偽りの贖罪者、野蛮な騎士に拾われた呪いの子 作:RichArrow
後、未実装なリエンス王は独自設定でいじりやすいです。
<Side:マーリン>
おかしい。
この眼で見た景色と、わずかに違う。
【大戦となる前、リエンス王が少数を率いて恋人へ会いに行く】
大筋は合っている。だからこそ、彼らを仕向けたのだ。
アルトリアによるブリテン統一を早めるのに、あの兄弟ほど都合のいい駒はない。
【騎士六十人のみを率い、リエンス王自身も油断していた】
本来なら、そうなるはずだった。だが――細部が違う。
森に潜む騎士は六十ではなく百近い。しかも、リエンス王は油断せず、
誰だ? 誰が邪魔をしているんだ?
私の眼を欺ける程の存在――当然モルガンだけど 、今に限っては違う。
ベイリン卿が、ヴィヴィアンの首を斬ったから、肉体を共有していたモルゴースやモルガンもまた致命傷を負っている。
だからこそ、さっきまで仕掛けた、大戦に向けた幻術の罠への妨害を受けなかった。
次の候補はヴィヴィアンかな?
いや、彼女の方が無理だ。首を斬られて一時的に死んでいる。
最高位の精霊でありブリテンの自然そのものだから死んでも滅びはしないが、復活には時間がかかり、以前と同じ存在には戻れない。
他の可能性……クリングゾールとか? いや、彼は聖槍に掛かり切りだ。
しょうがない、少し疲れるけど眼を広げようか
……ふむ。なるほど、そういうことか。
これは予想外だったかな?
ヴィヴィアンであってヴィヴィアンでない存在かぁ。
彼女はアルトリアの妨害ではなく、ベイリン卿たちへの復讐を目的に動いている。
結果としてブリテン統一の障害になっているのは面倒だけど……相変わらず見誤っている。
ベイリン卿は選定の剣を抜き、君の首を斬った騎士だ。
その弟ベイラン卿も近い実力を持つ。
あの兄弟は最強にして嘆きの騎士。互いに戦うことでしか、彼らが真に敗北することはない。
そして――シン。最悪な呪いの子。
何故だろう、あの子にはつい期待してしまう。
多少の困難が増えたところで、彼らの勝利は揺るがない。
<双剣と神剣>
ウェールズの森。立ち並ぶ木々の間を、不釣り合いなほど華美な騎士の一団が進んでいた。
黎明前の薄霧が地を覆い、人と馬の息遣いだけが響く。
アーサー王と諸王連合の大戦は間近。どちらのかと疑う場面だ。だが――
「決戦の前に愛人に会いに行くなんて、不用心すぎるだろ……」
「戦いの前だからこそ、愛する相手に会いたいと思うものでは? 兄上」
護衛は、リエンス王とその愛人ヴァンスとの逢瀬のためのものだった。
その集団を木陰から窺う三人――蛮人の三兄弟である。
マーリンの予知通り、手薄な護衛を狙う絶好の機会。
たった三人だからこそ気づかれにくい。
「……ん? ちょっと人が多くない? 六十人って聞いてたけど。若作りしてても、あのジジイもボケたか?」
「ですが、時間も場所も合っています。この機を逃すと次はありません」
「増えても百人程度か。……お前ら、やれるか?」
「「当然!!!」」
とはいえ、奇襲でも3対100は普通に考えれば無謀である。
ましてや、相手は諸王連合の盟主にして英雄、リエンス王。成功より失敗の方が現実味を持つ。
だがここにいる三人はマーリンが差し向けた存在。
従騎士のシンを含めても、並の英雄ではない。
――リエンス王の集団が森の深みへ入る。最高の仕掛け時。
突然、狼の遠吠えが響いた。しかし、騎士たちは狼ごときで動じない。
力の差を知らぬ哀れな群れもいるのだと誰かが呟く。
「あまり油断するな。道を外れて森へ入るな」
「隊長、狼ならこの数見るとすぐ逃げるでしょうよ」
「……胸騒ぎする。リエンス王も警告したであろう」
「了解っすよ。隊長の勘なら信頼できらぁ。何が出るか――」
獣とも人ともつかぬ咆哮が突如、森を裂く。
木々の隙間から、赤く光る瞳が瞬く。
目が合った騎士たちは恐怖に怯む者と武器を構えた者とに分かれる。
そして、声が響いた森から二人の男がゆっくり現れた。
「ん~、弱いのは二割程度かな? 流石はリエンス王の護衛だ」
「隊長格は私が始末します。シンは手筈通り囮をお願いしますね」
「了解。動けないのは回復用の血袋だから、残しといて」
十倍を超える相手を前に世間話のように振る舞う二人。
それを前に主へと事態を伝えようとする者と足止めをする者に分かれて行動する。
怯んだ未熟な騎士もいたが、彼らは王を護衛する精鋭である。この程度の事態に対応できないはずもない。
しかし、相手が悪かった。事態は瞬時に破綻する。
――キンッ。
不気味な目をした少年が、剥き出しの青白い左手で金貨を弾いた。
騎士たちは理由もなく金貨に目を奪われる。
「じゃあ、私は後ろの方へ行きますね」
「俺は前から狩る。グーラも騎士を食べる久しぶりだってよ」
パシンッ。
「……え?」
金貨が少年の手へと戻った時、伝令役として駆け出そうとした者たちと二人の最前にいた者の首が斬られていた。
視線が上へ向いている間に、大柄な襲撃者――ベイランが一閃していたのだ。
その彼は既に軍勢の後方へ駆け抜けていた。
不可思議な現象に動転しつつも、護衛の騎士たちは判断する。
大柄の方は後方の者たちに任せ、少年を討つ。
(先ほどの隙で前方の一人しか斬れていない時点で少年の方が実力は高くない)
(あの金貨に気を付ければいいだけだ!)
「てめぇ!」「ふぬっ!」
即座に二人が槍と剣で突進するも――その攻撃は少年の足元の血へと逸れた。
「流石に判断が早いなっと。上手いかグーラ?」
崩れた体勢を見逃さずに少年は二人の首は斬りつける。
魔剣の力が傷口を広げ、血が噴き出す。
血は地を濡らすだけでなく、少年と魔剣へと吸い寄せられるように舞う。
異様な光景に騎士たちは隊列を組む。
もはやたった一人の少年だと最早誰も思っていない。
大楯を構えた者たちが前に出る。
剣を槍へと持ち替えた者たちがその後ろで鋭く構える。
更に最後方で弓と魔術で狙いを定める
人ではない、魔獣を相手を想定して彼らは動く。
だが、少年は動じない。呑気におかしな
「上空注意~危ないぞ~」
全員が無理やり疑念を植え付けられ、上を見る思考ができない。そうして――
ガンッ!
空から落ちた赤い手斧が、盾持ちと弓手の頭を一人ずつ割る。
「だから、言ったのにな」
その合間に少年は盾列に潜り込み、左手で首を掴み、右手で魔剣を振るう。
掴まれた男は触れた箇所が石となって砕け、魔剣に斬られた者は即死こそ免れても全身に激痛が走り気絶する。
迎撃の槍と矢は再び逸れ、下級の火球の魔術は少年に触れると消える。
欲望の金貨が舞い、不信の予言が空気に満ち、攻撃は不自然な箇所に当たる。
左手に触れれば石化、右手の魔剣の一撃は不治と共有の呪いを引き起こす。
その上、少年と魔剣が取り込み、溢れた血が穢れと毒が霧となって広がり始める。
「数を揃えてもランスロット卿を超える騎士はいないのか、残念だ」
少年――最悪となる騎士は止まらない。
対峙した相手の肉体、精神、魂を蝕み、その血と憎悪を喰らって成長する。
人の悪意と呪いで怪物と化していく。
しかし――騎士たちの中に、怪物を狩れる英雄はいなかった。
「お前らを殺そう。お前らの罪を背負おう」
「憎悪も後悔も、全部俺が引き受ける。醜い死を、この世から消してやる」
「王に身を捧げた騎士として、美しい最期だけが世界に残るんだ」
――人の形をした悪魔を前に、誰一人として逃れることはできなかった。
………………………………
ベイランとシンが囮となって護衛を蹴散らしていた頃――
ベイリンは、静かにその“本命”の前へと姿を現していた。
「貴様! 何を――」
「王! お逃げくだ――」
「邪魔だ」
その一言とともに、血飛沫が舞う。
わずかな精鋭など、彼の前では無意味。全ては刻まれた後だった。
「……随分と野蛮な挨拶だな。アーサー王は部下の躾もできんのか」
「俺はアーサー王の騎士じゃねぇ。たまたま協力してるだけだ」
煌びやかな鎧、不気味な文様のマント、そして膨大な圧を放つ大剣。
整えられた長い髭を弄び、王は堂々と立つ。
――リエンス王。
十一の諸王に勝利し、彼らを含めた連合を束ねる強王。
アーサーのブリテン統一を阻む、最大の壁。
「
「へぇ、知ってたのかよ。そりゃ準備万端なわけだ」
対するベイリンは、騎士らしさを欠いた姿だった。
汚れた鎧兜、左に醜い石剣、右に装飾のない無銘の剣。
それこそが、彼の正装である。
「私は礼儀を重んじる男だ。一応、名を聞いておこう」
「そうか……俺の名はベイリン! 『双剣のベイリン』は俺の事だ!!」
「我が名はリエンス。ウェールズを統べ、王たちを束ねる者。
王でもない貴様の髭などいらん。首だけ打ち捨ててくれよう」
「やってみなぁ!!!」
――双剣の騎士と神剣の王、英雄同士の一戦が始まる。
初撃。
ベイリンが間合いを詰めるより早く、リエンス王の大剣が薙がれた。
その軌道上の木々が斬り飛び、森が悲鳴を上げる。
ベイリンは無銘の剣で剣圧を裂き、石剣で突き上げる。
だが、透明な膜と鎧がそれを阻む。
互いに距離を取り、火花の中で睨み合った。
「我が剣こそ、神々がヘラクレスに鍛えた神剣――マルミアドワーズ。
全てを裂き、全ての害より我を守る。貴様ごときには貫けん」
「……そのマントもやべぇな。気色悪くてたまんねぇ」
「ほう、気付くか。これぞ
リエンス王は愉快そうに笑う。
真の力を解放できずとも、圧倒的な魔力の圧で攻撃と防御を行う神剣。
下した十一人の王の髭を編みこみ、奪った誇りを力を変えて与える外套。
大陸より流れ着いた、かつてのローマの将軍が使っていた鎧。
三つの宝具を備えたこの王は、まさしく攻防一体の完成形。
魔力の膜、千切れぬ外套、頑強な鎧、三重の壁となり持ち主を守る。
ベイリンの宝具にも満たない呪いの石剣では貫けない。
堕ちた聖剣も呪い以外は頑丈なだけなので同様である。
(怪しい女だったが、警告通りの襲撃があった。ならばもう一つの警告、増える斬撃が来た瞬間に距離を取るべきというのも真実か)
その上、リエンス王は出立の前に出会った貴婦人からベイリンの情報を得ている。
圧倒的に優位な者は明らかであった。
だが――ベイリンはブリテンのバグ騎士。
常識で測れる相手ではない。
「マーリンの予知通りなら楽になりそうだったが……ハハハハ!」
不利を知りながら笑う。
彼が望むのは簡単な勝利ではなく、強者との戦いそのもの。
リエンス王が間合いを取り、神剣を振り抜く。
斬撃が空気を断ち、木々を裂き、大地を割った。
十一王の力と神剣の加護を併せたその一撃は、ベイリンよりも重い。
防御の薄いベイリンが受ければ、一撃で消し飛ぶ。
だがベイリンの攻撃はただの剛剣ではなかった。
速さ、巧さ、数――全てを兼ね備えた剣。
致命の剣圧を片手の剣で切り裂き、弾き、逸らし続ける。
もう片手の剣で攻撃を浴びせ、三重の防壁の性質を見極めていく。
「直撃でなくとも神剣を片手で弾くとは……人間か貴様?」
「お前の剣閃が読みやすいんだよ。こりゃ……五重に重ねりゃ抜けるか」
「阿呆め。双剣でも二重が限界だろう!」
「
ベイリンの双剣に纏う雰囲気が変わる。
振るった双剣の軌跡が、残光を引いた。
そのまま、先ほどと同様にリエンスへと斬撃を振舞う。
「何かしたか? 魔力制御もできんのか貴様?」
しかし――何の効果もない。
ベイリンは双剣に斬撃に合わせて魔力を込めたり、放出して威力を増しているわけではない。
ただ、斬撃の直後に僅かに遅れて魔力を放出し、振り抜いた後の剣圧を強めていた。
元来、強力な斬撃の後には空気の圧が生まれる。
そこに魔力放出の余波を重ねていたが――防壁ひとつ破れない。
むしろ、余計な動きが増えた分、速度と手数が落ち――
「ぐおぉ!!」
「直撃は避けたか。だが、時間の問題だな」
神剣の圧を受け止めきれず、ベイリンは次第に傷を負い始める。
兜は吹き飛び、籠手は裂け、足元から血が流れ出す。
リエンス王は防御不能の絶技を警戒しつつ、なおも攻め立てる。
神剣の力をさらに引き出し、剣圧を一段と高めた。
本来の力であれば、星すら割ることも可能な神剣。
正しい担い手でないリエンス王でも山を裂く連撃を放ち、辺りの森一帯が斬り飛ばされ、平地と化していく。
(まだ落ちんのか、この蛮人は!? それどころか……剣速が増している!)
それでもなお、倒れぬベイリン。
その剣は勢いを増し、防壁を削り取っていく。
ベイリンの加速の仕掛けは単純。
遅れてくる剣圧を、次の一撃の推進に利用しているのだ。
そして、それを繰り返すことで、斬撃そのものを加速させ続けていた。
(遅れる剣圧が……増えていく? いや、加速するたびに圧が残っていく!?)
その上、遅れた剣圧が鋭い斬撃となって残りはじめた。
ベイリンの周囲が、斬撃の渦となり、嵐となり、やがて竜巻へと変わる。
加速した斬撃が、残った斬撃を追い越す。
多重の剣閃が次々と重なり合い――
「
五重を超えた剣閃が、六重、七重と同時にリエンス王へと迫り、リエンス王の全身を斬り裂いた。
「ぐ……まだだァァァ!!!」
それでもリエンス王は倒れない。
まだ四肢を軽く裂いたのみで倒れるほどではない。
誇り高き王の意地が、肉体を動かしていた。
全ての魔力を神剣へと注ぎ込む。
蛮人相手にもはや防御は意味をなさない。
ならば防御を捨て、ただ破壊のために費やす。
神剣が光輝く。空気が、世界が震える。
山どころか、国と世界を割る一撃が顕現する。
「ハハハ! 俺がエクスカリバーを超えるのを示すのにちょうどいい!!」
ベイリンは加速の限界を超え、全身の血管が破裂して血を噴きだす。
既に彼の周囲は斬撃の嵐により空間が歪んで見えるようになっている。
双剣を振り、回転しながら嵐を二つの渦へと収束させる。
幾百の斬撃が重なり、疑似的な空間の断絶をも作り出す。
そして、渦を纏った双剣をぶつけ――世界を割った。
王と蛮人の世界を割る一撃が交錯し、星が悲鳴を上げる。
ブリテン中が震え、あらゆる生物が死を直感する。
妖精たちも世界の終わりと誤解して狭間の地へと逃げ出す。
森は消え、ただの平野と化す。
たった二人の手によって、世界が変わる。
十秒にも満たぬ破滅の後――立っていたのは、ただ一人。
「はぁ……はぁ……俺の、勝ちだ……」
全身血塗れのベイリンが、砕けた石剣を放り投げる。
無銘の剣を杖に、辛うじて立つ。
リエンス王は倒れていた。
マントも鎧も砕け散り、神剣だけが地面に残っていた。
勝者――ベイリン。
〇ベイリン
実は原典でも「双剣のベイリン」は自称。
その割に、双剣で戦うエピソードがほぼない。
〇リエンス王
アーサー王伝説における初期ボス。
十一人の諸王に勝利している時点で、ロット王にも勝っていると思われる。
この後、アルトリアに毛生え薬でいじられる。
〇十一王の外套(マント・オブ・キングス)
リエンス王のオリ宝具
十一人の諸王の髭が編み込まれたマント。
相手の髭(=誇り)を奪ったことで対王防御が付与されている。
さらに、髭の持ち主だった王たちの力を借り、持ち主のステータスを向上させる。
〇マルミアドワーズ
FGOだとキャストリアが持っている神話礼装とかいう謎のチート兵器。
リエンス王は真の力を解放できていないが、エクスカリバーより実用性のある剣。
火の神がヘラクレスのために鍛えた剣らしいが、なぜか諸説でリエンス王が持っている。
〇先攻後攻(リヴァーサル)
双剣で天翔龍閃の二撃目を繰り返し続けているっぽい技。
エカルの流れの技の極地を、ベイリンの剛剣へと適合させて完成させた。
遅延と加速を繰り返し、残る斬撃と重なる斬撃を生み出し続けるバグ技。
1.わざと斬撃に遅れた魔力放出を行う。
2.追従した剣圧で次撃の加速を行う。
3.1~2を繰り返す。
4.斬撃が加速し続け、周囲に風と魔力の斬撃跡が残り続ける。
5.前に生じた斬撃の跡を追い越し、重ねていく。
6.斬撃同士が押し合い 、重なり続けていく。
ベイリン的には「
「
〇????
「
ベイリン的には「先攻後攻」の発展系なので別技ではない。
発動まで時間がかかるので長期戦でしか使えない。
……実は良い技名が思いつかなった。