではありません。常に王の傍らに立ち、冷静に状況を見極め助言を行う者。強さだけでなく、全てにおいて王を支える者――正に従者にして騎士なのです」

 

「分かりました。……とりあえず簡単なのから始めましょうか」

 

 

 さすがに最初からグーラを持たせる気はない。

 あの狂気は兄ちゃんたちでもまだ御しきれていないのだから。

 

 俺は訓練のために持ってきた袋の中から、小さな光を取り出した。

 狂気よりも扱いやすい、“欲望”の訓練からだ。

 

 

「あ~、これから金貨を投げます。拾わずに、そのまま落としてください」

 

『は?』

 

 

 三人の視線が「そんな簡単なこと?」と言ってる。

 

 ああ、本当にその程度のことなんだけど――

 人間は欲に弱い生き物だと、よく分かる。

 

 

 金貨を見せた瞬間――三人の目が変わった。

 瞳は俺を離れ、黄金だけを追い、身体はわずかに揺れる。

 

 グリフレット卿とべディヴィエールの間にゆっくりと投げる。

 

 ルーカン卿ですら伸ばしかけた手を必死に押さえている。

 

 距離の近い二人が、ほぼ同時に手を伸ばす。

 グリフレット卿が義手のべディヴィエールより早く、奪うように金貨を掴み取った。

 

 

「はい、失敗~。残念でした~」

 

「「……ハッ!?」」

 

「呪いとは、恐ろしいものですね……」

 

「待て! 呪われた感覚なんてなかったぞ!?」

 

「当たり前です。呪いにかかってるのは()()()ですから」

 

 

 俺の呪いは、年齢とともに増え、強くなってきた。

 そのひとつが――“手にした黄金は奪われる”という呪いだ。

 

 マーリン曰く、北欧の黄金の指輪の呪いが元になっているらしい。

 

 俺が持つ金は、周囲に抗えない欲望を呼び起こして、奪われる。

 満たされた者ですら、運命に従うように手を伸ばしてしまう。

 

 黄金はどんな時代、どんな場所でも人を惹きつける。

 たとえその価値を知らずとも、美しい輝きから欲しくなる。

 その輝きに神秘が宿り、欲望が募り、呪いが蔓延る。

 

 そういう意味では、黄金も俺と同じように呪われやすい物なんだろうな。

 

 

「シン……辛くないのですか?」

 

「いや別に? それより左手でパンがちぎれないとか、両手で水を飲めない方が面倒だぞ」

 

 

 血の呪いほどではないが、両手で掬った水は毒になる。

 そのせいでよくむせる。フィンって奴の力が反転した呪いらしい。

 すぐに毒を作れるのは便利だけど、普段は邪魔だわ。

 

 

「シン、君は……辛さや苦しみに慣れてしまっているのですね……」

 

 

 べディヴィエールは悲しそうに見つめてくる。

 グリフレット卿は金貨を握ったまま、手を叩いて離そうとしている。

 ルーカン卿は冷や汗を拭きつつ、表情を整えていた。

 

 ふむ。誰も俺に恐怖を抱いていないようだ。

 

 これなら数日もすれば耐えられるようになるだろう。

 まあ、金貨一枚程度だし。

 

 

「では暫くはコレを繰り返します。欲望に慣れたら、次は軽い狂気を扱いましょう」

 

「一応、次は何をやるのか聞いてもいいか?」

 

 

 大袋から血のにじむような赤をした手斧を二つ取り出す。

 三人はそれを見ただけで顔を引きつらせた。

 

 

「『赤帽子の手斧』です。持つと誰でもいいから頭を割りたくなるますよ。

 適当に投げても相手の頭に吸い寄せられる便利な代物ですよ」

 

「便利……!? どこがだよ……!!」

 

「グ、グリフレット卿、訓練ですから!」

 

「シン様。もし扱うコツがあれば教えていただけませんか?」

 

 

 コツ? そんなの簡単だ。

 

 欲望も狂気も自分のものだと受け入れればいい。

 拒絶したり否定すれば、かえって呑まれるだけだ。

 

 人間は汚く、醜く、愚かな存在――そう認めた方が楽になる。

 その上で、一番やりたいことをすればいい。

 

 カッコつけたいなら誇りを掲げればいいし、

 誰かが大事なら、その人のために頑張ればいい。

 

 ただ、それだけだ。

 

 

「それから、狂気は溜めずに発散した方がいいですね。妖精相手ならちょうどいいですし。

 倒し方を工夫すれば、こういう武具も作れます」

 

 

 俺は手斧以外も色々と取り出して並べてみる。

 

 人の頭を割るのが大好きなレッドキャップからは、頭以外を徹底的に潰して殺すことで奪った『赤帽子の手斧』。

 同族を守るために戦うクー・シーからは、石にした仲間を食わせて尊厳を壊した死体の骨と牙で作った『犬妖精の短剣』。

 悪夢を見せるザントマンからは、夢で嬲り続けた後に呪いで石に変えて、削った砂を溜め込んだ『睡魔の砂袋』。

 

 強めの妖精なら、俺を見ただけで狂う。

 ……狂気の発散にはもってこいだ。

 

 アア、タノシイナァ!! マタ、ヤリタイッ!!

 

 

 三人はなぜか悲しい顔をした。

 変な人達だ。兄ちゃん以外は怖がるのが多いのに。

 俺は簡単なコツを話しただけなのに。

 

「二人共、ほどほどにしておきましょう。まずは金貨に耐えることから始めましょうか」

 

「「はい!!!」」

 

 

 この後しばらく、数日おきに精神訓練に付き合うことになった。

 そして、三人からなぜか急に優しくされることが増えた。……何でだ?

 

 ……俺、そんなに可哀想な存在なのか?

 

 

「シン、人間をどうしようもない存在だと……諦めないで下さい」

 

 


 

 

〇シン

 妖精相手にキチゲ解放を繰り返していた。

 妖精から作った道具は後々に登場します。

 

〇ルーカン

 べディヴィエールの兄。本来はワイン係らしいけど、本作では執事長 兼 騎士。

 女性が少なすぎるので、メイド長としても良かったかも。

 

〇グリフレット

 アーサー王の同じ年の若い騎士。べディヴィエールの従兄弟。

 ペリノア王と戦って、槍が刺さった致命傷を負っても生きてるヤベー奴。

 出展により、かなりべディヴィエールと役割が被ってる。

 

〇べディヴィエール

 FGO1部6章で活躍する騎士。

 本作では隻腕で義手を使ってる設定。それでも原典通りの怪力。

 

<シンの道具>

〇赤帽子の手斧

 レッドキャップを残虐に殺して、怨念を染み込ませた遺品。

 持てば誰かの頭を割りたくなる。投げたり、振ると頭に誘導する。

 

〇犬妖精の短剣

 尊厳を破壊して殺したクー・シーの骨と牙で作ったナイフ。

 シンの血を追い立て続ける。

 

〇睡魔の砂袋

 シンにより逆に夢で嬲られたザントマンを石に変えた後に摺り下ろした砂。

 かけた相手を眠らせて悪夢を見せる。

 




キャラ多すぎても扱いきれないので、以下の騎士は出さないつもりです。
出しても、Fate円卓は13席なので席が足りない……。
ディナダン:陽キャのコミュ強
サグラモール:腹ペコ頭痛持ち
ダゴネット:宮廷道化師 トリスタンからビアーキーを借りた

次話は原典と時系列が一番違う浮気騎士です。
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